亜矢羽ノ国

051+ひどい雨



今日と同じような天気だった。

バケツをひっくり返したような酷い雨。

俺とお前の心を。

そのまま映しているようだった。


俺たちの関係が世間に知られるのを恐れて。

ずっと隠して生きてきた。

もし知られるような事があれば非難される。

だから。

誰にも知られてはいけなかったんだ。

誰にも…。




俺たちが2人で築いてきたものは。

簡単に壊されてしまった。

どれだけ抗っても。

元に戻す事はできなかった。


『お前は俺に会うなといわれ。

   部屋に閉じ込められた。』

最後に聞いた。

お前の声。

お前の言葉。


その後。

携帯電話も取り上げられてしまったらしい。

連絡をとる手段は何もなかった。



そして俺は。

どんなに弱い力でもやれれてしまうような。

脆い生物と化した。


今お前は何をしているのだろうか。

俺のことは忘れてしまったのだろうか。

それとも。

お前もまた。

俺の事を想い。

悩み。

泣いているのだろうか。


ずっと腕の中に抱いていた温かさを失った。

いつかは失ってしまうものなのかもしれない。

そうは思っていた。

でも。

あんなに。

いきなりだとは思っていなかった。


あの日から。

今日でちょうど3年。

何の因果だろうか。

あの日と同じ雨が降る。


行動を起こせよと訴えているかのように。

何もできない俺に追い討ちをかけるかのように。


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