キューバの暑い夜 6
宿でいつも一番早起きなのは私だった。元気な私は、起きてすぐ
朝食はいつも一人で食べた。
バナナ、パイナップル、パパイア、オレンジのフルーツの
盛り合わせと、野菜やハムの入った大きなオムレツ。
到着の2日後は、あや子ちゃんが一番楽しみにしていた、
サルサレッスンを予約していた日だった。
ところが、『さあレッスンへ』という時になると、
あや子ちゃんの様子がおかしい。立つ事もままならない。
約束の時間よりかなり遅れ、休み、休み、やっとの思いで
レッスン会場に到着した。先生は、男女ペアで来てくれていた。
2人の踊りを見ると、さすがにすっごく上手かった。
具合が悪くて、立っていられない程なのにレッスンを受ける
あや子ちゃんに感動した。
実は、私も少し具合が悪かったのだが、そんなあや子ちゃんに
心を打たれて、必死で踊った。
レッスンの後、タクシーに乗る事もできないあや子ちゃんの為に、
救急車を呼んでもらうが、来るのが明日になると言う。
そんな救急車あり？
結局、大きなタクシーを呼んでもらい、英語のできる医者のいる病院へ
向かった。
そして、深夜、宿に戻った。
実はわけあって、私達は泊まっていた宿を出て、別のペンションを
紹介されていた。
散々安宿に泊ってきたけど、ユースホステルを除いて、
そこは今までで最低かワースト2番目くらいの宿だった。
それまで泊まっていたペンションと、同じ値段とは思えない。
窓のない狭い部屋は、汚くて薄暗い。変な匂いがする。
スペイン語しか話せない、年取った老婆が一人で切り盛りしていて、
客は他にいなかった。
外に出入りする合鍵をくれないので、外出する時と戻ってきた時は、
イチイチベルで呼び出して、開けてもらわなければいけない。
朝ご飯は老婆と一緒の食卓で、コーヒーと乾パンのようなかちかちの
パンが数切れのみ。ジュースを頼んだら、お金を請求された。
あや子ちゃんは少し回復の兆しが見えたので、翌日もっと設備のいい
綺麗なホテルに移ることになった。
あや子ちゃんより早くキューバを発つことになっていた私は、
我慢してその宿に残ることにした。
私がキューバに魅力を感じていたのは、サルサのみならず、
その政治、歴史、文化。アルネスト（チェ・ゲバラ）に会わずして、
このまま帰るわけにもいかない。
あや子ちゃんを綺麗なホテルに見送った後、私はすぐにタクシーを
拾い、一人で出かけた。
つづく
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