おんな鮎釣り師のホームページ

⑬野良犬のクロ・・・クロはまた捨てられた


私にとって動物はペットで、特に犬猫は家族という認識でした。
それが三重県の田舎に来てネコはネズミよけとして、犬は畑に繋ぎっ放しで猪よけや、山に繋いで椎茸の番をさせられている家畜扱いの犬猫も多い事を知りました。
そんな犬猫を病院に連れて行く事などなく去勢手術もしていないので、子供ができるとへその緒がついたまま山に捨てたり川に流したりします。
川で泳いでいたら袋の中に入った子猫がミャーミャー鳴きながら流れて来たと、近所の子供が話していました。
目の開かないうちは命ではないとの考えのようです。
最近では動物病院もできましたが、昔から当たり前のように行なわれていた悪習を変える事は難しそうです。

母の家の近くには猟をする山があり猟の季節が終わる頃、来期には使い物にならない老いぼれ犬や落ちこぼれ犬を置き去りにして行く猟師がいます。
何年も一緒に暮らしても、犬を道具としてしか見られないのでしょうか。


私は鳴き叫ぶクロと生まれたばかりの仔犬を連れて、母の家に行きました。
母の家にはつい最近まで犬がいましたが、亡くなったばかりでした。
その老犬は役場の檻に入れられて、保健所に送られるのを待っている時に母と出会いました。
ぐったりと横たわったまま、それでも母の顔を見上げてシッポを振ったそうです。
こんなになってもまだ人間を信じている目を見て、とてもそのまま立ち去る事はできなかったと言います。
狭い檻から出してやるとヨロヨロと危なげに片足を上げて、長い長いオシッコをしました。
可哀想にずっと我慢していたんでしょう。

それから4年、生きていました。
大きな病気もして大手術をして最後は癌でなくなりました。
結果的に何度も痛い目をさせてしまって、あの時助けたのはあの子にとって良かったのか悪かったのかわからなくなった時期もありました。
それでも最後まで母に愛され近所の子供たちにも可愛がられ人間を信じたまま生涯を終われた事は、あの時ガス室に送られて殺されたかも知れない運命より格段に良かったと思いたい。

母にはクロの話しを色々としていましたが、本当に頭のいい犬でびっくりしたそうです。
仔犬を産んだばかりで気が立っているはずなのに、ここでこれから世話になることがわかっていて、きちんと挨拶をしたと言っていました。

仔犬達はすくすくと成長しました。
そしてまた大変な養子縁組大作戦がはじまりました。
真っ黒なモコモコの毛をした熊のような女の子を一匹残して、無事みんな貰われて行きました。
家庭の問題で悩み事が絶えずいつも眉間にシワができていた人が、クロの仔犬を貰ってからシワも消えニコニコと犬の話しばかりするようになりました。
そんな所に貰われた犬も人間も共に幸せです。

クロが変な咳をするのに気がつきました。
フィラリアに罹っていると思いました。
彼からは一度も電話がないままでした。
クロの病気の事について相談したくて病院に電話をしたところ、もう退院したとの事でした。
退院する時は連絡する約束だったのに。
あれ?クロは捨てられちゃったかも・・・



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