亜矢羽ノ国

021+傷



肌を出したくないの。



そうやって言ってるけど。

本当は見せられないだけ。


腕にはおびただしい数の切り傷。

もちろん。

自分で付けた傷。


気がつくと。

増えている。


そして。

切ったときの記憶はない。


いきおいよく血が流れる。

少しずつ滴り落ちる。


切った場所によって違うけど。

得られる満足感は同じ。


死にはしない。

こんなことぐらいで死にはしない。


だから。

自分の嫌な所を追い出すために。

体の中に入ってきた有害物質を追い出すために。


私は腕を切るの。


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