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紫色の月光
第三十二話「ライジング・ブラザーズ」前編
昔、まだ青年が少年だった頃。
家に親戚が来ることになった。なんでも、お父さんとお母さんが事故で死んでしまったので、此処で暮らすことになったらしい。
しかも、その親戚は自分よりも年が低い兄妹なのだそうだ。だから、父は言った。
『いいか。お前はこれからお兄ちゃんだ。仲良くするんだぞ』
自分は、その時素直に頷いた。
その直後、あることを思い出し、父に尋ねる。
『ねえ、お父さん。その二人の名前って、なんていうの?』
その問いかけに気づいた父は、ああ、と笑顔を見せてから、静かに言った。
『いいかい、これから家族になるんだからよく覚えておけよ。……カノンとアウラと言うんだ』
神鷹・カイトは少年時代の時のことを思い出しながらも、病院の階段を一気に駆け上がる。
あの日、自分はまだ6歳で、カノンとアウラは3歳だった。生まれつき、身体の一部が悪かった彼ら兄妹は、小さい時からお互いに助け合い生きていくしかなかった。
足の不自由なアウラが、口の利けないカノンの代わりに言葉を話し、口の利けないカノンが、足の不自由なアウラの代わりに動いていく。それが当たり前だった。
そんな兄妹の絆の前に、初めて立ち入ることが許された部外者がカイトだった。彼は二人の理解者で、二人は彼の理解者だった――――はずだった。
(アウラ。本当にお前が、モーガン達を殺したのか!? 何時も近所の犬と遊ぶことを楽しみとしていたお前が、殺してしまったのか!?)
出会って数ヶ月。丁度カイトが小学校入学の時を迎えたその時、彼らの世界は火の海に覆われてしまった。幼く、知識も無かった彼らがそれを、『戦争』なのだと理解するには、その時は不可能だった。
その戦争で、カイトは様々なものと別れ、一人になった。
父、友達、そして弟と妹。
何がどうなって助かったのかまでは理解できなかったが、少年だったカイトは、一人ぼっちで街の中をさ迷うだけだった。
―――此処は何処? お父さん? ソウマ君? カノン、アウラ? おじちゃん、おばちゃんは?
今にして思えば、何の武装もしてないガキんちょが外をうろついていたのが究極の原因だったのだろう。そして当時、人の臓器が高値で売れる、というのもあったのだ。
この二つの要素が交じり合った結果。カイト少年は、一人の犯罪者に襲われることとなる。この時の恐怖は、今でもよく覚えている。
自分よりも身体が大きく、威圧感満ちており、何よりナイフを持って、それを振り下ろしてくる場面は、雷のフラッシュバックと共に鮮明に記憶に刻まれているのだ。
では、そんな事態に遭遇したのに、何故自分は無事だったのか。
答えは簡単だ。
神鷹・カイトは人間じゃなかったのだ。人間がその手で生み出した『最終兵器』こそが、彼だったのだ。
小柄な少年は、死への一歩手前で『本能』に目覚め、逆に男を返り討ちにしてしまったのである。
その後は、裏社会で生きていくしかなかった。命を狙われたとはいえ、人を殺してしまった。その感覚が手から身体全体に染み込んできて、心が震える。そして最終的に、その感覚を何度も味わいたいと思うようになってしまった。
それが『ハゲタカ』の始まり。
まだ六歳だった少年に名づけられた、恐怖の代名詞の歴史の始まりだった。
(それから、色んなことがあった。新しい友達が出来て、軍に入って、父を殺され、研究所生活を強いられ、テロリストやって、そして―――――!)
そして、あの二人と再会した。
十年以上探していたのだ。一度だって忘れたこともない。
(だが、もし今。あの二人が、『ハゲタカ』と同じようになっていたとしたら―――)
その時は、ただの殺戮の最終兵器となった二人を殺すしかない。もう、自分にはそれ以外に出来ないのだ。
そう思い、カイトは病院の屋上の扉に手をかける。
「他の場所に、あの二人の姿は無かった……いるとしたら、ここだけだ」
アルイーターがつぶやくように言うと同時、カイトはドアを開放する。
其処から広がるのは、夕日によって差し込む赤い光。そして赤く照らされた兄妹の姿があった。
「………」
ただ、俯いているために、長すぎる髪で覆われた素顔がはっきりとしない。それだけに、やけに不気味な光景だった。まるで生気の無い人形のような光景なのだ。
「オイ! お前ら!」
すると、エリックがズケズケと歩き出し、叫ぶ。
「お前らがモーガン達を殺したのか!? 集落の皆を!?」
エリックの問いに、二人は答えない。ただ俯いて、その場に突っ立っているだけだ。
「こいつ等……!」
流石に我慢の限界に来たエリックがランスを構える。が、その直後。隣にいるカイトが、片手でその動きを静止させる。
「すまない。話は俺にさせてくれ」
「………」
妙に真剣な顔で話すために、エリックは思わず頷いてしまう。
「ありがとう」
そういうと、彼は一歩前に出てから、二人と対峙する。その距離は20mもないが、彼にとってはとても遠くに離れた、決して会えない境界線のように思えた。
「アウラ、そしてカノン。兄さんの質問に答えてくれ」
その瞬間。僅かではあるが、二人の身体に小さな反応が見られた。
「アウラ。お前が集落の皆を殺したのか?」
すると、アウラからの返答は予想外のことに、すぐに返って来た。
「そうです。私が殺しました」
「何故? お前が彼らを殺す理由は?」
「兄さん達を誑かした悪い人たち。犯罪者は消えて当然。悪は消えなければならない」
まるで機械のような単調な口調。しかし、前に会った時とはまるで別人に思える印象だった。
(こいつ、本当にアウラなのか?)
エリックは一度しか会ったことがなかったが、それでもアウラという少女がこんな事をするとはとても思えなかった。
病室で見せてくれたあの眩しい笑顔が、全て硝子細工の如く砕け散っていく。
「さあ、カイト兄さん。貴方も私たちと共に来てください」
そう言うと、アウラは手を差し出し、こちらを誘うように手招きをする。いや、正確に言えば誘っているのはカイトだけで、残りの二人は邪魔でしかない。
「悪いな。『アウラ』に誘われたんなら迷うが、『今のお前』じゃあ、行く気になれない」
そして、彼の答えは「NO」だった。
しかし、エリックとアルイーターにはさっきから何がなんだかチンプンカンプンだった。さっきから会話に置いてけぼりを食らっているのである。
「なら、死ね」
だが次の瞬間、カノンとアウラの掌がこちらにかざされる。其処から溢れんばかりの紫電が集まっていき、巨大な銃弾となってエリック達に照準を合わせる。
「あれは――――――!?」
「やばい!」
動こうとした直後、二人の両手から集まった紫電の弾丸が発射される。それはエリックたちの真正面まで飛んでいったと思えば、当たる直前で破裂し、病院の屋上全体に電撃の大波が襲い掛かる。完全に逃げ場を塞いだ攻撃だ。
「……………」
虚ろな瞳で、カノンはエリックたちがいた地点を見る。すると、其処にはランスの柄を分離し、バリアを展開させた状態でこちらの攻撃を防いでいるエリックたちの姿があった。
「おい、あいつ等一体なんなんだ!? 何だよ今の電撃!? それに、なんだってあいつ等はお前のこと兄貴呼ばわりするんだよ!?」
エリックからは問答無用で疑問の言葉が発せられるが、これにはアルイーターも同意だった。どうにも彼らには疑問点が多すぎるのだ。これを解決するには、今味方でいてくれているカイトの口から話してもらう以外にない。
「……そうだな。こんな事になってしまったが、お前には知る権利がある」
そう言うと、カイトは懐からある物を取り出した。それは握り拳サイズの金属片で、その中心には『Ω(オメガ)』と刻まれていた。
「こいつは『コア』と呼ばれる金属片だ」
直後、重たい口調でカイトは続けた。
「このコアが、俺たちの心臓になっている」
「………はい?」
その瞬間、本当に沈黙が場を支配した。
そして同時に、エリックの脳内にいる100人ものエリックが行う『エリック会議』が行われ、この事態を検討し始める。
『どう思うエリック64。こんな金属片が彼らの心臓なのだというのは』
『いや、エリック71。世の中には南瓜をかぶったり、サイボーグな警官がいたりする時代だ。もしかしたらもしかするかもしれないぞ』
『だが、奴からは最終兵器とは似て非なる波動を感じた。もしかしたら―――』
こんな感じで彼の脳内では、通常では考えられない速度で脳内会議を行って、結論を出す。
「嘘だ!」
「殺すぞテメェ」
思いっきりカイトに睨まれる羽目になった。
兎に角、とカイトは話を続ける。
「この『コア』は、古代都市リレイアが『量産型最終兵器』として作り上げた代物だ」
「量産型最終兵器!? こんな小さいのがか!?」
驚くのは当たり前だ。今まで彼が目にした最終兵器は、その全てが武器の形を成している。それの量産型と言うことは、自動的にそれに近い形になってもいいはずだ。
「こいつはな、最終兵器に欠かせない代物……現代の物で例えるのなら、コンピュータチップのようなものだ。……こいつは、『レベル4』発生機なんだ」
「何だと!? これがレベル4を発生させてるってのか!?」
「そうだ。お前達の持つリレイア最終兵器の全てに、こいつが埋め込まれてる。その戦闘結果から量産されだしたのが、コアなんだ」
そのコアが量産された結果、簡易型で、誰でもレベル4が扱えると言う恐るべき兵器が誕生することになる。
しかし、量産されたときは既に脅威の対象であるドレッドは封印され、最終兵器も一時オーバーホールすることとなっていた。
「ところがどっこい、コアの量産作業は進んでいたのさ。次の戦争に備えて、な」
しかし、さっきから聞いていて妙に納得できない点があった。
何故そんな事実を、この男が知っているのか、である。
「簡単だ……行ったのさ、古代都市に」
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!?」
古代都市。ニックが偶然で流れ着いた場所であり、ノモアが意図的にやってきた場所でもある。果たしてそんな簡単に入り込めるものなのだろうか。
「俺の場合は、あくまで偶然だった。しかも、既に廃墟と化していたから、こういう情報は日記で知ったんだがな」
そして、その時は思いもしなかったのだ。こんな小さな金属が、自分たちを生かしているなんて。
「そして、俺が古代都市にやって来るよりも前に、昔の軍は辿り着いていたのさ。そして、コアをいくつも回収し、自分たちの手で『現代の最終兵器』を作ろうとしたのさ」
その結果、生れたのが、
「俺たちだ。最終兵器リーサル・ヒューマノイドとでも言うべきかな?」
唖然とするしかなかった。
カイトから最終兵器に似た感じの波動を感じたのは、彼の「コア」が反応したからだろう。カノンやアウラに反応しなかったのは、それだけカイトのインパクトが強かったからだ。しかし、それだけでもエリックの想像の範囲を軽くぶち抜いていた。
「じゃあ、彼らが君の事を兄さんと呼ぶのは?」
アルイーターが問うと、カイトは少し俯き、エルザハーグ兄妹に対峙する形で答える。
「軍が俺たちに名づけたコード名は『ジーン』。その数は俺を含めて30……しかしその内半分近くは、度重なる研究の結果、死んでいった」
自分も下手をすれば命を落としていたはずだ。現に、何度も目の前で仲間たちが死ぬのを目の当たりにしている。薬漬け、耐久力テストという名の拷問、地獄のような訓練、壊れそうなほどの精神制御。思い出しただけで吐ける。
「俺はそんな『ジーン』のプロトタイプ。つまり、『長男』の位置にいる男だった。彼らは俺の後に生まれ、しかもガキの時は一緒に住んでいたからな。次第に兄さん呼ばわりされるようになったのさ」
だが、そういう生活が出来たのも彼らに愛着が出来てしまった一部の科学者が逃がしてくれたお陰だろう。そのお陰で、一時だけとはいえ『人間』と言う認識を持つことが出来たのだ。それは感謝するべきだろう。
「……再会したとき、俺は信じられない光景を見ていた」
それは、カイトがこの街に来て三日ほどの事だった。時間帯は夜で、周囲を見回せば静まり返っている。朝の大混雑が嘘のような光景だった。
「………」
歩きっぱなしで足がもう棒のような状態だった。しかもホテルに宿泊する金も持ち合わせていない。
(野宿、かな)
コンクリートの布団は寝心地が悪いが、金が無いのなら仕方が無い。
そう思って、ビルの隙間の裏路地に入っていった。その時だった。
「!」
二つの影が見えた。
一人はその場で倒れこんでおり、もう一人はそれに馬乗りになるような形だった。しかも、馬乗りになっている方は、血まみれのナイフを手に持っている。
この光景を見て、導かれる答えは一つだ。
(殺人現場か……厄介なのに出くわたな)
だが、よく見ればナイフを持っているほうの人影は奇妙な格好をしていた。長すぎる髪で目が完全に隠れており、ごっつい黒の鉄マスクで顔の下半分を隠している。これで呼吸でもしたらジェイソンを髣髴とさせる光景となっていただろう。
「お前は……」
まさか、と思った。しかし、10年以上もボロボロになりながら探し続けてきたのだ。見違えるはずが無い。あのオレンジ髪と、何処か人を寄せ付けなさそうな雰囲気を持つ男はカノンだ。
しかしそれと同時に、ショックを覚えた。我侭な発言かと思われるかもしれないが、彼らには自分と同じように外道道を歩んで欲しくはなかったのだ。
しかし、もう手遅れだ。
デスマスクは、もう生れてしまったのだから。
(その日以来、俺たち三人は昔話をしながら病院の一室で陣取っていた。……あいつ等がどうやって生き残ったことなんて何の興味が無い。『生きていた事』で俺は満足だった)
だが、彼らは牙を剥いてしまった。何があったのかは知らないが、あの日『ハゲタカ』と呼ばれた自分と同じ目をしている。ドブみたいに濁った、とても汚い色だ。
「………もう、戻れないのかな」
いや、と呟いてから、カイトは前に出る。
「外道の行く末は最後まで外道だ。――――せめてもの情けだ。痛みも無く殺してやる!」
カイトが戦闘体勢に入る。それはつまり、弟と妹のように可愛がって来たあの二人を殺す、と言うことを意味していた。
思わずアルイーターが止めようと前に出るが、エリックに制される。
「止めとけ。……あいつが決めたんだ。俺たちがどうこう言うことじゃない」
それに、とエリックは続ける。
「一番つらいのはアイツのはずなんだ。今でも泣きたくて、逃げ出したくて、苦しいはずなんだ。それでも、あいつは戦うことを望んでいる」
「何故だ。私には理解できん。大切ならば、救おうとする方が大切なはずだ」
「なら、あれを見てみろよ」
そういわれて、アルイーターはエルザハーグ兄妹を見る。
すると、其処には予想だにしなかったものが見えた。
「泣いてるのか……!?」
俯いているため、どんな表情をしているのかまではよくわからない。しかしその涙と、頭の中に直接響いてくる声が、『彼らの本音』を伝えてくれていた。
『……てください。僕たちを、殺してください。もう、身体は言うことを聞かないんです』
初めて聞く声だった。その筈なのに、不思議と初めて聞く声に思えない。
彼らのコアの能力は『放電能力』。応用で様々な電気現象を起こすことが出来る。恐らく、微弱な電気信号を、脳みそのネットワークを通すことによって三人に伝えているのだろう。
「それが、お前の本音か。カノン」
エリックが睨むように見ると同時、カノンとアウラの周囲に、再び紫電が集まり始める。まるで何かを急かすかのように、だ。
「OK。なら、マジで行かせて貰うぜ」
言い終えると同時、彼の掌にランスが出現する。既にその矛先には荒々しい風が集中しており、まるでランス自体が静かな怒りを帯びているかのような光景だった。
「行くぜ!」
エリック、カイト両者が一斉に疾走。紫電のオーラを恐れずに突撃をかけた彼らは、そのままカノン、アウラ両名に一撃を加えようと、強く踏み込むが、
「危ない、後ろだ!」
後方からのアルイーターの声に反応して、とっさに後退。直後、先ほどまで彼らがいた地点のコンクリートの床が、激しい破砕音と共に砕け散った。
「何!? 馬鹿な、あいつ等はまだ何もしてないはずだ!」
だが次の瞬間、エリックとカイトは見た。
何かが風を切り裂く凄まじい回転音。それは猛烈な勢いでアウラの手元に収まり、その正体を明らかとする。
「ヨーヨー……! コアの放電能力を応用しての一撃か」
先ほど床を破壊したのもあのヨーヨーだろう。破壊力を見た限り、まともに受けたら『痛い』じゃ済まないはずだ。
(動けないアウラの代わりに、自在に相手を付け狙う番犬って訳か)
だとしたら、自分を中心とした360度全体に注意しなければならない。先ほどの攻撃も、アルイーターがいなかったら避けれなかっただろう。
「ちっ、仕方がねぇ」
舌打ちをすると同時、カイトはエリック、アルイーターに向けて叫ぶ。
「アウラは俺が相手をする。お前ら二人はカノンを頼む!」
すると、返答も聞かずにカイトはアウラ目掛けて疾走。スピードは間違いなくエリックよりも上だ。
「こんな形になるとは思いもしなかったが、モーガン達の仇はとらせてもらうぞ!」
だが、カノンとアウラのコアの能力は『放電』能力だ。電気が相手となると、金属の武器は分が悪い。
(素手で何処まで対応できるか、だな)
それも、なるべく苦しくならないように一撃で倒さなければならない。彼らがこうなった原因が判らない以上、元に戻すのはほぼ不可能だと考えてもいい。
(何より、あいつ等がそうなる事を望んでいる!)
カイトは目にも止まらぬスピードでアウラの目の前まで接近。その速さはアウラの反応が完璧に遅れるほどである。
(アウラは、コアを入れられたジーンシリーズとはいえ戦闘経験は0! 一気に行けば、勝てる!)
そう思ってカイトが拳を突き出す、次の瞬間。
彼の足元から、待ってましたとでも言わんばかりに『もう一つのヨーヨー』が突き出し、アッパーカットのようにカイトの顎を上に叩き上げる。
(もう一個!? ヨーヨーは二つあったのか!?)
気づいた時には、もう遅い。
ヨーヨーのアッパーで真上にぶっ飛ばされた彼は、無防備な状態をアウラの前にさらけ出したことになる。それはつまり、防御の手段なくアウラの攻撃を受けてしまうことを意味していた。
「さよなら」
次の瞬間、アウラの両手から放たれる紫電の牙が、容赦なくカイトを噛み砕く。
それは、彼に言葉にならない激痛を与え、一瞬で隣のビルの屋上までぶっ飛ばす。
「次はお前だ。死ね!」
次の瞬間、アウラは休む間なくヨーヨーをエリックたち目掛けて投げつける。回転することで破壊力を増し、しかも能力の応用で更に破壊力が増しているヨーヨーの直撃を受ければ、無事ではすまないだろう。
「!?」
エリックはカノンに注意を向けていたため、後ろから来るヨーヨーの接近には反応が鈍ってしまう。
だが、それをガードするのがアルイーターの役目だった。彼の手袋はありとあらゆる攻撃の『威力』を吸収する代物である。故に、アウラのヨーヨーがどれほど破壊力が高かろうが、関係なく無力化してしまうのだ。
「ふん!」
だが、背後のカノンが見逃すはずがない。
彼は右手に握るナイフを振りかざすと同時、エリックに襲い掛かってきた。
(へっ、リーチはこっちが上だ! 来る前に貫く!)
だが次の瞬間、カノンが持つナイフに紫電が集まっていき、巨大な刃となって振り下ろされる。その長さはランスのリーチを飛び越え、直接エリックに命中。
「――――――――!!!!!!!!!!?」
激しく地面に叩きつけられると同時、カノンは紫電の長剣をそのまま突き。その矛先にいるのはアウラのヨーヨーをとめたままの体勢で身動き取れないアルイーターである。しかも両手を使っている為、紫電の長剣を受け止めることができない。
「くそ――――!」
歯噛みしたまま、紫電の長剣に貫かれるアルイーター。背中からダイレクトに受けたその痛みの前に、流石の彼も意識を失う他なかった。
「意外に呆気ないな」
そんな病院屋上の戦闘模様を、じっくりと眺める男が一人いた。彼は長い銀髪をかき上げつつ、双眼鏡も驚くほどの視力でエリックたちの様子を眺めている。
「だが、俺が壊した二人を倒せないようじゃあ、イシュは倒せないだろう。いわば、これはテストだな」
そして、と銀髪の男――――バルギルドは続けた。虚空に向けて喋り続ける独り言を、だ。
「このテストの結果次第で、俺たちの今後の方針が大きく変わることになる。どちらにしろ、鍵を握っているのはお前だぞ」
バルギルドが見る射抜くような視線の先には、電撃によって倒れたエリックの姿がある。
「エリック・サーファイス。お前がカノンかアウラを倒さないと何も意味が無い。俺が何のためにわざわざこんな舞台を用意したと思っている」
もっと踊れよ。
その瞬間、バルギルドの表情が歪みだす。
まるで彼の細胞自体が、うぞうぞと動いているかのような、そんな光景だった。
「む?」
その瞬間、彼の視界に割り込んでくる黒い影が出現する。
口元から垂れる血を乱暴に拭うその影の正体は、他ならぬカイトだった。彼は吹っ飛ばされた後、再び戻ってきたのである。
「そういえば、お前もいたな。ナンバー1。……丁度いい、人形劇の弟と妹をどう殺すのか、じっくりと見物させてもらおう」
その後は、お前を『壊すまでだがな』。
直後、バルギルドは人形劇の観客となり、その場に座り込んだ。その口元から溢れる、やけに不気味な笑みを抑えないまま。
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