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公約通りにウクライナ停戦に乗り出したトランプ大統領の強引なやり方について、毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏氏は、15日付け同紙コラムに、次のよう書いている; ウクライナ停戦の成り行きに困惑する人が少なくない。 法の支配と民主主義を守るべき我が同盟国アメリカが、「善なる被害国」ウクライナに言うことを聞かせ、「悪の侵略国」ロシアと拙速に不公正な取引をしようとしているのではないか。 国際政治学者も「大義なき和平は危険」「ロシアを勝者にしてはならない」と安易な停戦に警告する。正義のためには更なる死者もいとうなというわけだ。 アメリカをどう理解するか。孤立主義が建国以来の外交的伝統なのは知られているが、それは同時に国益のためなら、国際社会の勢力均衡を最重視する現実主義外交の歴史でもあった。 19世紀の米英対立時代、大衆民主主義国アメリカは、当時最も専制的かつ非民主的なロマノフ王朝のロシアと友好的だった。 ロシア対オスマン帝国・英仏など連合軍のクリミア戦争(1853~56年)で、アメリカは敗れたロシアのため調停に乗り出そうとしたし、南北戦争(61~65年)でロシアは終始北軍を支持。ロシアのアラスカ売却(67年)もこうした関係で実現した。 20世紀にウィルソン大統領が国際主義へかじを切り、民主主義を外交の柱に据えたが、ルーズベルト大統領は1933年にナチス政権ができると、国務省の反対を押し切ってソ連と外交関係を結び、それが第二次大戦勝利と戦後冷戦体制の布石となった。 孤立主義・国際主義の底流に、大国で国際社会を仕切る行動原理が貫かれている。トランプ外交は決してとっぴとは言えない。 そこには大国が、モノ・ヒト・カネ・情報を世界中に循環させ、軍事力と法体系を駆使し、中小国を「半植民地」化する「非公式な帝国」主義の影が見える。 帝国主義は第二次大戦後、アメリカ中心の新国際秩序である国連創設と60年代植民地独立を経て終わった。教科書でそう習う。 だが英出身の歴史家、マーク・マゾワー著「国連と帝国」は、第一次大戦後の帝国再編論を下敷きに、第二次大戦後も強大国が共存共栄する「帝国主義インターナショナリズム」を温存するために国連が作られたと暴いた。 戦後日本は第二次大戦を「悪が敗れ、善が勝った良い戦争」と記憶し、敗戦を世界の仕切り直しと理想化した。米民主主義や国連体制に幻想を膨らませ、戦争責任、植民地支配、民衆の軍国主義賛美にほおかむりしてきた。 ウクライナ停戦をどう見るか。それぞれの戦後80年との向き合い方次第だろう。(専門編集委員)2025年3月15日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-非公式の帝国主義」から引用 トランプ大統領の強引なやり方に違和感を覚える人は少なくないと思いますが、この記事の冒頭に紹介されている国際政治学者の「大義なき和平は危険」「ロシアを勝者にしてはならない」という発言も、学者の発言としてはかなり不正確な発言に思います。ウクライナ戦争は、ロシアが勝手に領土拡張の野望に突き動かされて始まった戦争ではなく、アメリカのカネと西欧の軍事力でNATOの勢力圏を東方に拡大してロシアを包囲しようというアメリカ帝国主義の手先としての道を選択したゼレンスキー政権の方針が誘発した「戦争」であるという視点を、私たちは見失うべきではないと思います。したがって、ロシア包囲作戦の「黒幕」であるアメリカ帝国主義の「親分」がバイデンからトランプに代わって、その新しい「親分」が、もうその「作戦」は終わりだと言ってるのだから、本来であればトランプ氏は「今までアメリカがやってきたロシア包囲作戦は、もう止める」とはっきり宣言すれば、ゼレンスキー氏も己の過ちを反省することが出来るし、世界も納得することが出来ます。しかし、それは「今までアメリカは、影に日に帝国主義的策謀をやってきた」という、「隠し事」を暴露することになるため、さすがのトランプ氏もそこまでの覚悟はないと言うのは残念なことです。
2025年03月31日
神奈川県川崎市にある社会福祉法人は、経営者の親がかつて川崎市の助役をしていた関係で市の幹部(?)と知り合いのような間柄となり、そのような間柄を利用して過去20年間に8億数千万円を私的に流用していたという問題が発覚した。この問題について、川崎市はどのように対応しているのか、15日の東京新聞は次のよう報道している; 社会福祉法人「母子育成会」(川崎市川崎区)の深瀬亮一元理事長(68)が20年以上にわたり計8億4690万円を私的流用していた問題で、市は14日、同法人に対する監査について「法人の経営状況が危機的にもかかわらず、特別監査への切り替えや改善勧告以上の検討に至らなかった」などとする検証報告書を公表し、市議会健康福祉委員会に報告した。市議からは「法人と福田紀彦市長の関係に触れていない」「薄っぺらい内容」といった指摘が相次いだ。(北條香子) 検証は、深瀬氏の父の故・幹男氏が市の元助役だったためずさんな監査につなかったのではないかと市議会で指摘されたことを受け、市が昨年9月に開始。弁護士ら外部有識者3人も参加し、監査の適正性のほか、市役所OBの同法人役員への就任状況、市有地の無償貸し付けの実態の3点について調査した。深瀬氏本人は聞き取り対象とせず、監査時に法人が用意した資料は、警察に渡っていて検証できなかったという。 報告書によると、市は、県から監査権限が移された当初から法人の経営状況が厳しいと認識したものの、十分な指導や助言などを行っていなかった。その理由として「厚生労働省の指導監査ガイドラインの項目を確認することにとらわれていた」とした。監査の適正性を巡っては計11項目にわたって課題を挙げており、石渡一城健康福祉局長は「形式的な監査になっていたことは否めない。恥ずかしい11項目だが、ここからスタートを切りたい」と述べた。 市の元局長や区長ら5人が、退職後3年以上たってから法人の役員に就任していた点も検証。しかし、5人は聞き取り対象とはせず、市担当者や法人職員から聞き取った結果として「市OBから監査への働きかけや圧力はなく、無意識の忖度といった不適切な対応は確認できなかった」と結論づけた。 また、同法人に対する市有地4ヵ所の無償貸し付けは「法令に基づき適正に手続きしている」とした一方、社会福祉事業に対する市有地の貸し付けのあり方を今後、検討するとした。 委員会は約5時間に及び、複数の市議が「全容が解明されていない」「突っ込んだヒアリングがされていない」などとしてさらなる調査を求めた。健康福祉局の担当者は「警察による真相究明を願っている。今回はあくまで行政としての監査事務のあり方の検証で、その目的は達成された」と繰り返した。2025年3月15日 東京新聞朝刊 17ページ 「監査、形式的で機能せず」から引用 川崎市といえば、在日朝鮮人を標的にした「ヘイトスピーチ」を禁止するために罰則付きの「ヘイトスピーチ禁止条例」を制定した日本で唯一の先進的な自治体というイメージがあるのだが、一皮むくとこういう「実態」もあったとは驚きである。しかも、この疑惑が発覚したというのに、市の対応は第三者委員会の設置ではなく、市の職員が独自に調査したもののようで、そこには何やら同僚同士の遠慮や暗黙の了解(?)のようなものが存在したらしく、釈然としない曖昧な調査結果となった模様である。いずれにしても、警察の捜査も入っているらしい記述もあるので、やがてははっきりした事実が明らかになるものと思われます。
2025年03月30日
裏金や企業献金の是非が問題となっている自民党に、今度は「10万円商品券」問題が発覚し、連立政権を組む公明党の代表も「耳を疑った」と発言する事態となったことを、15日の東京新聞は次のよう報道している; 企業・団体献金の存廃など「政治とカネ」が少数与党国会で焦点となる中、新たに発覚した石破茂首相の自民党議員への商品券配布問題。専門家から政治資金規正法に抵触する恐れも指摘され、公明党の斉藤鉄夫代表ですら「耳を疑った」と国民の感覚からかけ離れた金権政治の体質に驚く。首相周辺は歴代政権の慣習に従っただけと擁護するが、与党からも対応を問題視する声が絶えない。(長崎高大、我那覇圭)◆◆首相周辺「慣習に従っただけ」◆◆◆土 産 「自民党はお土産に10万円が飛び交う世界なのか」。立憲民主党の岸真紀子氏が14日の参院予算委員会でそう追及したのに対し、首相は「私も若い頃、いただいたことはあるが、手元に残ったものは全くない」と答弁し、昔から慣習であることを認めつつ、問題はないとの認識を繰り返した。 首相は商品券を10回程度、配ったと説明。10万円の商品券のお土産について、首相周辺も「多いとは思う」としながらも「慣例があって、首相はそれに従ったに過ぎなかったのではないか」と釈明した。ある自民関係者は、歴代政権でもあったと明かした上で「もうそういう時代じゃないということを首相は分かっていない」と苦言を呈した。 自民の派閥裏金事件を受け、政治とカネの問題と政治への信頼回復が問われる中で浮上した商品券配布問題。後ろめたい不透明なカネと感じたのか、1期生は相次いで返却した。会食に参加した議員は「党からしゃべるなと指示が来ている」と打ち明け、今回も党として説明責任を果たそうとする姿勢は乏しい。 自民の坂本哲志国対委員長は「軽率だった」と述べ、石井準一参院国対委員長は「道義的にはいろいろ問題が出てくる」と語った。◆疑 問 政治資金規正法では、政治家の政治活動に関して寄付をしてはならないと定めているが、首相は13日夜、公邸前で、個人による政治家への寄付禁止に触れないのか質問した記者に対して「どの条文を言っているのか」と逆質問。「会食は政治活動ではない」との解釈を示して違法性を否定するが、専門家はその主張に疑問を投げかける。 日本大の岩井奉信名誉教授は「商品券は現金と同じで、若手議員に渡った以上は規正法の対象となる。政治活動ではないという言い訳がまかり通ると、法律の意味がなくなる」と指摘。その上で「商品券を返却した若手議員の方が、厳しい状況を理解している。10万円の商品券をお土産とするのは社会通念からかけ離れている」と批判する。 神戸学院大の上脇博之教授は、商品券を渡したのは議員の家族への慰労目的で政治活動ではないとする首相について「公邸で政策の話をしていれば政治活動だ。プライベートで家族の話をしたというのとは全然違う。脱法的な行為で、規正法に抵触する可能性は高い」と強調。党内基盤の弱い首相が「若手の支持を得ようと実質的に『裏金』を渡したのと一緒」と断じた。2025年3月15日 東京新聞朝刊 12版 2ページ 「核心-法抵触の可能性拭えず」から引用 石破首相が自民党の新人議員を集めて会食をして、参加した議員に1人10万円ずつ商品券を配ったというニュースが流れたときは、「そんなことは、岸田政権や菅政権でもあったのではないか」などと言われたのであったが、その後、実は田中角栄政権の頃から始まっていたことが明らかになって、実に自民党は金権政治にまみれた政党であることが明らかになっている。新人議員を集めて会食をしたが、政策の話は一切していないから「政治活動」ではない、という釈明は通らないと思います。政党の党首が、新人議員に集合命令を出した時点で、それは政党の活動であり、食事をすることが目的だったから、と言っても、その党首の「指示」にうっかり背いたりするとその後の党内での処遇が不利になったりする懸念があれば、どの議員もそれなりに都合をつけて参加するのであるから、政治活動の一端であると言える。そのような状況で「これは、危ないカネだ」と判断して返却した新人議員の判断は正しいものであり、そういう議員が増えれば、自民党内も正常化する希望が見えるというものであるが、時間が経つに連れて旧弊になじんでいくのでは、という心配もあり、この問題にははっきりした「結論」を出すべきだと思います。
2025年03月29日

今から20年前の小泉内閣では、女性でも天皇になれるように皇室典範を改正するべきとの結論を出しているが、その後の安倍内閣ではあの有名な右翼の上智大学教授(今は故人)が「女系天皇を認めると結婚相手に朝鮮人が紛れ込んでくる危険がある」などとワケの分からないことを盛んに言いふらして、結局、皇室典範はいまだに改正されず、天皇の甥に当たる男子が今年、筑波大学に進学する予定で、彼が次の天皇になれば、取りあえずは皇室典範は今のままでも通用するが、一人しかいない男子が、もしかしたら諸般の事情で「自分は結婚はしたくない」などと言い出さないとも限らないのが現代であるから、いずれ将来は皇室典範の改正が必要となる時代は来るはずです。そのような社会状況に相応しい本が、中公新書から出版されて、日本大学教授の古川隆久氏が、9日の神奈川新聞に明快な書評を書いている; 皇室典範とは皇位継承や皇族の範囲を定めた法律である。皇室典範を知らずして近年話題の女性天皇・女系天皇の問題を考えることはできない。 1889(明治22)年、天皇主権の大日本帝国憲法制定と同時に、議会が関与できない皇室独自の規定として皇室典範が制定された際、なぜ男系男子の皇位相続が明文化されたのか。1947(昭和22年、国民主権の日本国憲法が制定され、国会で制定・改正できる法律として皇室典範が生まれ変わった後も、なぜ男系男子相続が維持されてきたのか。 著者は天皇に関する歴史を長年研究してきた実績を踏まえ、これらの問いについて実証的に説明し、今後どうすべきかを提言している。 著者の主張は明快だ。戦前の皇室典範が男子の庶子の皇位継承を認めていたように、男系男子相続は側室制度なしでは継続が難しい。いまさら側室制度は認められない以上、男系男子相続のままでは早晩皇位継承者はいなくなる。日本国憲法第2条に皇位は世襲と規定されているが、一般論として「世襲」は男系女系を問わないので、女系天皇を認めても「違憲」にはならない。だから女系天皇を認めるよう皇室典範を改正する他はない。 評者も著者の提言に賛成だ。というより、天皇制を続けたいなら他に方法はない。これは地球には重力があるのと同じくらいの「真理」である。 実際、2005年の小泉純一郎内閣時の有識者会議は女系天皇容認を打ち出している。世論調査でも女系天皇容認派が過半数を占める。奇妙なのは、天皇制の維持を最も求めるはずの保守派が男系男子相続にこだわったり、旧皇族の皇籍復帰など中途半端な方策を検討したりしていることだ。 本書の最大の特徴は、男系男子の皇位相続、女系天皇反対という主張が、何を理由として掲げてきたかを一望できることである。本書を手がかりに、そうした主張の背景にあるものを見据え、皇室の今後について早急に考えていく必要がある。(日本大教授・古川隆久)◆笠原英彦著「皇室典範」(中公新書)990円2025年3月9日 神奈川新聞朝刊 14ページ 「読書-相続、主張や背景一望」から引用 人々が文字を知らなかったような大昔に、人間が田畑を耕して食料を得て平和に暮らすためには、大勢の人間を統率するリーダーが必要で、そのリーダーは大勢の人間を統率するに相応しい「権威」を必要とするため、血統とか容姿とか、様々な「装飾」が必要であったが、人権思想が普及して「平等」という考え方が人々に支持される時代には、特定の「家族」を「国家の象徴」にするという発想は、次第に人々の支持を失っていくのが私たちの社会の将来の姿だと思いますが、まだしばらくは日本の場合、皇室の人気は続きそうに見えますから、現代に相応しい皇室典範の改正は、避けて通れないものと思います。
2025年03月28日
一度は「廃止」を決めた自民党の裏金環流を誰が「再開」指示したのか、衆議院の予算委員会は安倍派の元会計責任者を参考人招致して問いただしたが、肝心なことは何も聞き出せずに終わったことについて、ジャーナリストの沢木啓三氏は9日の「しんぶん赤旗」コラムに、次のよう書いている; 衆院予算委員会理事会は2月27日朝、自民党裏金事件をめぐり、旧安倍派の元会計責任者だった松本淳一郎氏を聴取しました。聴取は東京都内のホテルに理事らが出向き、報道陣には非公開で実施されました。裏金問題を最も追及してきた日本共産党は、予算委の理事でないことから傍聴のみで、質問ができませんでした。 聴取について、同日の夜の二ユースでは、NHK「ニュースウオッチ9」やテレビ朝日系「報道ステーション」で詳しく報じていました。「報道ステーション」の大越健介キャスターは、裏金の還流を再開させた当時の安倍派幹部4人の政治責任を指摘していました。 この4人のうち誰が還流再開を指示したのかについて、松本氏は聴取で明らかにしなかったということでした。「朝日」28日付は、東京地検特搜部の任意聴取に対する松本氏の供述の中で、還流の再開を求めた幹部として下村博文・元文部科学相の名前を挙げていたことをスクープしています。 還流再開を誰がどのように決定したのか、4人の政治家および松本氏の証言には食い違いがあります。「毎日」28日付の社説は「疑問を残したままにはできない。元幹部らを国会に招致するほかない。偽証罪が適用される証人喚問とすべきだ」としています。同様に証人喚問を求める社説は、東京新聞や信濃毎日新聞、西日本新聞など、地方紙でも広がっています。 自民党はこれ以上の調査を拒否しています。3月2日放送のTBS系「サンデーモーニング」では、コメンテーターの安田菜津紀さんが「うやむやにしてはばからない党や政治家に、今後の責任ある意思決定ができるとは到底思えない」と厳しく批判しました。裏金問題の解明なくして国民の政治への信頼回復はありえません。メディアのさらなる追及を期待します。(さわき・けいぞう=ジャーナリスト)2025年3月9日16日合併号 「しんぶん赤旗」 日曜版 35ページ 「メディアをよむ-裏金還流再開の解明必要」から引用 旧安倍派の元会計責任者だった松本淳一郎氏の事情聴取はホテルの一室で、マスコミは入れず、共産党議員には質問もさせないという不完全な茶番劇であったため、質問もそれに対する応答も何一つ真実を明らかにするものではなく、形だけ「参考人から話を聞きました」という格好にしただけです。これでは何も分からないのは当たり前で、やはり真実の究明には証言者に「真実」を語らせなければなりません。そのためには単なる「参考人招致」ではなく、虚偽発言には罰則がある「証人喚問」をするべきであり、それによって始めて、自民党内でどのような「カネの流れ」があったのか、責任者は誰なのかが明確になり、再発防止のためには、責任者にどのような「償い」をさせるべきかという有意義な議論へと進んで行けるのだと思います。
2025年03月27日
自民党は過半数を割って少数与党となったため、新年度予算案について国会で承認を得るためにいずれかの野党の協力を得る必要があるのだが、結局、いちばん体質の似通った維新の会を味方に引き入れることになった。維新を味方にして修正した予算案について、元文科官僚の前川喜平氏は9日の東京新聞コラムに、次のよう書いている: 2025年度予算案が修正され、日本維新の会の賛成を得て衆議院を通過した。高校生への就学支援金は、民主党政権時代と同様に所得制限をなくし、私立高校生に対する支給上限額は一律45万7千円とすることになった。例えば4人家族で年収1千万円の世帯に私立高校に通う生徒がいるとして、その年間授業料が50万円だとすると、現在は所得制限に該当するので全額が家計の負担だが、26年度からは4万3千円の負担で済むことになる。一方、年収200万円の世帯の公立高校生はこれまでも全額無償だったから変化はない。高校無償化に関する限り、この予算修正は富裕層に有利に働き、格差を広げるということは知っておく必要がある。 修正予算案に賛成しなかった国民民主党は、103万円の「壁」を一律178万円に引き上げる減税策にこだわり続けているが、これも富裕層により有利に働く政策だ。格差を広げる政策に多くの国民が賛成するのは、その中身を十分理解していないからではないか? 高額療養費の自己負担上限額の引き上げが凍結されたのは結構なことだが、第1、第2、第3野党はいずれも防衛予算に切り込もうとしない。防衛費の無駄を削って教育、福祉、医療、生活インフラ整備、被災者支援などに回すという修正案がなぜ出てこないのだ? トランプが怖いのか?(現代教育行政研究会代表)2025年3月9日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「本音のコラム-これでいいのか予算修正」から引用 この記事が指摘するように、自公政権と維新の会で合意した「高校無償化」は、低所得層の負担を軽減するためではなく、富裕層の重くも無い「負担」を一層軽減することになるもので、おそらく維新の会としては、自民党が選びやすい内容であることを意図して打ち出した「作戦」であり、はなから低所得層支援などは眼中になかった、というのが真相であろうと思います。 この記事の筆者が指摘しているもう一つのポイントは、国民民衆党の103万円の「壁」を178万円に引き上げる「案」について、これも実は富裕層に有利に作用する「政策」になり、貧富の格差をより広げるものであるにも関わらず、前回の総選挙で国民民主党が議席を大幅に増やしたのは、有権者が中身を十分に理解はせず、ただ「手取りを増やす」というスローガンに反射的に反応しただけだったということです。野党というのは、目立つスローガンで票を集めるのではなく、有権者に対して「与党の政治がなぜ国民一般の生活向上を実現できないのか」「大多数の国民の生活レベル向上には、どのような政策が必要か」という説明をして、民意を喚起するのが仕事のはずですが、そのような「正道」を実践しているのは日本共産党だけであり、他の野党は自民党並みに庶民を見下しているか、派手な言動で人目を集めるようなことしかしていないのは、大変残念なことと思います。
2025年03月26日
政府与党は来年度予算を年度内に成立させるために維新の会が主張する「高校授業料の無償化」を受け入れることになったが、その無償化の対象に朝鮮学校が入っていないことを問題視した学者のグループが、政府に対して「朝鮮学校排除を是正するように」求める声明を発表したと、7日の「週刊金曜日」が報道している;「自民、公明と日本維新の会の3党が高校授業料の無償化で合意。2025年度予算案は維新の修正を受け入れて成立の見通し」との報に、朝鮮学校が排除されたままであるとして「教育の機会均等との看板を掲げながら、朝鮮の子どもたちをいつまで差別し続けるのか」と歴史学者や教育学者、市民活動家らが2月28月に国会内で緊急の会見を開き、抗議し是正を求める声明を発表した。 田中宏(たなかひろし)・一橋大学名誉教授(アジア関係史)や和田春樹(わだはるき)・東京大学名誉教授(ロシア史)の呼びかけに、フェミニズム社会学者の上野千鶴子(うえのちずこ)氏や元文部科学事務次官の前川喜平(まえかわきへい)氏、月刊誌『世界』元編集長の岡本厚(おかもとあつし)氏、弁護士の内田雅敏(うちだまさとし)氏らが賛同署名し、今後は政府や各政党に申し入れしていく。「朝鮮高校排除を改めて憂う」と題した声明では、民主党政権下の2010年4月に高校無償化制度が発足したときは「後期中等教育をうける生徒に授業料を給付する」として「普通学校に限られず、専修学校、外国人学校をも対象とする画期的なもの」だったと評価。外国人学校については、(1)本国の高校に相当するもの(2)国際教育評価機関の認定するもの(3)その他文部科学大臣が「高校に類する課程」と指定したものに分類され、朝鮮学校は(3)に指定されて審査中の10年11月、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による韓国・延坪島(ヨンビョンド)砲撃事件が起きると、当時の菅直人首相が審査凍結を指示。同首相は11年8月の退陣を前に凍結解除を指示したが、その後審査は進まず、12年12月の安倍晋三政権で下村博文・文部科学相が「拉致問題に進展がない。朝鮮学校は朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)の影響下にある」などを理由にし、先述の(3)を文科省令から削除し、朝鮮高校を「不指定」に―――などの政治的経緯を説明している。 この差別的措置については学校関係者から抗議や是正を求める運動が続いているだけでなく、国連・人権機関からの「(拉致問題は)生徒と関係ない」「教育を受ける権利の侵害」などとする是正勧告も出た。声明は「幼稚園から大学校まで在日朝鮮人の教育機関すべてが教育支援措置の対象外とされていること」を見直し、「対象に加えること」を求めている。◆「法治国家としての恥」 記者会見では、国際紛争の現場で軍閥の武装解除の指揮経験もある平和学者の伊勢崎賢治(いせざきけんじ)・東京外国語大学名誉教授が「この問題に関しては新参だが……」と言いつつ「子どもに罪はない。それに尽きる」として、法的に解説した。「国家が特定の教育機関に介入する場合、ある教育政策から朝鮮学校を排除するならば国際法・国内法に準拠するのは当然。前者は国連憲章や国際人道法、ジュネーブ条約を中心とした国際人権法。後者は教育基本法の『不当な支配に服することなく』など」と説明。「国家の安全保障や外交方針に与える影響が朝鮮学校の教育内容に本当にあるのか? 十分な検証と証拠の積み上げが必要だ。カリキュラム全般、校則、教職員採用基準、入学基準、そして教師の評価基準、広範にわたって客観的に透明性のある評価を十分時間をかけてすべきなのは当然だが、朝鮮学校に関して行なわれた形跡はない。朝鮮学校に対する公的支援の排除は、時期的にも政治的な背景や国際情勢に基づき、特に拉致問題に関しては膝蓋腱反射的に世論形成に象徴的影響を与えてきた」 そう述べた上で、日本社会では「朝鮮半島の緊張が朝鮮学校の子どもたちを”日本の脅威”と見なすような世論を形成し、時には物理的なハラスメントも生んできた。法治国家として恥ずかしい」と嘆いた。 田中氏は、記録映画『ウリハッキョ』を撮った韓国の映画監督の言葉として「在日朝鮮人の子どもにとって自分が誰であるか、この地で朝鮮人として生きていく方法を学べる唯一の場が朝鮮学校です」との証言を紹介。「そういう切り口が大事じゃないか」と述べた。全国の朝鮮学校では、経済的に通えなくなる生徒児童が増えている。<本田雅和・編集部>2025年3月7日 「週刊金曜日」 1511号 7ページ 「今週の巻頭トピック-『朝鮮の子ども排斥続けるな!』」から引用 この度、学者や市民活動家の人たちが声明したように、法治国家である日本において特定の外国人学校を支援対象から外すという差別政策は、あってはならない事態であると言えます。15年も前の砲撃事件とか、拉致問題とか、日本で生まれて日本で生活している朝鮮人の人々には何の責任もありません。それを国名が同じだからといって差別するというのは、まるでできの悪い中学生が思いつくようなレベルの言い掛かりであって、実に「恥ずかしい」話です。愚かな「弱い者差別」をすぐに止めるように、大新聞も取り上げて、まともな社会へ軌道修正するべきだと思います。
2025年03月25日
アメリカのトランプ大統領は以前からの持論で、日米安保条約に不満を持っており、今月に入っても苦言を呈したと8日の毎日新聞が報道している; トランプ米大統領は6日、日米安全保障条約について「米国は日本を防衛しなければならないが、日本は米国を防衛する必要はない。いったい誰がそうした条約を結んだのだ」と不満を示した。相手国の防衛義務を米国だけが負う規定が「不公平だ」という1期目からの持論に変化がないことが示された。 1960年に改定された日米安保条約では、米国は日本の防衛義務を負い、日本は米軍に対する基地提供などの義務を負う。 トランプ氏はホワイトハウスで記者団の取材に応じた際、欧州各国などと構成する北大西洋条約機構(NATO)を巡って「加盟国が(米国が求める水準の)国防費を払わなければ、米国が防衛しないという政策をとるのか」と質問を受けた。 トランプ氏は「それは常識だ。彼らが支払わなければ、私は防衛しない」と回答。フランスを例に挙げて「NATOを巡る最も大きな問題は『米国が困難な状況になり、助けを求めた時、彼ら(他の加盟国)が来て守ってくれるのか』ということだ。彼らは守ることになっているが、私にはそこまでの確証はない」と不信感を表した。 続けて「日本とも興味深い取引(日米安保条約)をした。私は日本を愛し、すばらしい関係にある。ただ、米国は日本を守らなければならないが、日本はどんな状況になっても米国を守る必要はないのだ」と述べた。 日米安保条約を巡っては、石破茂首相も就任前に米国の保守系シンクタンク「ハドソン研究所」への寄稿で「非対称双務条約」と表現し、「改める時は熟した」と指摘。相互に防衛義務を負うべきだと示唆し、自衛隊を米領グアムに駐留させる構想も披露していた。【ワシントン秋山信一】2025年3月8日 毎日新聞朝刊 14版 2ページ 「日米安保に再び不満」から引用 トランプ大統領は不動産屋としては一流でも、政治家としてはずぶの素人なので、アメリカが日本を防衛する義務を負うのに日本はアメリカを防衛する義務を負わないのはおかしい、誰がそんな条約を結んだのか、と発言したらしいが、そんなことはホワイトハウスの文書部に内線電話をかければすぐ分かることなのに、大統領が素人だと取り巻きの秘書官も素人揃いと見えて、誰も調べようとはしないようである。日米安保条約は、当時の世界に東西冷戦というものがあって、うっかりするとソ連や朝鮮民主主義人民共和国が日本を武力侵攻する危険があると、アメリカ政府が考えて、しかし、一方では日本国憲法は平和主義の立場から国に戦争をする権利を認めないと規定しているため、アメリカ軍が日本を防衛するから、その代償として、米軍が基地として使用する土地は日本が無償で提供するという条件付きで締結された条約であり、トランプ氏が言うような「不公平な条約」ではなかったものです。しかし、その後時代は流れて、東西冷戦は無くなったので、現在は日米安保条約は不要になりました。トランプ氏が、その「用が無くなった条約」が不満であるというのなら、日本もいつまでも惰性で米軍基地を継続するよりは、用無しの条約は双方合意の上で廃棄することとし、早急に米軍に撤退してもらうのが日米双方にとって有益であると言えます。また、中国や朝鮮民主主義人民共和国にとっても、目障りな軍事基地がなくなることは、極東アジアに平和をもたらすという意味で意義あることと思います。さらに、万が一台湾有事があったとしても、米軍基地が無くなれば、日本がその「有事」に巻き込まれることもなく、中国の内政問題に余分な口を差し挟むこともなくなり、万事うまく収まるものと思われます。 ところで、この記事の末尾に書いてる石破首相の発言は問題です。石破氏もやはり、世襲の政治家として弱点を抱えており、アメリカと日本が相互に防衛義務を負うなどと寝ぼけたような発言をするのは、とんでもない了見違いというものです。いやしくも首相の座にあるものは、たまには日本国憲法を勉強してみる必要があります。わが国憲法は、必要最小限の防衛力を保持することは認めても、他国を防衛するために戦争をすることを固く禁じているということを、首相側近の誰かが助言してあげるべきだと思います。
2025年03月24日
ホワイトハウスを訪れたウクライナ・ゼレンスキー大統領がトランプ大統領と口論の挙げ句、けんか別れとなった一件は、世界を唖然とさせたのであったが、その前日、東京ではウクライナに対するロシアの侵攻が始まる前から昨年秋までの期間、ウクライナ大使を務めた松田邦紀氏が記者会見を開いて、ウクライナの「停戦」への協議はトランプ氏がウクライナに押しつけているわけではなく、実はゼレンスキー大統領側から始まった話なのだという経緯を語ったのであった。毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏がその内容を8日の同紙コラムに書いている; ホワイトハウスでの大げんかは世界を驚かせた。停戦への一歩かと期待された米国のトランプ、ウクライナのゼレンスキー両大統領の会談は決裂し、米国は軍事支援を停止。応酬は今も続く。 一方でトランプ氏は、ゼレンスキー氏から「和平交渉の用意がある」との書簡が届いたともいう。どうなっているのか。 口論の前だが2月21日、日本記者クラブで行われた松田邦紀氏の記者会見を紹介したい。開戦前から昨年秋まで駐ウクライナ大使を3年務め、キーウの主要7カ国(G7)大使グループ議長だった。 以下要約。停戦への動きはトランプ氏が突然始め、ウクライナに一方的に押しつけているのではない。ウクライナ自身が始めた。 昨年6月、ゼレンスキー氏が呼びかけて和平策を話し合う「世界平和サミット」がスイスで開かれた時のこと。参加国から「何とかロシアも関与させなければ意味がない」「具体的な手順と方法が必要だ」という意見が出た。 ひと夏悩んだウクライナ政府は、戦闘を続けながら外交にも軸足を置く政策に転換。9月に外交を有利に進めるための「勝利計画」(という名の早期停戦プログラム)を策定し、第4項目に「天然資源を欧米その他の国々と共同開発する」案を自ら盛り込んだ。 12月、ゼレンスキー氏は共同通信とのインタビューで「軍事力だけで全ての領土を取り戻す力が今はない。外交にも頼らざるを得ない」と率直に認めている。 米大統領選の前後、この計画についてウクライナとトランプ陣営は何度も意見交換を重ね、それを踏まえてトランプ氏が1月20日の大統領就任後、攻勢に出た。 ウクライナ提案だけでは動かないロシアに、制裁強化やロシアが依存する石油価格の下落圧力をチラつかせ、2月にプーチン大統領との長電話、サウジアラビアでの米露協議を実現させた。 松田氏は「今の流れはウクライナの考えの延長で出てきた。いかなる意味でもウクライナは主体性を失っていない」と断言する。 それにしても首脳間のさや当てが激しい。松田氏は「同盟・同志国でも対立はある。感情的やり取りに耳目を奪われると、事態を理解できない」とたしなめる。 「楽観的すぎる」「米国への追従か」と詰問する記者がいても、答えは「米ウクライナにも米欧にも対立解消の枠組みがあり、水面下で相当なやり取りをしている。まだ曲折はあるが、プロセスの始まりを今我々は目にしている」。冷静なきっぱりした口調は、終始ぶれなかった。(専門編集委員)2025年3月8日 毎日新聞朝刊 14版 2ページ 「土記-ホワイトハウスのけんか」から引用 このまま戦闘を継続しても、双方の人命を無駄にするだけだから、戦闘を継続しながらでも外交交渉の可能性をさぐるのは大切なことだと思います。また、外交にも軸足を置くという冷静な判断をしたゼレンスキー大統領には、さらに、ウクライナの平和を獲得し維持していくためには、いたずらにNATOと接近するのではなく、NATOとロシアの中間に存在するという地政学的条件も勘案して、ロシアの安全保障の一部をウクライナが担うのだという自覚を持って対ロシア外交の姿勢を打ち出すくらいのことまで考える必要があるのではないかと思います。是非とも2025年中に「停戦」を実現して、原油価格の正常化につなげていってほしいものです。
2025年03月23日
原発を再稼働するに当たって最大の障害は日本学術会議の存在であるらしく、日本学術会議の会員から政府批判の声が上がることに我慢がならない日本政府は、気に入らない発言をする学者を排除する手段として「学術会議の法人化」を言い出している。政府の邪な意図を、元文科官僚の前川喜平氏は2日の東京新聞コラムで、次のように批判している; 政府は今、日本学術会議を法人化する法案を準備している。これに対しては、歴代会長6人が撤回を求める声明を出したほか、さまざまな学協会も反対声明を出している。僕も「学術と表現の自由を守る会」の発起人の1人として、その撤回を求める声明に加わった。 この法案は学術会議解体法案だ。法人化で独立性を高めるかのように装いつつ、監事、中期目標・中期計画、評価委員会、会員選定助言委員会などの仕掛けを設けて、学術会議を政権に従属させようとしている。この法案は、科学を成長戦略や軍事研究推進などの国策に従わせようとする企ての橋頭堡(ほ)なのだ。 科学者の代表機関として、行政、産業、国民生活に科学を反映させる目的をもつ学術会議は、今後とも独立した国家機関として存置するべきだ。非科学的な政策が横行する今日、その役割はますます重要である。 菅義偉首相(当時)が行った6人の会員候補者に対する違法な任命拒否はいまだ是正されていない。学術会議の設置形態を云々(うんぬん)する前にこの違法状態の解消こそ先決だ。 学術会議の解体は、学問の自由のみならず全ての精神的自由の危機を招くだろう。人類の多年にわたる自由獲得の努力(憲法97条)を無にしてはならない。過去幾多の試練に堪えたように、この新たな試練も克服しなければならない。(現代教育行政研究会代表)2025年3月2日 東京新聞朝刊 11版 21ページ 「本音のコラム-日本学術会議解体法案」から引用 戦後の80年間、日本学術会議は独立した国家機関として活動してきており、歴代日本政府は憲法順守の立場から「会議」の運営や人選などには関与せず、2年毎に会員を任命するにも人選は「会議」に任せて、会長から提出された名簿のとおりに形だけ「総理大臣が任命する」という方式で運営されてきておりましたが、安倍政権末期から「政府のカネで運営されているのに、政府批判の声が出るのはけしからん」と言われるようになり、菅政権のときに学術会議会長提出の名簿の中で、日頃政府批判が目立つ6名の学者が任命拒否されるという事件がありました。この件はいまだ裁判で係争中で、解決の目処はたっていません。そして、政府が気に入らない学者は排除するという「方針」は、政府内では依然として継続されているらしく、この度は「学術会議を法人化する」と称して、法人化すれば独立性が高まるかのように見せかけて、実は学術会議の中に「監事」だの「評価委員会」だの「助言委員会」だのという「仕掛け」を忍び込ませて、政府批判の発言はことごとく排除する算段のようです。このような策謀を放置して、学術会議を政府にとって都合の良い組織にしてしまえば、学問の自由が侵害され、わが国の学問研究の活動は阻害されて衰退し、その結果、産業も経済も停滞することになりかねません。そのような事態を避けて、明るい未来を築くためにも、学術会議解体の策謀には「反対」の声を上げるべきだと思います。
2025年03月22日
兵庫県議会が設置した百条委員会が9か月に渡って調査した結果が、県議会の承認を得て正式な報告書として認められたのであるが、調査の対象であった斎藤兵庫県知事は、百条委員会が知事自身のやったことの違法性を報告書の中で指摘しているにも関わらず、「それは百条委員会から見た一つの見解に過ぎず、自分としては別の見解に基づいて自分のやったことは適切であったと考えている」などと、百条委員会の調査結果はさしたる意味を持たないのだという「印象」を、世間に振りまく態度に出ている。そのような斎藤知事の姿勢を、6日の朝日新聞は、次のように批判している;◆百条委報告書、県議会が了承 兵庫県の内部告発問題をめぐり、県議会は5日、斎藤元彦知事らのパワハラなどの疑惑を「一定の事実」とし、告発者への対応でも「公益通報者保護法違反の可能性が高く、大きな問題があった」とする調査報告書を了承した。斎藤知事は同日午後の定例記者会見で「一つの見解が示されたということ。文書問題の対応は適切だったと考えている」と述べ、県議会の指摘を受け入れない考えを示した。 報告書は、地方自治法に基づき設置された県議会の百条委員会が、約9カ月にわたる調査の末に取りまとめた。調査結果を顧みない斎藤知事の姿勢に対し、県議会からは「議会とのコミュニケーションを重視すると言っていた姿勢とは反する」「報告書は議論を重ねてできた重い内容。受け止めずに是正しないのであれば知事としてふさわしくない」など批判の声が出ている。 百条委の過去の事例では首長の辞職につながったケースもある。報告書では斎藤知事に「厳正に身を処すことを期待する」とし、「政治家としてのけじめ」(ある県議)を求める声もある。斎藤知事は会見で「斎藤県政を進めていきたい」として、辞職する考えがないと表明した。 5日午前の県議会では、百条委が前日にまとめた調査報告書を審議し、賛成多数で了承された。政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に非公開だった百条委の音声データの情報を漏洩(ろうえい)した増山誠氏、1月に死去した竹内英明・前県議を誹謗(ひぼう)中傷する文書を提供する場にいた岸口実氏ら維新会派の3人(離脱を含む)が反対・退席した。■指摘受け入れず持論 百条委という法律に基づく調査の報告書に対し、斎藤知事は「一つの見解だ」などの表現を再三にわたって繰り返し、開き直りに終始した。 元県民局長は昨年7月に死亡し、自殺とみられている。百条委が報告書で求めた元県民局長の懲戒処分の「適切な救済・回復」を斎藤知事は拒み、「不服であれば申し立てや裁判をできたはずだ」と述べた。 元県民局長は生前、申し立てをしない理由を百条委に説明していた。懲戒処分の検討に関わった県人事課職員をおもんぱかり、「後輩たちを訴えることがどんなにつらいことかご理解いただきたい」としていた。 斎藤知事は、元県民局長をおとしめるような発言も繰り返した。公用パソコン(PC)から見つかった私的文書の内容に初めて踏み込み、「倫理上、極めて不適切なわいせつな文書」とした。否定や弁解ができない元県民局長にとって不利益な発言に対し、会見では報道陣から「撤回すべきだ」などの批判が飛んだが、聞き入れなかった。■<視点>謙虚に「向き合う姿勢」を 斎藤知事は、県議会が了承した百条委の報告書を「一つの見解。対応は適切」と受け入れない考えを示した。「公益通報者保護法違反の可能性が高い」との指摘には、「逆に適法の可能性もある」とまで言った。しかし、地方自治法に基づき設置された百条委の結論は重い。 斎藤知事には「向き合う姿勢」が欠けているように見える。問題の発端は、内部告発文書で自身のパワハラ疑惑などを指摘されたことだ。強大な権力を持つ首長なのに指摘に向き合わず告発者を捜した。報告書が「パワハラ行為と言っても過言ではない」とした強い叱責(しっせき)も、職員と向き合う覚悟が足りないことが原因だったのではないか。 県幹部からは「知事に向いていない」との厳しい声も上がる。再選された民意は尊重されるべきだが、SNSで誹謗(ひぼう)中傷を受ける職員や県議、遺族らの痛みに寄り添わない態度など、最近の姿勢には大きな違和感を覚える。県政の混乱と分断を解消するためには「耳の痛いことも聞く」という知事選での約束を守り、謙虚に議会や県民の声に耳を傾ける必要がある。(島脇健史)2025年3月6日 朝日新聞朝刊 13版 28ページ 「斎藤知事『対応は適切』主張」から引用 百条委員会報告書には法的拘束力がないから、知事の行為は違法であったと断定することが出来ないのかも知れないが、しかし、公益通報を受理した後の県知事と県幹部のやったことは、明らかに公益通報者保護法に反する「通報者捜索」をやったのであるから、知事と幹部は違法行為を行ったことは明らかであり、兵庫県民は「見解の相違」で誤魔化されてはならないと思います。それにしても、この朝日の記事は百条委員会の報告書に向き合おうとしない斎藤知事を批判しながらも「(斎藤知事を再選した)民意は尊重されるべきだが」などと書いているのは、考えが甘いと思います。彼を再選した民意は、N党立花に騙され、選挙カーに宣伝広告会社の経営者を乗せて選挙運動の一部始終をSNSで拡散させるという公職選挙法違反の活動に騙された有権者の票が集まっただけのことであり、尊重されるべき理由は存在しないのですから、このような状況に「法の正義」を実現するには、市民有志が斎藤知事を告発する以外に方法はないのではないかと思います。
2025年03月21日
共産党は国会で日頃どういう質問をしてるかを紹介する「しんぶん赤旗」日曜版のシリーズ「共産党の国会質問」は、2日付けの紙面で、SNSを悪用したフェイクニュースの問題を取り上げた辰巳孝太郎議員の質問の様子を伝えている; SNSによるデマや誹謗(ひぼう)中傷の拡散が大きな問題になっています。日本共産党の辰巳孝太郎議員は衆院総務委員会(2月20日)で、SNSのプラットフォーム(サービス提供者)の責任を問うべきだと、政府の認識をただしました。 「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏が兵庫県知事選で根拠のないデマを発信し、SNSを通じて拡散されました。辰巳氏は、SNSの言論空間でファクト(事実)よりも刺激的な打ち出しが優先されていると指摘。「アテンションエコノミー」とよばれる情報の正しさより人びとの関心・注目を重視するSNSの収益構造、ビジネスモデルが被害拡大の一端を担っていると強調しました。 村上誠一郎総務相はこれに同意し、「クリック数に応じて収益が発生するSNSのビジネスモデルは、その負の側面として過激な夕イトルや内容の記事を生み出し、偽・誤情報の拡散を招く構造を有している」と懸念を示しました。 辰巳氏は「フェイク(虚偽)やデマを拡散する土台をつくっているプラットフオームにフェイクの拡散を防止する責任がある」と主張。村上氏は「プラットフォーム事業者には偽・誤情報等の低減に向けて社会的責任がある」と答えたものの、具体的取り組み」を期待すると述べるにとどまりました。 SNSは、自分と似たような価値や考え方のユーザーのフォローをすると、同じような情報ばかりがきたり、検索履歴から同じようなニュースや情報ばかりが流れてきたりする、閉じた情報環境になります。辰巳氏は、欧州連合(EU)ではこうした作用を弱める選択肢を利用者に提供することをプラットフォーム事業者に義務づけるなどの規制や虚偽・デマの拡散に厳しい罰則を設けていることを紹介。本来SNSがもつ、人とつながれる、ネットワークを広げられる、新しい情報に触れられるなどの機能が生かされる環境の整備を求めました。2025年3月2日 「しんぶん赤旗」 日曜版 11ページ 「共産党の国会質問-サービス提供者の責任問うべき」から引用 人々からのアクセス数が増えれば投稿した者の収入も増えるという仕組みは、辰巳議員や村上総務相が言うように、偽・誤情報の拡散を招くというのは、そういう可能性があるというだけの話に留まらず、実際に偽・誤情報は拡散され、それが原因で兵庫県では死者まで出るという状況になっているのだから、プラットフォーム事業者が自発的に防止に取り組むことを期待するなどと暢気なことを言ってる場合ではないと思います。ただ、総務大臣がそのようにお茶を濁す背景には、安倍政権の時代には自民党自体が「ダッピ」とか言う会社に金を払って、野党議員を批判するような投稿をやらせていた時期もあったわけで、辰巳議員の質問を聞いてる間、総務大臣はいつ「ダッピ」の件で突っ込まれるのか、ヒヤヒヤしながら議員の質問を聞いていたのではなかったのか、と思いました。
2025年03月20日
大災害が発生して人々がパニックになると、SNSにデマが流されて社会の混乱に拍車をかける事態になりやすい。そのような問題にどのように対処するべきか、2日の神奈川新聞は、次のよう論評している; 都道府県の大半が、災害時の交流サイト(SNS)での偽・誤情報拡散に懸念を抱いていることが、共同通信の調査で分かった。災害対応に有用な情報も投稿されるが、受け手側での選別には限界がある。デマの発信者やSNSの運営事業者ら、「上流」部分への対策を求める声は多いが、法規制には事業者の反発も根強く、実現性は不透明だ。 「数時間後に(また)大地震が来る」。2018年の北海道地震ではこうしたデマがSNSなどを通じて広まった。道によると、投稿を信じたとみられる人が避難所に集まったという。 16年の熊本地震では「動物園からライオンが放たれた」との投稿が画像付きで拡散。地元の動植物園に電話が殺到し、職員が対応に追われ、SNSのデマが知られるきっかけになった。 スマートフォンや通信環境が現在ほど普及していなかった東日本大震災でも「製油所の火災により有害物質が雨と一緒に降る」との書き込みや、原発事故に関連して放射線に関する誤情報が旧ツイッターや「チェーンメール」の形で広がった。▽収益構造 「災害時に、SNSを活用した情報収集は有効」(東京都)との意見もあり、人工知能(AI)を使ってデマを排除し有用と考えられる情報を抽出する民間システムを導入する自治体も。鳥取はフェイク情報を監視する専門チームを設置した。 だが、22年に静岡県を襲った台風では、AIでつくられた、浸水した街の写真がXに投稿され、真偽の判別は容易ではなくなっている。 偽・誤情報が広まる背景には、投稿者が閲覧回数に応じた報酬を得られる収益構造がありそうだ。総務省の有識者会議が昨秋示した提言は、この収益構造が拡散を助長している可能性を指摘した。 その上で利用者のリテラシー(知識や判断力)を高めることに加え、SNSや検索サイトの事業者に、収益化の停止も含めた災害時の規約整備を講じることを求めた。▽検証蓄積 だが大手事業者が厳しい反論意見を提出。「多くの情報は事業者が正誤を検証できない」(グーグル)、「ある時点で真実でも次の瞬間に真実でなくなることがあり、禁止するリストを作成できない」(フェイスブックジャパン)とした。 総務省は今年1月、新たな有識者会議で、偽の救助要請などについて、法規制を含めた抑止策の在り方の検討を始めたが、現時点で災害時に特化した議論は始まっていない。同省担当者は「表現の自由への影響は無視できず、国の検閲と受け止められかねない。検証を蓄積する必要がある」とし、議論は道半ばだ。 ある都道府県担当者は「正しい情報を発信し拡散をお願いする。これしかやりようがない」と話した。2025年3月2日 神奈川新聞朝刊 21ページ 「上流の対策強化なるか-災害時SNSデマ」から引用 この記事の中でも指摘されているように、SNSにデマを流す者の目的は閲覧回数が多いほど投稿者が獲得する経済的利益が増大する点にあると思います。したがって、投稿者の中にはウソか本当かは別にして、如何にして人々の興味を引きつける表現をするかということしか考えておらず、デタラメ情報が世間に如何に有害であるかなどは全く考慮の外であることは明白です。したがて、そのような不心得な投稿を規制するためには、「デマであることが判明した投稿者は厳罰に処す」という立法が有効なのではないかと思います。
2025年03月19日
アメリカの経済負担を軽減したい一心のトランプ大統領は、ガザ侵略を続けるイスラエル支援も早めに止めたいというので、とにかく停戦させようと策略を練っているが、そのような状況について、毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏は1日の同紙コラムに、次のよう書いている; パレスチナ自治区ガザ地区が、高級リゾート地に変わる人工知能(AI)製の「未来図」動画を見た。トランプ米大統領がネット交流サービス(SNS)に投稿し、住民は怒り心頭だという。 廃虚の光景に「次は何?」の字幕。近代高層ビルの建ち並ぶ浜辺が現れ、イスラム組織ハマスの戦闘員らしいヒゲもじゃ男らが肌を露出し腰を振る。広場には黄金の巨大トランプ像。米実業家イーロン・マスク氏が札束の降る下で踊り、イスラエルのネタニヤフ首相が半裸で優雅に寝そべる。 流れる陽気な音楽。「トンネルはもうない。恐怖もない。ドナルドが解放しに来る。トランプ・ガザは輝く。輝かしい未来、真新しい光。ごちそうとダンス。偉業が成し遂げられた」の歌声。 ぞくっとする。ショック狙いの悪ふざけとは思えない。なぜなら先例を知っているからだ。これは80年前、敗戦直後の東京と現在の変貌そのものではないか。 東京は軍施設だらけの戦争都市だった。防空壕(ごう)に潜り、空襲におびえた祖父母らは、アメリカさんに解放された。享楽のバブルにまみれ、今や億ションの林立する地底には、なお空襲死者約10万人の骨が埋まっている。 国連によると、ガザのがれき量は東日本大震災13道県の約2倍。撤去に14年、再建に80年と試算される。ガザは東京だ。 日本人は戦時中「鬼畜米英」「天皇陛下バンザイ」「大和民族の一億特攻」「聖戦完遂」を呼号したが、一夜にして米国べったり。子女は米兵に「ギブ・ミー・チョコレート」と群がり、大人も「拝啓マッカーサー元帥様」と陳情に殺到した。今でも日米同盟を神聖な国是と奉じて拝む。 アラブ民族解放の大義、乳と蜜の流れる大地への愛、シオニズムの暴虐、ナクバ(破局)の恩讐(おんしゅう)。どれも正しい。でも悲しいかな、正しさは幸せを実現せず、幸せは正義を必要としない。 無責任な口コミでは、日本でも「トランプやるじゃないか」という大人が急増中。ガザ停戦はともかく第1段階を終了。ウクライナ停戦もトランプ・ペースで進む。現実は、大義も正義も道理もなく実行する力を畏怖(いふ)する。 法の支配による国際秩序を守れ。だが、国連決議という合法的第二次大戦後秩序がパレスチナ分割、ガザ虐殺を生んだ。アラブ世界を合法な外交で分断した英仏は、今やガザに知らん顔。ウクライナの国家主権も突き詰めたら怪しい。守るべき、立ち返ることのできる国際秩序はまだあるか。きれいごとは無力だ。(専門編集委員)2025年3月1日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-日本でもトランプ人気?」から引用 この記事では、ガザ地区の惨状がトランプ氏の構想どうりに解決された場合は、80年前の日本と同じ状況になると主張しているように読めるが、果たしてそうなのか、私は疑問に思います。米軍の空襲に怯える我々の祖父母らは、アメリカ軍によって解放されたこと、当時の東京は軍施設だらけだったこと、敗戦後は子女が米兵に「ギブ・ミー・チョコレート」と群がったことなどは事実かも知れないが、トランプ氏の場合はガザの住民を周辺国に追い出して、その後ガザをアメリカ人のためのリゾート地にすると言ってるのだから、かなり違うストーリーになるのではないかと思います。「法の支配による国際秩序を守れ」というスローガンは立派であるが、現在のガザの悲劇の大元は、80年前のパレスチナ人の「人権」を無視して「イスラエル建国」を承認した国連決議のデタラメに端を発しているという「事実」から、私たちは目を反らすべきではありません。
2025年03月18日
明治の政府がつくった家父長制は民主主義の社会になじまない制度であったため、現在の憲法が制定されると同時に廃止されたのであったが、実際は人々の心の中にまだ存在していて、そのせいで「女性差別」がいまだに無くならないとの主旨のコラムが、3月1日の東京新聞に掲載されている; 佐野広実『氾濫の家』(講談社)は、隣家で起きた殺人事件をきっかけに、ひとつの家族が崩壊していくミステリーである。 夫は身体的な暴力こそ使わないものの、威圧的な言葉で妻や子供を支配する。妻を奴隷のように使い、娘より息子を優遇するのが当然だと考えている。夫が重視するのは、周囲に自分の家を「立派な家」だと思わせること。家父長制的思考に凝り固まった男だ。しかし、そんな「家」から娘が出ていき、息子も離れ、驚きの結末をむかえる。 農村を舞台にした町田そのこの『ドヴォルザークに染まるころ』(光文社)には、男を立てろという年配女性に「過剰な安売りされると、同じ性を背負ってる別の誰かが困るんで、止めてくれませんか」と若い女性が抗議するシーンがある。明治民法の家制度がなくなって80年にもなるのに、いまだ家父長制が残るのは、それを支える女たちがいるからでもある。 地方では若い女性の流出が止まらない。強く残る男尊女卑や長男優遇の風習が女性を生きづらくさせているのだ。人口減少はその代償、あるいは復讐かもしれない。だが家父長制的思考は都市部にも残る。「家」の残骸を整理しよう。選択的夫婦別姓の導入はその第一歩となるだろう。(柱)2025年3月1日 東京新聞朝刊 7ページ 「大波小波-家父長制度と地方消滅」から引用 この記事の「家父長制度と地方消滅」というのは、少し説得力に欠ける印象を受けます。地方消滅は、地方経済が成り立たないため、つまり農業が産業として成立する条件が失われたことが最大の原因であって、家父長制のせいで若い女性が地方から都会へ流出したのが「地方消滅」の原因というのは、主要な因子ではないように思います。地方から流出するのは女性に限ったことではなく、若い男性も農業では生活が成り立たないため、都会へ出るのであって、地方には「家父長制」があるけど都会は自由だ、などということはありません。東京のベッドタウンで生活している立場からの印象では、順番で回ってくる町内会の役員の申請書に一家の誰の名前を書くのか、というときに、どの家でも夫の名前を書くのが「習慣」になっていることが挙げられます。ところが、町内会としては「町内会活動で事故に遭った場合の保険を掛ける都合上、一家の代表者の名前を書かれるよりは、実際に活動する人物の名前を書いていただきたい」という事情があって、「役員申請書」の最下段に、わざわざ「その旨」を書き加えるという状況になっています。このように人々の心の中に蔓延った「家父長制」を無くすのに、選択的夫婦別姓の導入を当てにするというのは、あまりにも先の長い、当てのない話だという印象を受けます。
2025年03月17日
他の自民党員とは違って常識に基づいた正論を発言することの多かった石破茂氏は、かつて「経済的格差の拡大を是正するには、消費税の逆進性をどう軽減するかを議論すべき」と著書に書いて主張したことがあり、国会でも共産党・田村委員長に指摘されたことなど、前文科官僚の前川喜平氏は2月23日の東京新聞コラムに、次のよう書いている; 格差が大きいと消費税はその逆進性が顕在化する。結果として低所得者に厳しい制度になってしまってはいないかという疑問が生じる。消費税についての議論もタブー視してはいけない。 法人税減税にめぼしい意義は見いだせず、もしも経済的格差の拡大を是正する方向性を考えるのであれば、消費税の逆進性をどう軽減するかを議論すべきではないか。 これは石破茂首相が自分で本に書いたことだ。それを指摘したのは21日の衆院予算委員会での共産党田村智子議員。田村氏は勤労者世帯の年収別税負担率のグラフを示しつつ、低所得者ほど消費税の負担が重いため、低所得世帯と中所得世帯の税負担率がほぼ同じで、税負担の累進性がなくなっていると指摘。今こそ消費税の減税を議論すべきだと主張した。 「著書を精読いただきまして誠に恐縮であります」とごまかすしかなかった石破首相は、賃上げや給付で対応すると答弁しつつ、自らの消費税見直し論を自ら封じた。 毎日報じられている「103万円の壁」の引き上げや高校無償化の所得制限撤廃は、実は高所得層により多くの恩恵を及ぼす政策だ。本当に格差を是正するなら、大企業への法人税減税の見直し、所得課税の「1億円の壁」の撤廃、低所得層への給付増などに加え、消費税減税は避けて通れない課題だろう。(現代教育行政研究会代表)2025年2月23日 東京新聞朝刊 11版 17ページ 「本音のコラム-石破首相の消費税見直し論」から引用 安倍政権が3%だった消費税を7%、10%と増税したときに、消費税は高齢者対策など福祉予算の財源にするという法律まで作っておきながら、実際は大企業・富裕層への「減税」政策の財源として使われているのが実態である。安倍政権がそのような悪政を行っているときに「消費税は低所得層にとって大きな負担になっており『税負担の累進制がなくなっている』と指摘したのが石破茂議員であったのだが、実際に総理大臣になってみると、そのような小理屈などどうでもよくて、自分の地位を守るためには、やはり大企業経営者や富裕層の覚えをめでたくしておく必要から、消費税減税要求に対しては「賃上げや給付で対応」などとごまかす、石破茂という人間はそういうヤツだったというのは実にがっかりさせられます。その上、普段の「きれいごと」発言とは裏腹に、新人議員の集まりでは一人一人に「おみやげ」と称して10万円相当の商品券を配るという、安倍晋三も真っ青の「裏技」をやってしまって、しかも「以前から何回かやってきた。違法性はない」などと平然と説明するに及んでは、石破も安倍も同じ自民党員だったのだと、実にがっかりしてしまいました。
2025年03月16日
日本政府は先の大戦で無条件降伏して50年目の年から10年ごとに、8月15日に首相談話を発出しており、石破内閣も、首相個人の意向では前例に習って発出するつもりであるのに対し、党内保守派からは反対の声が上がっており、そのような党内事情について2月28日の「しんぶん赤旗」は、次のように批判している; 戦後80年にあたって、首相談話を発表するかどうかが注目されています。石破茂首相が先の戦争について検証が必要との言明を繰り返しているのに対し、自民党保守派が「首相談話はもう必要ない」と迫っているからです。■安倍談話のねらい 石破首相は「なぜあの戦争を始めたのか。検証するのは80年の今年が極めて大事だ」(衆院予算委1月31日)とのべています。林芳正官房長官は「首相談話を発出するかどうかは決定していない」としています。 一方で、自民党保守派からは「出す必要は全くない。そのための70年談話だ」(小林鷹之元経済安全保障相)などと談話を出すこと自体に反対する声が上がっています。 政府は、これまで村山富市首相が戦後50年、小泉純一郎首相が同60年、安倍晋三首相が同70年にそれぞれ談話を出しました。 村山談話は、日本が「国策を誤り」、「植民地支配と侵略」を行ったという歴史認識を明確にし、小泉談話もそれを継承しました。 村山談話は歴代内閣の公式見解として踏襲されるとともに、日韓、日中、日朝間の政府合意文書にも取り入れられ、国際的合意文書となっています。これを継承、発展させることは日本政府の国際的責任となっています。 しかし、日本の侵略戦争を美化する勢力は猛反発しました。その中心にいたのが、「戦後レジームからの脱却」をかかげ、「村山さんの個人的な歴史観に日本がいつまでも縛られることはない」(『正論』2009年2月号)という安倍氏でした。 このねらいでつくられたのが安倍談話です。国際関係も考慮し、さすがに村山談話の全否定はできず、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫(わ)び」などの文言はちりばめています。しかし、日本が「国策を誤り」「植民地支配と侵略」を行ったという歴史認識はまったく語られず、村山談話の立場を事実上、投げ捨てるものでした。 村山氏も「つまみぐいというよりも、ごまかしだな」「(お詫びに関しても)この段階で打ち切りたいという気持ちが現れている」(『検証 安倍談話』)と批判します。 事実、安倍氏は「戦後80年の時には、(首相談話を)やる必要はない、ここで止めなきゃいけないと思った」(『宿命の子』)と、ねらいをあけすけに語っています。 せっかく村山談話を投げ捨てる安倍談話を出したのに、あらたな80年談話などとんでもない、というのが保守派の主張に他なりません。■平和な世界へ貢献 いまウクライナ侵略やガザでのジェノサイド(集団殺害)など軍事緊張と分断が広がっています。一方で、ASEAN(東南アジア諸国連合)が軍事的対決でなく、包摂的な平和構想を提唱するなど平和の潮流も発展しています。 このとき日本が戦後80年にあたり、先の侵略戦争と植民地支配に真摯(しんし)に向き合い、その教訓をふまえ、ブロック対立や軍事対応を広げるのではなく包摂と対話による平和な世界へ貢献する意思を発信することは、歴史への責任です。2025年2月28日 「しんぶん赤旗」 2ページ 「主張-歴史に向き合い 責任を果たせ」から引用 この記事が示すように、安倍政権は過去の自民党政権の悪弊を全部かき集めたような腐敗の温床のような政権であったが、歴史上の事実が存在するのに、節目の年になっても黙り込んで無視するという態度は、周辺国に不信感を与える不誠実な態度と言うほかありません。石破茂氏は、以前から安倍晋三氏とは正反対で、世間の常識に則ってまともな発言をする人だったわけで、是非その「常識」を活かして80年という節目に改めて過去の誤りを認め、80年前に改訂した平和憲法をこれからも順守して、世界平和に貢献する意志を内外に宣明するのは、必要なことだと思います。
2025年03月15日
性加害事件と示談金の関係について、法政大学名誉教授で前総長の田中優子氏は2月23日の東京新聞コラムに、次のよう書いている; 私は本紙「本音のコラム」の愛読者だ。そのコラムで1月31日、北丸雄二さんは米紙ニューヨーク・タイムズのある記事を紹介した。日本の事件についてである。「元ボーイバンドのスターで今は人気テレビ司会者の中年男性が、不正行為を働いた相手女性に口止め料を支払った」と。私が注目したのは「中年男性」と「口止め料」という表現だった。 ◇ ◆ ◇ あの問題で加害者のタレントを「中年男性」と言った人はいなかった。しかし被害者から見れば父親と同じような年齢の「中年」である。有名人でもあるから、まさか人聞きの悪いことはしないだろうと思ったであろう。性加害事件の場合、被害者を非難する人がいるが、それは被害者の視点に立たないからである。女性(あるいは子供)が誰かを「加害の危険性のある男性」とみなして警戒することは、むしろまれである。 もうひとつは「口止め料」だ。これは映画「SHE SAID」を見れば明らかだ。この映画は世界中に「#MeToo運動」が起こるきっかけとなったハーベイ・ワインスタイン事件の映画である。2017年にニューヨーク・タイムズの2人の女性記者によって暴かれ、ワインスタインは実刑判決を受けて今も収監中だ。この中で示談金とはつまり口止め料のことである、とはっきりわかる。示談金支払いの際には口外しないことを一筆書かされる。この映画の加害者であるワインスタインは弁護士に、加害の訴えがあるたびに示談をまとめさせた。 弁護士はその中から報酬をもらえるので、稼ぎになるのである。それが数十年にもわたって加害が隠蔽された原因だった。映画の原作となった書籍『その名を暴け』ではそれを「沈黙を金で買う」と表現している。本書によるとミラマックスというワインスタインの会社の従業員も被害者であった。同時に、それを知りながら経営上の不利益を考えて隠蔽に加担してきた役員たちもいた。ジャニーズ問題でも明らかなように、重大な性加害の原因の一端は、組織と社会による放任や無関心や隠蔽なのである。 この映画と本からわかってくるのは地と図の関係だ。今もなお世界中に性加害が存在する。それを犯罪だとも思わない「地」が広く、そして長い歴史にわたって定着している。それはあらゆる人権侵害につらなっている。そこに事件として「図」が浮かび上かってくる。個々の「図」を表面化させることで、この「地」を変えることができるのだ。本書には「自分の経験を話すことが行動に繋がる」ことに自信を得て、さらに多くの女性が声を上げるようになった経緯が書かれている。 ◇ ◆ ◇ 人権侵害とは何か。個人はその心身の全体として存在している。その全体から「性」や「職業」や「役割」や「容姿」など、一部を取り出して消費するのが人権侵害である。たとえば店員さんと接する場合、金を払うんだからその人にどういう言葉を投げかけても、どういう態度をとってもいいと考える人がいる。金銭を媒介に見下すのは人権侵害である。相手が拒否するのに権力をちらつかせて性的な言動をするのであれば、どんな軽微なものであっても人権侵害どころか犯罪だ。沈黙は侵害を増やすだけだ。語り、理解を広げていくことで、この歴史に早く終止符を打ちたい。2025年2月23日 東京新聞朝刊 11版 4ページ 「時代を読む-SHE SAID」から引用 火付けや泥棒と違って、性加害は「人権侵害」というれっきとした犯罪であるにも関わらず、組織や社会が放任したり無関心だったりしてきたため、被害者もなかなか声を上げにくく、そういう被害者の弱点に目をつけた加害者が、なんとか穏便に済ませるために被害者に口止め料を支払い、その際の条件として「事件のことは一切口外しない」と約束させる、それによって加害者は「事件」の隠蔽に成功するという「しかけ」で、これまでは「悪が蔓延る」世界でしたが、これからの社会は、人権意識をしっかり堅持することによって、立場の弱い者が泣き寝入りすることのない、明るい社会にしていくべきです。
2025年03月14日
アメリカの第二次トランプ政権の動向について、毎日新聞論説室特別編集委員の坂東賢治氏は、2月22日の同紙コラムに、次のように書いている; 食器のフォークは元々、先がとがった二股の用具を指す言葉。形状から分かれ道の意味もある。「フォーク・イン・ザ・ロード」は人生や歴史の分岐点を指す慣用句だ。 文字通り、道に巨大なフォークを突き刺すオブジェが第2期トランプ米政権で「陰の大統領」とささやかれるイーロン・マスク氏が創業した電気自動車大手テスラ本社(米テキサス州)にある。 人類が滅亡しない道を選ぶという高尚な意味らしいが、マスク氏はこの慣用句を通俗的に用いた。約200万人の政府職員に退職を勧奨するメールの題。「ツイッター(現X)」を買収した際のリストラで職員に人生の選択を迫ったメールと同じ手法だった。 マスク氏率いる「政府効率化省」の略称「DOGE」はお気に入りの仮想通貨と重なる。ネットで人気を集めた日本のシバイヌ「かぼす」をロゴにした「ドージコイン(DOGE COIN)」。政府機関ではなく、マスク氏の地位も曖昧だが、はっきりと「マスク印」が刻まれている。 ◇ ◇ トランプ政権の発足から1カ月。マスク氏が「民主主義を修復する」とぶち上げたリストラ策は、米国の民主主義の行方に疑念を抱かせ、最大のライバルである中国を利している。対外援助機関「国際開発局(USAID)」の機能凍結が典型的な例だ。 「中国国内の反体制派、人権状況、労働者の権利を監視する数十の非政府組織が業務停止を余儀なくされ、スタッフを解雇した」。ロイター通信が報じたのは、1月20日にトランプ大統領がUSAIDの資金を90日間凍結する大統領令に署名した影響である。 USAIDと表裏一体で活動してきた全米民主主義基金(NED)はウイグルやチベットの人権、香港の民主化などの活動を支援し、中国が「分裂を扇動し、内政に干渉して災難を引き起こす」と敵視してきた援助機関。このNEDもマスク氏のターゲットだ。中国にとって90日後もこうした支援が再開しなければ「望外の喜び」だろう。 米国の対外援助は総額約10兆円で世界一。USAIDの予算はその6割近くを占め、影響は大きい。早速カンボジアの地雷除去事業への援助もストップしたが、代わりに中国が資金を提供した。トランプ氏に「白人を差別している」とにらまれ、援助打ち切りを通告された南アフリカに手を差し伸べたのも中国だ。 ラミー英外相は英紙に「大きな戦略ミスだ。開発援助は非常に重要なソフトパワーだ。なくなれば、中国などが隙間(すきま)を埋めると心配している」と語ったが、その懸念がすでに顕在化している。 「パワーとは他者に自分の望むことをさせる能力。達成するには強制(棒)、利益の交換(ニンジン)、甘美な魅力(蜂蜜)の三つの方法がある」。ソフトパワーの重要性を説いてきた米ハーバード大のジョセフ・ナイ氏は米テレビで「トランプ氏は蜂蜜を理解していない」と指摘した。 ◇ ◇ カナダ、メキシコ、パナマへの強圧的姿勢。ウクライナや欧州の頭越しのロシアとの和平協議。トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼ぶに至っては、同盟国も米外交の行方に警戒を高めざるをえない。 その隙を狙って外交攻勢を強めているのが中国だ。王毅外相(共産党政治局員)はミュンヘン安全保障会議からニューヨークの国連本部、南アフリカの主要20カ国・地域(G20)外相会議へ飛び、各国外相らと会談を重ねた。 「国連創設当初の志に立ち返り、真の多国間主義を再活性化しなければならない」。18日、国連安全保障理事会の議長席に座った王氏は国連80年に合わせ、平等で公正な国際秩序の再構築を目指す必要性を訴えた。国連の多数を占める新興国や途上国、いわゆる「グローバルサウス」を意識した内容だった。 対中強硬派として知られるルビオ米国務長官は南アのG20を欠席した。グローバルサウスを米中どちらが引きつけるかという観点に立てば、敵に塩を送るようなものだ。 トランプ政権は中国製品に10%の追加関税を課し、パナマを中国の「一帯一路」から離脱させたものの、中国を追い込むような成果は見えない。いつから中国に焦点を合わせるのか。トランプ氏が、履行されなかった第1期政権での米中貿易協定を元に安全保障を加えた包括的協定を模索しているという報道もある。 トランプ氏はプーチン露大統領との電話協議後、SNSに「第二次大戦で共に成功裏に戦った経験を思い出した」とつづった。5月にモスクワで対独戦勝利80年の式典が行われ、習近平中国国家主席の訪露が予想される。トランプ氏も参加すれば、米中露3首脳の顔合わせも可能になる。 一昔前ならフェイクニュースに思えた事態が次々に現実となる世界ならありえない話ではない。我々こそ「フォーク・イン・ザ・ロード」に立っているのかもしれない。<ばんどう・けんじ> 香港、北京、ニューヨーク、ワシントンに駐在し、中国政治や米中関係をウオッチしてきた。現在論説室特別編集委員。2025年2月22日 毎日新聞朝刊 13版 4ページ 「外事大事-中国を利するマスク改革」から引用 バイデン政権のときまで、アメリカ政府は世界中の、人々が困っている地域に人材と資金を提供して、困窮している人々を救済し、そのような活動を通してアメリカに対する人々の支持を獲得し、その上でアメリカ資本が活躍する「場」を獲得するという政策であったが、そのアメリカ資本が国内労働者を見捨ててしまったので、国内の不満を抱えた有権者が、これまでの政策を転換することを期待してトランプ氏を再び大統領に押し上げたまでは良かったが、やはり国内の不満を抱えた層の期待に応えることを託されたのが「素人の政治家」であったために、この度の政権のやることは、上の記事が指摘するように、中国に「世界の覇権国」の座を引き渡すための「準備」をしているような、皮肉な現象を引き起こしている。わが国の古典文学が示すように、世の中は「盛者必衰」であり、日本としても、これからの世界は「アメリカ一辺倒」では立ち行かなくなることを見越して、近い将来には中国をサポートして「世界平和」を維持する方針を打ち出す必要があると思います。
2025年03月13日
大企業優先の政治を推し進める政府に異議を申し立てる農業従事者の運動が始まったと、2月22日の東京新聞が報道している; 日本の食を守るため、農政は転換を-。「令和の百姓一揆」と題した運動が始動した。農家の高齢化と離農が進む中、農家への所得補償や消費者が安心してコメや野菜を入手できる仕組み、食料自給率の向上を求め、3月末に東京・青山で30台規模のトラクター行進を企画する。立ち上がった生産者の危機感とは。(木原育子、太田理英子) 「水田農業の時給は10円だ! 基本的人権なんてあったもんじゃない!」 「ずっと放置され続けた。こんな日本でいいのか!」。18日、国会内で開かれた集会。東北や関東の各地から集まった農家の檄が飛んだ。 国の農業経営統計によると、米農家1経営体あたりの年間収入から経費などを差し引いた所得の平均は2021年と22年ともわずか1万円。それらを労働時間で換算すると「時給10円」という衝撃的な数字が導かれる。実態は農家の規模によってもまちまちだが、もうけが出ない日本農業の現状を象徴している。 集会で千葉県横芝光町の農家、越川洋一さん(77)は「異常気象続きで生育が全くうまくいかない」と切り出した。円安に伴う肥料飼料の高騰やカメムシの被害、農家の高齢化も地域に追い打ちをかける。 越川さんは有限会社として水田25ヘクタールを経営し、1500坪のハウス栽培などで生計を立ててきた。「耕作放棄地があふれている国で、本当にいいのか。もう限界だ。野菜が高騰しても、生産者の苦しみには目を向けず、その責任は生産者にのしかかる。補償がなければやっていけない」と語気を強めた。 そういった農家らの切実な声を受けて立ち上がったのが「令和の百姓一揆」。生産者と消費者の声を国に届けていこうという運動だ。(1)農家への欧米並みの所得補償(2)貧困層を含めた全ての市民が命の危機を感じることなく食べられる仕組みづくり(3)2023年度で38%(カロリー換算)と低迷する食料自給率の向上を目指すとした。 第1弾となった今回の集会には、能登半島地震があった石川県の関係者もオンラインで参加し、道路や河川以上に進まない農地の復旧を訴えた。第2弾として3月30日に各地の農家らが、東京都港区の青山公園周辺を「トラクター行進」してアピールする計画だ。 「地域も農業も崩壊寸前だ。本当に変えていかないといけない」。新潟県の米農家、天明伸浩さん(55)も集会で語りかけた。東京の大学院修了後、農家になることを夢見て移住し、まもなく30年になる。「地域では、若い移住者と地元の農家が協力して元気に暮らしている。本当の強さとは大規模農家ではなく、小さな農家が集まった力。災害が起きても、多くの人がいれば地域は守られる」と話す。「農業が担うのは農産物の生産だけではなく、人を育てる力。経済至上主義のままでは、地域で農業を担う人たちを破綻させてしまう」と続ける。 神奈川県小田原市でミカンを栽培する長谷川壮也さん(43)も「最初に切り捨てられるなら、米農家や野菜農家ではなくて、果樹ではないかと思っている」と不安を漏らした。新規就農者に資金や技術の面で十分な援助ができていない。「自分のことで精いっぱいで、先輩農家も時間をかけて技術を教える余裕がもうない。農業だけの話でなく、日本全体に関わる話であることに気付いてほしい」と投げかけた。2025年2月22日 東京新聞朝刊 11版 18ページ 「『令和の一揆』農家立ち上がり転換要求」から引用 地域も農業も崩壊寸前というのは、本当の話だと思います。一時期、政府と自民党は、日本の農業は小規模の農家で手間の掛かるやり方だから経済効率が悪いなどと言い出して、アメリカのような広大な畑にトラクターを何台も入れて作業効率を上げるべきだ、などという議論が流行った時代がありましたが、それはアメリカのような広大な地形に恵まれた場合に出来る「農業」であって、「アメリカでやってるんだから、日本でもやれば良い」という単純な話ではなく、日本の場合は山の斜面に棚田と呼ばれるあまり広くない田を耕して、平らな土地ではなく山の斜面からも米を収穫するという「技術」を先祖代々受け継いできたという伝統があるわけです。しかし、欧米と違って「食料安保」という概念に乏しく、アメリカから小麦を輸入して利益を上げる商社から企業献金を受け取っている自民党は、国内農家の保護などという考えは皆無で、企業を設けさせてそのおこぼれにあずかろうという魂胆に見えます。今や、農家は農業だけでは家計が成り立たず、農業のほかにも何か仕事をしなければならない兼業農家ばかりになりました。自民党に任せておくとこうなってしまうのですから、やはり政権交代は必要です。野党は頼りにならないと言う人もいますが、自民党よりは「国民のためになる政治」に熱心に取り組むと思います。
2025年03月12日
先月、アメリカではユダヤ系アメリカ人がイスラエルから来たユダヤ人旅行者を銃撃する事件が起きた。その事件について、文筆家の師岡カリーマ氏は、2月22日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 米フロリダ州で起こったある銃撃事件が今週、話題になった。撃たれたのは、イスラエル人旅行者の親子ふたり。幸い軽傷だったが、事件直後、ソーシャルメディアに「アラブ人に死を」と書き込んだ。ユダヤ人を標的にした憎悪犯罪と考えたにしても唐突である。 実は、発砲した犯人はユダヤ系アメリカ人だった。逮捕時に「ふたりのパレスチナ人を射殺した」と供述したという。撃った方も撃たれた方も相手をパレスチナ人またはその他アラブ人だと思い込んでいたのだから、皮肉だ。仮に加害者がアラブ系なら、「テロリスト」と呼ばれただろう。 この事件の教訓はふたつ。ひとつは、いかにヘイトが不条理かということ。憎しみに突き動かされて、相手が誰かを確かめもせずに撃ったり、「死を!」と拡散したりする。そしてもうひとつは、アラブ人とユダヤ人、しばしば自分たちでも見分けがつかないほど似ているということ(イスラエル建国に際してパレスチナに移住したユダヤ系東欧人は外見が異なるが、彼らはヨーロッパ人入植者だ)。それがこのヘイトを、余計に虚しいものにしている。もちろん、どんな人種差別も許されないが。 さらにやりきれないことに、こういう無意味なヘイトがない世の中へと先導する権力を持っている人々は、逆にヘイトを煽ったり利用したりに余念がない。(文筆家)2025年2月22日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「本音のコラム-的外れのヘイト」から引用 ユダヤ人がユダヤ人を銃撃する事件は、上の記事が述べるアメリカの事件だけではなく、イスラエル軍がガザに侵攻して間もない頃にも起きている。イスラエル軍の突然の侵攻で慌てて一時撤退を余儀なくされたハマスが、それまで収監していたイスラエル軍の人質数人を移送することができず、置き去りになってしまい、なんとか収監されていた建物の外には出たものの、そのままイスラエル軍の到着を待っていたのでは、パレスチナ人と間違われて殺される危険性が高いと判断した人質たちは、着ている衣服を脱いで上半身裸になって、「自分たちはユダヤ人だ」と主張する以前の「我々は自爆用の爆発物などは持っていない」というアピールのつもりでいたのであったが、ハマスが何時どこから攻撃してくるか分からないという「恐怖心」にかられたイスラエル軍は、上半身裸の人質たちを見るなり「不審者」と判断して直ちに銃撃して一瞬のうちに数人の同胞である「人質」たちを殺害したのであった。ガザ侵攻を継続するネタニヤフ政権は、うっかり侵攻停止などをすると、このような軍の不祥事の責任なども追及されかねない情勢だから、現在の「一時停戦」も、何時まで継続できるのか、まったく不透明である。
2025年03月11日
小説家を廃業して日本保守党を立ち上げた百田尚樹氏が那覇市で街頭演説をしたときの顛末について、沖縄タイムス記者の阿部岳氏は1月30日の「週刊金曜日」に、次のように書いている; 松田聖子さんが郷ひろみさんとの関係で「破局会見」を開いたのは1985年1月。「生まれ変わったら一緒に」というせりふが話題をさらった。 あの頃は、あらゆるテーマで会見が開かれた。芸能人が広く情報を届けるには、メディア(媒体)の記者と向き合うしかなかった。 あれから40年。YouTubeやSNSという媒体を手にした芸能人は、わざわざ記者会見など開かない。私生活についてはそれで一向に構わないけれど、人権侵害が発覚しても一方的に発信して終わりというケースが多い。説明責任を果たさないなら、表舞台で活動する資格はないだろう。 記者の質問から逃げる風潮は、公職中の公職である政治家にまで及ぶ。この1月、日本保守党の百田尚樹(ひゃくたなおき)代表が街頭演説のため那覇市を訪れた。百田氏と沖縄と言えば、デマと差別である。 米軍が畑しかない所に普天間飛行場を建設し、人々が後から「近くに住めば商売ができると」住み着いたというデマ(実際は村の中心部が接収された)。基地反対運動の「中核に中国の工作員」がいるというデマ(百田氏自身が私の取材に根拠がないと認めた)。 それから、「沖縄にはインターネットがない」「沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」という見下した発言。 これらはいずれも作家時代のものだった。国政政党の代表になった今の認識を尋ねるため、取材に行った。 街宣が終わり、百田氏に声をかける。百田氏は目をそらしたまま「堪忍、堪忍。取材は受けない」と言い残し、逃げ回る。党スタッフや支持者が間に入って妨害し、私の質問は答えがないまま宙に舞った。「普天間はどういう所にできましたか」「マイクを使って人の名前を呼んでおいて、一対一の取材には応じないんですか」 実は百田氏は街宣の最中、最前列で取材する私を指して「顔が能面」「阿部さんにどれだけ悪口書かれているか」などと一方的にやゆしていた。以前、講演会を取材し、批判したことがある。マイクという権力を握っている間だけ名指しで攻撃してくる百田氏の卑怯さも、毎度のことだ。 こういう人物を看板にする集団が有権者の支持を得て国政政党となり、衆院議員3人を擁する。百田氏は女性を若いうちに出産へ追い込むため「30超えたら子宮摘出」という暴力的な性差別発言もしている。街宣に女性が集まり、握手を求める姿に衝撃を受けた。 危うい新勢力は日本保守党だけではない。百田氏は差別的な政策を掲げており、批判に値するが、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は異次元の挙に出た。地域政党「再生の道」を立ち上げながら、政策を公表しなかった。公約がなければ、違反もない。説明責任も生じない。記者会見もフリーランス記者を排除して開いた。 憲法15条2項は議員を含む公務員について「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定める。その決定が全体の運命を左右するから、国や地方のあらゆる議員活動を公費で支えている。政治家は自らの支持者だけの歓心を買う仕事ではない。「公」の責任から逃亡する者たちが公職を狙い、その椅子を「私」しつつある。繰り返し、この条文に立ち返りたい。<あべ・たかし>『沖縄タイムス』記者。2025年1月30日 「週刊金曜日」 1506号 33ページ 「阿部岳の政治時評-説明責任からの逃亡、公職を私有させるな」から引用 百田尚樹とかひろゆきとか、こういう人たちは他人が政府の方針に異議を唱えることに嫌悪を感じるらしく、事実はどうなのかを確認することもなく「何もない野原に米軍が飛行場を作ったら、そこに商売目当ての人々が集まってきたのが普天間問題の始まりだ」とか「沖縄ではまだインターネットが使えない」とか、少し調べればすぐ分かることを調べもしないで、とにかく気に入らない奴らを困らせてやろうという浅はかな魂胆で自らの墓穴を掘る結果になっている。日本保守党は国会に3議席を獲得したとのことであるが、そういう浅はかな了見では、この先どう頑張ってみても国民から大きな支持を得るのは、ちょっと無理だと思います。
2025年03月10日
来月開幕の予定となっている関西万博について、2月の時点でどのような状況になっているか、文筆家の斎藤美奈子氏は、2月19日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 開幕まで2ヵ月を切った大阪・関西万博が盛り上がらない。毎日新聞の世論調査(15、16日)では「行きたいと思う」は16%、「行きたいとは思わない」が67%だった。 当初から私は万博を批判的に見てきたが、中身にさほど関心は持っていなかった。それもよくないと思い、公式HPを開いてみると、想像以上の虚無が広がっていた。 拠点施設である日本館は<「いのちと、いのちの、あいだに」をテーマに><一つの循環を創出し、持続可能な社会に向けた来場者の行動変容を促します>。9府県が参加する関西パビリオンは<灯篭をイメージした建物の外観には関西各地を象徴した切り絵をデザイン>し、内部の展示エリアでは<各地の歴史や文化、観光などの多彩な魅力を発信します>。 内外含め各館の説明はすべてこんな感じで、あるのは空疎な文言と虚構めいたイメージ画像と短いイメージ動画だけ。まるで企画書。具体性を欠くことおびただしい。 万博はそもそも維新のIR誘致から始まった構想で、しかも初手から安倍政権頼みだった。その安倍首相と菅首相が次々退陣、2022年7月に安倍氏が銃弾に倒れて後ろ盾を失った頃から万博の迷走が始まったと朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層』(朝日新書)はいう。HPにもやる気のなさがあふれている。これでは人は集まるまい。(文芸評論家)2025年2月19日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「本音のコラム-空疎の見本市」から引用 この記事でも指摘されているように、大阪府で自民党を抜いて県政の主役の座を占めた維新の会は、何か華々しい成果を上げたい一心で「カジノ誘致」を思いつき、しかし、良識派の県民の批判をかわすために「カジノ」に必要なインフラ整備に過剰な県民税をつぎ込むわけにはいかず、そこに浮上したのが「万博誘致」であったわけで、社会の風潮として万博開催が望まれていたわけではなかったのだから、開催日が近づいたからといって急に盛り上がるなどということは、あるわけがないのは当然の成り行きというものです。この先は、心配される「赤字」がどの程度になるのか、どこが責任をもって負担することになるのかという問題になると思います。
2025年03月09日
日本政府は、日本学術会議の独自の立場から政府の政策を批判するような発言を封じ込める目的で「学術会議を法人化する」法案を検討中で、学術会議とも会合を重ねて話し合いをしているが、政府主導のペースで学術会議を丸め込もうとしている状況を、1月31日の「週刊金曜日」は、次のように報道している; 政府が進めようとしている日本学術会議の法人化に反対し、その法制化のための協議の中止を求める要請書を学者・弁護士の有志がまとめ、1月21日に石破茂首相や同会議の光石衛(みついしまもる)会長らに郵送で提出。同日、参議院議員会館で記者会見を開いた。要請書には1月上旬からの呼びかけで前日までに140人の学者・弁護士が賛同。有志らは「政府と学術会議が法制化の協議を急いでいる現在の状況は、学問の独立を危うくする大きな危機だ、と感じる人の多さの表れだ」としている。 日本学術会議(以下、学術会議)をめぐっては2020年秋、当時の菅義偉首相が会員候補者6人の任命を拒否。国会などで大きな問題になったが、政府はいまだに任命拒否を撤回せず、拒否の理由も示していない。 任命拒否から間もなく自民党内にプロジェクトチームが立ち上がり、20年12月には学術会議の法人化を求める提言が出された。政府もこの間に法人化の方針を示し、23年には日本学術会議法の改正案を通常国会に提出する方針だったが、国内外の学術関係者から法改正への懸念を表明する声明が多数寄せられたことから同年4月、改正案の国会提出を見送った。 内閣府が同年8月に設置した「学術会議の在り方に関する有識者懇談会」は昨年12月20日に最終報告書を公表。学術会議を法人化し、首相による会員の任命をなくす一方、国による財政支援は続けつつ首相が任命する監事を新たに置くなど、一定の関与を残す案を示した。政府は同案を基本に1月24日召集の通常国会で新たな法案を提出する方針だ。 学術会議は昨年12月22日に開いた臨時総会で前記の最終報告書について議論した。会員からは最終報告書を評価する意見もあったが「独立性が担保されるのか」など懸念する意見が相次いだ。最終的には同報告書を一定評価のうえ、「具体的な法制化に向けて責任を持って政府と協議していく」との光石会長の談話を発表した。◆今後も広く賛同者を募集 こうした状況に危機感を覚えた野田隆三郎(のだりゅうざぶろう)・岡山大学名誉教授、清水雅彦(しみずまさひこ)・日本体育大学教授、澤藤統一郎(さわふじとういちろう)弁護士の3人が発起人となり作成した今回の要請書では、まず有識者懇談会の最終報告書について「首相任命の監事の法定化、『中期目標・中期計画』の法定化などを求めており、法人化は学術会議を政府の従属下におくものだ」と指摘。「権力は暴走する、これは歴史の教訓であり、政府が誤った方向、国民の幸福に逆行する方向に向かおうとしたとき、それを抑制することが学問の使命である」「学術会議法人化は後世に禍根を残す重大な背信行為である」としたうえで「法制化のための協議を直ちに中止するよう強く求める」と結んでいる。 記者会見ではまず野田名誉教授が要請書を出すに至った経緯などを説明。「学術会議と政府は法人化の法制化の協議を急いでいる。これは由々しき事態だ。強い危機感を覚え、要請書を公開し、多くの賛同者を集めることによって力にすることを考えた。私たちと同じ危機感を抱いている人がたくさんいることがわかった」と語った。 澤藤弁護士は「『新しい独立した学術会議をつくる』との口実で国が学問や研究者を政府の支配下に置こうと画策をしているとしか思えない」と指摘した。清水教授は「任命拒否が解決しない限りは先に進めてはいけない。任命拒否が忘れられようとしていることが非常に問題だと思う」と述べた。 賛同者の一人で会見に出席した隠岐さや香(おきさやか)・東京大学大学院教授は、最終報告書の公表の2日後に学術会議の臨時総会が招集された点について「会員は2日間で最終報告書の内容を理解して審議することが求められた。この性急なプロセスには危機感を覚えた。このようなやり方がまかり通ってよいのか」との懸念を表明した。 呼びかけ人らは今後、一般市民にも範囲を広げた形で要請書への賛同者集めをウェブサイト「日本学術会議と政府に声を届けたい市民のページ」(※)で継続する。<竪場勝司・ライター>※「日本学術会議と政府に声を届けたい市民のページ」https://sites.google.com/view/academic-freedom/2025年1月31日 「週刊金曜日」 第1506号 6ページ 「きんようアンテナ-『後世に禍根を残す背信行為』」から引用 この記事が訴えるように、現在の学術会議の会長をはじめ役員の先生たちはどちらかと言うと危機感に乏しく、誠意をもって話し合えれば政府の言うことは何でも聞き入れるかのような、甚だ心細い印象を覚える。学術会議の会員の中には、政府の邪な企みを見抜いて政府提案を拒否するように主張する会員もいるのだから、執行部はそのような貴重な意見に耳を傾けて、学術会議内部の議論を重ねて、学術会議としての自主性を損なうことのないように、政府との協議には細心の注意を払って臨むべきだと思います。また、一般市民の支援を得て、私たちの社会の健全な発展のために尽力してほしいと思います。
2025年03月08日
二期目のトランプ大統領と日米首相会談に臨んだ石破首相の言動を、日本のメディアはどのように報道したか、ジャーナリズム研究者の丸山重威氏は2月16日の「しんぶん赤旗」に、次のように書いている; 石破茂首相とトランプ大統領の日米首脳会談が開かれました。「(トランプ氏が)首脳と会うのは2人目」と宣伝され、日本の43兆円以上の大軍拡や、日本から米国への1兆ドル投資などが約束されました。 「一定の成果」(野田佳彦立憲民主党代表、「東京」9日付)と評され、「主導権を握り続けたトランプ氏は余裕の笑みを浮かべて会見場を後に」(同)した-。9日付の各紙は、「円満会談」(「産経」)、「関係構築一歩」(「毎日」)と大見出し。同時に批判も目立ちます。 「毎日」社説は「目に付いたのは、実利を優先して摩擦を避けようとする姿勢」「共同声明には、日本が2027年以降も抜本的に防衛力を強化すると明記」と指摘します。 「朝日」社説は「(首相の)持論としてきた日米地位協定の改定は、共同声明や会見では一切触れられなかった」とします。 ガザ住民の強制移住やパリ協定からの離脱など、国際秩序や人権に背を向けるトランプ氏に石破氏が何も言っていないことには、「読売」社説でさえ「こうした独善的な言動まで、手放しで支持するわけにはいかない。日本は、法の支配や国際協調の重要性を粘り強く米側に呼びかけていかねばならない」と指摘。「日経」社説も「トランプ氏に是々非々で対応すべきなのは言うまでもない。その中には・・・気候変動や公衆衛生といったグローバルな課題も含まれる」といいます。 地方紙からも「日本は対米追従一辺倒ではなく、国際協調の意義をトランプ政権と協議していくことが必要」(信濃毎日新聞)、「世界を混乱に陥れている『トランプ流』を日本が是認しているようにしか見えない」(北海道新聞)、(米国に)軍事的、経済的な貢献を率先して差し出す日本の従属性がさらに強まっているのではないか」(琉球新報)。まさにその通りです。(まるやま・しげたけ=ジャーナリズム研究者)2025年2月16日 「しんぶん赤旗」 日曜版 31ページ 「メディアをよむ-対米追従一辺倒に批判も」から引用 グリーンランドをアメリカのものにしたいとか、ガザのパレスチナ人を周辺国に移住させてガザをアメリカの土地にしたいなど、非常識な言動の絶えないトランプ大統領と面談して、石破首相は何を言われて帰国するのか、一抹の不安を抱いた国民は多かったのではないかと思います。そういう人は、立憲民主党の野田代表のように「一定の成果があった」と言って胸をなで下ろしているのかも知れませんが、しかし、常識で考えれば、同盟の相手国であるアメリカのトップが非常識な言動をしているときに、面談をしていながら、そのことには一言も言わないというのは、下手をすれば「石破首相はトランプ発言を肯定しているのか」とも言われかねないのですから、ここはやはり、「日米同盟は『法の支配』を共通の価値観として成り立っていることを、大統領閣下との共通認識として確認したいと存じます」くらいのことは言うべきであったと思います。
2025年03月07日
政府は日本学術会議を改革すると称して、よりコントロールしやすい組織にするために独立法人にする案を提案しているが、それについて物理学者で日本学術会議前会長の梶田隆章氏は、朝日新聞のインタビューに応えて次のように述べている; 菅義偉首相(当時)による会員6人の任命拒否に端を発し、政府・自民党が論点をずらす形で持ち出した日本学術会議の組織改革が大詰めを迎えている。政府は通常国会に改革法案を提出する構えだが、こんな決着で本当に良いのか? ノーベル物理学賞受賞者にして学術会議前会長の梶田隆章さんに聞いた。――内閣府の有識者懇談会が最終報告書を出しました。学術会議を法人化し、首相による会員任命は廃止、国の財政支援は続けると。どう読みましたか。 「いろいろともっともらしいことが書かれていますが、学術会議が一番願っている、自主性・独立性については聞き入れられていないようです。大臣任命の『監事』『評価委員会』を新設し、法人化後の新しい会員はこれまでとは違う特別なやり方で選出すると。学術会議をがんじがらめにして国のコントロール下に置きたい。そのような意図を感じます」 「そもそもなぜ法人化しなければならないのか。『国の機関のままの改革では限界がある』とのことですが、論理として非常に弱く、結論ありきという気がします。私自身は法人化に絶対反対という立場は取りませんが、特に変えるべき強い理由もない組織をあえて大きく変えるというのであれば、学術会議をより良くするという理念に基づき行われなければなりません。ところが、学術会議側が示した懸念について真摯(しんし)に耳を傾けた形跡はない。議論を尽くしたとも言えない」 「このような『理念なき法人化』が本当に行われたなら、日本の学術の『終わりの始まり』になる。心配です」――「終わり」とは? 「ひとえに学術に基づき、社会や国に意見を言うのが、ナショナルアカデミーたる日本学術会議の使命です。しかし人事や運営面で国のコントロールが強まれば、国の方針に逆らうようなことは言いにくくなるでしょう。その影響は、いずれ学術界全体に及びます」 「地球温暖化など、世界の英知を結集して対応すべき問題が眼前に迫っている。フェイクニュースが氾濫(はんらん)するこの時代に、ナショナルアカデミーの重要性はより増しているはずなのに、力をそぐようなことをして、本当にいいんですか?と」――「いいんだよ。国費で運営されているのに、国の方針に反する提言をするなど学者の思い上がりだ。けしからん」くらいが世の大勢ではないかと。 「たとえば裁判官は国から給料をもらっていますが、国がおかしいという判決も出す。そういうことを通して、よりよい国になっていく。国に対してみんながイエスと答えるだけになってしまったら非常に貧しい国になってしまうと思います」 「日本学術会議法の前文に『科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献』とあります。学術会議会員は、わずかな出張旅費と最低限の日当が支給されるだけです。それでも、この前文の理念に沿って、人類社会の福祉に貢献したいという使命感から活動しています。お金や地位のためではない、大事な営みです」 ■ ■――人類社会の福祉より目先の国益。そんな風潮が強まっています。 「その点では、やはり日本は、間違った方向に進んでしまっているのではないかと思っています。科学の分野でも、国益に役立ちそうなプロジェクトには大きなお金がついているのに対し、基礎的な研究は予算的にかなり厳しい状況が続いている。科学技術指標における『注目度の高い論文数』の国別順位では、日本は昨年13位とG7で最下位。この衰退ぶりをみても、何か失敗したことが明確にわかるはずです。学術会議でも意見や警告を発してきましたが、残念ながら、聞いてもらえている雰囲気は、ないですね」 「国を動かす人たちに、科学というものがよく理解されていないのかもしれません。それぞれの研究が、どんなところでどういうふうに役に立つか、最初から見通しが立つわけではない。だからある程度寛容に、科学者の知的好奇心が自由に羽ばたくようサポートする態度が必要なのですが、そういう面が弱すぎる感じがします」 ■ ■――問題の発端は、当時の菅義偉首相による、6人の会員の任命拒否です。 「2020年10月1日、第25期の発足総会に出席した際、一部の会員が任命されていないと初めて知り、いったい何が起こったんだ?とただただびっくりしていたら、会員による互選で会長に選ばれてしまって。いやあ、ひどいことになったなあと思いましたね。でも、もう、やるしかない。任命拒否は大問題なので、解決すべく可能な限り努力するのが自分の使命と思い定めました」――内閣法制局長官やNHK経営委員など、安倍晋三政権は人事による統制を強めました。その流れの一環と見ますか? 「よくわかりません。でも、そういうふうに考えて矛盾はないような気はします。政治のトップへの権力集中が、いま世界中で起きています。太平洋の向こう側の国なんかのことも気になります」 「裁判も提起されていますが、政府は任命拒否の理由を開示すべきです。それができないのならとにかく6人を任命してもらいたい」――官房長官や担当大臣と折衝を重ねられ、心身ともに削られたのでは? 「任命拒否問題について交渉している途中で、学術会議の組織改革を政府は出してきた。非常にいやらしいなと思いました。こちらは小さな組織なので、両方に十全な対応をするのは無理ですから」 「会長だった3年間は、基本的に研究らしきものはやっていません。当初は東京大学宇宙線研究所の所長でもあったのですが、二つを兼ねることはとてもできないので、所長の方は任期が終わるのを待って次の方へ、としました」 ■ ■――報道によると、学術会議は最終報告を「大筋容認」と。梶田さんがせっかく3年間を捧げて政府と対峙(たいじ)したのに、ちょっとがっかりしませんか? 「よくわかりません。ただ、『大筋容認』は報道のミスリードじゃないかな。まだそこまでには至っていないと、信じています」 ――ここで妥協しないと潰される。そんな恐れが現執行部にはあると巷間(こうかん)言われています。素朴な疑問ですが、潰されたらまずいのでしょうか。 「これは完全に僕個人の考えですが、国からの独立性を失い、本当にデタラメな学術会議になるんだったら、『国が潰した』の方がまだましです。そういう国だと世界から思われるでしょうが、それも仕方がない。そんなふうに思っています」――梶田さんなら「だったら潰してくれ」と言うと。 「いやいや、自分から『潰して』なんて決して言いませんよ。我々の意見はこうですと言い続けます。同じことを言い続けて、それでも結果、国に潰されるんだったら、しょうがない。そういう国だとあきらめるしかない」――何を言い続けますか。 「ナショナルアカデミーとして学者の総意を社会や国、国際社会に発信できる組織であること。そのために学術会議が掲げ続けている(1)学術的に国を代表する機関としての地位(2)そのための公的資格の付与(3)国家財政支出による安定した財政基盤(4)活動面での政府からの独立(5)会員選考における自主性・独立性――の5要件をすべて満たすこと。ここは絶対に譲れません。現執行部は苦しいでしょうが、踏ん張ってほしいと思います」――ノーベル物理学賞受賞者なのに、ちょっとないがしろにされ過ぎ・・・という気持ちにはならないですか? 「ああ、なくはないですよね・・・まあ、それは他人がないがしろにするのだから、しょうがないけど」――怒っていいと思います。 「ははは。わかりました。まあそうね。やっぱり、どうしたら学術が発展するのかということについて多少は意見を聞いてくれたらいいと思います」――そのような国で科学者をやっていても、なんだか希望が持てなくはないですか? 「本当ですよね。正直・・・そうは言いながらも、将来良くなってほしいなあとか、理由もない希望を捨てないでいます」 「ともかく、われわれ科学者は原則を言い続けることが必要です。6人を任命拒否して学術会議の独立性をおびやかし、その理由も開示しないまま、『独立性を高めるための法人化だ』などと言う政府を前に原則を捨てたら、科学者の名折れです」(聞き手 編集委員・高橋純子) *<かじた・たかあき> 1959年生まれ。東京大学卓越教授(宇宙線研究所)。2015年、「ニュートリノに質量があることを示すニュートリノ振動の発見」でノーベル物理学賞受賞。2025年2月11日 朝日新聞朝刊 13版S 11ページ 「オピニオン-学術会議 これで決着?」から引用 菅内閣のときに学術会議が作成した推薦人名簿のうち、日頃から政府批判をする学者を6名、推薦拒否した事件で、当時の学術会議担当者から政府は裁判に訴えられており、その裁判が決着しないうちに「学術会議改革案」を出して、通してしまえば、裁判も取り下げを要求できるとでも踏んでいるのか、政府のやり方は、学術会議設立の「精神」に反した非民主的なやり方で、国民として許すわけにはいきません。しかし、上の記事でも指摘されているように、現在の政府は学者が学問の成果にのみ立脚して意見を言うことが許せず、政府の予算で運営される会議なのだから、政府の都合も考慮に入れて発言してもらわなければ困るという「姿勢」であることは明らかで、国民はそのような政府の思い上がった態度を批判するべきであり、メディアはそういう角度から政府批判の先頭に立つべきなのに、政府が「独立法人化案」を出してきたときに「これで無難に決着しそうだ」などとムード作りをしたのは朝日新聞も例外ではなかったと思います。梶田氏の主張はもっともなことであり、もっと積極的に問題点の指摘をしていくべきだと思います。
2025年03月06日
建国記念の日について、元文科官僚の前川喜平氏は2月16日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 11日の建国記念の日に「X」で見つけたのは長島昭久衆院議員・首相補佐官の投稿だ。「建国記念の日おめでとうございます。初代神武天皇ご即位から126代にわたり、一系の皇統を繋いで2685年。かつては『紀元節』と呼ばれておりました」云々とあった。 明治政府が日本書紀の記述を根拠に、神武天皇即位の日を西暦紀元前660年の太陽暦2月11日と決めて(もちろん史実ではない)、この日を紀元節と定めたのが1873年。1940年には「皇紀2600年」が盛大に祝われた。長島氏は15年後には「皇紀2700年万歳」とでも書くつもりだろうか。 しかし建国記念の日は紀元節が名前を変えたものではない。66年の祝日法改正で与野党の駆け引きの結果、「の」を入れて「建国された日」ではないことを示し、具体的な日は「政令で定める日」とした。政令を定めたのは佐藤栄作内閣だ。 学習指導要領では、小学校6年の社会科で日本国憲法を学ぶ際に、なぜか国民の祝日について教えることになっているが、建国記念の日については右のような経緯を教えたらいい。間違っても神武天皇が即位した日などと教えてはいけない。 政令で定めた日は政令で定め直せる。僕は、ポツダム宣言の受諾により天皇に代わって国民が主権者になった8月15日にしたらいいと思う。(現代教育行政研究会代表)2025年2月16日 東京新聞朝刊 11版 21ページ 「本音のコラム-8月15日を建国記念の日に」から引用 私も、天皇主権の大日本帝国から国民主権の日本に生まれ変わる切っ掛けになった8月15日を「建国記念の日」にする案に賛成です。かつて天皇は神さまの子孫であるとの伝説に基づいて明治時代の政府が定めた「2月11日」は、このまま放置すれば、「やっぱり天皇家は神さまの子孫だ」との俗説が復活する危険性はあると思います。そのような俗説に足元を掬われる前に、日頃から「天皇主権と国民主権とでは、何が違うのか」とか「建国記念の日が必要なら、何日にするのが適切なのか」という議論をすることが大事で、存在しない天皇が即位した日などという架空の話に国民が惑わされる事態を招くことのないように、日頃から「言論の自由」を確保していくことが大切である、というのが私たちに示された歴史の教訓です。
2025年03月05日
二期目のトランプ政権について、神戸女学院大学名誉教授で凱風館館長の内田樹氏は、2月16日の東京新聞コラムに、次のように書いている; トランプの暴走が止まらない。就任前の意表を突く長官人事で「ベスト&ブライテスト」の連邦職員たちをうんざりさせて退職を促すという小学生みたいな「いやがらせ」をしたことにびっくりしたが、その後もグリーンランドとパナマ運河の領有を宣言したり、カナダ、メキシコを高関税で脅かしたり、国際機関から脱盟したり、パリ協定から脱退したり、ついにはガザを米国領にしてパレスチナ人を追い出してリゾートにするという妄言まで口にし始めた。 どれも「実現不能な要求」をまずぶつけて、相手を驚かせてから若干の譲歩をしてみせて、相手がちょっと安堵したところで手打ちにするという交渉術を繰り返している。トランプはそういう「ディール」がよほど好きなのだろう。 ◇ ◆ ◇ ドナルド・トランプは米国史上最悪の大統領だと言うと、これまでは「そんなことはない。トランプは仕事ができる政治家だ」と反論してくる人が少なからずいたけれど、ここまでくると私の周りからトランプ支持者はいなくなった。称賛しようにも、いまだに「トランプの世界戦略」が明らかになっていないのである。とりあえず世界中を「唖然とさせる」ことには成功したが、それだけである。 トランプは第25代のウィリアム・マッキンリー大統領を高く評価しているそうだ。マッキンリーは高関税政策を採用し、米西戦争でスペインからプエルトリコ、グアム、フィリピンを奪って自国領とし、キューバを保護国化しハワイも併合した。それがトランプのロールモデルなのである。マッキンリーの次の大統領は、セオドア・ルーズベルトで「こん棒外交」(相手を殴ると脅して要求をのませる)で知られた人物である。 どうやらMake America Grate Again (「偉大な米国よもう一度」)というスローガンの下で再演されるのは19世紀末から20世紀初頭にかけての最も帝国主義的で、領土的野心を剥き出しにしていた時代の米国のようである。そういうことはもっと早めにアナウンスしてほしかった。トランプ本人のモデルはマッキンリーとルーズベルトらしいが、彼の「虎の威」を借りて政府効率化省を率いるイーロン・マスクは別の政治家を想起させる。ジョセフ・マッカーシーである。 ◇ ◆ ◇ このウィスコンシン州選出の上院議員は、有権者にアピールする公約を求めていた時に、「共産主義者が連邦政府に侵入している」という風説を耳にした。そして「これはいける」と踏んで、連邦政府にソ連のスパイが入り込んで政策決定に関与しているという陰謀論を語って全米に衝撃を与えた。以後、マッカーシーは世界で最も影響力を持つ人物の一人となった。彼は国務省、CIA、陸軍などあらゆるところにソ連のスパイが入り込んでいると言って、ほとんどすべての連邦政府機関を機能不全に追い込んだ。 イーロン・マスクが「生産性の低い連邦政府職員」を排除しようとするのはマッカーシーが「ソ連のスパイ」を排除しようとするのと、陰謀論の構成について言えば同工異曲である。イーロン・マスクを放置すれば、彼はマッカーシーを超えるダメージを米国にもたらすリスクがある。トランプが「自分より目立つやつ」を追い出せば、二つのリスクのうちの一つは消えるけれど。2025年2月16日 東京新聞朝刊 11版 4ページ 「時代を読む-アメリカの二つのリスク」から引用 この記事は常識的な判断基準に則っているので、主張している事柄もスムーズに理解が出来る。「赤狩り」で有名なマッカーシー議員の陰謀論がアメリカで猛威を振るい、それでアメリカ共産党も壊滅し、アメリカの労働者階級は大きなダメージを負ったのであったが、それでもアメリカでは(西欧も同じであるが)労働者は団結して「権利」を主張して戦うという「能力」を失ってはいない。それに比べると、日本は創立100年を超える立派な「共産党」という組織を持ちながら、しかし労働者階級は資本家の手先に完全に騙され、ストライキを「封印」されて、資本家の「お情け」にすがって生きる道を選択させられている。賢明なアメリカの労働者は、民主党に裏切られてうっかりトランプを選んでしまったが、そのダメージはなるべく最小限に抑えて、その次にはきっと真の労働者の味方を選び出すことでしょう。
2025年03月04日
アメリカが今まで実施してきた海外援助活動を、トランプ政権がことごとく「停止」していく方針であることについて、文筆家の師岡カリーマ氏は2月15日の東京新聞コラムに、次のように書いている; トランプ大統領はアメリカ合衆国が嫌いなのではないだろうか。 中東で育った私は、アメリカの海外援助機関、USAIDという名が持つ特別なオーラに接してきた。アメリカの理不尽な外交政策をどんなに憎もうと、これだけは人々の敬意の的だった。救われてきたのは貧困国や紛争国だけではない。食糧や医療を与えられた子どもたちだけではない。これがあるからアメリカのイメージは救われてきたのだ。 しかし、不穏にも連邦政府の支出改革を任された大富豪イーロン・マスクから見ると、こんなものは無駄遣いらしい。それにトランプ大統領も同意し、ほぼ全ての支援事業が停止された。職員もほとんど全員が締め出され、まるで粛清だ。 瓦礫の山と化したガザを「解体工事現場」と呼んだトランプ氏だが、今の米国こそ解体現場である。多様性や寛大さや民主主義の自浄作用など、米国を尊敬に値する国にしていたあらゆるものが取り壊され、時代錯誤で利己主義な側面だけが肥大化していく。野党もメディアもアカデミアも、この濁流を止めるには無力に見える。対立関係にある国々は、自ら顔に泥を塗る米国を見て、さぞ満足であろう。 私たちはしばしば、歴史上の愚行について、なぜこんなことが可能だったのかと不思議に思うがきっとこんな感じに可能なのだろう。(文筆家)2025年2月15日 東京新聞朝刊 11版 23ページ 「本音のコラム-解体現場」から引用 「歴史上の愚行について」こんな感じに可能なのだろうと、いささか無責任な表現であるが、私たちはそのような投げやりな「見方」ではなく、現実を直視するべきだと思います。問題は、トランプ氏もマスク氏も政治の素人である点だと思います。金儲けに長けた人たちだから、選挙に当選して政府高官の地位を得ることには成功しても、「政治」の「せ」の字も知らないのだから、USAIDが世界でどのような活動をして、どのように人々が救われているかなど全く知る由もないわけで、単に「政府の支出を減らせば、国内の低所得者層を救済できるかも知れない」というような浅知恵で「愚行」に及んでいると見るべきだと思います。しかし、USAIDの活動を停止させたからと言って、それが直ちに国内の低所得層を救済することに繋がるわけはないので、数年後には誰の目にも「単なる愚行」であったことが明らかになるだけだと思います。トランプ政権がどんなに乱暴な「改革(?)」をしてみたところで、かつてアメリカを輝かせた「資本主義経済」は、もはやアメリカを捨てて、人件費の安い開発途上国へ生産拠点を移してしまったわけで、これを、道を誤った資本家がトランプ政権に媚びて無理やり生産拠点を米国内にもってきても、それは「経済原則」を無視することになって、その結果、経済活動に支障をきたし、競争相手の「資本」に敗北するだけですから、今の私たちは「覇権国家アメリカ」がどのように没落していくのかという「ドラマ」を見せられているのだと思います。
2025年03月03日
ロシアの歴史を専門的に研究してきた東京大学教授、松里公孝氏の最終講義を聴講した毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏は、2月15日の同紙コラムに、次のように書いている; ウクライナ停戦へ米露交渉が始まる。ロシアの侵攻から間もなく3年。何度も即時停戦を唱えて批判されてきたコラムとしては何か言うべきだが、気が重い。 どんな議論にも、どっちの肩を持った、正義はどうなる、といった反応が大勢を占める間は、この戦争に正解も出口もない。 10日、東京・本郷の東京大学法学部で松里公孝教授の最終講義があった。一昨年の著書「ウクライナ動乱」(ちくま新書)は、「ロシア=悪、ウクライナ=善」の通説と全く別の視点を教えてくれた。これは聴き逃せない。 演題は「ロシア帝国の総督制 19世紀~1917年」。100年以上前の帝政ロシアにおける辺境支配の濃密な法制史を、たっぷり2時間。一般公開にしては難しすぎる。途中退席者もいた。 教授は現在の戦争に何も触れなかった。しかし、それが2014年のクリミアのロシア編入・ウクライナ東部戦争の延長で起き、今なお続く旧ソ連圏解体、大きな社会変動の一つと考えれば、そもそもロシア革命で作られた民族単位の連邦構成共和国とは何だったのかに問題はさかのぼる。 レーニンが認めた各民族は、革命前の帝政が領土を広げ、「内地と辺境」を統治する法制と施政によって形成された。総督制の分析は、バルト3国から東欧・中央アジア・極東に至る広大なロシア周辺のナショナリズムの成り立ちを知る上で欠かせない。 それが現在のウクライナ戦争にどう関係するか。教授は語らなかったが、配られた著作目録から、日本語の一般向け文章の表題をいくつか並べてみよう。「ウクライナの国家建設の挫折――ソ連解体の事後処理の観点から」「未完の国民、コンテスタブルな(論争的な、異論の余地がある、疑わしい)国家」「正義論では露ウ戦争は止められない」 ウクライナは、ロシアの侵攻前から、複雑な歴史の層が折り重なり、湾曲し、いくつも亀裂が走っていたという診断である。 開戦後、ウクライナの愛国心は燃え盛り、西側ジャーナリズムも同情と怒りから直情的に共鳴する傾向が顕著だった。向き合い方は賢明だっただろうか。 トランプ氏とプーチン氏が長電話で合意した米露交渉には、早くも非難ごうごうである。 しかし、停戦の成否を決める安全保障と国際秩序には、ロシアの協力こそが不可欠だ。ロシアは地上から決して消えない。この戦争は、冷戦後のロシアを自由主義的国際秩序に組み込むのに失敗したツケでもある。(専門編集委員)2025年2月15日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-未完の国民国家の戦争」から引用 この記事は、読んですぐに理解するには難しいが、興味深い情報が詰まっているように感じる。レーニンとその仲間が牽引したロシア革命は、それまでに繁栄していたロシア帝国をそっくりそのまま受け継いだものであったとは、言われてみればその通りなわけであるが、今読むと「なるほど」と再確認を促された気分です。 また、毎日新聞に毎週連載しているこのコラムは、何度も即時停戦を主張しては批判されてきたと書いているが、私も「とにかく、一日も早く停戦するべきであって、停戦の後に問題解決の話し合いをするべきだ」という考えは正しいと思います。トランプ大統領も「とにかく停戦」という主張の持ち主で、テレビが報道するところでは、訪米したセレンスキー大統領はホワイトハウスでトランプ大統領と会談したが、「即時停戦を提案するトランプ大統領」と「侵略された国土を奪還するまで戦うので、それまで支援を希望するゼレンスキー大統領」とは、話が合うわけがなく、トランプ氏は「あなたは勝つ見込みもないのに、バクチをしようとしてる」とゼレンスキー氏を批判し、話し合いは決裂したとのことで、確かに、ロシアの侵略行為は是認は出来ないとは言え、だからと言って、他国の経済力を当てにして戦争を継続するというゼレンスキー氏の「考え方」には、賛成出来ません。日頃から暴言が目立つトランプ氏ではあるが、無駄に血を流すことを先ず止めるのが先決というトランプ氏の考えの方が現実的だと思います。
2025年03月02日
最近の若い人たちは働くことについてどう考えているのか、朝日新聞記者の真鍋弘樹氏は2月17日の同紙夕刊に、次のように書いている; 東京の有名私大で、学生数人に集まってもらい就活について考えを聞いた。 「仕事だけが自分の人生ではないから、家族と過ごす時間とやりがいが両立できる企業がいい」 自分の学生時代とは雲泥の差である。ワーク・ライフ・バランスの大切さがふつうに身についている。 少子化で新卒が減る今、就活戦線は売り手市場だ。そこで選ばれるのは、脱・長時間労働で転勤も少ない企業だという。 私が就職した頃はバブル期で、やはり超のつく売り手市場だった。学生はちやほやされた時代だ。 しかし、入社後は別の世界が待ち構えていた。 初任地に着任した日、歓迎会が催された。前日までの新人研修で疲れ切っていた私は、終わる気配のない宴席で、先に帰ってもいいですかと恐る恐る尋ねた。 「誰のためにやっていると思ってるんだ」。上司は酔った顔をさらに赤くして怒鳴り、社会人生活は最悪の雰囲気で始まった。 毎日のように全員が午前0時過ぎまで職場にいる。誰も帰ろうとせず自分も帰れない。最初の数カ月、まともに休んだ記憶もない。 当時の新聞社はとりわけ常識外れだったが、社会の空気としても長時間労働はふつうだった。自分だって、最初は異常だと感じた長時間労働が「ふつう」に絡め取られるのにさほど時間はかからなかった。 前提となっていたのは、働くのは男性、家事育児は女性という当時のふつうだ。男女雇用機会均等法ができて総合職の女性も増えつつあったが、多数派の中高年男性たちの目に、少数派の困難は映らない。 バブル崩壊後の30年、オヤジ的な働き方がなかなか変わらなかったのは、雇用の買い手市場が続いたのも大きい。就職氷河期に世に出たロスジェネの多くが非正規雇用に吸い込まれ、正社員なら長時間労働も当然という暗黙の圧があった。 近年、女性の大学進学率と就労率が上がり、共働きは多数派になっている。若い世代が、性別問わず家事育児を担えるような働き方を求めるのは必然だろう。 社内でも、昨年末に掲載した「脱・長時間労働」企画を動かしたのは、20~30代の若手記者らの思いだった。いまだに昭和の働き方が続いているのは、ふつうじゃない、と。 少子化で若い世代は減り続け、企業は選ばれる側となる。雇用の売り手市場は、私もその一員であるオヤジ社会の「ふつう」を変える力を秘めている。(オピニオン編集部) *<まなべ・ひろき> 1990年入社。フォーラム編集長。言行一致を目指し、家事の半分をやろうとしている。朝刊漫画「ののちゃん」のお母さんが日々の晩ご飯の献立に悩む姿に共感するようになった。もちろん今晩もナベ料理です。2025年2月17日 朝日新聞夕刊 4版 6ページ「取材考記-脱・長時間労働、若者の選択」から引用 仕事だけが人生ではないとか、家族と過ごす時間とやりがいが両立する企業がいいとか、今から50年ほど前の私が就職するときは、そんなはっきりした考えは持っていなかったと思います。私は東北出身で、東京の下宿から大学に通学し、就職が決まるとその会社の独身寮に引っ越しして、そこからサラリーマン時代がスタートしましたから、やがて結婚するとは考えておりましたが、独身寮時代は70年代の高度成長期で、ボーナスも年間8か月出て、しかし、現金支給は半額で、残りの半額は自動的に社内預金となり、その社内預金も金利が10%と高利だったので、なかなか良いシステムだなくらいに思っておりました。最初の仕事はコンピュータのメンテナンスの仕事で、ユーザーは24時間フル稼働だったので、我々は昼・夜の二部制でシフトを組んで対応しました。そういう仕事を10年くらい続けた後で、営業部に配置転換となったときに、正に上の記事が述べるような「毎日夜の9時、10時まで誰も帰宅しないで、自分の席で資料作りやら調べ物をしたり、誰も帰ろうとしない」状況で、フロアの中央席に陣取った営業部長が、説教するときも笑う時も、何かと大きな声を出す人物で、この人物が終業のチャイムが鳴っても帰る雰囲気にはならないコントロールをしてるような気がしたものでした。これからの若い人たちは、そのような理不尽と対峙し、労働法を守る健全な職場を目指してほしいと思います。
2025年03月01日
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