巨頭星団クラブ

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ブービーエスパー


ブービーエスパー

気が付いてはいたのだが、どうもこの能力は確実なものらしい。
あの頭がやたらに痛かった日に会社を休んで競馬中継を眺めていたら、やたらに変な数字の組み合わせが頭の中に浮かんでくるのでもしやと思って着順の組み合わせを調べてみたんだが何一つ当たってやしない。そんな都合のいい能力なんてあるわけないもんな。
頭痛に浮かれて頭の中に幻覚が浮かんできたんだと思っていたんだが、後になって気がついたんだ。
そう、あの晩、課の歓迎会の後、みんなでタクシーに分乗して帰るということになったとき一番後ろに並んでたタクシーがやたらに気になって、そのタクシーの方に進もうとすると足がすくんで冷汗が出て結局乗れずじまいだった。
同じ方向に帰る連中ばっかりで乗り合わせたんだから、それに乗らなきゃいけなかったのに。 悪酔いしてるんだとばっかり思ってたんだが、違うんだ。そのタクシー、途中の点滅交差点で出会い頭に居眠り運転のトラックにぶつかって乗ってた連中、可哀想に重軽傷で未だに病院にいるやつもいる。
ま、そのときは単に運が良かったと思っただけなんだが。

自分の能力に確信をもったのは、忘れもしないあの日だ。
出張で駅に向かってる時に、連れがこっちの方が近道だからって路地に入ろうとするんだ。別に俺だってどの道を通ろうと構いやしないんだからいっしょに行こうとすると、また足がすくむんだ。
冷汗がでて足が動かない。こないだと同じだ、と直感的に感じたね。悪いことが起きる。 連れに別の道を行こうって言ったんだけど、何回も通ってるんだから大丈夫だってあいつ言い張るんだ。
しょうがないから、俺、別の道で自動販売機でタバコを買いたいと言って誤魔化して自分だけ別の道を行ったんだ。そしたら、途中で車に接触して飛ばされたバイクが突っ込んできやがって気が付いたら病院の中。
頭何針か縫って、大腿骨骨折。 目がさめてしばらくして、確かに悪い予感がしてあの道を避けたはずだったのにと思っていたら連絡を受けた会社の係長がきて青い顔して言うんだよ。
「S君な、歩いていた裏通りに面した飲食店でガス爆発があって吹き飛ばされて死んでしまったんだ。なんで一緒じゃなかったんだ?」 俺は唖然としたね。
そうか!そうなんだ。確かに俺の能力は間違いなく危険を予知していたんだ。 ただ、残念ながら最悪のケースだけは確実に避けられるんだけどその他のことはしったこっちゃないみたいだ。
骨折と爆死がどっちがましか言わずもがなだろ? もともと運のいいほうじゃないからブービーは確実ってことかな?
あのとき頭に浮かんだ数字はどんべの組み合わせばっかりだったんだよ。

 (挿絵:武蔵野唐変木様)




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