世界で一番愛する人と国際結婚

南に浮かぶ小さなお伽の島 -モルジブ- 5




飛行機に乗る24時間前はダイビングできないので、
首都マーレのある島へ観光にボートで渡った。



町のモスク、魚やフルーツの市場、恐らく世界最小であろう国立博物館を
見て周り、お土産物屋を覗き、島で唯一のアイスクリーム屋で
パフェを食べながら私達は短い思い出を語った。


あっという間に最終日は過ぎていった。


首都の島から、ボートが私達の島へ帰る途中、

ちょうど強烈な橙の太陽が海に沈む直前だった。



辺り一面を真っ赤に染めながら、

ゆっくりと、ゆっくりと

海に体を沈めていく巨大なオレンジの球形が、

目の前に迫っていた。



地球の半分をも包み込んでしまうような、光の威力だった。

最後のオレンジの光が水平線に消える直前、

真っ赤に燃える夕空に、

ジャンプしたイルカの黒いシルエットが、

一瞬浮かんで、消えた。




最後の赤い光が消えて紫に変わった時、ついに出発の時間がきた。



ここは南の、おとぎの島だったのだろうか。



空港に向うボートの中で、私達は終始無言だった。


あまりにも現実離れした、自分が日常住んでいる星と

同じ星上のものとはとても思えない美しいこの楽園で、

この世の誰よりも大事なこの人と、

同じ時を過ごした....



その喜びに、息もつけなくなるような感動を覚えた。


そしてこの瞬間がもう二度と戻らないという儚さも。



「It was like dreams.」



隣でようやく口を開いた彼も、どうやら同じことを考えていたらしい。


「I could have been here with you forever.
Thank you for sharing a wonderful time with me.
I'll never forget it.」


私も貴方となら、ずっとここにいたい。私も、一生忘れない。



日本に向う飛行機に乗る直前のタラップで、私達は同時に
島の方向へ振り返った。



2001年9月初旬、私達はモルジブを後にした。


大きな感動に、帰国後もしばらく私達は放心状態で何もてにつ
かずにいたほどだった。



終わり


エピローグ


日本帰国直後にNYのテロ事件発生。私達は現実に引き戻された。
私達はモルジブのことを思い出した。
何があろうと、あの島では、毎日同じ自然が優しく
繰り返されているのだろうかと。




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