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ヒーローになったか、あるいはあの世行きか。
会社からの帰り道、狭いが人通りは結構ある駅前の路地。
前方から、二十歳前後の男性が全速力で走ってきた。
その後を、警官が「とまれ!とまれ!」と叫びながら追いかけてきた。
これは止めなきゃ。
そいつの前に立ちはだかろうとしたが、そいつは避ける様子もなく突進してくる。
その瞬間、「刃物でも持っていたら刺される」と感じ、せめて時間稼ぎにでもなればと思い、体をよけて持っていたカバンをぶつけた。
それにしても、そんな大捕り物が大勢の目の前で行われているのに、みんな見ぬふりなんだよね。
まぁ、ここ数日で無差別殺人があったばかりなので、怖いという気持ちはわかる。
でも、あんまりじゃない。せっかく俺が体を張って時間稼ぎしたのに。
そいつがひるんだ隙に、数人で取り囲めば捕まえられたんじゃない?
そいつが何故追いかけられているかわからないから、手が出せない?
でも、警官が追いかけていたんだよ。
あ、警察なんて信用できないから、協力もしないのか。
しまった、まずいな。顔を覚えられていたら、逆恨みされるかもしれない。
明日から、別のルートで通勤しよう。