2004年09月03日
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カテゴリ: 映画生活
次の仕事の打ち合わせまでに空き時間ができたので、久しぶりに映画を観に行こうと思った。観たい候補はいくつかあったのだが、限られた時間の中で唯一タイミングが合ったのが、是枝裕和監督 の『誰も知らない』だった。これは主演の少年役、柳楽優弥(やぎら・ゆうや)が今年のカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞をとったこともあって少し話題になった作品なのだが、いくつかの観たい映画候補の中では、できれば一番後回しにしたい作品だった。

なぜならこの映画は、1988年に東京の西巣鴨で実際に起こった事件 (巣鴨置き去り事件) をモチーフに作られた作品で、現実の事件の内容があまりに悲惨なので、果たして映画のあとで会社に戻り、普通に次の打ち合わせに望めるかどうか、自信があまりなかったからだ。けれど、何故かはよくわからないが、どうも観ないで通過するわけにはいかない作品の1つであるような気がしたので、ともかく観ることにした。映画館に入ると、座席数はさほど多くない劇場ではあったが、平日昼間の上映というのに、館内はほぼ満席だった。

映画の印象をひとことで言うなら、これはまるで、歪んだ「現代版・火垂の墓」だな、と思った。戦時下と現代、という背景の違いはあれど、自分たちの力では抗いようのない環境に翻弄され犠牲になる子供たちが、それでも本能的に生きようとする姿を描いている点で、両者はよく似ているなと思った。
そして作品の評価としては、予想以上に良い映画だった、というか・・・ヤラレました。
母親役のYOUの存在がまさにハマリ役で、子供たちの希望を優しく裏切っていく演技が秀逸だった一方で、子供たちの、言葉少なくほとんど素に近いと思える演技も、妙にリアリティを醸し出していた。それに加えて、要所要所で絶妙のタイミングで♪ポロンと入るゴンチチの切ないBGMに、何度も何度も涙腺緩めつつも耐えていたのだが、ラスト近くで、特徴的な声質で歌う「タテタカコ」の主題歌が流れた瞬間、もうダメだ。ついに場内の観客もろとも、思わず不覚にもズズズとすすり上げてしまった。子を持つ親としては、もう気持ちの逃げ場がないですよ。

社会的な重いテーマを扱いながらも、あくまでひとつの芸術作品としてキチンと昇華されており、事件のニュース性だけに決して頼らないクオリティの高さをキープしていたと思う。
特に子供特有の目線や表情、セリフのひとつひとつに、「あぁオレも子供の時って、こんな表情でこんな言い方をしたんだろうなぁ」と何度もドキリとさせられ、このカントクの「子供の感情」を再現する能力には感心させられた。それと、劇中、手や足だけのカットが何度か出てくるのだが、これがまたセリフ以上に感情や表情を表現するのに効果を上げていて、これまた感心。


テーマがテーマだけに誰もが評価する作品かどうかはわからないが、ワタシが観た劇場では、エンドロールが完全に流れ終り、場内が明るくなるまで誰一人として席をたたなかったのが印象的でした。

予告編ムービーは こちら 。公式サイトは こちら から。





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最終更新日  2005年08月26日 11時03分22秒
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