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TVドラマの影響で、先日『硝子のハンマー』を読んだが、 頭のイイ人が書いたことが良く伝わってくる、とても面白いものだった。 そして、同じドラマの原作になっていた『鍵のかかった部屋』や 『狐火の家』も、いずれ読もうと考えていた。 ところが、それらを読む前に、貴志さんの作品で気になるものを発見した。 それが、本著『黒い家』である。 とにかく、読者レビューの評価がすこぶる高いのである。 と言うことで、こちらを先に購入、読んでみることにした。貴志さんは、大学卒業後に朝日生命保険に勤務した経歴をお持ちの方だそうだが、本作品においては、そこでの知識・経験が思う存分に活かされている。貴志さんが大学を卒業された頃と言えば、生保は花形産業で高給取りの代名詞、学生の就職希望ランキングでも、常に上位を占める人気産業だった。しかし、そこでの勤務は、想像を超えた大変なものであったようだ。人のケガや病気、死が、直接金銭に結びつくビジネスなのだから、そこでの業務が、感情的でドロドロとしたものになることは、少し想像力を働かせれば、すぐに分かりそうなことではあるけれども。 ***さて、私がこの作品の中で、最も印象に残ったのは、主人公・若槻と、国立大助手・金石との『反社会性人格障害』についてのやりとりの中で、金石が語った次の言葉である。 「ええ、人間は、哺乳動物の中でも特に子どもを大切にする、典型的なK戦略者です。 昔は乳幼児の死亡率がたいへん高く、ちょっと目を離しただけでも、 すぐ子どもは死んでしまいましたから、親による手厚いケアが不可欠だったんです。 ところが、時代が進んで、社会保障が充実し、文字通り親がなくても子が育つようになると、 r戦略の相対的有利性が増してきました。 早い話が、あちこちで子供を作るだけ作って後は捨ててしまっても、 社会がけっこう面倒を見てくれますから、 普通に子どもを育てるよりも多くの子孫を残すことが出来るんです。 つまり、一生懸命に子育てをするよりも、子供を作るだけ作って逃げる戦略の方が、 有利になってしまったというわけですね」(中略) 『善意で踏み固められた道も、地獄へ通じていることがある……』 何かを思い出しているように、にやにやと笑いながら言う。 「私がアメリカに留学していた時に、親しかった……ある友人に教えてもらった諺です。 弱者に優しいはずの福祉社会が、皮肉なことに、 冷酷なr戦略の遺伝子を急速に増加させることになってしまったんです。 それがサイコパスの正体なんですよ」(p.199) ***本作は、とにかく本格的ホラー作品である。就寝前に「今夜は、悪い夢を見るのではないか」と心配になるほどに。まぁ、息子が首を吊った段階で、家屋に漂う異臭に疑問を抱き、警察が、なぜ家の中を隅々まで調べなかったのかという疑問は残るけれど。
2012.07.29
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いかにも湊さんの作品である。 私がこれまでに読んだ『告白』や『少女』との共通点も数多く、 それらは、もはや湊さんの定型と言えるものなのだろう。 まさに湊ワールドである。 そこは、人間の闇の部分、ドロドロとした感情の世界が渦巻いており、 その中で、もがき苦しみ、葛藤する人たち(主に女性)の姿が描かれている。 各パートが、自分の眼から見た事実を物語る「独白」という形をとっているため、 どの部分においても、語り手の我が儘な自己中心性が、異常に鼻につく。読んでいて、決して気持ちの良いものではないし、読後感も、「爽快」とは真逆のものである。好きな人たちにとっては、たまらない世界なのだろうが、私は、そろそろ、この世界からは卒業しようと思っている。 ***静かな田舎町で、少女が何者かによって殺される。その殺人事件が発生する直前まで、その少女と一緒に遊んでいた4人の少女たち。この物語は、その4人の少女と、殺された少女の母親の独白により構成されている。事件に関わったことにより、不幸な運命に導かれてしまう4人の少女たち。そして、その原因をつくったのは、殺された少女の母親。しかし、彼女の運命の糸は、意外な殺人犯の解明へと繋がっていくことになる。
2012.07.29
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本著のタイトルになっている質問をされて、 躊躇なく「はい」と答えられる人は、一体どれくらいいるのだろう? そういう私も、もちろん返答に窮し、 「どうかなぁ……」なんて、その場を誤魔化してしまいそうだ。 躊躇なく「はい」と答えられる人は、本著を手にする必要を感じないはず。 他方、躊躇うことなく「はい」とは答えられず、 さりとて、「いいえ」と答えることに対しても、引っかかりが残る人たち。 そういう人たちが、本著を思わず手にしてしまうのではなかろうか。躊躇してしまう自分に対し、著者はどんな言葉で、この迷いを払拭してくれるのか?本著を手にする誰もが、そんな期待を込めてページを捲って行くに違いない。 *** じつは、世の中の99%の人は、 自分のやりたいことが最後の最後まで見つけられずに死んでいくそうです。(p.005) なぜなら、人の一生において死ぬこと以上に重要な出来事は存在しないからです。 今あなたが抱えているいくつかの問題は、あなたが死ぬことに比べたら、 どれもきっと、とるに足らない問題ではないでしょうか?(p.006) 「人は見えないものに恐怖を抱く。だからこそ見るための知識が必要とされる」(p.173) ***そして、最後のページを捲り終えたときの結論。本著の著者は、「0円店舗開業士」として、年間500件以上の相談に乗っている人だった。つまり、本著は、転職・開業まで考えている人たちの、背中をポンと押してくれる一冊。その際の、ノウハウやリスクについて、実例を交え、教えてくれる一冊である。それ故、本著のタイトルである質問に、「はい」と即答できないものの、それでも何とかそこで踏ん張ろうと考えている人たちには、期待した言葉は返ってこない。
2012.07.29
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本著は、『涼宮ハルヒの驚愕』初回限定版に付いている 68ページのオールカラー特製小冊子である。 「キャラクターデザインラフ集」や「ぷちイラストギャラリー」、 「小説スタッフの作業部屋」や「編集者による制作秘話」が紹介されている。 そして、書き下ろしストーリーの『Rainy Day』も掲載されている。 これは、キョンが中学3年生の頃のエピソードであり、 佐々木、国木田、岡本らも登場。 もちろん、メインは佐々木とキョンで、『分裂』『驚愕』を補うお話しである。 ***これで、既刊の「涼宮ハルヒ」シリーズについて、文庫版の小説は全て読破。いよいよ、『ハルキとハルヒ』を読む態勢が整った。どんな内容のものか、楽しみである。
2012.07.16
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タイトル通り、『涼宮ハルヒの驚愕(前)』の続編。 さらに言えば、『涼宮ハルヒの分裂』から始まったお話しの締めくくり。 それ故、第7章から始まって、第8章、第9章と進み、 最終章、そしてエピローグで幕を閉じている。 今巻においても、お話しは「α」と「β」という二つに分裂したまま展開。 しかし、第7章後半に至って、その分裂状態が崩れる前兆が。 それは「β-10」のお話しにおいて、スマイルマークみたいな髪留めをつけた キョンが見たこともない1年女子を、部室の中で目撃した時のこと。その時、その女生徒がこんな言葉を発する。 「間違えちゃったみたいです」(p.67)そして、第8章の段階では、まだ「α」と「β」とに分裂したまま、お話しは進むのだが、第9章に入ると、遂にその分裂状態が、解消に向け一気呵成に動き出す。この辺りは、これまでのシリーズの中でも、最高潮の盛り上がりを見せており、なかなか素晴らしい出来映え!その後、最終章、さらにエピローグへとお話しは続いていくが、やや冗長。最高に盛り上がった気分の後に、今は聞かなくてもよいお話しが少々長過ぎ、興醒め。第9章までのお話しに、必要最低限のお話しだけを補足して、今巻はスッキリ幕を閉じてしまった方が、心地よい読後感に浸れたのでは? ***実は、私は「涼宮ハルヒ」シリーズにおいては、先に「あとがき」を読んでから、本編を読んでいる。『涼宮ハルヒの分裂』には「あとがき」がなかったので、いきなり本編を読んだが、『涼宮ハルヒの驚愕』は、初回限定版を購入したので、先に「あとがき」を読むことが出来た。その中で、『涼宮ハルヒの驚愕』が、『涼宮ハルヒの分裂』出版後、随分長い時を経て出版されたことを知った。谷川さん自身も書いているように、本著は「ダイレクトな続き物」である。その出版が、こんなにも間が空いてしまったのは、本当は余程の事情があったとしか思えない。と言うか、よくぞ4年も経って、出版に漕ぎ着けることができたものだと思う。そして、これからも「涼宮ハルヒ」シリーズは、本当に続いていくのだろうか?『驚愕』出版後、1年以上を経た今でも、まだ文庫版は1冊も出版されていない。OFFICIAL FANBOOK『涼宮ハルヒの観測』を除いては。
2012.07.16
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本著は『涼宮ハルヒの分裂』の完全なる続編である。 それが証拠に、本著はいきなり第4章からスタート。 そして、前著第2章から分裂した「α」と「β」のお話しは、 本著においても、同時並行で進んでいく。 このように、複数のお話しが同時並行で展開される手法は、 村上さんの著作においても、しばしば見られる。 私が村上さんの作品で、最初に読んだ『海辺のカフカ』もそうだったし、 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)』等々、多数ある。そして、現実世界とは異なる空間に、主人公が迷い込んでいくのも共通点。閉鎖空間の「神人」に、私は『羊をめぐる冒険』の「羊」を連想してしまった。おそらく、これから読もうとしている『ハルキとハルヒ』にも、そんなことが書かれているのではないかと予想している。さて、「α」では、1年生の渡橋泰水(わたはしやすみ)がSOS団に入団を果たす。一方、「β」では、キョンと九曜、佐々木の二人の絡みをを中心に、お話しが展開。そして、第6章まで進んだところで、本巻は終了(もちろん「あとがき」はない)。この後は、『涼宮ハルヒの驚愕(後)』へと続くことになる。
2012.07.15
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「涼宮ハルヒ」シリーズ9作目となる本著は、 まるまる一冊表題作と言うだけに留まらず、 次巻への大いなる橋渡し役となる作品。 つまり、今巻は初めてお話が途中で終わり、「あとがき」がない。 まず最初は「プロローグ」と名付けられながら、100ページまで続くお話し。 キョンの中学生時代の親友(?)・佐々木が登場するのだが、 これも前巻の「ミヨキチ」同様、してやられたという感じ。 なるほどね……。そして第1章に入ると、この佐々木に加え、あの未来から来た嫌みな男と行動を共にしていた、古泉の組織と対抗する超能力者グループの一員・橘京子、さらに、有希とは似て非なる地球外生命体・周防九曜が登場。続く第2章からは、お話しが「α」と「β」に分裂し、同時並行で進んで行く。これは、第3章に入ってからも同様。「α」は、土曜の夜、正体不明の女性から電話がかかってきて始まり、「β」は、土曜の夜、佐々木から電話がかかってきて始まる。「α」は、日曜日、キョンは何事もなく、ダラダラと家で過ごし、月曜日、SOS団に男女約10名の入団希望新1年生がやって来る。「β」は、日曜日、キョンが、佐々木・橘・周防・藤原(未来人の男)に会い、月曜日、部室に行くと有希の姿がなく、SOS団はマンションへ向かう。さて、『ハルキとハルヒ』を読むために、読書を開始した「涼宮ハルヒ」シリーズだが、最初に購入した9冊は、これで読み終えてしまった。しかし、こんなお話の途中で、読むのを中断するわけにいくはずもなく、当然の流れてして、次巻『涼宮ハルヒの驚愕』を発注したのであった。
2012.07.15
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「涼宮ハルヒ」シリーズ8作目となる本著は、 初めて、二つの中編からなるという構成。 まず最初は「編集長★一直線!」。 有希が部長を務める文芸部の活動に、生徒会のメスが入る。 生徒会長は、文芸部無期限休部執行を一時凍結する条件として、 一週間以内に機関誌を200部発行して、渡り廊下設置のテーブル上に放置、 それらが、客寄せ・手渡し一切無しに全て持ち帰られるということを提示。 文芸部部室と予算確保のため、SOS団が活動を開始する。ハルヒの作ったくじ引きによって、キョンは恋愛小説、古泉はミステリー、朝比奈さんは童話、有希は幻想ホラーを執筆することになるが、何と言っても特筆ものは、キョンの恋愛小説。なるほどね……、ミヨキチ……、※印はそういう意味ですか。続く2話目は「ワンダリング・シャドウ」。キョンとハルヒの同級生である阪中が、SOS団に依頼をもってやって来た。それは、彼女の自宅近くにある、幽霊が出ると噂の場所の調査。まぁ、これも最後は、有希の力で解決されることになるわけだが。個人的には、「編集長★一直線!」は、かなり面白い出来映え、それに比べると、「ワンダリング・シャドウ」は、これまで読んだ中でも、かなり怠い作品だったように感じた。谷川さんも、少々お疲れ気味だったのか?
2012.07.15
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「涼宮ハルヒ」シリーズ7作目となる本著は、 前巻、前々巻のような短編の寄せ集めではなく、 まるまる一冊、表題作のみの一つのまとまったお話し。 さすがに、長編は読み応えがある。 プロローグは、例の12月18日のエピソードにケリをつけるお話し。 しかし、こうも現在と過去を往き来されまくると、 こちらの頭がこんがらがって、お話しについていけなくなってくる。 古泉の説明が始まると、もうウンザリという感じだ。にもかかわらず、第1章に入ると、節分の時期にまたもやタイムトラベルのお話し。8日後の未来からやって来た朝比奈さん、その依頼主は8日後のキョン。今現在の朝比奈さんに、8日後からやって来た朝比奈さん、そして大人の朝比奈さん。ややっこしいったら、ありゃあしない。でも、全ては大人の朝比奈さんによるミッションなのだ。過去の自分とキョンを動かし、起こるはずのことを起こるように仕向けていく。その任務を忠実にこなしながらも、当惑し続ける8日後から来た朝比奈さん。そして、彼女に協力することに何の疑問も抱かないキョン。今巻で目立ったのは、やはり何と言っても鶴屋さん。そして、組織のメンバー。中でも森さん。さらに、新登場の敵対組織(?)の嫌みな男。いよいよ、SOS団のライバルが登場し、お話しは新たな展開へ。
2012.07.08
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「涼宮ハルヒ」シリーズ6作目となる本著は、 「ザ・スニーカー」に掲載された4作品に、書き下ろし1作を加えた構成。 まず、最初の「ライブアライブ」は、あの文化祭当日の描写。 ハルヒと有希が代役でバンド演奏したお話し。 続く「朝比奈ミクルの冒険 Episode 00」も、あの文化祭ネタ。 SOS団が制作した映画の内容が、明らかになる。 そして、「ヒトメボレLOVER」は、アメフト観戦のお話し。 中学生時代のキョンの友人が、有希にヒトメボレしたのだが……。「猫はどこに行った?」は、今巻唯一の書き下ろし作品。『涼宮ハルヒの暴走』掲載の「雪山症候群」後に行われた、古泉主催推理ゲームの顛末。そして最後の「朝比奈みくるの憂鬱」は、次巻『涼宮ハルヒの陰謀』への橋渡し。朝比奈さんは、キョンを誘い、未来からのミッションを実行するのだが……。と言うわけで、今巻はほとんどまるごと一冊、これまでのエピソードを補うお話しと、これから始まるエピソードの前触れとなるお話しのオンパレード。まぁ、こういう巻もないと、前後がスムーズに繋がっていかないわけだが。
2012.07.08
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アズキュンのラジオ放送シーンは、なかなかの盛り上がり。 ネット掲示板のコマも、実に効果的。 さらに、公開オーディションへとなだれ込んでいく展開も very good!! ラストシーンに向け、一気呵成に攻めに攻めまくってます。 読む者の期待感を、否が応にも高める緊張の展開。 そして、いよいよ結果発表。 もちろん、その行方は誰もが十分予測できるものなのですが。 しかし、その後に待っていたシーンは、えっ…これだけ……ですか……なんとまぁ、あっさりとした、呆気ない結末。こういう結果に至った理由や背景等についての説明シーンは、一切無しですか?また、この結果が引き起こしたであろう、参加者たちの悲喜交々の描写も一切無しですか?そこまでが、右肩上がりの大盛り上がりだっただけに、かなり拍子抜けです。これは、このお話の最後の最後、エンディングについても同様。「決められたワクの中に収めなくてはならない」という制約があったのは分かりますが、それにしても「あまりにも勿体ない」と思ったのは、私だけではないでしょう。コミックス1巻分くらいかけて、もう少し丁寧にお話しを閉じて欲しかった。誰もが納得・満足できる形で、お話しを終わらせるのって、本当に難しいですね。でも、もちろん『バクマン。』は、とても面白い作品でした。大場・小畑コンビの次回作も、大いに期待しています。
2012.07.08
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伊坂さんのデビュー作。 現世とは隔絶した世界観、ファンタジックな色合い。 読み進めるうち、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を想起した。 そう、そこには村上ワールドと見まがう世界が横たわっていた。 ページを捲る手が止まらない。 流石に伊坂さん、デビュー作からこの出来映え。 様々な事件の謎は、読めども読めども見えてこない。 グイグイ引きこまれて、464ページをイッキ読みしてしまった。そして、ラスト。村上さんのような、読者を突き放し、迷い子にしてしまうような結末ではなかった。そう、「?」ではなかった。中途半端に、現実世界と不可思議な世界が結合してしまい、そこが、ある意味残念。伊坂さん自身の筆力は、このデビュー作を書いた頃に比べると、かなりレベルアップしているのが、よく分かった。ただ、このデビュー作の時点でも、十分その実力を垣間見ることは出来る。やはり、ただものではなかった。
2012.07.07
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読み物としては、たいへん面白かった。 ただし、本著は一般学生就活のためのマニュアル本には決してならない。 あくまでも、成毛眞を父に持ち、その人脈を様々な場面で活用出来る 慶應大学女学生の就活の一記録、特異ケースを紹介したものである。 それでも、親の世代の就活と、子の世代の就活が、 これほどまでに違うのかということを知るには、絶好の一冊である。 そういう意味では、これから就活に挑もうとする大学生は勿論だが、 その親御さんが読んでおくことの意味合いの方が、とても大きい。そして、読み進めていくと、キラリと光る言葉があちこちに見られる。これには「流石!」と感心させられた。 なんでもこなせるゼネラリストは、工場経営や会社経営などに向いているかもしれないが、 ここ一番で勝負できるほど何かに特化した能力があるわけではない。 「なんでもできる」は、「なんにもできない」と表裏一体なのである。(p.38)これは、私が自分自身について、最も危惧していることである。やはり、スペシャリストを目指すべきであったかと…… ところで、「あれ。営業って商品を売り込むことじゃないの?」と思う人もいるかもしれない。 そう、営業とは、相手を喜ばせて自分を好きになってもらう行為なのである。(p.50)これは、よく分かる。営業だけでなく、商売に留まらず、仕事というものは、須くそういうものである。 多くの若者は、「やりたい仕事がない」「自分に何が向いているのか分からない」と悲観している。 だが、それは当たり前の感覚だろう。 今、社会で働いている大勢の人もやりたい仕事をしているわけではないし、 その仕事が自分に向いているかどうかも分かっていない。 実際に働いていても、やりたい仕事など簡単に見つかるものではないのだ。 日々の糧を得るために働いているのであり、それがそもそもの労働の目的である。(p.57)本著における、著者から就活生に向けての、最大のメッセージではなかろうか。「労働」という言葉に、なぜか新鮮さを感じてしまった。 ビジネスも同じで、勝敗は半々である。 日々の交渉でも、プレゼンでも、半分は負ける。 負ける度に落ちこんでいたら、仕事にならない。(p.122)これは、私自身が、本著からもらった最大の贈り物。ちょっと元気が出た。
2012.07.07
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著者は『葬式は、要らない』の島田さん。 本著第7章にも記されているように、彼はオウム真理教関連でバッシングを受け、 大学教授の職も辞すなど、かなり苦難の道を歩んでこられた方。 しかし、最近は著作が話題となることが、かなり増えてきたように思う。 本著は「死」というものに対して、 あまり深刻になりすぎない程度に向き合うには、とても優れた一冊だと思う。 もっと深く、とことん正対したいなら、それに相応しい著作は他にあるだろうが、 私は、そこまで突き詰めていくだけの、強き心は持ち合わせていない。さて、序章の「死ぬのは怖い」や、第2章の「なぜ死は怖いのか」は、共感できる部分が多く、「死の恐怖の源泉」について、改めて考える良い機会となった。また、「現代における死」について、第1章の「私たちはなかなか死ななくなっている」や第3章「死に直面するとはどういうことなのか」、第4章「病から生き返る」で、知ることができた。さらに、第5章「老いることから見えてくるもの」や、第6章「死と親しむ日本人の文化」では、「死」について、仏教と儒教、インドと日本とで、随分捉え方が違うことが分かった。そして、最後の第7章「100歳を超えて生きるという目標」では、どんなに良い著作でも、最後を綺麗に整えきるのは大変難しい作業だと再認識させられた。
2012.07.07
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