亜矢羽ノ国

039+滑稽



ヒッソリとあるアンティーク雑貨店。


僕は。

このお店がとても好きだ。

何かを買うわけでもないのに。

僕を受け入れてくれるこの空間が好きだ。


ある日も。

いつものように静かに扉を開け店内を見て歩いた。


ふと目に飛び込んできた。

右腕の引きちぎられた人形。

ボロボロの生成りのドレスを着せられて。

だらりと四肢。

いや。

三肢を足らしたその子は。

僕をずっと見つめているように思えた。


次の日も。

そのまた次の日も。

いつものように店を訪れるけど。

人形は僕を見つめ続けてくる。

そう思い出すと。

僕も人形から目を離せなくなってしまっていた。


そう。

人形と僕との恋。

他人から見たら理解できないのだろう。


なぜ。

人形に。

それも。

汚い。


でも僕は。

恋をしてしまったから。

何を言われようと。

どう思われようと。

目を離すことはできない。


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