世界で一番愛する人と国際結婚

キューバの暑い夜　8

夕方ハバナを発ち、メキシコシティを出て、夜にはLAに
到着するはずだった。

ところが、LA行きのフライトの10分前、待てどくらせど
アナウンスも搭乗の案内の様子もない。

すると、なんとゲートが変更になっていた。

メキシコシティの空港は、広い広い。走って走って、
ゲートに滑り込むと、ゲートの前で何故か係員に止められてしまう。

止められた人が合計11人。

一体何が起こっているのかさっぱり分からない。

しばらく待たされた後、

止められた人達の名前が、一人一人呼ばれていく。

最後の2人になった。私の名前はまだ呼ばれていない。

そして最後に呼ばれたのは、メキシコ人の男性の名前だった。

その男性のチケットの半券を切り、彼が中に入ったのを見届けると、
スタッフ達はドアを閉め、ペラペラおしゃべりをしながら
その場を立ち去ろうとした。

何、これはゲーム？

私は立ち去る係員を呼びとめ、一体どういうことか尋ねた。

すると、飛行機がオーバーブッキングで、席が全く
空いていないのだと言う。明日の朝一番のフライトで
飛んでくれと言うのだ。

何ですって？私のチケットは、ノーマルの高いチケットで、
3ヶ月も前から予約を入れてある。年末だから、それしか買え
なかったのだ。

それよりも、一番むかついたのが彼らの態度。何の説明もなく、
ぺらぺらお喋りをしながら、私から聞かないと置き去りにされる
ところだった。

私は激怒しながら、空港のオフィスから国際電話をかけさせた。
私を迎えに、既にLAXに向っているブランの携帯に電話をし、
事情を話して家に戻ってもらった。

その後、9時過ぎに航空会社の用意した、かなり高級なホテルに
チェックインした。

久しぶりに熱い、勢いのいいシャワーを浴びて、少しは
怒りもおさまった。

だが、スーツケースだけは、もう先に行ってしまっている。
着替えもなければ、基礎化粧品も何もない。

そうだ、お化粧品を買いにいかなきゃ。
ついでにメキシコ料理を食べて、買物がてら街をぶらぶらしよう。

転んでもただじゃ起きない私は、両替したペソの札をつかんで、
タクシーに飛び乗った。

早速メキシコシティを見物して、買い物をした。

『こうなったら、メキシコシティのクラブにでも行ってやる。』

だが、時計を見るともう真夜中だった。

おまけに最後に乗ったタクシーのおじさんが、超がつくおせっかいで、
心配だからと言って、クラブまでついてくるというのだ。

最初はお金目当て？と思ったが、本当に心配してくれていた。
どうやら私のことを、20歳くらいの小娘だと思ってくれたようだ。

どちらにしろ、翌朝5時起きじゃないと飛行機に間に合わない。
私は、クラブは諦めてホテルに戻った。

疲れがたまり、さすがに怒りもすっかり静まっていた。

つづく

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