リエンジニアリング革命

リエンジニアリング

リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新
マイケル ハマー、ジェイムズ チャンピー著
(画像は文庫版)



感想:
ビジネスの常識が変化している。それは何もIT革命の影響によるものではない。①供給過剰の状態で、企業は、つくったものを売る「製品志向」から、市場が求めるものをつくって買ってもらう「市場志向(顧客志向)」にならざるを得ない。②変化の速度が早まったため、新製品開発などにも以前ほどの時間はかけられなくなった。開発の遅延は即座に市場機会の喪失につながる。③個々の商品自体の差が縮まったのと同時に、雑誌やインターネットなどを通じての商品同士の比較が容易になったため、流通、サービス、複数チャネルなども重要な競争要素となっている。・・・等々。そうした状況の中、これまでの経済、企業を支えてきた分業による大量生産の方法では、社会環境の変化に対応できなくなった。企業はそんな社会の変化に否応なく、自身の変化を求められている。

本書は、そんな変化を迫られた企業に、抜本的で、根本的な変革の方法を説いている。「リエンジニアリング」とは、改善ではない。それはプロセスに目を向け、それを1からやり直すことだ、と書かれている。「もっとうまくやるにはどうすればいいか?」、「今の業務をもっと早く行なうにはどうすればいいか?」、「どうすればコスト削減を行なうことができるか?」などということではなく、「そもそもなんでそれを行なっているか?」という観点から、業務プロセスを根本から考え直すというのが本書のいう「ビジネス・リエンジニアリング」である。その目的は、改善によって業績を向上させることではなく、はじめからやり直すことによる業績の革命的な向上である。

本書は1993年に邦訳が出版されている。書かれたのはさらに前のことになる。ジェフ・ベゾスがAmazon.comを立ち上げたのが1994年のことである。それは.comバブルがはじまる前の話だ。ITバブルがはじけた今なら誰でも気づいているだろうが、eコーマスの本質は、ITではない。その本質は既存のビジネス・プロセスを革命的に変化させたことに他ならない。eコーマスの登場こそが「ビジネス・リエンジニアリング」の一例だろう。その意味で、企業家精神、イノベーションにとって、ビジネス・リエンジニアリング」は一般教養でさえあるだろう。それを思えば、P・F・ドラッカーが本書を絶賛しているのもうなづける。



点数:
おすすめ度   ★★★★☆
わかりやすさ  ★★★☆☆
役立ち度    ★★★☆☆



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