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厚生労働省の記者クラブで、戦没者の遺骨収容を扱う「社会・援護局」の取材を担当している。長生炭鉱問題について取材を始めると、所管するのは、戦後補償が専門ではない「職業安定局」だった。「長生炭鉱の労働者は戦没者にあたらない」というのが理由だ。
2016年に成立した戦没者遺骨収集推進法は、先の大戦での戦闘行為で亡くなった人を対象に、遺骨の収容を「国の責務」とする。このため、国籍にかかわらず長生炭鉱の事故犠牲者には当てはまらない。
一方、日本は05年、韓国政府と朝鮮半島出身の労働者の遺骨問題に取り組むことで合意。この担当部署が職業安定局の人道調査室だ。ただ、合意後も遺骨の収容・返還は進まない。 日本人労働者の遺骨については、窓口すら設置されていない。
制度からこぼれ落ちた犠牲者たち。市民らでつくる「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会(刻む会)」は、30年以上、遺骨の収容に向けて取り組んできた。国に支援を求めている。
答えはいつも「NO」。理由は主に、「炭鉱内の安全性が確保できていない」ため。民間のダイバーが命をかけて潜り、遺骨を探している。その安全性を少しでも高めようと、国に財政支援を求めているのに。
今年8月、市民たちの手によって骨が見つかった。今度は、骨のDNA型鑑定について、日本と韓国のどちらが行うのかが決まらない。韓国側は刻む会に協力的な姿勢を見せている。一方の日本側は、「韓国政府と意思疎通をはかっている」と繰り返すのみだ。
「あなたたちに任せて放っておいたら、遺族はみんな死んでしまう。遺骨だって、ダイバーが命がけで収容してくるんだ」。刻む会と国の交渉で、事務局長の上田慶司さんは語気を強めた。遺族の高齢化も進む。
刻む会の30年以上の取り組みによって、遺骨が残された場所も特定された。 ダイバーが撮影した水中の映像には、服をまとったまま横たわる遺骨の様子が映し出されていた。
水没事故から83年。軍人・軍属ではなかったとはいえ、国は、民間の人々に任せきりにするのではなく、遺骨の収容に関与すべきではないか。今も多くの人たちが、冷たい海の底に取り残されている。
(くらし科学医療部)
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<こう・あやみ> 1992年生まれ。さいたま総局、名古屋報道センターを経て、くらし科学医療部で厚生労働省を取材。戦後補償のほか、生活保護や年金の取材も担当する。在日外国人の問題にも関心があり、取材を続ける。
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