必殺必中仕猫屋稼業

第3話

やがて島を目前にして大きくロール(取り舵)したフェリーがようやく元の安定を取り戻した。
「ああ。ビックリした♪海に落ちるかと思ったわ♪」
ブルーのパーカーの少女は、武志の腕から離れため息をついた。
クリクリの巻き毛のブラウンの髪に、ブルーの瞳、健康そうな小麦色の頬にソバカスが浮かんでいる。
「大丈夫?ヘレン?」
甲板の向こうから涼しげな声が聞こえてきた。
白いセーターの少女が舳先の手すりに掴まっている。
「助かりました。ありがとうございます。」
明るい黒髪のショートボブに、黒い瞳の少女が武志にむけて頭を下げると、その髪が揺れ上品な香りが彼に届いた。
澄んだ白いセーターに、黒いブリーツスカート。
「ちゃんとお礼をいいなさいよへレン。助けてもらったのはあなたでしょ。」
かに所にうながされ、へレンと呼ばれたブルーのパーカーのソバカス娘は、
ぺロッと舌を出し、武志にペコリと頭をさげた。
「でもさレイン、あんなに船が揺れるとは思わなかったんだもん♪」
「だから乗る前に言ったでしょ。このあたりは突然大渦ができるから、船がそれをよけるために急に向きを変えることがあるって。」
レインと呼ばれた娘が船首の左手の海面を指した。
そこには、確かにこのフェリーを飲み込むほどの渦が白いしぶきを飛ばしながら大きな口をあけていた。
「うわぁ。凄い渦~。さすが詳しいね。」
興奮した表情でヘレンは武志を振り返り
「あなたも、あの島に旅行?あたしたちは、このレインが久しぶりに島にいる叔父さんをたずねるって言うから、あたしもついてきたの。」
再びヘレンが島を振り返り、
「でもなぁ。あの島、あたしが考えてたのと?ちょっとイメージがちがうのよね?白い砂浜に青い空。緑の木陰に美しい別荘がならび・・・じゃないもんね。せっかくヨットパーカー新調したのに意味ないじゃん。」
「だからいったでしょう。あの島はは代々海に暮らす漁師たちの島で、リゾート地じゃないって・・・。」
「わかってるわよ。ああぁ、あの島で何か面白いことないかしら・・・。」


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: