梨木香歩




『西の魔女が死んだ』

【内容】
中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女
まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもと
で過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃん
から、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心
かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も
、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。
(「BOOK」データベースより)


「西の魔女」と言うと『オズの魔法使い』を思い出すので、てっきり
「魔女モノのファンタジー」かと思いきや、大間違い!
登校拒否の少女と、その祖母との心の触れあいを描いた
素敵なお話でした☆

「おばあちゃん大好き!」という少女の呼びかけに「I Know.」
、と、ことあるごとに優しく答えてくれる祖母・・・・・
どんなことがあっても、自分の存在全部をまるごと受け入れて
くれる人がいるって、素敵ですよね。

普通は子供にとって、母親や父親がその役目をするべき
だろうけど、生きることに忙しい親世代では、なかなか、そうも
いかないもの。
そのてん、一線を退いた祖母祖父世代だと、孫のすべてを
ふんわりと受け入れてくれる技量も培われてるし、適任者ですよね。

学校生活に疲れた「まい」と祖母との暮らしぶりも、印象的です。
豊かな自然の残る山里の中で、2人でジャムを作ったり、
ハーブで除虫したり、ベッドメイキングなどの家事をしたり・・・
山の自然と寄り添いながら自給自足的生活を送ることで、
ささくれいた「まい」の心も柔らかく再生していく様子が、とても鮮やかです☆

「死んだらどうなるのか?」「楽な生き方を選んでいいのか」など
生きていくうえで、必ずぶつかる数々の疑問に答えてくれる
オバアチャンの言葉も、とても鮮烈!!

「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う
必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、
蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で
生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか?」

ウンウン、ホントにそう!
なんて分かりやすくて素敵なメッセージでしょ☆
他にも、オバアチャンから伝授される「魔女修行」は
「なんでも自分で決めること」
「そのためには規則正しい生活をすること」
など、など・・・・

ズルズルとズボラな生活を送る私にも耳の痛い修行がたくさん!
チョッピリ反省させられました^^;

温かで「生きる」ことへの魅力的な示唆がたくさん盛り込まれた
素晴らしい作品です。
たぶん、児童向けの本なんだろうけど、少々お疲れ気味の大人
にピッタリの本!
薄くて読みやすいので、ぜひ一読をオススメします♪

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『裏庭』 

【内容】
昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館の庭は、近所の
子供たちにとって絶好の遊び場だ。
その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、
照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、
声を聞いた-教えよう、君に、と。少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。
少女自身に出会う旅に。 (「BOOK」データベースより)


この作品、1995年に第一回児童文学ファンタジー大賞を受賞したとか。
児童文学、というには、少々重たい作品だと思うんですが・・・・
「鏡の国のアリス」や「千と千尋の神隠し」「ネバーエンディングストーリー」など
を合わせたような摩訶不思議なファンタジーの世界が広がり、グングンと
引きこまれてしまいます♪

根っことなるのは「心の傷と向き合い、新たな自分を構築する」という
ファンタジーにはありがちな設定。
でも、母と娘、母と祖母と面々と繋がる心の傷の痛みが、ひしひしと伝わってくる
、素晴らしい構成です☆

「自分の傷に、自分自身をのっとられてはならないよ。」
ズシンと心に落ちてくるフレーズ・・・・・・

私自身、幼い頃、なぜ、こんなにも母に疎まれるのだろう、と心を痛めた
経験があります。
今思えば、「夫の浮気」という心の傷に全面的に心を奪われ、子供どころ
ではなかった母の気持ちも多少分かるのですが・・・・・
幼い頃に「もっと温かく包み込んで欲しかった」という思いはトラウマのよう
に心に沈んだままです(+_+)

そのせいか、主人公照美の心の奥底にかかえる孤独な魂の戦いが、
ついつい自分の少女時代の姿と重なって感情移入してしまいました^^;
最後の「家族が手をつないで帰るシーン」には胸がいっぱいになって、もらい泣き~(/_;)
私自身も「母の愛情に包み込まれた」ような温かい気持ちになれました。

それにしても、この作品、日本のファンタジー物にしては随所に英国臭がプンプン~☆
えらくバタ臭い(←死語かしら^^;)な、と思ったら、作者である梨木さんは
英国で児童文学作家ベティ・モーガン・ボーエン氏に師事した、とか。

私にとっては、梨木さんワールドにドップリとハマってしまった記念すべき
一冊です♪

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『家守綺譚』 

【内容】
庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・
小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多...本書は、百年まえ、
天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる
新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、
のびやかな交歓の記録である。内容(「BOOK」データベースより)


図書館を出たあと、コーヒーショップで一息つきながら読み始めた
んですが、最初の数ページを読んだだけで、その素晴らしさに圧倒され
、食後、すぐ本屋さんへ直行~ε=ε=ε=(ノ^∇^)ノ 
購入しちゃいました!

これまでも、図書館で借りた本で気に入ったものがあると、改めて
自腹を切って購入することにしてるんですが・・こんなにも早急に
買い求めたのは始めてかも~。
ま、文庫本で安価だったから、という理由もあったんですが(笑)

まるで明治の文豪の文章を読むような香気溢れる日本語の美しさに
惚れ惚れとしてしまいます(//∇//)
カッパや竜や木の精など、ファンタジーの世界ではあるけど、不自然さ
が感じられないのが不思議~!
なにかしら馴染み深い懐かしい世界。
素晴らしい宝物を発見したかのような、そんな喜びをくれた本でした♪
これから何度でも繰り返し読んで、桃源郷のような世界を楽しみたいと
思ってます。

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『村田エフェンディ滞土録』 

【内容】
町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが
囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡の叫び。古代への夢と憧れ。
羅馬硝子を掘り当てた高ぶり。守り神同士の勢力争い―スタンブールでの
村田の日々は、懐かしくも甘美な青春の光であった。共に過ごした友の
、国と国とが戦いを始める、その時までは…。
百年前の日本人留学生村田君の土耳古滞在記。 (「BOOK」データベースより)


明治後期にトルコに留学した若い考古学者の日常が、梨木さんらしい
柔らかな語り口で綴られ、旧イスラム帝国だったトルコの
エキゾチックな雰囲気を楽しく享受できます♪

が、、、、物語後半、一転して、戦乱の渦に巻き込まれ・・・・
もぉ、涙が溢れて止まりませんでした。(;O;)
1

ちなみに以前読んだ「家守」の主人公もチラリと最後に出てきて、話が、
微妙にクロスする心憎い構成です。
う~ん、やっぱり梨木さんて、いいな~~♪♪

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『からくりからくさ』 

【内容】
祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。
糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、
けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。
だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべては
この結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして-。
生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。 (「BOOK」データベースより)


4人の個性的な女性達の共同生活、そして、その4人それぞれが織物や
染色という手仕事に携わっているという、とても魅惑的な題材です。
が、おのおのの関係が、まさしく、からくさのように複雑に絡みあっていく
ので、途中で頭がこんがらがり~(@o@")

というわけで、途中でパスしちゃいました^^;
もう少し、仕事が落ち着いてユックリ読書できる時に、再度挑戦したいと思います(涙)

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