そよかぜにっき

そよかぜにっき

日本一のお嫁さん



いるか2


 2年前まで、私は、近所の古い団地に住んでいた。

隣には、一人暮らしのおばあさんが、住んでいた。

13年間もそこで住んでいたので、

三人の子供達も、

まるで自分の家のように隣へいっては、

おやつをもらったりしていた。

 最近、買い物をする姿をみかけないなあーと思ったら、

なんと入院しているという。

りんごやばななをいっぱい買い、

お見舞いにでかけた。

ひとまわりも体の小さくなったおばちゃん

(そのおばあさんを私はそう呼んでいた。)は、

「もう、今度はあかんかもしれへん・・・

でも、頑張ってりんごやばななたべるわな・・」

と言った。

「うん、がんばってな、おばちゃん!!

じゃ、帰るわな!!」

「あ!!そうや!!うちの嫁な、

日本一なんやで、私がそそうして、

ベッドを汚した時な、

嫌な顔の一つもせんとかたずけんねん、

ほんまに、日本一やで・・・」

「そうなんや・・よかったなあ・・」

 おばちゃんは、帰る私を、エレベーターまで送り、

最後に、深く深くおじぎをした。

それから、10日もしないうちに、亡くなってしまった。

 お通夜の席で、お嫁さんに、

おばちゃんの最後の言葉を伝えた。

「うちの嫁は、日本一やでって・・・

おばちゃんいうてたで・・・」

お嫁さんは、こらえきれなくなって、

ハンカチで、顔中をおさえた。 



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