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夜になって今更だけれども、ローリング・ストーンズの新譜「ハックニー・ダイアモンズ」'23のCDを聴けた。アルバムは全12曲48分とコンパクト、このくらいがちょうどいいんだよ、60分超なんて長くて。シングル切られてお馴染みの1曲目“アングリー”、まずのっけのドラムの音が、やっぱり、違和感ありありだなあ。悪くない曲でミック・ジャガーのヴォーカルも溌剌としてはいるのだけど。で、ベースはというと、アンドリュー・ワット?ダリル・ジョーンズじゃないんだ。「ブルー&ロンサム」まではあの人が弾いてたよね。ワットはこのアルバムのプロデューサーでもあるそうだが、一体どんな人?ジャスティン・ビーバーとかポスト・マローンとやってた人?ドン・ウォズの推薦らしいけど、そうきたか。33歳とは、ミックたちの孫くらいと言ってもおかしくない。ドラマー替わったから、ベーシストも新しい人でよかったのかも知れない。このアルバムではベースは意図的にジョーンズ以外の色々なミュージシャンに担当させているのだ。その若いプロデューサーの担当故か、左右から聞こえるキース・リチャーズとロン・ウッドのギターもエッジが効いた音になってる印象だ。そして、最初の3曲は、ジャガー=リチャーズに加え、ワットも共作者として名を連ねている。しかし、2曲目の“ゲット・クロース”はエルトン・ジョン参加って、ピアノの音、聞こえたかな?キーボードといえばツアーのサポートメンバーでもあるマット・クリフォードに加え、ベンモント・テンチがハモンドオルガンで参加してる曲もある。意外なのが、割とハードめでテンポも速い“バイト・マイ・ヘッド・オフ”のベースがポール・マッカートニーとな。じいさんたちの演奏、なかなか熱いな。別次元の年寄りたち勢揃いといったところだ。“ホール・ワイド・ワールド”みたいに、ワットが加わらぬジャガー=リチャーズのナンバーも結構ポップなものもある。リフ弾いてるのはロンなのかな。“ドリーミー・スカイズ”はストーンズらしい感じで、ライヴなら中央でアクースティック披露されるタイプの曲。ミックのハーモニカがいい味。で、“メス・イット・アップ”は、おお、チャーリー・ワッツのドラムだ。ベースはワットという組み合わせ。でも、これもかなりポップな曲だね、嫌いではないけど。そして、“リヴ・バイ・ソード”、こっちのベースにはビル・ワイマン。これはさすがにエルトンのピアノが聞こえるね、先の“ゲット・クロース”の分まで目立ってはいる。一方で、“ドライヴィング・ミー・トゥー・ハード”ではロンがベースだ。結局、ジョーンズはこのアルバムには不参加で、外された?かと思いきや、ツアーメンバーとしては変わらず担当らしい。キースがニチャーっと歌う“テル・ミー・ストレイト”、最近の中(ストーンズのアルバム中の)ではいい出来の方ではないか。ハーモニー・ヴォーカルはロンじゃないよな、誰?セカンド・シングルだったかの“スウィート・サウンズ・オブ・ヘヴン”は、もっとレディ・ガガとのがっぷり四つなのかと思ったけど、ガガのポジション、“ギミー・シェルター”までもいかず、バックヴォーカルっぽいな。ブルージーな雰囲気は悪くないが、スティーヴィー・ワンダー参加ならではの味というか貢献は、終盤に少しだけかな。最後は原点帰り“ローリング・ストーン・ブルース”で渋く締める。書いてきた通り、全体としてはポップな作りで、久しいもんだから特にそう感じるけど、ストーンズのアルバムってこんなにポップだったっけ?何となく、普通に聞き流せてしまう感じの1枚とも言える。とはいえ、聞き応えはまずまずで、何度か聞いていると結構好きになるかも知れない。現メンバー3人の健在ぶりは感じ取れた。アメリカではアルバムチャート3位止まりだったのが惜しいね。まあ、これからまたツアーでじゃんじゃん稼ぐのだろうけど。もし来日公演があったら?いやあ、いいな、もう。価格もたっかいだろうしね。このアルバムと過去の音源聞いてれば充分であります。彼らが今も転がり続けていることは十二分に確認出来たので、それが何よりだ。
2024年04月06日
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先月末の帰宅時に観た映画「トラヴェリン・バンド」というか、要はクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルのロイヤル・アルバート・ホールでのすごいライヴ映像を観て、内なるCCR衝動がリヴァイヴァル。やっぱり、ジョン・フォガティは偉大だねというところで、持ってなかったソロのCDを最近3枚購入。CCRの「ライヴ・アット・ウッドストック」も加えて、帰宅時に家に持ち帰り、スピーカーで音出してリスン!なかなかCD化されず聴けてなかった2枚目のソロCD「ジョン・フォガティ」'75。シンプル過ぎるけれど、それ故にアガるキラー・チューンを2曲含む、本来はもっともっと聞かれておかしくない佳品。何たって、のっけの“ロッキン・オール・オーヴァー・ザ・ワールド”、そして、B面1曲目にあたる“オールモースト・サタデー・ナイト”。あまりにシンプルだし、演奏も粗めながら、その後に色々なミュージシャンがカヴァーしたのも宜なるかな。これほどストレートなロックンロール讃歌は他になかなか無い。更に、ドクター・ジョンらでもお馴染みの“ユー・ラスカル・ユー”や、訴訟沙汰仲間とも言えるヒューイ・ピアノ・スミスの”シー・クルーズ”といったニューオーリンズ・カヴァーも嬉しい。これは、後のソロみたいに、ほぼ一人で録音したのじゃないかな。しかし、一人CCRともいえる、暑苦しいくらいに暑いロックンロール魂が漲っている。これにハマったミュージシャンも多かったろうな。個人的には、ジョージア・サテライツによる“ロッキン”から“オールモースト”のメドレー・カヴァーが一番好きだ。聴いてはいたけど盤は持ってなかった「アイ・オブ・ザ・ゾンビ」'86を挟んで、目下の最新盤となる、2013年の「ロート・ア・ソング・フォー・エヴリワン」を。イーグルスのトリビュート盤のように、売れ線のカントリー系のミュージシャンとのコラボが多いけれど、彼ら以上に元気なフォガティの歌声も随所に聴ける。最初のリードはゲストからというパターンで、”フォーチュネイト・サン”は、デイヴ・グロールからで、オルタナ調に。フォガティのロックンロールは、オルタナでもありパンクでもありカントリーでもありR&Bでもあるという証のようなアルバムだ。“ローダイ”は、息子というか、ひょっとしたら孫?たちを従えてご機嫌なJFおじいの歌声。2曲の新曲はゲストなしで収録。表題曲はミランダ・ランバートとのコラボだが、ギターはトム・モレロが、いつもの変態性は抑えめにソロを披露。年齢的には同期といえるボブ・シーガーを招いての“フール・ストップ・ザ・レイン”は、シーガーの凜とした歌声が聴ける。そして、最後を飾る“プラウド・メアリー”は、ティナ・ターナーの代わりにジェニファー・ハドソンを招いてだが、R&Bでいくのかと思いきや、意外や、ルイジアナ・ローカル調で展開。アラン・トゥーサンにリバース・ブラスバンド、更に、サヴォイ・ファミリーにロッキン・ドゥプシーJrらの、ケイジャン、ザディコ勢まで加えての、意外過ぎる編成。曲がちょっと短いくらいで、この楽しいセッションはもっともっと続けて欲しかった気が。先のイーグルスのような、カントリー系におもねた内容の印象はあるけれどCCR、フォガティの楽曲の良さを再認識させる盤ではあった。黒人ミュージシャンたちで固めたR&B、ブルース寄りのコラボ集もあっていい気がする。「ライヴ・アット・ウッドストック」は、また年末にでも聴こうかね。ジョン・フォガティ、盤歳!
2023年10月21日
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これから出費が嵩むだろうから、今のうちに買いたいものを買っておこうという、我ながらよくわからない理由で、昨年末はストーンズの箱もの買っちまったけど、更に今月もまた箱買ってしまった。それも、これはかなりでかい。6枚組だけど、てっきりアナログと間違えたかと思ったデカさだった。ビーチ・ボーイズの「セイル・オン・セイラー1972」、タワーレコード通販で購入2万円余也。ビーチ・ボーイズの箱ものといえば、去年買った「フィール・フロウズ」は、まだ未開封の状況だけど、こちらは、とりあえず部屋で開けて、最初の2枚は聴いた。ディスク1、2は、オリジナル・アルバムの「カール・アンド・ザ・パッションズ〜ソー・タフ」及び「ホランド」のアルバムと、そのボーナストラックだ。どちらも売れなかったアルバムだけど、個人的には勿論、嫌いじゃない。ただ。「フィール・フロウズ」以上にブライアン・ウィルソンの参加が少なかったあたりなので、よく箱にして出したなあとは思ったけど。オリジナル・アルバムは、昔のCDで音がしょぼかったから、このリマスターされた音で聴くと、部屋のしょぼいオーディオでも結構新鮮に聞こえる。内容は勿論、悪くない。いや、いいよ、いいよ、やっぱり!「カール」は、まさに、カール・ウィルソン主導によるファンキーかつソウルフルな内容で、助っ人メンバー、ブロンディ・チャプリンとリッキー・ファターの活躍が目立つ。昔は、これが、ビーチ・ボーイズなの?という疑問符も当然あったけれど、そういうフィルターをかけずに聴くと、実にバラエティに富んだ好盤。何より、終盤のデニス・ウィルソンによる壮大な2曲。今回は日本盤を買ったから、歌詞カードや解説、ブックレットの日本語訳も読めて、盤の魅力を満喫できる。「ホランド」、これは、やっぱり、ブライアンのソロのライヴでも定番になってる”セイル・オン・セイラー”が白眉。ブライアンが曲で絡んでいるのは、それと、“ファンキー・プリティ”くらいの寂しさではあるけれど、聞き物は、多分、差し替えられたと思しいボーナストラックのナンバー。で、ブライアンのおまけ企画“ヴァーノン山と小道”は、やっぱり、よくわかんないけど(苦笑)。ディスクは、更にもう4枚、特に未発表のカーネギー・ホールでのライヴ2枚が目玉だけど、それは家に持ち帰って、向こうのもう少しマシなオーディオでちゃんと聴くとしませう。さすがにBB5箱物は、この辺が限界というか、いくら何でも、次の「15ビッグワンズ」以降のものは、箱にして出しても誰も買わない、さしもの自分だって買わないんじゃないかな(爆)。さて、箱もの、次はボブ・ディランのブートレグ・シリーズの新しいのを、どのタイミングで買うか。いやはや、こんなことしていてはなあ・・・
2023年01月15日
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ということで、ダチからもらったドクター・ジョンの遺作「シングス・ハプン・ザット・ウェイ」。これまで色々なサウンドのアルバムをリリースしてきたドクターだけど、これは、カントリー・アルバムというか、カントリーに共感を寄せた1枚と言うべきか。1曲目からウィリー・ネルソンの“ファニー・ハウ・タイム・スリップス・アウェイ”のカヴァーだ。尤も、僕はウィリーのオリジナルを聞いたことがなくて、これは、意外にもジョージー・フェイムがカヴァーしたヴァージョンで知ってた。サウンドはカントリーというよりも、ドクターのニューオーリンズ・サウンドが活かされている。そのウィリーが、3曲目でデュエットの相手として登場。勿論、初顔合わせの二人なはずだけど、程良く枯れた声同士で、なかなかマッチしている。ドクターのあのピアノとウィリーのあのギターの組み合わせというのもいいね。オルガンでジョン・クリアリーが参加(この他にも4曲で)。更に、ウィリーの息子ルーカス・ネルソンのバンド、プロミス・オブ・ザ・リアルがバックアップして“アイ・ウォーク・オン・ギルデッド・スプリンター”をセルフカヴァーしてブルージーにキメる。カントリーといえば、ハンク・ウィリアムスの2曲のカヴァーもあるが、音はしっかりドクター印。もう少し意外なカヴァーは、トラヴェリング・ウイルベリーズの“エンド・オブ・ザ・ライン”だろう。こちらはアーロン・ネヴィルに加え、ケイティ・プルイットという、初めて名を聞くシンガーが歌声を聞かせる。まだ28歳の新人の彼女は、次のドクターのオリジナル曲“ホーリー・ウォーター”にも参加。少しニコレット・ラーソンあたりを思わせる爽やかなヴォーカルだ。同曲も含め、終盤はプロデューサーのシェイン・セリオットとドクターによるファンキーなオリジナル曲が続く。締めは、再びカントリー、ジョニー・キャッシュの“ゲス・シングス・ハプン・ザット・ウェイ”をしっとりとカヴァー。なるようにしかならんさと達観するような歌詞をドクターがしみじみ歌って終わる。ちょっと地味ながらも、曲にバラエティもあるし、ドクターの少し疲れたような枯れた歌声がサウンドに合致していて、味わい深さが印象に残る。いいアルバムを残してくれたよね、ドクター。
2023年01月05日
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先月も書いたウィリー・ネルソンの唯一の来日公演のライヴCD+DVD、ようやく映像の方を視聴。「ライヴ・アット・ブドーカン」、ジャケには日本語表記もあるが、直輸入仕様なのか、ウィリーのーが縦書きなのに横文字になっている。尺は80分程。1984年2月23日のライヴを収録。日本公演初日という記述がどこかにあったけど、初日は前日の22日で、自分はそちらの方を見たかも知れない。今回の映像で、微妙に記憶と異なるところがあったから。オープニングがやけに静かなのは事情があって、本セットに入る前に、当時の新譜「エンジェル・アイズ」収録のジャズ・ナンバーを数曲披露したのだ。確か、ジャッキー・キングというギタリストも帯同して、完全にジャズセットだった。ひょっとしたら、バンドメンバーも総入れ替えになったかも。初来日公演で、意外な選曲から始まったので、日本武道館の観客もちょっと静まっていたのだ。そして、ファミリー・バンドが登場して、“ウイスキー・リヴァー”で、本格カントリー・セットがスタート。テキサスの旗振るアホ観客が結構いたんだな。ステージバックにもテキサス旗、更にステージ床も。旗踏んでるってことになるだろうけど・・・ともあれ、ウィリーは1曲目で早くも帽子を客席に投げてしまう。そして、いつの間にかトレードマークの赤バンダナを巻いていた。落書きだらけで穴の開いたギターを弾きまくり、穴はコンサート中にも少しずつ拡がっていってた感じ。サイドでヴォーカルも取るジョディ・ペインもギターだが、リードはナッシュヴィルAチームの、グラディ・マーティンが弾く。昨年亡くなった姉ボビー・ネルソンのインスト、“ダウン・ヨンダー”もしっかり収録。中盤のクリス・クリストファスン3連発からは、"ラヴィング・ハー・ワズ・イージアー”のみ映像版からはオミットされていた。ドラムのポール・イングリッシュとベースのビー・スピアーズが軽やかにリズムを刻むアップテンポのカントリー・ナンバーの合間に、スタンダード曲をしっとりと挿入という流れ。ボブ・ディランがやるずっと前にウィリーは、こういうスタンダード・カヴァー集を盛んに出していて、もう完全に自分のレパートリーになっている。ミッキー・ラファエルのハーモニカが哀愁をそそる。いよいよ終盤は、カントリー系の代表ナンバーの連打。武道館、こんなに盛り上がっていたっけかなあというぐらいに賑やか。通常セットは、かなりテンポを速くした“永遠の絆”で終了。ウィリーの声は非常に艶があって、この頃は絶好調という印象だ。アンコールで披露された当時の新曲”フール・バイ・マイ・メモリーズ”は、主演映画「ソングライター」の収録曲。あの映画、未だに観られてないんだよな。締めはウエイロン・ジェニングスと歌った”ルッケンバック・テキサス”。先のクリス・ナンバーといい、盟友たちへの友情を随所に感じさせるステージ。そして、"ウィスキー・リヴァー”リプライズでフィナーレ。ああ、あの公演の記憶は大いに蘇ったね。しかし、数えたら、帽子は都合5個も投げていた。最後にまた別の帽子かぶってたけど、あれも次の公演で投げちゃったのかも?しかし、ステージを降りてファンとキスを交わすとか、コロナ時代の今では隔世の感があるなあ。ま、貴重な映像、色々懐かしゅうございました。
2023年01月02日
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さて、2023年の音楽生活の始まり、新年最初に聴いたのは、サニー・テリー&ブラウニー・マギーの2枚組。「シング」、「ゲット・オン・ボード」、「アット・シュガー・ヒル」の3枚のアルバムに加え、ボーナストラック8曲を収録。基本は二人のハーモニカとギター、そして歌だけの演奏故に、ゴリゴリのブルース感よりはフォーク的なシンプルさが印象に残る(ドラムやベースが入る演奏もある)。「ゲット・オン・ボード」をまんまカヴァーしたタジ・マハルとライ・クーダーもその辺に惹かれたのだろうか。個人的にも電気入りの濃いぃのよりも、こういう方が好みなんだよね。たまたま、タワーレコードで安めに売っていた、ガイ・クラークのデビュー盤「オールドNo.1」’75。晩年のクラークは、もっと野太い声になっていたけど、このアルバムでは、渋いけども愛想のいい歌い方。まさに、アメリカの語り部的なストーリーテリングに富んだナンバーが収録されているが、チップ・ヤング、ジョニー・ギンブルらカントリー系でお馴染みのミュージシャンに加え、ウィリー・ネルソン・ファミリー・バンドのミッキー・ラファエルや、レジー・ヤング、デヴィッド・ブリッグスら多彩な顔触れがバックを担当。ハーモニー・ヴォーカルでは、弟子筋のロドニー・クロウェルにエミールー・ハリス、更にスティーヴ・アールの名前まである。デビュー盤にあの人が参加していたとは驚きだ。ガイ・クラークで最も馴染みのナンバーといえば、7曲目の"汽車を待つ無法者ように”だ。ジェリー・ジェフ・ウォーカーやハイウェイマンのカヴァーを聴いていたけど、オリジナルは初めて聴いた。そのカヴァー版のように目立つ演奏なわけではないけれど、まさにジャケの洗いざらしのデニムのような素朴ながら深みのある味わいの1枚だ。昨年買って未聴だった「リヴォン・ヘルム&ジ・RCOオールスターズ」’77もようやく。リンゴが参考にしたのかなと思える豪華なバック陣を迎えて、リヴォンがのびのびと叩き、歌うアルバムだ。自身が作者として名を連ねる曲は1曲のみで、冒頭の2曲はドクター・ジョン、更にブッカー・T・ジョーンズやフレッド・カーターらのオールスターズ・メンバーの曲を取り上げる他、"ハヴァナ・ムーン”やトラディショナルのカヴァーも。勿論、演奏はゴージャスなのだけど、ちょっとリヴォンの歌いっぷりが一本調子で、思ったほど上出来とはいってない印象の作りだ。そのリヴォンの声と演奏だけで、ある程度は楽しめるのだけど、これは、やっぱり、ザ・バンドのクオリティには及ばない内容かなと思える。そのザ・バンドの二人も1曲のみ参加しているようだけど。とはいえ、晩年に遺したソロ、ダート2作もいずれは聴いてみないとなとは思ってる。そして、最後にダチからのクリスマス・プレゼントでもらった、ドクター・ジョンの遺作&新譜だけど、長くなったので、これは別枠で後日といきますか。とにかく、すっかり、かつての路線に戻ってしまっている、歳食ってからの音楽指向であります。今年もますます、そんな感じだろうね。
2023年01月01日
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昨日に続いて、金は無いけど買っちゃったシリーズ。ウィリー・ネルソンの「ライヴ・アット・ブドーカン」が2CD+DVDで先月発売。これは、買うわ、何せ、年がバレるけど、この公演見に行ったからね(かなりガキの頃に見たのだぞ、マジで)。1984年の、最初で最後の(多分)来日公演、日本武道館だったんだねえ。何せ、この頃のウィリーといえば、「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」の大ヒットがあって、日本では人気今一つのカントリーミュージックながら、間違いなく、その時のスーパースター的存在だったから。映像はレーザーディスク!で出たことがあったそうだけど、音源は初とのこと。2枚組CDで29曲も入っているそうだけど、1曲目が”ウイスキー・リヴァー”となると、これは完全収録ではないと思う。最初に、その当時、ウィリーが入れ込んでいたジャズ、スタンダードのセットが数曲あって、それが一段落したところで、”ウイスキー・リヴァー”で本格始動って感じだったと思う。”スターダスト”とか、”我が心のジョージア”といった曲も収録されているけど、来日時の最新盤だった「エンジェル・アイズ」からの、よりジャズっぽい数曲がオープニングを飾ったという記憶だ。先頃亡くなった、姉のボビー・ネルソンがエレピで演奏した”ダウン・ヨンダー”も収録されているので、やはり、ウィリーのカントリー系ナンバーはきっちり収められているようだ。アンコール後は、ウエイロン・ジェニングス絡みの曲で締められていて、この時、まだまだウエイロンは健在だったと思うけど、二人の友情を示すセットのようで印象深かった。いや、買ったけど、まだ聴いても見てもいない段階で、これを書いているので記憶違いはあるかも知れないけど、これもストーンズの箱もの同様に年末年始のお楽しみだ。で、これは先日のソフマップ同様に、やはりポイントが切れそうなタワーレコードのを使うつもりで買ったのだけど、いや、もう少しポイントを貯めて、更に、追加で何か買って、そこでポイントを使おうと考えていたのだけど、その買おうとしたのが在庫切れ取り寄せになっていた。ここらは、タワーはアマゾンのようにはいかないね。で、当初予定のものとは別のを買うことにした。何を注文したかは、それ、後日のネタにするか、悪しからず。
2022年12月15日
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CD聴かないと。今回家に持ち帰った中の何枚か。まずはパフュームの新譜、それに今更ながらのリヴォン・ヘルム&RCOオールスターズを出来れば。しかし、何やかや時間がなく、結局、パフュームだけどうにか。リヴォンは年末かな、アイム・ソーリー。さて、パフュームの「プラズマ」、悲しいことにチャートでは3位止まりだったようだ。シングルの“ポリゴン・ウェイヴ”はヒットして、去年の「紅白」でも披露されたのだけど。その“ポリゴン”は、久々に、クールなパフュームを印象づける佳曲だった。前作の「フューチャーポップ」は、少し渋めの印象で、個人的には、これという引っかかるナンバーに欠けた印象なのだけど、その分、「プラズマ」は、キャッチーなナンバーが多く、ハズレ曲はない(買ったのは通常盤)。プレリュードから始まって、アップテンポの2、3曲、そして、キーチューンが4曲目という構成が、割とパフュームのアルバムのパターンだけど、やはり、2曲目の“タイムワープ”がアップチューンだが、軽く盛り上げる感じで、次に“ポリゴン”が来る。そして、シングルではないのだけど、4曲目の“再生”が、テンションを加速させる。今回のアルバムの特徴としては、ファンキーなナンバーが目立つ点かな。“スピニング・ワールド”、“ループ”、“ドライヴィン・ザ・レイン”、”アンドロイド&”といった曲は、これまで以上にファンキーなダンサブルさが耳を捉える。その分、バラードナンバーが少ないということになり、シングルの“フロウ”くらいかな。トリの“さよならプラスティックワールド”も、アップテンポのポップチューン。「フューチャーポップ」に較べると、少し軽いけれども、攻めのアルバムという印象だ。アルバムに伴うツアーの方は好調だったようだ。アリーナツアーの合間のホールツアーで、結構、プログレシヴなステージを展開し、それを大きな会場でも活かした形で、ライヴパフォーマンスの更なる進化を追求しているようだ。年末に発売の「ポリゴン・ウェイヴ」のライヴDVDまでは買わないかなと思うけど、「プラズマ」ツアーの方のが出たら、これはやっぱりマストだな。ひとまずは、年末の「紅白」のステージに期待するとしよう。進化を止めないパフュームを確認して新たな年を迎えたい。
2022年11月19日
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到着した映画「サマー・オブ・ソウル」オリジナル・サウンドトラックCDを早速聴いた。劇場で観て思わず涙腺崩壊しまくった名演の数々が蘇る。映画は、当時の時代背景や関係者の証言を随時挟んでいたから、必ずしもライヴ場面が余すところなく収録されていたわけではなかった(ライヴシーンだけの映像も出せばと思う)。だから、改めて音の方で振り返るのは、これはまた貴重と言える。スティーヴィー・ワンダー等、一部の出演者の演奏が含まれていないものもあるけれど、映画でハイライトであったマヘリア・ジャクソン、メイヴィス・ステイプルズ、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ニナ・シモンらのナンバーは網羅されているので、内容は申し分ない。一方、映画で圧倒的だったそれらのパフォーマンスは勿論、映像の方では目立たなかった演奏が、音で聴くと印象が新たになる。映画のエンディングで流れていたチェンバース・ブラザーズの“アップタウン”が1曲目に収録。ゴスペルグループなのかと勘違いしていたけど、これはファンキーなロックンソウル・ナンバーだ。変わらぬルシールの音色が微笑ましいB・B・キング。いきんだヴォーカルも幾分若々しい。フィフス・ディメンションは、映画では1曲だけだったが、こちらでは“僕の叫ぶ声聞こえるかい”も収録されている。ビリー&マリリンが、もっと黒人たちに聞いて欲しかったとインタビューで語っていて、そんな願いが届いた会場の盛り上がりぶりに、思わず涙してしまったんだよなあ。泣けたといえば、まさに白眉だった、マヘリアとメイヴィスによる“プレシャス・ロード”〜”テイク・マイ・ハンド”は、やはり、音だけで聴いても格別だ。モンゴ・サンタマリアのようなラテン系も出演者に名を連ねていたのは、このフェスのキュレーターの懐の深さか。まあ、“ウォーターメロン・マン”はハービー・ハンコック版以上にヒットしたからということもあろうが。続けてラテン系のレイ・バレットの“トゥゲザー”、これ、劇中で登場したか覚えてないのだけど、人種の融和を訴えるメッセージソングが熱く奏でられる。一番異色なのは、ユダヤ系のハービー・マンがフルートで奏でる“ホールド・オン・・アイム・カミング”か。ソニー・シャーロックによるサイケなギターソロがすごい。映画以上に、このサントラ盤的には、この演奏はハイライトのひとつだ。終盤、スライの“ハイアー”は未収録ながら、ニナ・シモンが観客を煽る“アー・ユー・レディ・トゥ・キル?”は、しっかり聞こえるな。デジタル版はマックス・ローチの曲も追加収録だったそうだ。映画もいま一度観たかったけれど、もう日本での上映権が切れたとかいう話、早過ぎだよなあ。元々はテレビ放映用に撮られたけど、お蔵入りになったという映像、テレビ画面には収まりきらない位の弩級の内容だっただけに、劇場版で観られる形になったことは幸いだったとも言える。勿論、当時に上映ないし放送されていれば、本当に革命ものだったろうが・・・
2022年06月10日
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タジ・マハルとライ・クーダーが、実に60年ぶりに共演したというアルバム「ゲット・オン・ボード」が発売となってラジオでも聞かれるようになった。その60年前?の共演というのが、「ライジング・サンズ」のことを指すのだろうけど、あれは1965年の録音ということだから、60年ではないだろう。で、その「ライジング・サンズ」の未発表だった音源は1992年にCD化されて、その時に買っていたのだけど、未開封のままだった。今回のナイチ帰宅と新作リリースのタイミングで、ようやく開封することに。録音はされたけど正規にリリースされず、バンドはすぐに解散したので、まあ試作品くらいの位置付けの内容なのだろうと思っていた。でも、聴いてみると、これが案外悪くない。収録の22曲は大半が古いブルースのカヴァーだが、のっけの2曲、オールマン・ブラザーズ・バンドでお馴染みの“ステイツボロ・ブルース”と、スリーピー・ジョン・エステスの“イフ・リヴァー・ワズ・ウイスキー”は、ちょっとビート・バンドっぽいポップなサウンドだ。リードヴォーカルはタジで、そこに、既に個性は確立されている感のライのギターがのるわけだから、これは結構ゴキゲンなのだ。オリジナル曲を5曲も提供しているジェシー・リー・キンケイドという人はギターとヴォーカルだけのクレジットなので、他のマルチインストは全てライの担当ということになる。ただ、アレンジは、タジと、そのキンケイドが担っているようなので、曲のチョイスや方向性は、その二人が主導で、ライは職人的に演奏に徹していたのかも知れない。“レット・ザ・グッド・タイム・ロール”はルイ・ジョーダンではなく、シャーリー&リーの方のだ。これまたポップなサウンドに、ライのギター・ソロ。タジとハモるのはキンケイドなのだろう。そういえば、ドラムはバーズにも在籍したケヴィン・ケリーだ。後にタジがソロでも歌った“コリン、コリーナ”は、ライのリードヴォーカルにも聞こえるけど。バーズもカヴァーした“タルサ・カウンティ”のヴォーカルはキンケイドだろうか。ディランのカヴァー、”ウォーキング・ダウン・ザ・ライン”は、テイクコケて録り直し担ってるとこまで入ってる。しかし、これって最初の「ブートレグ・シリーズ」に収録の曲だけど、既にミュージシャン間では出回っていたんだね。後半のキンケイドが歌っているらしいナンバーは、如何にもフォーク系シンガーソングライターの曲の味わいで、タジやライのセンとは異なるけれど、これはこれでまた案外悪くないのだ。これまた後にタジがカヴァーする“テイク・ア・ジャイアント・ステップ”も取り上げているのだけど、モンキーズのヴァージョンを少しアーシーにした感じのビート・ロックで、その意外性が楽しくもある。そんな具合に、後のタジやライみたいにルーツを追求するというよりは、古いブルースのカヴァー等を中心にしつつも、それらをポップ・ロックのフォーマットで聞かせるバンドを志向したような印象だ。で、何度か書いているように、それが結構楽しくて、試作品という以上にまずまずの聞き応えもある。だから、「ゲット・オン・ボード」とは意味合いの異なるものとして、あまり先入観無く聞いた方がいいかもと、先入観たっぷりに聞いておいて何だけど(苦笑)。何より、ライの演奏なんかは充分、後にも通じるレベルなので、聞いて損はないと思う。「ゲット・オン・ボード」を買う前に、これはしばらく聞いていようかなと思ってる。
2022年04月30日
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昨晩の「村上RADIO」でのブライアン・ウィルソンの“ラヴ・アンド・マーシー”を受けて、今月になって、ようやく買ったビーチ・ボーイズのボックスセット「フィール・フロウズ」、そして、ブライアンのソロ「アット・マイ・ピアノ」を聴こうと思った。いや、ボックスの方は余裕があれば。まずは、「ピアノ」の方を。タイトル通り、これはピアノ演奏のみのCD。歌も歌わないし、バックの演奏もない。本当にブライアンが弾くピアノだけで、主たる代表曲を聞かせる。何とも大胆な規格というか、セールスも度外視しているわけで、これは、ブライアン自身がやりたかったということなのだろうか。だから、いくらブライアンのアルバムとはいえ、当初は少し買うことを躊躇した。何より、ジャケットの、ちょっと修正入っている?ような好々爺顔のブライアンが気になった。アルバムジャケットでのブライアンといえば、ソロ・デビュー盤からして、神経質そうな一筋縄ではいかぬ感じの表情で写っているものが多かった。もうすっかり丸くなっちゃったのかなあと。ともあれ、内容面では、テクをひけらかすような演奏では全然なく、実に静かに淡々と弾かれる。但し、まさに曲の構造を忠実に再現する演奏というか、例えば、“ラヴ・アンド・マーシー”では、ライヴ演奏ではカットされることが多い、サビのハーモニー部分もピアノで披露される。“カリフォルニア・ガールズ”なんかも、曲本来が持っている哀感やロマンのようなものが、ピアノの単独演奏故に引き立つ。当然、「ペット・サウンズ」のナンバーや“サーフズ・アップ”、“ティル・アイ・ダイ”のような厭世観を感じさせる曲も、そのニュアンスがじっくり伝わる。そして、“ラヴ・アンド・マーシー”は、むしろ、明るさを持って響く、愛と慈悲の心が希望を感じさせるかのように。「オランダ」からのレア曲“ヴァーノン山と小道”という意外な選曲を経て、最後の“グッド・ヴァイブレーションズ”だけは弾む演奏を聴かせる。正直、ちょっとウトウトするところもないではなかったけれど、これは紛れもないブライアン自身による選曲と演奏で、やってみたかったことなのだろう。ヴォーカルがちょっとキツくなってきてるブライアンでもあるので、こういう企画は続編もありかも知れないとも思った。
2022年03月19日
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B・J・トーマスが亡くなったのは5月だったけど、追悼しようにも、実はこの人のCDって持ってなかった。曲そのものは色々馴染みがあるのだけどね。ということで、遅ればせながら購入、80年代にカントリーチャートでヒットを放って以降の「コンプリート・コロムビア・シングルズ」は、割とすぐに入手出来たけど、肝心の60〜70年代の「コンプリート・セプター・シングルズ」が、手に入りづらく、最近やっと入手。それぞれを一気に聴く。セプター篇は、まず、ハンク・ウィリアムスの“泣きたいほどの淋しさだ”から。基本はホワイト・ゴスペルの人だから、当然、カントリーとは親和性がある。でも、適度にポップなので、ポップ・チャートでもヒットを放つ。ディスク2に収録の“雨にぬれても”のバート・バカラック調は、この人の中では、むしろ異色の印象がる。でも、以後もバカラックの曲は何曲か歌って中ヒットも記録している。カントリー、ゴスペルから、バカラック・ナンバーの小粋さまで表現できる巧みなシンガーなのだった。どちらかというと、より馴染み深いのはコロムビア時代だ。カントリーチャートで“復活”した“ホワットエヴァー・ハプンド・トゥ・オールドファッションド・ラヴ”は、男性コーラスが印象に残るが、エルヴィス等でも知られるジョーダネアーズがコーラスを担当。ここいらは、ゴスペル・ルーツの人ならでは。そして、バックを固めたのが、いわゆるナッシュヴィルのAチーム。折しも、その一人だったベーシストのボブ・ムーアの訃報が伝えられたばかりだ。ナッシュヴィルの音作りを支えた腕こきたちが、B・Jの更なるヒットに貢献したのだ。その、音の厚さ、暖かさが、やはり、いい。3枚のディスクで都合67曲を聴いたけど、70年代後半はABCレコードに所属。その頃のヒット曲である“心に響く愛の歌”や、“ドント・ウォーリー・ベイビー”のカヴァーが聴けないのは、些か残念。更に晩年は、再びゴスペルに回帰していたそう。「ソング・トゥ・ソウル」での、比較的近年のインタビューでは、ちょっとマッチョっぽい感じもしたけど、オクラホマ生まれテキサス育ちで、曲の印象以上に極めつけアメリカンな人だったのかも知れない。この機会に歌声を振り返れてよかった。改めてRIP。
2021年09月23日
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さて、ボブ・ディランを聴こう。前回の帰宅時に買っておいた新譜と、毎年買ってはいるけど開けていないままだったブートレグ・シリーズを。まずは「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」を観たから、Vol.11「ザ・ベースメント・テープス・コンプリート」を昼から夕方にかけて。そして、夜は「ラフ・アンド・ラウディ・デイズ」を聴くとする。「地下室」、2枚組のCDは、かつて結構よく聴いたけど、こちらは6枚組のボリュームだ。2枚組の方は、ディランのオリジナル曲に加え、ザ・バンドだけの演奏も数曲収められていた。この“完全版”は、ガース・ハドソンらも関わり、録音順に構成されている。まずディスク1は、2枚組にはほとんど入ってなかったカヴァー曲主体。ハンク・ウィリアムス、ジョニー・キャッシュらのカントリー・ナンバーが多く、まずは音の探り合い的セッションか。これで次第に温めていったところで、ディスク2ではブルースにいく。セッションとしてはルーツ系でという流れのようで、そこを確認した上で、セッション中、ウッドストックの滞在中にディランが書き下ろしたオリジナル曲の演奏に移っていく。ディスク3で、2枚組でも聴かれたお馴染みの曲が登場する。2枚組には入っていない別テイクも収められ、聴き比べも興味深い。しかし、コンプリートと謳われているものの、2枚組には入っていたザ・バンドだけの演奏はオミット。ディランがリードヴォーカルを取るナンバーだけに絞られている。「地下室」は、あくまでディランとザ・バンドとの共同作業だから、ザ・バンドの演奏も含めて完全版といえると思うのだけど。その辺はちょっと微妙な気がする。ディスク4も引き続き、2枚組にも収録の、後年、有名になる佳曲群が収められる内容。ディスク5、6では再びカヴァー曲も交えたセッションに回帰する感じだけど、生憎、時間の都合で、聴けたのはディスク3まで。まあ、近々、まだ戻る予定なので、その際に続きを聴くとする。「地下室」でのルーツ確認や、ザ・バンドとの共同作業は、ディランに刺激を与え、後の創作活動に弾みをつける成果を生んだということだろうか。同様に、一時期携わったラジオ番組、「テーマ・タイム・レディオ・アワー」のDJとしての経験は、この「地下室」に連なるような刺激と覚醒<をディランにもたらしたのではと考えている。2000年代のディランの好調ぶりは、その成果ではないかと。そして、先行シングル、アルバム共にチャート1位になった新譜の方は・・・シングルとしてリリースされた“マーダー・モースト・ファウル”は、様々なミュージシャンの名も登場させながら語られるアメリカ近代史の様相だったけど、アルバム全体が、同曲のテイストに通ずる印象だ。これは、如何にもノーベル賞受賞後のアルバムのように思えてしまったのは自分だけだろうか。全編、語るディランだ。半分以上が5分を超える曲で、主にブルース調の演奏にのって、ディランは語る。ここでも、多くの名前や単語が登場する。オリジナル集としては、フランク・シナトラ・カヴァーの3部作の前に出た「テンペスト」以来だけど、あのアルバムではオープニングの“デュケーン・ウイッスル”のような、ライヴ演奏でも盛り上がるナンバーがあったけど、このアルバムではその種の曲はない。バックは、近年ライヴでもお馴染みの面々だが、ロック的なダイナミズムのある曲は皆無と言っていい。勿論、ディランは、過去にも「血の轍」収録の諸曲とか、長くストーリーを語るナンバーがあったけど、今回のアルバムはサウンド的には、よく言えばシンプル、言葉を変えればモノトーンのような起伏に乏しいもので、聞き通すには些か忍耐もいる。一度聴いただけで、個々の曲の突っ込んだ内容には辿り着けてはいないけれども、このアルバムが、近年のもの以上に高い評価を得ていることについては、ちょっとピンと来てないのも正直なところだ。これまでのディランのアルバムは、サウンド面での単調さはあっても、内容的にはとっかかりがあり、聞き応えは申し分ないものだった。でも、正直、このアルバムには、「ラヴ・アンド・セフト」や「モダンタイムス」に匹敵するような魅力を感じられなかった。聴き込みは足りないのだろうけど、聴き込んで印象が変わるかどうか。ちょっと、ノーベル賞をきっかけに?ディランは、少し離れたところに行ってしまったように思えている。昨年中止になった来日公演も行く予定ではなかった。名声は頂点を極めてチケット代も頂点の如しだけど、それに見合ったライヴが堪能出来るのかがわからなかったから。これまで結構忠実にディランのことは追ってきたつもりだけど、今後も追って行けるかどうか。でも、「ベースメント・テープス」の続きを聴けば、やっぱり気は変わるかも知れない・・・?
2021年01月04日
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昨年公開のクリント・イーストウッドの「運び屋」、早くもBSで放送。スポーツ中継もないのでさいけん。この映画はよく出来てたからね。まあ、書くべきことは劇場鑑賞時に概ね書いてしまってるから、ここでは少し。家族を蔑ろにし、自由に生きてきた老人が破産同然の状態から縋ったのはコケインの運び屋の仕事。あまりの棚ぼた状態に戸惑いながらも、次第に義賊的スタンスというか、家族や友人を助けるために、更なる稼ぎを得ようとする。根は悪い爺さんではないのだ。故に、売人連中からも好かれていく。見張り役のメキシカンとポークサンドを食べるエピソードはいい味だ。そして、家族との関係の修復。妻の死を看取り娘とも心を通わせるようになる。裁判所では、彼を看取るように家族が集結する。ブラッドリー・クーパーも語ったように、家族との和解が彼の生涯で最後に為し得たものだった。刑務所で生涯を終えるかも知れないが、彼の行動は正しかった。この映画、あの、池袋で母と子を轢き殺した飯塚幸三に見せてやりたいな。最後に流れるトビー・キースのオリジナル曲”ドント・レット・ジ・オールドマン・イン”は、最近ウィリー・ネルソンもカヴァーしていた。そういえば、劇中でイーストウッドは、カーラジオから流れるウィリーの“オン・ザ・ロード・アゲイン”を鼻歌で歌ってたっけ。そうか、ウィリーはイーストウッドよりも3歳下なんだな、意外だけど。どっちの爺さんもまだまだ頑張ってほしい。
2020年11月23日
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ドリー・パートンで唯一持っているアルバムは、故ケニー・ロジャースとのコラボで録音されたクリスマス・アルバム「ワンス・アポン・ア・クリスマス」'84だ。オリジナル曲主体のアルバムで、大半をドリーが書いている。クリスマスにふさわしい暖かさと楽しさ溢れるアルバムで、今でも時折聴いている。そんなドリーが、何枚目かのクリスマス・アルバムをリリースした。毎年何かしら買っているクリスマス盤、昨年はロス・ロボスのがあったけど、今年はドリーだ。「ア・ホーリー・ドリー・クリスマス」は、「ワンス・アポン」同様に彼女自身によるオリジナル曲主体で、今回はケニーの代わりに色々なゲストを迎えている。してと、タイトルソングで始まるCDをかけてみれば・・・ジャケットで見られる彼女のルックスは、以前とほとんど変わってない気がする。まあ、整形はしているという話だけど、グラマラスな印象は健在だ。しかし、声の方は・・・かつての、あの張りがない。すっかりおばあちゃん声な感じだ。高音とかが出てないわけではないけど、あの弾むような溌溂とした雰囲気は失われている。そりゃあドリーとて74歳だから、そりゃもうおばあちゃんには違いない。孫とか山ほどいて、曾孫だっていそうだし。そんな孫たちに聞かせるために作ったアルバムなのかも知れない。共演者の顔触れは多彩だ。ビリー・レイ&マイリー・サイラス親子にマイケル・ブーブレ、役者というか司会者のジミー・ファロンに弟のランディ・パートンまで。しかし、特筆すべきは、やっぱりウィリー・ネルソン。ウィリーのクリスマスとくれば”プリティペイパー”だ。キーは合わない二人だけど、そこはキッチリ共演をまとめあげている。ウィリーの方もさすがにあの声の張りがなくなった。こちらは87歳だから、当たり前といえば当たり前。ドリーにしてもウィリーにしても、カントリーシンガーはシャウトしたりしないけど、独特の声の張りがあって、それぞれが唯一無二といっていい個性的な歌い手が多く存在した。故ケニーもそうだった。オリジナル曲の出来栄えは、まあそこそこというところか。弟との愛情溢れる”ユー・アー・マイ・クリスマス”に続けて、最後を飾る“メリー・ディド・ユー・ノウ”で、しっとり締めるのは、派手そうに見えて敬虔なクリスチャンであろうドリーのスタンスが感じられる。そんなこと言っちゃ意地悪だけど、ドリーもぼちぼち歌手生活の最後を見据えて、このアルバムを作ったのかもと思えてしまった。同世代でも、リンダ・ロンスタットは既に歌えなくなって久しい。エミールー・ハリスは地味ながら歌い続けているけど、ケニーも亡くなり、自身の曲をカヴァーしたホイットニー・ヒューストンも死んでしまった。ノラ・ジョーンズからのリスペクトも受け、キャリア的には充分に充実の時を過ごしてきた。そろそろってのはあるのかも知れない。いや、これからも歌い続けるからこそ、こういうアルバムを出したのかも知れないけれど。整形でも何でもいいさ、ミス・ゴージャスはこれからも輝き続けてほしくはある。このアルバム、来月クリスマス本番が近づいたら、また聴いてみるとしよう。
2020年11月02日
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ローリング・ストーンズの「山羊の頭のスープ」'73、新装版が全英1位になったそうだ。魅力的な新譜が他になかったのか、やっぱり、ストーンズがすごいのか。で、何を隠そう、このアルバム、持っているけど、まだ聴いたことがなかったのだ、うりひゃ〜。なので、今回の帰宅時に慌ててCDを聴いた。ルーズな調子の“ダンシング・ウィズ・ミスターD”でスタート。Dとは悪魔か?ここいらでストーンズは悪魔売りだったし。そも、このアルバムを今まで聴いてなかったのも、内ジャケに本当の山羊の頭のスープ・ヴィジュアルがあったりして不気味な印象があったからでもある。そのジャケに、ミッキー・オン・ピアノと記されているけど、ミッキーって誰よ?ニッキー・ホプキンスの間違いなんだろうな。それ以上に、やっぱり、ミック・テイラーのギターだな。前作「メインストリートのならず者」の、タメの効いた感じを受け継いでいる印象で、この開館は悪くない。ビリー・プレストンのクラヴィネットが目立つ哀愁のナンバー“100年前”も悪くないじゃないか。いや、悪くないばっかりで何だけど、「メインストリート」に較べて評判が今ひとつのアルバムという先入観故だ。そして、キース・リチャーズのバラード”夢からさめて(カミング・ダウン・アゲイン)”も哀愁が漂う。ドラッグから覚めたキースの目覚めのぼやきソングってとこか。ちゃんとミック・ジャガーがハモっているし、ボビー・キースのサックスもいい味。この辺、ライヴのキース・コーナーで演ってくれても良さげだが。シングルカットされた“ドゥ・ドゥ・ドゥ”はファンキーな新機軸で80年代のストーンズにも通じる作風。ワウワウ・ギターはテイラーなのだろうか。そして、シングルといえば大ヒットした”アンジー”、これは説明不要でせう。”シルヴァー・トレイン”は、テイラーがゲスト参加した14オン・ファイア・ツアーで久々に披露された(確か自分が見た以外の日に)。テイラーはこの録音みたいにスライドをバリバリ聞かせたのかな。ここでのピアノはイアン・スチュアートだ。ミックのハーモニカも冴えてご機嫌なナンバー。珍しやミックがピアノを弾くブルージーな“お前の愛を隠して(ハイド・ユア・ラヴ)”に続いて、バラードの“ウインター”は、アンジーがある故に目立たないけど、これまた哀愁炸裂。ガンズ&ロージズの“ノーヴェンバー・レイン”って、これからいただいている?ストリングス・アレンジが似ているんだよな。次の“すべては音楽(キャン・ユー・ヒア・ザ・ミュージック)”は、アルバム中、最も異色なナンバーか。ジム・ホーンのフルートがどこかトラッド風だ。そして最後を締めるロックンロールの“スター・スター”は、勿論、本来は“スターファッカー”であります。ライヴで、ミックが、新加入のロン・ウッドにサビのコーラスを強要?していたのが印象的だった。スティーヴ・マックイーンとアリ・マッグロウなんて歌詞が時代を感じさせる。ジョン・ウェインまで登場するしね。ハリウッドの酒池肉林パーティで大団円の趣だ。いや〜、いいじゃない、このアルバム、どの曲もよくて捨て曲なし。「レット・イット・ブリード」、「スティッキー・フィンガーズ」、「メインストリート」の快進撃から、次の「イッツ・オンリー・ロックンロール」に繋がる内容で、進化するストーンズを感じさせる内容だ。ま、本当に好調だったのはここまでと言えなくもないかも知れないけれど、充分楽しめて聞き応えのあるアルバムだ。47年ぶりのナンバー1も頷ける1枚と言っちゃおう。さて、コロナが明けたらストーンズの新譜が出るのかな?そして、ツアーも、また?
2020年10月31日
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5日前に書いたザ・クラッシュのCDの続きだ。もう2枚は聴けたけど、さすがにアナログ3枚組の大作「サンディニスタ」'80までは無理だった。「動乱」と邦題のついた「ギヴエム・イナフ・ロープ」'78は、デビュー盤と「ロンドン・コーリング」に挟まれているから、あまり目立ってないが、これはこれで堂々たる出来で、イギリスでのセールスも好調だった1枚。のっけの”セイフ・ヨーロピアン・ホーム”から勢い一発好調。ジャマイカ帰りのルードボーイを歌って、ますますレゲエに傾倒していくジョー・ストラマーらしいオープニング。南北戦争時の歌として知られるアイルランド産の”ジョニー・カム・マーチング・ホーム”の現代版として”イングリッシュ・シヴィル・ウォー”が続けて歌われる。まさに、「ロック・アゲインスト・レイシズム」のライヴの後に作られた曲とのことで、ストラマー、バンドの先見性が窺える。“トミー・ガン”もシングルになった曲。歌詞の方も勿論だが、演奏の方も前作に較べて格段に進歩、ギターもドラムも冴えている。小粋なピアノを聞かせる“ジュリーズ・イン・ザ・ドラッグ・スクワッド”を挟んで、再び街の人種間の争いと差別に切り込む”ラスト・ギャング・イン・タウン”と、研ぎ澄まされたメッセージ性が耳を引く。ギター・ソロが冴える”ガンズ・オン・ザ・ルーフ”も争いと暴力への怒りがぶちまけられる。ミック・ジョーンズがヴォーカルのポップな“ステイ・フリー”で少し肩の力を脱いたところで、ロックンロールが炸裂する“チープスケイツ”へ。締めは“すべての若きパンクスども”ときた。完成度の高さとメッセージの盛り込み具合が巧みな好盤で、ひょっとするとクラッシュの中ではこれが一番好きかも知れない。そして、「コンバット・ロック」'82。ここらに来てザ・クラッシュの評判はどうだったのだろう?少なくとも最初の“ノウ・ユア・ライツ”はストラマーの確固たる主張が明確だ。ミック・ジョーンズが歌った“シュド・アイ・ステイ・オア・シュド・アイ・ゴー”は、イギリスで唯一のNo.1シングルだったはず。セールスといえば、“ロック・ザ・カスバ”の突然の?アメリカでのヒットは、当時でも意外に思えたものだ。アルジェリアのシンガー、故ラシッド・タハもカヴァーしたこの曲、MTV時代故のVCと内容のストレートさが受けたのだろうか。バンドのマネージャーのコスモ・ヴィニルがライムというか語り、ポール・シムノンが歌う異色の“レッド・エンジェル・ドラグネット”の後は、”パパサン、ママサン”の”ストレイト・トゥ・ヘル”が続く。これにしろ、次の“オーヴァーパワード・バイ・ファンク”にしろ、「ロンドン・コーリング」以降の多様な音楽性が引き継がれたユニークなサウンドだ。終盤でラップを聞かせるフューチュラ2000とはアメリカのグラフィック・アーティストとのこと。ゲストをフィーチャーしての聞き物といえば、何とアレン・ギンズバーグを招いた“ゲットー・ディフェンダンド”だろう。パンクとビートの出会い、バックのサウンドはレゲエだ。そして、終盤は初期の2枚からは想像もつかないタイプのサウンドで締め括られる。元々は2枚組として制作されたというこのアルバム、本来は、「サンディニスタ」同様の大作になるはずが、コンパクトにまとまったが故に英米共にセールス的に伸びたと言えようか。でも、それが却ってバンドの寿命を短くする結果になったのかも。この後の「カット・ザ・クラップ」は、さすがに聴こうと思わなかった。今回聴いた3枚のアルバムは、いずれも内容の濃い名盤と言っていいものだった。勿論、他のメンバーの貢献もあるだろうが、やはり、ジョー・ストラマーが歌に託した主張の数々に引き込まれる。改めて彼への畏敬の念を抱いた程で、本当に早世が惜しまれる。残念ながら「サンディニスタ」は、また次回。メスカレロス時代のソロも機会あれば聴いてみたい。
2020年08月01日
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今月頭に観た映画「白い暴動」で、場面は短かったけど、ザ・クラッシュのステージが、やはり印象に残った。ライヴならではの彼らの勢いも勿論だが、あの当時に、レイシズムに対しノーを突きつける姿勢が先進的だった。パンクと言うと、どうもセックス・ピストルズは、むしろレイシスト側と言うか、必ずしもプログレッシヴではない印象があったけど、ザ・クラッシュはさすがに違う。考えてみれば、彼らのアルバムって「ロンドン・コーリング」しか聴いてなくて、他も持ってるのだけど未聴のままだった。ここは、トーキング・ヘッズ同様、この機会にまとめ聴きだ。何枚いけるかな?まずは、邦題が、まさに「白い暴動」の1枚目、”ザ・クラッシュ”'77だ。ジャケット画像は、まだドラマーが固定せずに3人。のっけの”ジェニー・ジョーンズ”からして、これぞパンクといった音だ。「コーリング」の多様な音楽性はここではまだ鳴りを潜め、シンプルにして粗削り、何よりも勢い勝負だ。ジョー・ストラマーのみならずミック・ジョーンズもヴォーカルを取っている曲が目立つ。“反アメリカ”故に、アメリカでのリリースが見送られたのだろうか?ヴェトナム戦争に関しては勿論だが、ここで、既に彼らは警官批判をやっている。曲を書いたストラマーとジョーンズは、想像以上に情勢を冷静、かつ深く洞察していたのかも知れない。サウンドとは裏腹に、内容の方は勢い一発では止まらない。そして、“白い暴動”、この曲は、そのまま現代のアメリカにも通じる内容だ。音はもろラモーンズ調だけど。この冒頭数曲を聴いただけでも、ザ・クラッシュへの敬意を覚える。そして、ジョーンズがヴォーカルの”ヘイト&ウォー”が続く。”退屈過ぎてロンドンが燃えている!”という“ロンドンは燃えている”も刺激的なナンバーだ。音はまたラモーンズっぽいけど、内容は如何にもロンドン・パンクっぽい“出世のチャンス”へと続く中盤の流れは絶好調。コンドームソングの“反逆ブルー”(何じゃ、その邦題?)を挟みつつ、ジュニア・マーヴィンのレゲエ“ポリスとコソ泥”が、後のクラッシュの指向を想起させる。“オレたちはガレージバンド”と歌われる“ガレージランド”まで、短いけれども14曲、決して音質は良くないし粗も目立つけど、今更ながら、このアルバムは個人的にはすごく好きだ、評価された「コーリング」以上に。つい長くなってしまったので、残りのアルバムについては、また後日と言うことに。
2020年07月27日
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先週観た「ストップ・メイキング・センス」で、今更ながら、その魅力に気づかされたトーキング・ヘッズ。主要なアルバムは結構前に買ってあったけど、実は未聴。ナイチ帰宅で、概ね用が済み、出かけるわけでもない夜にCDをまとめ聴きと相成った。彼らのような、この辺のニューウェイヴ系は必ずしも好みの路線ではなかったので、何となく聴くのも後回しになっていたわけだけど、ポップでダンサブルなB52ズなんかは好きで前からよく聴いていた。ヘッズに関しては、当初の世評通りの頭でっかちなインテリ・ロックのイメージだった。でも、先の映画を観て、そのライヴ・パフォーマンスの躍動感と肉体性を再認識した次第だ。で、アルバムは、まずはアフロビートを取り入れ始めた「リメイン・イン・ライト」'80から。このアルバムでは、プロデュースはまだブライアン・イーノだ。この時点では映画に登場したサポートメンバーはおらず、基本、4人のメンバー中心に録音されている。特に3曲目の”グレート・カーヴ”あたりからアフロビートっぽさが目立ち始める。でも、そのサウンドにのる歌詞はデヴィッド・バーン特有の都会人の神経症的な内容のものだ。そのギャップが面白いわけだけど、如何せん80年代のアルバムで、持っているCDはリマスター盤とかではないケースが黒いやつだから、音はしょぼ目だ。ちょっと大きな音で聴かないと、ややもすれば如何にもニューウェイヴ風の軽い音に聞こえてしまう。しかし、ラップの先駆的な歌い出しと、メロディもアフリカ的な“ワンス・イン・ア・ライフタイム”は、やはり今も新鮮に聴こえる。忘れちゃいけないエイドリアン・ブリューのギターの自由なフレーズがアフロ的なビートと親和して時に心地よく響く。そんな音作りの巧妙さは評価しつつ、このアルバムは、やはり、前記の世評の“頭でっかちのインテリ・ロック”の域を脱し切れていない気もしないでもない。そういう限界は、バーン自身も意識していて、それで、ライヴにおいては、バーニー・ウォーレルら、反則とも言える強者を集めて肉体性と躍動感を加味させたのではないか。ちょうど、ポール・サイモンが、「グレイスランド」や、「リズム・オブ・ザ・セインツ」でアフリカ、ブラジルのサウンドを導入したように。で、次が「スピーキング・イン・タンズ」'83だ。「メイキング・センス」のライヴが行われた時点のアルバムであり、当然ここからの演奏曲が多い。なぜかシングルヒットしてしまった“バーニング・ダウン・ザ・ハウス”に始まり、前作以上に聴きやすい曲が多い。ここでは映画と同様のサポートメンバーも揃ってサウンドのファンクネスも増し、“スワンプ”や“ディス・マスト・ビー・ア・プレイス”のような、盛り上がる曲も収録されている。アフロビートの消化具合も、前作以上にこなれている印象で、個人的には名作の誉高い前作以上に、こちらの方がしっくりくるのが正直なところだ。次の「リトル・クリーチャーズ」'85は、ヒット曲も生まれた前作に気を良くしたのかどうか、アフロビートのトンガリ具合よりもポップさに重点が置かれた作りの印象だ。少なくとも前半はそう聞こえる。“クリーチャーズ・オブ・ラヴ”なんかは、この後に続くカントリー調のナンバーで、過去2作とは路線変更の感もある。終盤の”テレヴィジョン・マン”では、少し「リメイン・イン・ライト」あたりの感じが残ってはいる。でも、全体的にバーンの歌いっぷりも、比較的穏やかな印象だ。何よりもゴスペル+アフロ+ケイジャンのような“ロード・トゥ・ノーホエア”は傑作、名曲だ。バンドが試みてきた様々な音楽要素をまとめて練り込み、ポップにまとめ上げた現代のビートニク・ソングのような、この1曲は、個人的には彼らの中で一番好きな曲だ。前作以上に普通の音作り?という感じの「トゥルー・ストーリーズ」は、バーンが監督した映画のサントラ盤ということらしい。映画は未見だけどジョン・グッドマンが主演?テキサスの田舎を舞台にしたバーン流のアメリカ文明批評のようなので、音楽的にも親しみやすいものだ。あの、レディオヘッドのバンド名は、このアルバムの6曲目に由来するらしいけど、彼らがこの曲のどういうところに惹かれたかは不明だ。そりゃあ監督した映画のためのアルバムだからバーン主導。他のメンバーの影がますます薄くなってしまって、バンドの解散にも繋がっていったのだろうとは想像がつく内容ではある。でも、ソロになって以降のバーンが、再び先鋭的にワールドミュージック的なスタンスで幅を拡げていったことを考えると、この時期は、たまたま彼らのマーケットでもあったアメリカに興味が向いていたのだろうと思える。些か平凡な内容かなと言ってしまうと身も蓋もないけど。こうしてアルバムを改めて聴いて思ったのは、たまたまではあるけれど、先に「ストップ・メイキング・センス」を観ていてよかったなということだ。正直、映画抜きにアルバムだけ聴いていたら、彼らへの興味というのは早々に失せてしまった可能性さえある。つくづくライヴ・パフォーマンスの重要性を感じたし、バーンも重視していた映像の威力を痛感させられた。その点では、彼らの“戦略”は見事に功を奏したと思う。この4枚以前のアルバムも、やはり、いずれは聴かねばと思えているし。音楽は頭で作るよりも、まずは体が重要。ヘッズのアルバムを聴いても改めてそう思えた。
2020年07月24日
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昨年50周年を迎えたニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティバル。記念に発売された、ライヴ音源を収めた5枚組のボックスセット「ジャズフェスト:ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティバル」、アマゾン購入して沖縄に取り寄せたはいいものの、CDボックスセットというか、アナログ盤+写真集位の大きさ厚さのもので、渡航時のバッグにも収まらないサイズ。でも、今回、手荷物でどうにか家に持ち帰った。今年のジャズフェストは残念ながら中止になってしまったけど、本来は開催されていたこの時期に、この音源を存分に聴こうではないか。幸か不幸かコロナで出歩けないから時間はタップリある!5枚のCDは、それぞれジャズフェストで披露される音楽ジャンルを特徴づける形で曲目が組まれている。ディスク1はジャズ中心だ。ゴールデン・イーグルスによるマルディグラ・インディアン・ソングがオープニングを飾るけれども、ドナルド・ハリソン.Jr、テレンス・ブランチャードらのオーソドックスなジャズ演奏に加え、古老ダニー・バーカー、そして、伝統を引き継いだカーミット・ラフィンズらによるニューオーリンズの原初的ジャズ・ナンバーも収録。フェスの創設者であるジョージ・ウエインの演奏も。この人は、ニューオーリンズどころか、ニューポートを始めとする数々の有名ジャズフェスを立ち上げた大プロデューサーだったんだね。故に、演奏というのはまた貴重かも知れない。最後はジョン・ブーテの歌うランディ・ニューマンの”ルイジアナ1927”で締め。収録ライヴは、70年代のものか、90年代以降のものが主。ラジオ曲WWOZの放送音源からのようで、意図的にか、あまり観客の歓声が含まれてないように思える。ディスク2は、ニューオーリンズでジャズ以上に重要とも言えるR&Bのローカル・スターたちの演奏を中心に。ローカルと言っても、トップを飾るアラン・トゥーサンの影響力が、ローカルにとどまらないのは周知のこと。プロフェッサー・ロングヘアやドクター・ジョンも勿論だが、アール・キング、アーマ・トーマス、デキシー・カップスといった人たちに加え、クラレンス・フロッグマン・ヘンリー、スヌークス・ーグリン、マルシア・ボールあたりは、このフェスならではの顔ぶれといえる。トリのドクターの12分の演奏も含め、人選、選曲も非常にツボを得たものという印象だ。フェスの顔であるクイント・デイヴィスのMCから始まるディスク3、こちらもブラスバンド、トラディショナル・ジャズ、そして、ゴスペルと、ジャズフェストのステージ内容の多彩さが垣間見える演奏が収められている。ブックレットには曲毎の解説も載ってるけど、必ずしも音源収録の年と掲載写真の年が一致していない場合もある。とまれ、疾走感溢れるダーティ・ダズン・ブラスバンド、初リーダーのステージで気合が漲るヘンリー・バトラー、アルヴィン・レッド・タイラーのサックスをフィーチャーしたジャーメイン・バズルのドリス・デイのカヴァー、新生プリザヴェーション・ホール・ジャズバンド等の聴き物が続く。そして、後半のゴスペル4連発。あの、ゴスペルテントの暑さが蘇ってくる。前半はザディコ、ケイジャン中心に収めたディスク4。サヴォイ・ファミリー・ケイジャン・バンドとかブルース・デイグルポン(の表記で正しいかどうか)ら、名前はよく見かけるけど、現地で見たことのなかった人たちの演奏を初めて聴けた。後半はブルース系というべきか。でも、ネヴィル・ブラザーズの”イエロー・ムーン”を収めているのだけど、ここでのアーロン・ネヴィルの歌声が、どうも本調子ではなく、必ずしもベストパフォーマンスばかりがチョイスされてるわけでもない感じはする。あくまで残っていた音源からのチョイスかな。そのネヴィルズ、そして、前のディスクのアーマ・トーマス、アラン・トゥーサンの三者はセット中2曲が収録されている。最後のディスク5は、このフェスならではのユニークな個性の人や、後半はロックよりの演奏を収録。オープニングのファンキー・ミーターズはギタリストがアイヴァン・ネヴィルになってからの編成。ウォルター・ウルフマン・ワシントンは現地でライヴを見てなかったけれど、案外いい味だ。このボックスでは、ほぼ常連どころの出演者がチョイスされているけど、唯一、ごく近年の出演者らしいビッグ・フリーディアという人は初めて知った。トランスジェンダーらしいヒップホップ系の人。実物見たら強烈そうだ。再編後だがサブデューズの収録も嬉しい。この辺の常連ではラディエイターズとかギャラクティックあたりは漏れてしまってはいるけれど。ワイルド・マグノリアズのファンキーな演奏を経て、大トリは、これはもうネヴィルズだ。まさに、かつて、毎年フェスのメインステージの大トリを飾っていた”ワン・ラヴ”〜”ピープル・ゲット・レディ”のメドレー。ああ、全部一気に聴けて、これは大満足。近年のジャズフェストはロックの大物の出演者が目立ってはいるけれど、やはり、このフェスの肝は、ここに収録されたニューオーリンズ、ルイジアナ、ローカルのミュージシャンたちによる唯一無二の個性的な演奏の数々といえる。まさに、ジャズフェストのスピリットとイベントの雰囲気を伝える好編集。これをしっかり聴けただけでも、危険を犯して帰ってきただけのことはあったと言って過言ではない。無事、来年開催されつことを祈りつ、いつか再訪の夢も見続けていきたい。
2020年05月04日
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グレン・キャンベル追悼で、ソングライターとして多大な貢献をしているジミー・ウェッブに改めて注目した。GWナイチ帰宅で何枚か買ったCDに彼の5枚セットのオリジナル・アルバムシリーズとセルフカヴァーの1枚も含まれていた。家のオーディオで音を出して聴く。オリジナル・アルバムではソロ作の中で最も評判のいい「エル・ミラージュ」'77を。オープニングは、”ハイウェイマン”。グレン・キャンベルや後年はカントリー4大スター・ユニットにも歌われた1曲。内容的には”ウィチタ・ラインマン”にも通じる現代のカウボーイの生き様を描くような硬派なもの。これまたウエイロン・ジェニングも取り上げている”イフ・ユー・シー・ミー・ゲッティング・スモーラー・アイム・リーヴィング”は、ケニーロギンズのバックコーラスも相まって爽やかな作り。おそらくクライディー・キングらがコーラスで加わっている”ミクスト・アップ・ガイ”もポップな作風だ。ジョージ・マーティンがプロデュースしてるだけあって、なかなかバック陣が豪華なのだ。ファンキーなベースとパーカッションで始まり、カノン風の間奏が入る”シュガーバード”の小粋さはマーティンのアレンジによるものか。ウェッブ得意の壮大かつリリカルなバラード”ホエア・ザ・ユニヴァースィズ・アー”は、ウェッブの曲を取り上げている多くの名歌手に引けを取らない味わいのある歌声を聞かせる。派手ではないけれど、この人の歌唱はソングライター勢の中でも上質の部類だろう。”ノーノノノーノーノー”のコーラスが印象的な”P・F・スローン”は、自身のデビュー盤で歌ったセルフカヴァー。ハーブ・ペダーセンらしきバンジョーの音色が聞こえる。最も賑やかなナンバーとも言えるフレッド・タケット作の”ダンス・トゥ・ザ・レイディオ”を挟んで、やはり、白眉は”月は無慈悲な夜の女王”だろう。カヴァーした名歌手たちに負けじとウェッブも熱唱。最後はインストナンバーの”スカイラーク”で締める。ああ、名盤だね、これ。生憎、他の4枚は今回は聴けなかったけど。96年のセルフカヴァー集「テン・イージー・ピーセズ」(ジャック・ニコルソンの映画のもじりだろうか)も併せて購入。10曲中8曲はグレン・キャンベルが取り上げている曲だ。勿論、キャンベルの歌唱力は圧倒的だけれども、ともすれば少し大袈裟にはなりがち。それはリンダ・ロンシュタットあたりも然り。ピアノ弾き語り主に歌われるウェッブ版は、彼らよりも抑え目ながらも、決して過不足はない名唱と言っていい。原曲の良さが一層引出されるのは、さすがに作者ならでは。ウェッブ自身による長いピアノイントロから始まる”ウィチタ・ラインマン”から、バックは最小限に、いずれのナンバーも実来ると歌い上げられる。ペダルスティールいい味の”恋はフェニックス”、フィドルとチェロが盛り立てる”イフ・ディーズ・ウォールズ・クド・スピーク”等、アレンジもキラリと光る。まさに珠玉の名曲集の趣だ。最後はリチャード・ハリス、ドナ・サマーで大ヒットした”マッカーサー・パーク”を7分超聞かせる。グレン・キャンベル作品にとどまらず、ウェッブの曲の数々がアメリカン・ポップ史に残る重要な作品群であることを、遅ればせながら再認識した。次に帰宅することがあれば、残りのオリジナルアルバム4枚の方もきっと。
2020年05月03日
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昨日の続きというか、今季発売されたクリスマス・アルバムもう1枚、ケブ・モだ。この人はニューオーリンズ・ジャズフェストの常連でもあるので、てっきりルイジアナの人かと思っていたけど、実はカリフォルニア生まれ。若手のように思えていたけど、既に還暦。本名はケヴィン・ムーアだというのも今更知った。我ながら、ケブ・モグリ?で、そのケブ・モが出した「ムーンライト、ミスルトウ&ユー」。出だしはイーグルスでもお馴染みチャールズ・ブラウンの”プリーズ・カム・ホーム・フォー・クリスマス”。続く、オリジナルのタイトルソング、更に”ベター・エヴリデイ”もそうだけど、意外な位コンテンポラリーなサウンドで、あれ、ケブ・モってこういう人だっけ?と思う。内容的にも、ブルージーなクリスマスというよりも、暖かく、ハッピーなクリスマスのパブリックイメージに添った作りという印象だが・・・ルイ・ジョーダンも歌った”サンタクロース、サンタクロース”で、ようやくブルースが。ここではあくまで軽めな感じだけど。でも、次の小品、”クリスマス・イズ・アノイング”〜大人になった今となってはクリスマスは迷惑と歌われてブルー度が上がってくる。更に、ココ・テイラーの”メリー・メリー・クリスマス”が続く。こちらは内容的には素直にクリスマスを祝ってはいるけれど。アーヴィング・バーリンといえば、言わずと知れたクリスマスの定番ソングがあるけれど、ここで取り上げられているのは”アイヴ・ガット・マイ・ラヴ・トゥ・キープ・ミー・ウォーム”というナンバー。懐かしやメリサ・マンチェスターとのデュエットだ。これは、エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエットを踏まえてのものかな。ケブがサッチモと異なり端正に歌っているけれど。"サンタクロース・ブルース”という曲は誰がオリジナルなのだろう?アクースティックで渋いけれど温かみのある演奏だ。そして、子供たちのコーラスを入れたオリジナル”ホエン・ザ・チルドレン・ソング”。最後は、こちらも懐かしいベス・ニールセン・チャップマンとの共作による”ワンモア・イヤー・ウィズ・ユー”が締める。ひねりはなし、万人向けのホリデイ・アルバムという印象で、ブルースやルーツ系ファンには少し物足りなさも感じられるかも知れないけれど、とても純粋な気持ちで制作されたアルバムで、好感は持てる。世間的にはハロウィーンの方が重要になってる?感じだけど、年寄りはやっぱりクリスマスだ。何はなくとも、気分が高揚する。温かい食事と音楽と、冷やした一杯があれば充分に幸せ。今年はお休みではないけれど、無事、クリスマスを迎えられそうな事に感謝するとしよう。
2019年12月16日
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ルーマーという人、何で知ったかな?とりわけ個性的というわけではないけど、落ち着いた味わいの歌声で嫌いじゃないタイプではあった。カヴァーが多い”ヴォーカリスト”で、2016年リリースの目下の新作はバート・バカラックのカヴァー集で、バカラック本人も公認、参加もしている。そういえば、バカラックのものをまとめて聴ける音源も持ってなかったので、そういう意味合いでも持っておこうかと。ということで、「ディス・ガールズ・イン・ラヴ」を購入。遅く家に着いたところで、寝しなに聴くには、ちょうど良いかと。ダスティ・スプリングフィールドの”ルック・オブ・ラヴ”は、”恋の面影”という邦題なんだね。ルーマーのヴォーカル、ジャズというよりはポップだ。バカラックの曲の持ち味を壊さない、主張し過ぎない程良い具合。”バランス・オブ・ネイチャー”という曲は知らなかったけど、オリジナルはディオンヌ・ワーウイックで、これはいい曲だね。”ワン・レス・ベル・トゥ・アンサー”は切ない曲調が印象に残る。離婚を扱った歌だから当然か。フィフス・ディメンションのオリジナルは大ヒット曲だそうだけど、これも初めて聞いた。”アー・ユー・ゼア”あたりは、やはり、カレン・カーペンターを彷彿とさせる。そのカレンの歌声が何と言っても印象に残っている”遥かなる影”は、ルーマーなりのヴォーカルスタイルで、これはこれで聞かせる。カレンといえば、もう一人、カレン・モクのカヴァーもモダンなアレンジが秀抜だったが、ルーマー版は原曲の良さを際立たせるものだ。”ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・ヘヴン”なんかは、バカラック調のアレンジを再現。”ハウス・イズ・ナット・ホーム”は、寒いこの時期に聞くと、何とも滲みるナンバーだ。ディオンヌ・ワーウイックの代表曲の一つ”ウォーク・オン・バイ”も、正調バカラックという感じ。曲に寄り添うルーマーのヴォーカルが気持ち良い。終盤を締める2曲、タイトルソングの”ディス・ガール”は、冒頭の語りとピアノでバカラック自身が登場。そして、最後にふさわしい”世界は愛を求めてる”はオーケストレーションも加わっての、華麗かつ荘厳なフィナーレ。全12曲、秋から冬にかけて、また、バカラック・ワールドを堪能するにも最適な1枚だろう。ルーマーという人、イギリス人ではあるけれど、ルーツはパキスタンとのこと。フレディ・マーキュリーもそうだけど、移民の多いイギリスから登場した新たな(いや、既に10年選手で自分が最近知っただけ)才能と言える。サラブレッドではないけれど、インド系のノラ・ジョーンズにも通じる存在として、この先の活動にも注目だ。
2019年11月29日
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折良く10月にライヴが見られることになったマリのバンド、タミクレスト。では、CDを購入して予習をということで、2013年の「シャトマ」と2017年の「キダル」を聴く。ラジオ等でもよくかかっていた「シャトマ」の曲、英語で言えば”シスター”だが、これは単に姉とか妹を超えた、トゥアレグでは重要な言葉とのこと。そして、アルバム全体がシスター、女性をテーマにしている(ライナーはフランス語と英語の解説あり)。アフリカで特にイスラムというと、女性の権利が蔑ろにされている事例が少なくないけれど、砂漠の民であるトゥアレグは別で、女性の存在を重視する民族らしい。彼女らはベールも被らないそうだし。実際、このアルバムでは音の面でも女性ヴォーカルの活躍が目立っている。マリの砂漠のブルースといえば、まずティナリウェンが思い浮かぶが、彼らにも影響を受けた”第二世代”のタミクレストは、よりタイトなロック的なサウンドで、いなたさを残しながらもかっこいい音を聴かせる。リードギターは、フロントのウスマン・アグ・モサなのだろうが、もう1人のギターはフランス人のメンバーのようだ。英訳歌詞を確認すると、やはり民族が置かれた状況を訴え、苦しむ人々の自由を歌い上げる内容が目立つ。それらのメッセージを時にレゲエ、時にロックンロールな演奏にのせて投げかける。当然、お気楽な内容の曲は全くなく、どのナンバーもこ心の叫びを歌にしたかのような切実なものだ。中でもウスマンらが砂漠の光景を独白する”アシカル”?(英題”ザ・ジャーニー”)が印象に残った。「キダル」とは、彼らの出身地でバンドが結成された町の名。前作で目立っていた女性ヴォーカルは抜けたようだが、ジャケ写を見るとバンドは7人編成。ギターに加え、ドラマーもフランス人による男ばかりの顔ぶれ。但し、曲によってサポートで女性ヴォーカルも加わる。ソリッドなギター・サウンドとウスマンの渋いヴォーカルは変わらず。「シャトマ」はアルバムのテーマ上、女性ヴォーカルをフィーチャーしていた一方、こちらは男性メンバーのコーラスを配して、よりメッセージを強く歌い上げる感じだ。その分、より渋い作りだけど重厚さを感じさせる。最後は、地球上のものには全て終わりがあると淡々と歌われて終わる。アルバムの歌詞中(英訳で)度々登場する”サファリング”(苦しみ)もいつかは終わりが訪れると語るように。音の方は心地良ささえ感じさせるが、欧米のバンドとは異なる、独特の緊張感を持った世界、これは是非一度体験してみたい。10月1日のライヴが待ち遠しい。
2019年09月23日
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というわけで、5月の連休以来の猫を連れての長めのナイチ帰宅。朝の沖縄がザーザー雨で、猫のためにタクシー利用で空港に行ったけれども、後はまあ比較的順調に到着。いつもの「バラカンビート」を聞いた後、生憎、次回ライヴ予習用に注文したCDはまだ届いてなかったけど、何かCDを聞いて寝るとする。明日、フェスに赴く渋さ知らズは今更予習も何もって感じだけど、未聴のCDも家にあったのだ。映像の方は未見のものが結構色々あるけど、とりあえず音の方、「ロスト・ディレクション」、リリースは2005年だけど、録音は2002年。この当時、盛んにヨーロッパのフェスに参加していた渋さが、ドイツのメールス絡みのレーベルから発売されたヨーロッパ向けの音源を日本でもリリースしたというもの。それほど録音に重点を置いてない感じの渋さにしては珍しいものということで買っていたのだろう。録音場所は江古田バディ。昨年はとうとう行われなかったらしい年末ライヴではなく4月の演奏で、メンバーもさほどの大編成ではなく10人程度。ふんどし渡部とかダンサーといった賑やかし勢はいなかったようだ(ジャケは白塗りダンサーだけど)。メンバーは、不破大輔がキッチリとベースを弾き、故・片山広明は勿論、オルガンで渋谷毅、サックス川口義之、近年は一切参加してない小森慶子もいる。長めのインプロビゼーション主体で僅か5曲収録という内容だ。渋さで"ダンドリスト"を称している不破のベース演奏が加わったものは初めて聞いたかも知れない。さんざ見ている渋さだけど、ちびずとかの小編成では見たことないのでベース弾いている不破を見たことがないのだ。明日は見られるかな?比較的小編成のせいかどうか、ライヴ盤という割には歓声や拍手がないし、渋さにしては”渋い”盤と言える。それでも先の不破のベース、もう生では聞けない片山の奔放なプレイ、渋谷のソロ等、秘蔵音源にふさわしい貴重さはある。これ1枚だけ聴いて、明日は早めに川崎へということで早めに寝る。映像ものはまたいずれだなあ。明日は何よりも天候が気になる。本格的な野外フェスというのは久々で、雨の下というのは勘弁してほしいもの。野外フェスにつきものではあるけれど。
2019年09月15日
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二度目の来日が決まって、今度こそはと予約してしまったパンチ・ブラザーズ。進化系ブルーグラスバンドとして評価が高い彼らだけど、実はまだアルバム単位ではちゃんと聴いたことがなかった。連休を機にCDを聴いて7月の公演に備えねばということろで、今回、新しい2枚を購入。まずは2018年の最新盤「オール・アショア」。これはセルフ・プロデュースで、曲も全てパンチ・ブラザーズ名義。冒頭のタイトルソングから、ブルーグラスではとても括れぬ独特の世界が展開する。インスト主体かと思いきや、実はマンドリンのクリス・シーリーが歌うヴォーカル・ナンバーが主だ。結構、裏声を駆使するのは、ビル・モンローのヨーデルを多少踏まえてはいるのかも知れないが。その内容も、この1曲目から非常に内省的な私小説のような世界。ブルーグラスの楽器、編成ではあるけれど、シンガーソングライター的な意匠、まずはここがとても新鮮だ。シーリーが囁くように歌う歌世界を引き立てるには、マンドリン、バンジョー、ギターといったアクースティック楽器による小編成の方が適しているということかなと思う。しかし、一方で、彼らの器楽奏者としての技量の裏付けがある。延々とソロを聞かせたりといった、声高に主張する部分は少ないが、歌を彩る実に繊細な演奏が展開される。曲そのものも、ロックでやっても遜色ないもので、近年のウィルコに通じるものを感じる。演奏面のみならず、歌詞の言葉の魅力というのも強く感じられる。単なる技巧集団によるジャムバンド的ナンバーではなく、リリックもしっかり聞かせる。インストナンバーの”スリー・ドッツ・アンド・ダッシュ”でも、速弾き自慢とかではなく、静謐に始まり、次第に微熱を帯びていくような展開だ。勿論、これがライヴでは非常にダイナミズムを感じさせるものになるのだろうけど。とにかく、このアルバムで聴けるのは、ブルーグラスとかアメリカーナで想像できるものとは全く異なる独自のもの。アクースティック楽器による「ペット・サウンズ」か「スマイル」かとでも言いたくなるような個性的な音世界だ。それでも、再びインストの”ジャングルバード”では、ブルーグラス的なハイパープレイも聴ける。勿論、メンバー各人、伝統を踏まえた上でのこの演奏なのだろう。でも、いわゆるノー天気さとは無縁の知性を感じさせる演奏ぶりだ。演奏力の高さも堪能できる”イッツ・オール・パート・オブ・ザ・プラン”で一つのハイライトを迎え、”ライク・イッツ・ゴーイング・アウト・オブ・スタイル”が締める。まさに、一聴して流行遅れのようなスタイルで、新しい時代を歌い上げるかのように。でも、このアルバムの”体温”は、最後までほぼ一定なのだ。これに先立つ前作「フォスフォレセント・ブルース」'15は、T・ボーン・バーネットのプロデュースで、かなりプログレッシヴな「オール・アショア」よりは聴き易めの作りだ。のっけの”ファミリアリティ”のハーモニーワークに、どうしてもブライアン・ウィルソンの影響を感じてしまうのは僕だからかな。10分を超える大作は、目眩く精神世界の響きを感じる。次がインスト、ドビュッシーのピアノ協奏曲だ。そこから一転、”アイ・ブルー・イット・オフ”は、シングル向きの曲。ジェイ・ベルローズのドラムとバーネットのエレクトリック・ギターも加わっての演奏だ。そして、”マグネット”もロック的なナンバーだ。一方でレッドベリーらも取り上げているトラッド”ボル・ウィーヴル”は、彼らにしても最も正調のブルーグラス・サウンドが聴ける。合間にスクリャービンの前奏曲などもちょいと挟まる。”フォーゴットゥン”は、次作にも連なる内省的な世界。曲作りの中心であろうシーリーの本質は、こういうナンバーにあるのかなと思える。そして、大団円を迎える感じの”リトル・ライツ”は、リスナーもコーラスに加わるようライナーに記載がある。邦題”燐光ブルース”とは言い得て妙の荘厳な幕閉めだ。たとえば、これまでもブルーグラス畑からジャンルを超えた演奏を披露する人は、ジェリー・ダグラスを始め、ベラ・フレック、エドガー・マイヤー等がいたけれど、パンチ・ブラザーズの音楽は、それらとも全く違う。シーリー自身が前人未到のサウンドを目指そうとしたというだけあって、今までに聴いたことがないような独自の音世界。唯一VCがある”ムーヴメント・アンド・ロケーション”の、一見古風だけど、実は非常に現代的な作風などが典型的だ。これは、絵も音も、かなりかっこいい。余裕があれば、遡って初期のアルバムも聴きたいところだけど。ライヴでは、また、アルバムだけでは味わえない、彼らの超絶技巧ぶりも堪能できることだろう。その日まで後二ヶ月程を待つとしよう。
2019年05月05日
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宴席が続いたところで、今日はちょっとお休みして家でCDでも聴くとする。と言っても、あまり落ち着いてじっくり聴く時間はなくて、ちょっと流し聞きにならざるを得ないかな。本当はハコものとか、ミュージシャンのヒストリーを辿るようなものに取り組みたいのだけど・・・ヴァレリー・カーター、2年前に亡くなってしまった、ウエストコーストの知る人ぞ知る歌姫。その際に買ったソロ・デビュー盤「ジャスト・ア・ストーンズ・スロウ・アウェイ」(邦題 愛はすぐそばに)'77を聴くとする。これ、ライナーはあるけど歌詞カードはついてないから、まあちょっと、ながら気味に聴いてしまう。生憎、曲毎の詳細なクレジット等もないのだけど、とにかく豪華なメンバーと豊富な人脈によってバックアップされた、彼女の船出を祝うような内容になっている。1曲目の”ウー・チャイルド”は、結構ヒットしたソウル・ナンバーのカヴァー。ヴァレリーの歌声も爽やかながらソウルフル。早速、ローウェル・ジョージのスライドが聴けるのが嬉しい。ヴァレリーといえば、生で歌声を聴いているのはジャクソン・ブラウンのバックでなのだけど、あの透き通るような声に加え、この主役アルバムでは、芯の通った力強さも感じられる。ジョージ作のバラードナンバーの”ハートエイク”では、リンダ・ロンシュタットをバックに繊細な歌い回しで聴かせる。カントリー調の”フェイス・オブ・アパラチア”は、多分ハーブ・ピーダーセンであろうバンジョーの響きがヴァレリーの歌を切々と彩る。一転してホーンから始まる”ソー・ソー・ハッピー”はモーリス・ホワイトがプロデュース。全体のプロデュースとエンジニアリングを担当するジョージ・マッセンバーグの人脈か、アル・マッケイらアース、ウインド&ファイヤーのメンバーもバックに名を連ねる。ここでのバックヴォーカルはデニース・ウィリアムスかな。アナログならB面1曲目になるのだろうか、アルバムのタイトルソングは、今度はリトル・フィート調だ。オルガンはビル・ペインだろうか。勿論、ジョージのギターもさり気なくバックアップ。ヴァレリーとジョージの共作による”キャウボーイ・エンジェル”も泣かせる。そして、もろEW&Fのファンキーな”シティ・ライツ”という、この振り幅が、また楽しい。散漫という印象はないな。セールスに結びつかなかったのが残念なゴージャスさだ。締めの”バック・トゥ・ブルー・サム・モア”はヴァレリー、ジョージ、ペインの共作。ジャジーな雰囲気を醸し出すサックス・ソロはアーニー・ワッツだろうか。こんな具合に、ソウル、カントリー、ファンク、ブルース、ジャズまで、実に盛り沢山の内容で、それぞれがなかなかの佳曲、これは名盤と言っていい一枚ではないかな。何より気持ちよく聴けるので、聞き流してしまっても印象に残る。晩年はドラッグ禍から立ち直ってアルバムもリリースしていたヴァレリー。余裕あれば、その後のソロも買い揃えたいところだな。
2019年05月03日
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連休中、日がな雨の日でもあったら、家の中でずっとCDを聴くのもいいなと思っていた。実際、以前は結構ハコものまとめ聴きとかをやったのだけど、どうも今回もそういう余裕はありそうにない。雨予報の明日は生憎どうしても出かけねばならない予定がある。まあ、今晩だけでも何か聴いておくかと取り出したのは・・・1956年にレコーディングされた「ミリオン・ダラー・カルテット」を。正確には2006年リリースの「ザ・コンプリート・ミリオン・ダラー・カルテット」だ。サンスタジオにたまたま集まった4大スターによる蔵出しセッション音源。ブロードウェイ・ミュージカルにもなった、ある種歴史的な内容なのだけど、まあ、あくまでスタジオでのお遊びだから、軽い鼻歌的な演奏が主だ。全47トラックが収められているが、これは演奏順での収録なのだろうか。前半はエルヴィス・プレスリー主体の曲が並ぶ。ジャケ写ではエルヴィスがピアノに座っているけれど、ピアノ担当は、やはりジェリー・リー・ルイス、そしてギターがカール・パーキンスだが、セッションギタリストも参加していたようだ。録音された季節柄クリスマスソングも何曲か(但しインスト)。かと思いきやブルージーなギターが入ってきて、エルヴィスのヴォーカルによる”リコンシダー・ベイビー”となる。そして、しばし、エルヴィスの持ち歌が続く。次第に伝統曲主体になっていくが、リードは引き続きエルヴィス。それでも少しずつバックコーラスでルイスらの歌声も聞こえてくる。”ダウン・バイ・ザ・リヴァーサイド”なんかはいい感じ。更にスローな”ファーザー・アロング”ではハーモニーも引き立つ。でも、パーキンスはあまり歌ってない?更に、ジョニー・キャッシュらしき声は聞こえて来ないなあ。あの声だからすぐわかるだろうに。中盤のビル・モンロー・コーナーから後半はロックンロール、カントリーナンバーに移っていく。でも、結局、ほぼ目立つのはエルヴィスだなあ。終盤に少しルイス主体の曲があり、どうやらエルヴィスの退出後らしい。とにかく、さりげない演奏が、あの4人によってもたらされていると想像を働かせれば、これは貴重という、そういった内容のものだ。彼らのルーツを知る上で選曲内容も興味深いものがある。このセッションのミュージカル版は日本でも公演を行なっていたそうだけど、そちらは4人を始めとしたロックンロールの名ナンバーを散りばめた娯楽色豊かな内容だったようだ。そのミリオンダラーの続編とも言うべき録音が「クラス・オブ・55」だ。約30年後の1985年の3・レコーディング・スタジオに、ミリオンダラーの3人+ロイ・オービスンが揃って、こちらはキッチリとアルバムとして制作された。バックには故レジー・ヤングやバディ・エモンズ、マーティ・スチュアートらの腕こきが揃った。カール・パーキンスが元気いっぱいに歌う”バース・オブ・ロックンロール”で幕を開ける。ルイスが歌う”シックスティーン・キャンドルズ”、そして、これはこのアルバムのためのオリジナル?タイトルソングをパーキンスが切々と歌う。同窓会セッションには違いないけど、これはなかなかいい味わいだ。ウエイロン・ジェニングス作の”ウエイモアズ・ブルース”では、前作では声が聞こえなかったキャッシュの歌声もしっかり。オービスンがリードをとる”カミング・ホーム”は、J・D・サウザーも作者として名を連ねているから新曲だったのだろうか。オービスンが加わったスーパーセッションといえばトラヴェリング・ウィルベリーズを思い起こすけれど、これも、オリジネイターたちによるウィルベリーズの如しだ。ほぼエルヴィスが目立つ内容だった前作に比し、こちらは御大4人のバランスもそれなりに考えられた構成だ。フィナーレは、作者のジョン・フォガティを始め、デイヴ・エドモンズ、ジャッズ、リック・ネルソンにキャッシュの奥方ジューン・カーター、それにサンの創業者サム・フィリップスまで加わった”ビッグ・トレイン”の8分近い大セッションだ。嬉々として演奏に興じる感じの往年のスターたちの様子が微笑ましい。「ミリオン・ダラー」のミュージカル版というのも見てみたかったな。そういえば、当初、今年のニューオーリンズ・ジャズフェストの出演者にはルイスが名を連ねていたと思ったけど。キャンセルになったとなれば、やはり、”ザ・キラー”とて、高齢故に体調が良くないのだろうか。最後の生き残りの健在ぶりを確認させてもらいたいところだ。
2019年04月29日
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例年何かしら1枚くらいは買うクリスマスアルバム、今回は先月に2枚買ったものの、聴く暇がないままクリスマスイヴイブまで来てしまった。どうにかギリギリセーフで2枚を聴いたけど、那覇の部屋のしょぼいミニオーディオで細々と・・・エリック・クラプトンの「ハッピー・クリスマス」については色々な人が書いているだろうから、まあアッサリと。バンドは最近のツアーやレコーディングでお馴染みの面子なのだろうけど、ドラムがジム・ケルトナーというのが、おっという感じ。更にアコーディオン、フィドル等で意外にもダーク・パウエルの名が。この人も近年のツアーに参加したりしているそうだ。さり気なく活躍しているのがバックヴォーカルのシャロン・ホワイトという人。これはホワイツの人とは別人なのだろう(多分、黒人)。当然、既成曲のブルース・アレンジの曲というのが多いけど、3曲目の”フォー・ラヴ・オン・クリスマス・デイ”はオリジナル。これはなかなかペシミスティックなクリスマスソングで、今のクラプトンの心境というのは案外こういうものなのかも知れない。ウィリアム・ベルの”エヴリデイ・ウィル・ビー・ライク・ア・ホリデイ”なんかは、やっぱりオリジナルがいいな、当たり前か。そんな具合にカヴァー曲に関しては、オリジナルを辿ってみると、渋いクリスマスソングが聞けていいなと、そういう入口にはなる1枚だ。そんなこと言っちゃ身も蓋もないかも知れないけど。みんな言ってるけどアヴィーチー追悼という”ジングルベル”は意図不明で浮きまくっているのは事実。一方でブルース系のみならず、カントリーシンガー、ソニー・ジェームスの”クリスマス・イン・マイ・ホームタウン”なんてのもカヴァーしていて、これは当然パウエルが活躍。ブルース、R&B、ロック、ポップ、カントリー、更にハウスまでと、オリジナルアルバム以上にバラエティ豊かな作りではあると思う。それが逆に企画盤故の軽さを醸し出しちゃってるのが痛し痒しとでも言うか。今後も毎年クリスマスにこのアルバムを聴くかっていうと、正直ウ~ンだな・・・一方であまり取り上げている人はいなさそうな(失礼)マイク・ラヴの「リーズン・フォー・ザ・シーズン」、こちらは実に思い入れタップリの1枚。何気に久々のソロアルバムも昨年発表していたマイク、甥のケヴィンに負けじと?まだまだお盛んなのだ。こちらは現(懐メロ)ビーチ・ボーイズのメンバーでもあるスコット・トッテンやジェフリー・フォスケット、ジョン・カウシルらがバックを固め、ビーチ・ボーイズ名義でもおかしくはないけど、まあ、ブライアンやアル抜きでそういうわけにもいかないからマイクのソロ名義なのだろうか。ブライアンのソロのクリスマス・アルバム同様、「ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム」の代表曲”リトル・セント・ニック”は取り上げていて、これだけブルース・ジョンストンもバックヴォーカルで参加している。そして何よりも目立つのは・・・懐メロBB5でも活躍の、息子クリスチャン・ラヴは勿論だが、他にブライアン・ラヴ、ヘイレイ・ラヴ、アンバー・ラヴと子供たちが総参加。ハープ担当でモーリン・ラヴというのもいるのだけど、これは親戚?大体、子供何人いるんだ?しかし、ブライアンって息子もいる(カヴァー写真も担当)くらいだから、実はウィルソンとも決して不仲ではない?そういうことはともかく、肝心の楽曲は・・・作りはゴージャスであります。打ち込みの部分も多いのだろうけど、ウォール・オブ・サウンドとは違った意味で分厚い音だ。家族も一堂に会してマイクが意図するクリスマス・アルバムとはこういうものなのだろうというのは、よくわかる。あの人らしく、実に派手で賑やかなのだ。ブライト・サイド・オブ・ビーチ・ボーイズという感じのサウンドで、タイトル曲や”ジングルベル・ロック”では、おじいちゃん元気振り絞って歌ってるなあという感じがするが、このアルバムの真骨頂は、むしろ後半であろうか。いよいよ、家族総出の様相と化してくるのだ。割とスピリチュアルなクリスマスソングが並ぶ後半は、マイクは控えめで子供たちに花を持たせる。特に、何女か知らないけどアンバーが可憐な歌声を聞かせて、しっとりと締めていく。前半賑やかに、後半しっとりとというのは、まさにビーチ・ボーイズのクリスマスアルバムと似たような構成だ。マイクもきっとあのアルバムには思い入れがあるのではないか。まあ、こっちの方が、あまり聞きこめなかった分、クラプトンよりは来年また聞いてみようかなとも思えないでもない。毎年聞きたくなるクリスマスアルバムというのは、やっぱりフィルスペであり、ワルツであり、カーペンターズでありと定番どころ。近年はブライアン、ディラン、ニック・ロウあたりも加わっている。来年はまたこれらの常連に連なるような名盤が生まれてほしいもの。しかし、ワルツによるクリスマスライヴが今年はないらしいのが、ちと残念だな・・・
2018年12月23日
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ナイチ帰宅して家で一人過ごす夜。ようやっと、パフュームのCD聴く、「フューチャー・ポップ」であります。僕が買ったのは通常版のブルーレイディスク付。但し、家のDVDプレーヤーではブルーレイが再生出来なかったけど・・・中田ヤスタカは、今回はヨーロッパで最新のクラブサウンド、フューチャーベースを取り入れていると。歌謡ポップとして聞ける枠内で先端かつアグレッシヴな音を手がけてきた中田ならではだが、前作ではフツーにポップしている曲も多かった中で、今回は先鋭的テクノに回帰しているのかどうか。一聴して些か地味な作りな気がする。実質オープニングの表題曲、シングル曲の”イフ・ユー・ウォナ”にしろ案外短く終わってしまうためもあるかも知れない。オートチューン使ってる曲は前より多い印象だが。一番耳に残るのは、やはり”トーキョーガール”だろうか。”フュージョン”はライヴでのブリッジに使われそうな実験的ナンバーだ。”チョコレート・ディスコ”に続くようなチョコレート・ソング、”タイニー・ベイビー”は、むしろ、きゃりーあたりに通じるカワイイ系だ。イントロはちょっとエンヤみたいな”レット・ミー・ノウ”はメッセージを聞かせたいナンバーのようだ。パフュームの歌唱もしっかり歌詞を歌い上げる。”超来輪”は”ちょうらいりん”と読む。ミディアムだけど”クリン・クリン”に通じる中華っぽいナンバー。中田はビヨンセみたいにボリウッド系を取り入れる気はないのかな?今更になっちゃうか。そして、このアルバムにおけるハイライトは、”無限未来”になるだろうか。最も先端を感じさせる曲調ではある。個人的にはこのCDでこれからも時々聴きたくなるのは、これだと思う。”宝石の雨”はきらびやかでポップだけれど、少し軽い印象だ。一方で”天空”は初期の曲を思わせる疾走感とアイドルっぽさを感じさせる。”エヴリデイ”は締めの曲らしい、晴れ晴れとした前向きなメッセージの内容。三人もしっとりと歌い上げる。ただ正直に言ってしまうと、これは、これまでのパフュームのアルバムの中で最もあがらなかった1枚だ。音数の少なさが原因ではあろうが、”無限未来”のような堂々たるフューチャーベースで押し通すわけでもなく、ちょっと中途半端な感じがしてしまう。鉄壁のダンスチューンとかもあるわけではないし、散発的に感じられる新しさの一方で、アルバム全体の高揚感に欠ける印象なのだ。路線に迷ったわけではないのだろうけど・・・そうは言っても、やはりライヴは見てみたい。追加で横浜アリーナの年末公演が発表されたけど、さすがに厳しいだろうな。大晦日は「紅白」に出た後のカウントダウン・ライヴになるわけか、う〜ん。年明けには、もうワールドツアー・モードでこれ以上の追加は望めないだろうか。ひょこっと沖縄に、なんてわけにはいかんだろうがなあ…
2018年11月09日
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先週の帰宅コケでもって見逃してしまったビルボードライブ東京で25年ぶりの来日公演を行ったブルース・コバーン。今回はカジュアルシートで、間際にフードプランまでつけたのだけど、台風のせいで飛行機が飛ばず、帰宅そのものを断念延期と相成った。たまたま、やはり公演に行きたいと言っていたダチが日曜の晩に空いていたので行ってくれるということになった。台風は関東の方にも進み、JRが止まったりもしたので、まあ無理はない範囲でと伝えていたが、どうにかライヴを見ることは出来て内容は非常に良かったそうだ。無駄にならなくて何よりではあった。その台風の最中、せめても今回買ったコバーンのアルバムを再聴した。そういえば日記でも取り上げていなかったので・・・1971年の「ハイ・ウインズ・ホワイト・スカイ」の邦題は「雪の世界」。ジャケはタイトル通りの寒々しい雪の公園らしき光景、そして、音もそのタイトルにふさわしい、静謐な雰囲気と寂寥感に溢れる。それでもオープニングの”ハッピー・グッドモーニング・ブルース”は、コバーンの声音によるトロンボーン・ソロがほっこりさせる。そして、”いつかは骨になるけど、笑って行こう”と歌われる”レット・アス・ゴー・ラーフィング”の楽観的ペシミズム?にやられる。アクギ弾き語りで訥々と歌われる”ラヴ・ソング”、少しのどかな調子の”ワン・デイ・アイ・ウォーク”と、オンタリオの木漏れ日が伝わってくるかのような心地よさを覚える。”ゴールデン・サーパント・ブルース”はピアノの弾き語りだ。そして、タイトル曲はトラッドの影響が窺える曲調で、シンガーソングライターらしい繊細な歌詞が歌われる。その雰囲気を引き継ぐ”ユー・ポイント・トゥ・ザ・スカイ”も短めだが名曲だ。コバーンという人、必ずしもギターの名手とか派手なソロを聞かせるという人ではないけれど、アルバムには必ずと言っていい程インストナンバーがある。”ティン/コールドロン”という曲は、マリンバやパーカッションも加わったニューウェイヴ・トラッドのような演奏だ。アルバム最後を飾るのは、故郷カナダの光景に心象風景を映しだしたような”シャイニング・マウンテン”が、幽玄さと雄大さをもって響く。前にも書いたかも知れないけど、昔のアルバムは短くてコンパクトなものだったね。小品と言ってよい曲が並んでいるけれど、密度と印象度は濃い。初期のコバーンのトラッド・ベースの弾き語り集は、やはり”珠玉”という言葉が浮かぶ。雪に覆われた部屋の中で聴けば一層味わい深いかも知れないけれど、そのシチュエーションは、あまり体験したくもなかったりする。代わりに台風の中で聴くのは一興かも。ともあれ、ボーナストラックでは70年の弾き語りのライヴ録音の2曲を収録。現在のコバーンは、もう少し骨太で社会派の人になっている印象だけど、その近年の姿が伝わる90年代のアルバムについては、また別の機会に。ああ、しかし見たかったね・・・
2018年10月03日
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先週の帰宅時の日記でも書いたけど、FMココロの「アースカラーズ・チャイニーズ」のお陰もあって、かつての個人的アジアンポップ熱が復活傾向の昨今だ。その際に取り上げた小男孫樂團に加え、今回久々に購入したAポップCDが、中華圏歌手の中でも一番のフェイヴァリットと言える孫燕姿、ステファニー・スンの2014年のアルバム「克卜勒」だ。克卜勒、ケプラー、探索機とは?まさに、タイトル通りのスペーシーな広がりのあるサウンドで始まる1曲目。スライドギターが印象的な壮大なバラードだ。相変わらず自分の中国語力は全く向上していなくて、豪華ブックレットの歌詞を読んでも、その意味するところはっサッパリだが、まさに宇宙的なスケールを感じさせる内容ではある。ステファニーの線が細いながら芯の強い歌声も健在だ。2011年に結婚して、しばしのブランクがあって、それ以来のアルバムなのだが、台湾、香港、シンガポールでも軒並み1位を記録していて、シンガポールの小天后は今も人気が根強いことを証明した。次の”渇”も、静かな中に力強さを感じさせる歌声が、何か只事ではない雰囲気を漂わせる。いや、単に歌詞がわかってないだけかも知れないけど。少しポップな”無限大”は、故ドロレス・オリオーダンを彷彿とさせる唱法(彼女はフェイ・ウォンを始め、中華圏のシンガーにかなり影響を与えたと思う)で、アップテンポに歌い上げる。"尚好的青春"はアルバム中、最も印象に残る1曲。”失われた青春は戻らない”と切々と歌われるナンバー。こういう曲をステファニーが歌うようになるとは。アクースティックな演奏が美しい。”天使的指紋”も静けさの中に情感が篭もるバラード曲。北京の光景を歌ったらしい小粋な”銀泰”に続いては、一番ポップかも知れない"圍繞"。世界はぐるぐる廻ると・・・”錯覺”には”ミラージュ”と英題がついている。これもアクースティックで静かに歌い上げる1曲。シンガポールの同胞タニア・チュアが曲を提供した”比較幸福”は渋くジャジーな仕上がり。最後を締める”雨還是不停地落下”は、それにふさわしい珠玉の佳曲。全10曲43分程は静かに終わる。そんな具合に、シャンシャンする曲のない至って地味、渋い内容なのだけど、前にも書いた通り、この人のアルバムはハズレ曲がない。曲調や演奏も程よい抑制が効いていて、独特の美意識が漂う。特に、30代を超えてからのアルバムはそうだ。何とこの人も今や40代なのが、ちょっと信じられないけれども。これを注文してすぐに、次のCDが出ていたことを知ったけど、その「彩虹金剛」は、5曲入りのミニアルバムで、なぜかガンズ&ロージズの曲なんかもカヴァーしている。まあ、このアルバムを買っておいてでよかったのだ。久しぶりのステファニー節、しばし、堪能させてもらおう。
2018年08月06日
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台風12号が迫る中のナイチ帰宅、ヤバイ場合は伊丹で降りるてな話もあって、久々に大阪に寄られるのもそれはそれでいいかななんて考えたけれども、ほとんど影響なく羽田空港に降り立つ。今回は週末帰宅にも拘らず、JAL便羽田離着なのだった。5月に買ったノートPCをめでたく持ち帰れた。埼玉の家に着いて入ったところで、しばらくして雨が降り始めた。まあ、ラッキーと言えるのかな?早めの時間の帰宅ではあったけれど、まあ不要不急の外出は諦めて今日は家に篭もりのおじちゃまとする。一応、夕食の食べ物も買ってきたしたし。5月の帰宅時に間に合わず、ポストの中で放置されていた通販CD、無事、残っていた。久々に買ったアジアンポップのCDで、今夜はまずはこれを聞くとする。「アド街ック天国」を見終えた後、雨戸を閉め切ってアジアンポップ大会の始まり始まりだ。まずは、台湾の小男孫樂團 Men Envy Childrenの「エヴリシング」。待望のというか、昨年、ラジオで”天降辣妹"を耳にして以来、聴きたかったアルバムだ。彼らの15年のデビュー盤。コブクロ似のリーダーでギタリスト、ヴィンス・チェンを中心に、元アイドルグループにいたミッフィー、ドラムのカイ、曲も書くベースのハンツ・リンの4人メンバー。多くの曲で共作者として名を連ねるスコット・スヤマという人は日系だろうか?オープニングの”没空”からして、またタイトル曲の”エヴリシング”にしろ、割とハードめのポップ・ロックでミッフィーが熱唱している。まあ、ロッカバラード的ナンバーも含みつつもアルバム全般割とその調子なのだ。う〜ん、英題"スカイ・オブ・ラヴ"は、ヴィンスがラップしてミッフィーが軽やかに歌い、VCでは中華航空のスッチたちと華麗に踊るポップなナンバーなのだが。この曲はとても新鮮だったのだけど、そういう曲は本当にこれ1曲。ある意味、アルバムの中では浮いている1曲なのだ。でも、彼らのヒット曲は、やはりこれらしい。ヒットとはいえ、類似の曲を出さないのは潔くはあるのだけど、正直、シャンシャンと一本調子のロックなナンバーにそう魅力を感じないので”天降辣妹"のような曲が他に全く無いのが残念だ。映画「52Hzのラブソング」のところでも書いたけど、ヴォーカルのミッフィー、眉間にしわ寄せしかつめらしく歌うよりは、軽く明るく爽やかに歌い上げる方が絶対合ってると思うのだが。こういうサウンドはリーダーであるヴィンスの方針なのだろうか?それでも、ミッフィーが「52Hz」に出ていたくらいだから、彼らの人気も安定はしているのだろう。でも、僕自身はこのアルバムを聴く限りでは、彼らの音楽につきあうのはこれ1枚で充分かなと思ってしまった。やっぱり、”スカイ・オブ・ラヴ”は繰り返し3回くらい聴いちゃったけど。もう1枚は、中華圏でも最もフェイヴァリットでもあるシンガポールの歌姫ステファニー・スンの2014年のアルバム「克卜勒」。これはまた日を改めて取り上げましょうか。基本的にこの人のアルバムにハズレはなし。これも変わらぬ情感こもった歌声が胸を揺さぶる1枚だ。もっとも、これを注文した後に、この後の最新盤が発売されていたのを知ったのだけど。台風下のアジアンポップ大会は続く。ジェイ・チョウ、サミー・チェン、カレン・モクら、かつて大いに愛聴した人たちのCDを久々に引っ張りだして続けて聞きまくる。やっぱり、同じ東アジアのメンタリティを内包したメロディが琴線に触れるのだろうか。サウンド的にダサかろうが、ワンパターンであろうが、なぜか惹かれてしまう世界なのだ。折しも、明日は代々木公園の台湾フェスタで、招聘ミュージシャンのライヴも聴ける。今夜は、その絶好の前哨戦ではあった。雨戸を閉め切って音楽を鳴らしていたから、よくわからんかったけど、台風の具合は如何程であったのだろうか?
2018年07月28日
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5月の日記でも書いた、タワレコのポイント消失を避けるために急遽購入したCDを聴く。本当はちゃんと家のオーディオセットで聴きたいところだけど、とりあえずPCで聴いてアイチューンズに落としてしまう。で、CDは家に持ち帰りと。今やこういうのもオールド・スタイルになっているようだけど・・・ブルース・コバーンの3枚目「サンホイール・ダンス」'71だ。ジャケに手書きの歌詞は掲載されているけど、パーソネルのクレジットはない。では、ソロなのかというと、さにあらず。冒頭の”マイ・レイディ・アンド・マイ・ロード”は、トラッド風の演奏だ。フォークとジャズに影響を受けたというコバーンらしい味のあるオープニングナンバーだ。このアルバムのプロデューサーは、やはりカナダのミュージシャンであるユージーン・マーティネックという人。2曲目で”フィート・フォール・オン・ザ・ロード”でギターソロを聞かせているのは彼なのかも知れない。コバーンはオンタリオ出身の人だけあって、ニール・ヤングのフォーク調の曲に通じる哀感を感じさせる。3曲目の”フォール”はそんな曲。アクースティックを貴重としながら、時折、フォーク調のアンサンブルなサウンドも聴かせる。インストのアルバムタイトル曲に続いては、エリック・ナグラーという人のハーモニカが活躍するアーシーなナンバー”アップ・オン・ザ・ヒルサイド”が。”ライフ・ウィル・オープン”は、ペンタングルを想起させる、まさにフォーク+ジャズなナンバー。70年代のこの初期のアルバムからして、コバーンの持つ様々な音楽要素が垣間見られる。やはり、ハイライトと言えるのは、曲調はポップで歌声も力強い反戦ソング“イッツ・ゴーイング・ダウン・スロー”だ。きっとライヴでも盛り上がるナンバーだろう。個々の曲のタイトルや歌詞にもヒルとかマウンテン、ロード、リヴァー、キャニオン。更に、サン、レイン、スノウ、バード等々、圧倒的に屋外、自然を感じさせるものが目立つ。内省的で静謐と言えど、コバーンの曲にどこか明るい開放感を覚えるのは、それ故だ。もう1曲ハイライトが、”祝ったらいいじゃん”と繰り返し歌われる、ギター弾き語りの“ダイアローグ・ウィズ・ザ・デヴィル”だ。そして、最後はコーラスで締められる”フォー・ザ・バーズ”で終わる。35分という現在のアルバムからすれば、当時のものはつくづく短いなと思わせるが、実尺とは関係ない内容の濃さを感じる。1曲1曲が珠玉と呼ぶにふさわしいものばかり。名盤だな、これ。コバーンといえば、2枚目の「雪の世界」が、やはり名盤の誉れ高く、来日前にはそちらもと。そう、9月のビルボードライブでの公演は、本日より一般予約開始。30日(日)の2nd、つまり最終公演を予約した。それまでの間、どれだけ彼の音楽を聴き込めるかな。
2018年07月06日
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大変遅ればせながらだけど、連休に帰宅中に家で聴いたボブ・シーガーの新譜「アイ・ニュー・ユー・ホエン」について。2006年の「フェイス・ザ・プロミス」以来に聴くアルバム、一時はツアーからの引退も伝えられたのでどうかと思っていたのだけど、冒頭の“グレイサイル”での変わらぬ元気な歌声を聴いてひと安心。ルー・リードの「ニューヨーク」からのカヴァー“バスロード・オブ・フェイス”もパンチが効いた仕上がりで衰えは感じさせない。そちらは聴いてないのだけど、2014年の前作「ライド・アウト」ではスティーヴ・アールの“デヴィルズ・ライト・ハンド”を取り上げたりしていて、いい具合に人のカヴァーを持ち込んでいる印象。書き溜めた、録り貯めた曲を集めた作りではあるのだろうけど、バラツキはあまり感じない。何よりも、これは故グレン・フライに捧げたアルバムなのだ。タイトルソング及び“アイ・ウィル・リメンバー・ユー”は変わらぬ友情を歌い上げていてグッとくる。二人のツーショットでのシーガーの屈託のない笑顔を見ても、この人の純な心情が伝わる。丸くなったといえばそうだろうけど、歳を経て、より滋味を増した佇まいに好感を覚える。冒頭曲や“シー・インサイド”のような少しヘヴィな曲も挿みつつ、後半は旧シルヴァー・ボレット・バンドの面子で録音された力強くも安定したナンバーが続く。ドナルド・トランプを意識したかのような9曲目は、レナード・コーエンのような歌い方だなと思いきや、実際コーエンのカヴァーなのであった。つまり、グレンだけじゃない、リードも含めた同時代を生き抜いた音楽界の同胞たちにトリビュートを捧げるような内容に思える。その代表として挙げているのが、とりわけ親しかったグレンなのだ。となると、これはもう、感慨なくしては聴けない1枚だ。“フォワード・イントゥ・ザ・パスト”のような社会派の主張はしっかり込めつつ、もう一人、シーガーにとって重要な存在だった盟友リッチー・ヘイワードに捧げた“ブルー・リッジ”で締める。そして、ボーナストラックで、訃報時に発表された“グレン・ソング”が。シーガー、どこまでも義と情の人である。この男気が泣かせる。結局、再びツアーには出ているようだけど、最後にっつっちゃなんだけど、一回来日して欲しいな。今年はディランのフジロック、来年は同じボブでも、是非シーガーで!
2018年05月27日
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はい、先週末、久々にCDを購入した、それも現金で。一般店では流通していないからライヴ会場でである。そう、ローリー・ロール・バンドの「R.R.Q.」2,500円也だ。「B」でなく「Q」なのはNRBQを意識?それにしても、ローリーがアルバムを出したというのは一体何年ぶりだろう?ソロ名義の「月とギターとベランダ」が2005年で、後は「カメジロー」と「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」のシングルを出したくらいだから、12年ぶりとなるのだろう。せっかく出したのだから、もう少し流通させればいい気もするのだけど、リリースから半年余でも既にレア盤?という趣だ。全13曲58分程。録音は勢理客グルーヴで。ローリーに、ベースのガチャピンさんこと上地一也、ドラムのカージューこと城間和広、キーボードの朝ナウこと護得久朝尚の4人に、ワルツの田場盛快他ホーン陣がゲスト参加。護得久はトランペットも吹いているので、オーヴァーダブも施されているのだろうか?ライヴの粗っぽさとは異なる整った録音で、特にバックのメンバーのコーラスが、ライヴの時とは違って(笑)しっかりしている。やはり、ライヴ時に結構コケていた城間のドラムもタイトに決まっていて、これはキッチリとプロのバンドのアルバムに仕上がっている。その先日のライヴでも披露されたイキのいい“恋をしようよ”で始まる。恋の重要性を訴える独白メッセージが入るのがローリーらしい。ウチナーグチで歌われている曲はないのだけど歌詞カード入りだ。なので、カードを見ながら聴いてしまうと、つい歌詞の方が気になってしまう。これ聴くと、本当に恋すべきかなって思えてくるもの(笑)。しかし、ローリーの声、“お月様が笑ってら”の頃の無茶シャウトから全然変わってない気がする。ライヴでもそうだけど、ソウルフルかつ豪快な歌いっぷりだ。ライ・クーダーとは同名異曲の“ゴーイング・バック・トゥ・オキナワ”は、様々な沖縄ローカル名詞も織り込んだバンドの名刺的1曲。国道58号線もルート58と呼ばれるとエキゾチシズムを感じさせるもんだ。スライドを聞かせる“悪い噂”は副題にリョーズ・ブルースとあるけど、国吉亮のこと?いきつけのバー、ローズヒルの店名も登場する。ローリーのヴォーカルが非常に気合の入った“情熱の橋”は70年代のロックを彷彿とさせる。5曲目の“スカイダスト”、現在のローリーのブログはこのタイトルがついている。何せ、ローリーでググるとすかんちが出てきてしまうから、このスカイダストで検索すればオフィシャルページにいけるから、ある意味テーマソングか。次の“あきらめが肝心なのだ”はノベルティ色濃いけど、“親は選べない”ったって自身のことを歌っているわけではなく、今どきの親について嘆いていると解釈すべきか。この曲を始め、これもライヴで披露された“なまけ者のポルカ”にしろ、“ノー・ネイム・ノー・フェイス”にしろ、ネット社会の危うさが繰り返し歌われている印象だ。“キジムナー”はちょっとパンキッシュなチューンだけど、キジムナーを題材にしたローリーの曲は過去にもあったよな。この曲の後に短いインストが入っていて、これはアナログならここでB面ってなとこだろうか。個人的なベストトラックは、まんまワルツっぽいR&Bチューン“ハレルヤ”だ。予算があればゴスペル隊を入れて録音すればもっとよかったかも。終盤で長めのギターソロを聴かせるバラード“僕の左手”からアーシーな“ありえない夜”と、ローリーのギターが様々に表情を変える。考えてみれば、ワルツ等でホーンを入れてのR&B調の演奏が多い中で、この盤ほどローリーのギターをフィーチャーしたアルバムは初めてかも知れない。最後を飾る“ユウバンタへいこう”のユーバンタとは読谷の海岸、あの“艦砲の喰ぇーぬくさー”の碑が建てられたのは、そこなのだった。なるほど、ローズヒルといい、度々登場する水釜とか、ローリーが心許せる場所が、ここで開陳されているのだ。そんな思い入れの籠もった、現在進行形のローリーを伝える熱い1枚だ。欲を言えば、録音では聴けない“沖縄ロックンロール”をボーナストラックで入れてくれるとかすればなあなんて思った。
2018年04月04日
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今回の帰宅時に買ったCDで、何を置いてもこれはというのは、やはり「プレイバック:ザ・ブライアン・ウィルソン・アンソロジー」であった。ソロで活動し始めてからの初めてのベスト盤的1枚だ。選曲をチェックして異論は大いにあったけれども、とにもかくにも外すわけにはいかない。未発表曲と新曲も収録されているしね。でも、聴いてみると、これはわかっちゃいたけれども、やっぱりどうもなあ・・・一応、レーベルやレコード会社を跨いでの選曲ではあるけれど、ヴァン・ダイク・パークスとの「オレンジ・クレイト・アート」なんかは入れられなかったのだろう。一方でブライアン版「スマイル」の曲は2曲入っている。これを中途半端と思うか必須と思うか、僕は前者で、それならビーチ・ボーイズの最新盤からの”ガッド・メイド・ザ・レイディオ”を入れてもと思ったがそりゃあ無理か。まずまずレアかも知れない、ライヴ盤からの2曲なんかも入ってはいる。でも、正直さ程上出来の曲だとは思えなかった。何より収録作品の配分がちょっと疑問で、万遍無くを心がけたのだろうけど、ブライアンのソロ作、あまり万遍なくでなくてもいいような気もする。個人的にはソロになっての代表作といえば、何と言っても「ブライアン・ウィルソン」と「ザット・ラッキー・オールド・サン」だと思っているので、この2枚から重点的にと考えるのだけど、前者からは4曲だけど、後者からは1曲のみ。う〜ん、アルバム未収録曲なんかでも、もっとベターなチョイスがあったはずでは?等々。これはどうにも何とも・・・どうも全体的にAOR寄りというか、確かに特に最近のブライアンのソロはその傾向はあるのだけど、ジョー・トーマス主導のAOR路線を歯がゆく思うビーチ・ボーイズ及びブライアン・ファンは多いはずだ。この盤も、そのトーマス絡みの甘めの曲が多く収録されている印象がある。でも、そこらは少なくていいと思うのだけど。ハッキリ言ってセールス的にはあまりふるわないブライアンのソロ故にどれがヒットしてマストというのがそうあるわけではないので、ここはやはり、ブライアンその人の底知れぬ才能をもっと周知してもらえるような曲をチョイスすべきではないかと。最近のソロは特に、ブライアンならもっといけるだろうと思える内容が多いのも事実。故に、真価が発揮されたファーストと「ラッキー」からはもっとピックすべきであろうと。ということで、もうオレが選ぶ「アンソロジー」をここで発表することにしました。ズバリ、以下であります。詳細は後で。1.ラヴ・アンド・マーシー2.メルト・アウェイ3.リトル・チルドレン4.ワン・フォー・ザ・ボーイズ5.リオ・グランデ6.グッドナイト・アイリーン7.ディス・クッド・ビー・ザ・ナイト8.ユア・イマジネーション9.レイ・ダウン・バーデン10.ソウル・サーチン11.デザート・ドライヴ12.ホワット・アイ・リアリー・ウォント・フォー・クリスマス13.モーニング・ビート14.フォーエヴァー・シール・ビー・マイ・サーファーガール15.ゴーイング・ホーム16.ホワット・ラヴ・キャン・ドゥ17.ナッシング・バット・ラヴ18.ザ・ライト・タイム19.ワン・カインド・オブ・ラヴ20.ラン・ジェームズ・ラン21.ラヴ・アンド・マーシー(ボーナス・トラック)あ、21曲になってしまったけど、短い曲入れたので収録出来るのではないかと(厳密に計算はしてません)。一応、現アンソロジーもある程度踏まえてはおります。1〜5はファーストから。ジェフ・リンとの”レット・イット・シャイン”を入れるよりは、ブライアンがはじけている”チルドレン”、そして、アカペラが素晴らしい”ワン・フォー・ザ・ボーイズ”を。この2曲で3分だから本当はもう1曲入れたかった。”ウォーキン・ザ・ライン”か”ベイビー・レット・ユア・ヘア・グロウ・ロング”か・・・6はフォークウェイズのトリビュート盤「ア・ヴィジョン・シェアード」から、アンディ・ペイリーと共にファースト・ソロっぽくレッドベリーをカヴァーしてる。7もニルソンのトリビュート盤「フォー・ザ・ラヴ・オブ・ハリー」から。これはオリジナルはフィル・スペクター絡んでいるし、そもそもニルソンがブライアンに捧げた曲をカヴァーしているわけだからピックしても文句ないでせう。アレンジは、やはりファーストソロ風。「イマジネーション」からの2曲8,9は来日公演でも印象的に披露されていたから入れませう。「ゲッティン・イン・オーヴァー・マイ・ヘッド」はコラボ曲主体の企画盤みたいな内容で、あまり強く印象には残ってないのだけど、「アンソロジー」でもセレクトされていた”ソウル・サーチン”は、カール・ウィルソンとのコラボだから残すとしよう。もう1曲入れるならタイトルソングではなく、アンディ・ペイリー共作のホットロッドソング”デザート・ドライヴ”を。12クリスマス・アルバムからも1曲、作詞はバーニー・トーピンだ。13〜15が「ラッキー」からだけど、それぞれヴァン・ダイクが書いたナレーションとのメドレーなので合わせて収録したい。この頃はブライアンの語り口もまだまだしっかりしていたし。16はフィル・ラモーンがプロデュースしたオムニバス・アルバム「ニュー・ミュージック・フロム・オールド・フレンド」から。何たってブライアンとバート・バカラックが組んでいる曲だからね。「リイマジンズ・ガーシュウィン」での、ガーシュウィンの遺稿をブライアンが完成させた2曲は、17の方がいいと思う。悪いけど、「イン・ザ・キー・オブ・ディズニー」からは選ばず、カヴァーだしね。次の2曲は「ノー・ピア・プレッシャー」から。アル・ジャーディンをフィーチャーした17は入れておこう。それに映画「ラヴ・アンド・マーシー」のエンドテーマになった18も。新曲として「アンソロジー」に収められた20は残しておきましょう。最後はボーナストラック扱いで再び”ラヴ・アンド・マーシー”を。それも、ハリケーン・カトリーナのチャリティのためにリリースされた「ハリケーン・リリーフ:カム・トゥゲザー・ナウ」から。”ラヴ・アンド・マーシー”は名曲だけど、ちょっと80年代風のシャンシャンした音なのは気になるところ。このヴァージョンは、ライヴでも聴けるシンプルな演奏で、ダリアン・サハナジャとのハーモニーも美しい。或いは、ミュージケアのパーソン・オブ・ザ・イヤー選出を記念して行われたライヴ「トリビュート・トゥ・ブライアン・ウィルソン」に収録されたチルドレン・クワイア入りのヴァージョンでもいい。これはまさに自分の葬儀で?かけてほしいヴァージョンだ。以上、この通りにアイポッドに入れて聴いてみると・・・やっぱり、AORっぽいかなあ。まあ、それがソロになって以降のブライアンの傾向をある程度反映しているものだから仕方ないっちゃないのかねえ・・・でも、みんないい曲ではあります。
2017年12月13日
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沖縄では送料の問題があるからネット通販でCDを買ったりするのはナイチ帰宅時にまとめてというのは以前にも書いた通り。今回は金がないのでディランのブートレグ等は次回まわしにして必要最低限だけ購入した。タワーレコードの通販ではブライアン・ウィルソンのソロのベスト盤を。これについては後日取り上げることに。それと数日前に書いた「世界ネコ歩き」オリジナル・サウンドトラック。この2枚は例によってセブンイレブン受取。更に、9月に買い損ねたものを今回こそ。数年ぶりにアマゾン利用に踏み切るかと思いきや・・・アマゾンはプライムだか導入時に勝手に料金を請求されて頭に来て、そんな悪質な通販なら二度と利用せんと誓い実行してきた。しかし、品揃えにしても価格にしてもタワレコらを凌いでいるのは明らか。どうしても欲しい1枚がアマゾンでは容易に見つかり、これは買わざるを得ないかなということになった。それは前にも書いたかどうか、あの旅行ガイド「ロンリー・プラネット」のTV番組版のサントラだ。あのテーマ曲を聞くと、今も旅心に火が点きそうになる。2枚組のCDで1000円ちょいの中古盤がアマゾンで見つかった。その販売元を確認するとレコファン渋谷店とな?おっ。他にも欲しいものが今回あった。以前、スコア盤は聴いたことがある「ブレードランナー」のヴァンゲリスによるオリジナル・サウンドトラック、更にサントラ繋がりで新作公開間近の「スター・ウォーズ」のあのテーマが聴けるCDが欲しい。持っていなかったのだ。それらもアマゾンで探すと、うまい具合にレコファン渋谷店扱いで、その2枚もあった。では、「ロンプラ」と合わせて3枚買おうか。ところがだ、送料が1000円近い。3枚合わせて5000円いかない程度なのに、そんなに送料がかかってはアホらしい。こっちで買う意味がないじゃない。なら、いっそ渋谷に赴いてレコファンの店で購入するか。タワレコみたいに取り置きしてもらえないかなとアマゾン経由で尋ねてみる。すると、生憎、取置はしないという。まあ、行ってみて見つかれば買えるだろうと、正直、休日の渋谷(実は一昨日の話)にはあまり行きたくはないけど、まあたまにはリアルのCD店を覗くのもよかろうと。レコファン渋谷店、かつてはよく訪れていたけど、かなり久々である。広い店内でサントラ・コーナーを捜すだけでも大変だが、お目当ての「ロンプラ」はジャンル的にどういう分類がなされているやら。映画のサントラの「L」にはないようで、やっぱりテレビかというと、これも見当たらない。並行して他の2枚も探すが、「SW」はあったものの、あれ、高いなあ。販売価格2000円くらいのものがコレクター商品として3000円近い。僕は基本そういうものには手を出さないので、今回は残念ながらスルーだ。一方の「ブレラン」ないなあ、やっぱり時期的に売れてしまったのだろうか?音を上げて店員さんに尋ねた後で、やっぱり映画サントラの「L」のコーナーで目的のブツが発見できた。以前は、こういう探す作業も楽しかったのだけど、よる年波で(苦笑)目も悪くなってきたので、CDの、それも英語のちっこいタイトルを探すのは実に難儀で。とにかく、「ロンプラ」ありましたよ。結局、渋谷までの電車賃使って買えたのはこの1枚だけだったけど。まあ、よしとすべし。で、その「ロンプラ」サントラ、あのテーマ曲は、作曲がイアン・リッチーとな。え?あの番組で旅していた、あのお兄ちゃん?ミュージシャンだったのかな。シンセによるテーマにフィリピンの竹笛等を加えているよう。つまり、作りとしてはエニグマあたりに通じるもののようだ。テーマ曲以外は馴染みがないが、それぞれシンセ+民族音楽といった旅番組らしい作りだ。2枚組だが、2枚目は”アンビエント・テーマ”と題されて旅のBGMに合うクールなサウンドだ。因みに第二集もやはり2枚組出ている。ま、とにもかくにもテーマ曲を入手出来たのは何よりだ。自分が心肺停止とか寝たきりとかになったとしても、この曲を聴けば目覚めてムクッと起き上がるかも?知れない。
2017年12月11日
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帰宅中にもう1枚の新譜を聴いていたので、今更ながら取り上げておく。ユッスー・ンドゥールの6年ぶりの新譜「アフリカ・レック」だ。これは久々に日本盤も出たようだけど、輸入盤で購入。しばらく政治に軸足を置いていたユッスーとしては、音楽面での”復帰作”といった印象だ。当然、フランス語で歌っていて、英語訳もついてないので、正直、歌詞の方はピンとこない。日本盤のソニーのサイトによれば”古いアフリカ新しいアフリカ”なる副題がつけられていたので、ユッスーらしい、アフリカの未来に目を向けた前向きなメッセージに溢れた内容なのだろうとは思う。1曲目は”ゴレ島”、あの映画「魂の帰郷」にも登場した、セネガルの奴隷貿易の拠点だった場所だ。そこを歌う割にサウンドは、のっけにハーモニカが入り軽やかで明るいものだ。2曲目の”ブル・コ・ドール”は、昨年、演奏中に急死したパパ・ウエンバに捧げる内容のようだ。ただ、これも音は軽やかで悲痛な印象はない。次の”ビー・ケアフル”もポップなサウンド。題名とVCからしても若い世代への警告ソングのようだ。いずれも、アフリカならではの様々なパーカッションが駆使されながらも、打ち込み主体で聴きやすい作りだ。次は日本題名では”寛容”と題され、英題は”許し”となっている。ユッスーらしいメッセージ・ソングは次の”世界を手に入れる”に続くが、こちらはエイコンとのコラボが話題だろう。レゲエ調のゆったりしたナンバーで平和と共存を歌う(多分)。レゲエといえば、次の曲は”エクソダス”。こちらはレゲエではないけど、ユッスーの優し目のハイトーンが聞けるミディアムなナンバー。そして、そこそこユッスーの力強い歌声が聞けるのが”バン・ラ”という曲。コンゴのファリー・イプパというシンガーソングライターと共演。若い世代とのコラボで、音の面では肩の凝らぬコンテンポラリーな内容を目指したアルバムなのかなと思えてくる。後半は、数年前のアルバム「エジプト」で大いにこだわっていたイスラム教についてのナンバーが続く。再び”ダウル”という曲ではスポットレスという若手をフィーチャー。なるほど”新しいアフリカ”とは、サウンド面で若い世代を迎えて新しさをアピールするということか。ただ全体的におとなしめの曲が多くて、あのかつての躍動感には欠ける印象だ。最後は”フード・フォー・オール”、”マニー・マニー”と、ベタかも知れないけれど重要なメッセージを歌っているのであろうことは伝わってくるのだけども。これのセネガルご当地盤は「セネガル・レック」のタイトルでンバラ全開の内容らしい。こっちはいわばワールド盤。でもなあ、今むしろローカルに徹した音の方が却って受けるのではないかなあ。若手陣をユッスーの土俵に引き込んでがっぷり4つを組む位の方がメッセージも、更に強くストレートに伝わるのではなかろうか。最近、何やら日本の皇室の賞も授賞したりして大御所然としたユッスーも、まだ50代後半。老け込んでしまう歳ではないと思うのだけど。あ、だからこういうのを作ったのかな?久々のライヴの方も体験したいなあ。彼が来るなら、それ見るために帰る用意だってあるのだけど・・・
2017年09月21日
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土曜に家で聴いたCDの話の続き。5月に買って、今更ながらローリング・ストーンズの目下の新譜「ブルー&ロンサム」を聴いた。本来の新譜ももうすぐ出るのかな?まあ、詳細はあっちゃこっちゃで書かれているから、これは僕が感じた部分だけ。とにかく、ミック・ジャガーのハーモニカが大活躍だな。一発録りとのことだから、オーヴァーダヴィングはないのだろう。歌って、間奏に入ったところで、すかさずミックがハープ吹き始めるわけだ。こういうミックの純なノリを引き出したのが、盟友キース・リチャーズの、今回の最大の策略?成功であるのだろうと。そのキースのギターは目立たないというか、正直、ロン・ウッドとどっちが弾いているのかが判断し難い。そんな中で非常に個性を発揮しているのはチャーリー・ワッツのドラムだ。今回のアルバムほど彼のドラミングを意識したことはなかった。実に強弱も緩急も自在。さすがの存在感を示している。表題曲リトル・ウォルターの”ブルー&ロンサム”は、スクリーミング・ジェイ・ホーキンスのあの曲を想起させるけど、元ネタはこっちなのだろう。リトル・ウォルターといえば、あのド迫力アップのジャケ写で、ブルース・ファンのみならず知られた存在。ストーンズはロバジョンもカヴァーしているけど、やはり最も愛着があるのは、電気入りのシカゴ・ブルースなんだなと認識。あの顔ジャケのアルバム、いずれ手に入れないとな。さり気なくエリック・クラプトンも2曲でゲスト参加。ゴリゴリのブルース・アルバムとしては、ミックのヴォーカルにコクがないという意見もあったけれど、これはあくまでブルースまんまではなく、ストーンズによるブルース・ロック・アルバムという風に考えたい。オリジナルがどうこう以前に、これはストーンズのサウンドとして楽しめるし、一定のクオリティも保ったものだと思う。ブルースをやろうとしてうまくいかずに成立したのがストーンズのサウンド、なのだとしたら、まさにこのアルバムは、ストーンズ以外の何物でもないものだ。ミックの歌声に覇気が溢れている点も買いだと思う。やっぱり、いいとこは持っていく人なんだよ。もう1枚、これも今更だけど、テデスキ・トラックス・バンドの3rd「レット・ミー・ゲット・バイ」を。初めて聴くわけだけど、昨年来ピーター・バラカンの番組で複数の曲がよくかかっているので、結構耳馴染みの曲がある。1局目の”エニィハウ”もそうだ。スーザン・テデスキの伸びやかなヴォーカルが印象的な1曲。何年か前に見たライヴでもそうだったけど、ブルース・ロック云々以前に、これは実に王道なアメリカン・ロックだ。デレク・トラックスのギターも必要以上に目立たず、でもツボを押さえたプレイ。どことなくカミさんの歌を引き立てる方に徹している印象さえある。ライヴではジャムっぽい演奏が期待できそうなナンバーや、ソウルフルかつファンキーなナンバーもあり。一方でマイク・マティスンが曲作りにも参加してリード・ヴォーカルを取るブルージーなナンバーもある。チラッとだけど、デレク・トラックス・バンド時代にも聞かれたデレクのインド趣味も垣間見られる。想像以上にバラエティ豊かでポップさにも溢れた内容だ。モータウン調の”アイ・ウォント・モア”なんかはテデスキのヴォーカルが実にハマってる。いいアルバムだ。でも、やっぱりこの人たちはライヴかな。割と定期的に日本には来ている印象だから、どこかでタイミングが合えばもう1回見てみたい。夫婦バンドというのは、なかなか永続的な活動が難しかったりするし、なんて書いたら怒られるかな?聴いたCD、まだあるから続くよ・・・
2017年09月20日
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本当は川崎にフットボールXリーグの試合を見に行きたかったけれど、そんなの論外のざーざー雨。それも一日中だ。一歩も家から外に出ない一日にあって、夜になってCDを聴き始めた。お陰様で久々に何枚かは聴けた。まずはこのところ頭の中でやたら鳴り続けていたドナルド・フェイゲンの「ナイトフライ」。アイチューンズには入っているのだけど、やはりCDで音を出して聴かねば。しかし、この頃のCDは音量が低くて何とも薄っぺらい音だな。家のオーディオのせいもあるだろうけど臨場感が皆無。とはいえ、名盤には違いない。生憎、フェイゲンのソロとしての初来日は急病とのことで流れ、ブルーノートジャズフェスティバルまで中止になってしまったのは、お気の毒というか何というか。相方のウコルター・ベッカーの死が影響したのかとも思えるが、そのベッカー抜きで、フェイゲンはスティーリー・ダンの継続を宣言してツアー日程も発表されたところだったそう。かつてはライヴをなかなか演らない人だったフェイゲンだったが、”ミュージシャンはライヴ以外で食えなくなった”と発言していたフェイゲンの現実主義だろうか。だったら、お得意様の日本には来ておくべきだったろうにねえ。聴いてはいたのだけれど、ディスクは持っていなかったブルース・ホーンズビー&ザ・レンジのデビュー盤「ザ・ウェイ・イット・イズ」を今回購入した。AORの括りで100枚くらいが一気に1000円で発売されたうちの1枚。もう1枚ヴァレリー・カーターのデビュー盤も今回購入した。このホーンズビーも名盤。ブルーノート的な静謐さと南部的な泥臭さが共存するスケールの大きなロック・サウンド。ニューオーリンズで見たこの人のライヴも非常に良かったという記憶があるけど、最近も健在だろうか?本来はグレン・フライ追悼で5月に買うつもりだった「ロングブランチ・ペニーウィッスル」もようやく。グレンとJ・D・サウザーによるデュオ盤。あまり期待されてなかったようだけど、意外やバック陣は超豪華。リードギターにジェームズ・バートンの他、ジョー・オズボーン、ジム・ゴードン、バディ・エモンズ、ラリー・ネクテルに、更にライ・クーダー、フィドルでダグ・カーショウも参加している。当時のウエストコーストでは、駆け出しの存在でもこのくらいのバックがつくのは当たり前だったのかな?何とも贅沢だ。して、内容はといえば、J・D主導のものだ。半分以上は彼の曲で、グレンはバックコーラスをつける。2曲めはグレン作で、初期イーグルスに通じる軽快なロックンロール・ナンバー。3曲めのバラード”レベッカ”も彼らしいおセンチさがあっていい。一方のJ・Dのナンバーも、カントリー・ジョーあたりに通じるシングル曲”ジュビリー・アン”から、カントリー・ロックな”ラッキー・ラヴ”、”カイト・ウーマン”。ソウルフルな”ブリング・バック・ファンキー・ウーマン”、シニカルな”スター・スパングルド・ブルース”、しっとり聴かせる”ミスター・ミスター”等、バラエティ豊かで佳曲が多い。J・Dの熱心なファンなら必携ともいえる1枚かも。JTのカヴァー”ドント・トーク・ナウ”はグレンがリードを取る。二人の息の合ったハーモニーも聴きもので、これは結構嫌いじゃない1枚だな。何より、ようやく聴けたという感慨もちらりと。イーグルスの方も、グレンの息子にヴィンス・ギルというクラシック・ウエストでの顔ぶれでツアーやるとか。これはもう好きにやって下さいとしか言いようのないレベルのものだな。ホーズビー絡みで、近々来日もするらしいヒューイ・ルイスをちょいと聴こうかと思ったが、CDを見つけることが出来なかった(爆)。もう何枚か聴いたけど、その続きはまた明日に・・・
2017年09月17日
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昨日の雪がまだ残る寒い夜。長かったナイチ帰宅も、ようやく終わる。明日の那覇への帰還に備えて荷物の準備だの、また二ヶ月は空ける家の後片付けに追われながらも、やっぱり、ブライアン・ウィルソンのライヴ盤は聴いておかないと。CD&DVDの「ブライアン・ウィルソン&フレンズ」は、以前ワウワウで放送されて録画してもらって見たスタジオ・ライヴの公式版だろう。CDの方は、「ノー・ピア・プレッシャー」ゲスト陣の演奏を省いた(マーク・アイシャム参加の曲は収録)短縮版。でも、これで充分というか、こっちの方がいい。目玉は、やはり、来日公演でも大いに目立っていたブロンディ・チャップリンに、更にリッキー・ファターも加わった3曲。特に公演では披露されなかった”セイル・アウェイ”が聴きもの。そして、勿論、アル・ジャーディンも大いにフィーチャー。「ノー・ピア」のシングル曲”ライト・タイム”や”ヘルプ・ミー・ロンダ”のみならず、”素敵じゃないか”や”カリフォルニア・サガ”でも大活躍。ホント、来日公演もアルによるところは誠に大きかった。その”サガ”と”カリフォルニア・ガールズ”は、DVDには未収録でCDのみ。ブライアンのヴォーカルはかなり頼りなく、結局、来年も続くことになった「ペット・サウンズ・ツアー」をもってライヴ引退らしいのも致し方なしかなとも思える。それでも、やっぱり、この人にはいつまでも元気で音楽活動を続けてほしいものだが。今回は音だけ聴いて映像の方はまたいずれ。てか、一度見てるやつと同じだろうから。今回のナイチ滞在で、終盤はそこそこCDも聴けたけど、これはやっぱり一番心残りの部分はあるかも。いつかまた、暖かく気候のいい時期に帰ってきて、今尚積まれたままのハコやディスクを存分に堪能したい。なわけで、クソ寒いナイチからは明日をもっておさらばだ。もう、この時期には二度と帰ってきたかないぞ!と、言いつつ、既に2月のフライトを予約済なのだけどね。如何ほどの寒さが待ち受けていることやら、戦々恐々・・・
2016年11月25日
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雪なんぞ見せてくれなくていいのだけどね。一生見たくなかったけども。こんな晩はしっとりとした音楽を。ということで、ブライアン・ウィルソンのライヴ盤と共に購入したノラ・ジョーンズの新譜「デイ・ブレイクス」を。純粋なソロアルバムとしては、2012年の「リトル・ブロークン・ハーツ」以来。あの尖ったポップさは、あれはあれでよかったし、その際の来日公演も堪能した。でも、今回の新譜は、最初の3枚の線に回帰していて、やはり、ノラはこれだねという内容だ。結論から言えば、これはすごくいい。その初期3枚は、ジャズ、シンガーソングライターの流れとして聴かれたけれど、実際は、カントリーの影響も濃厚でアメリカーナと呼ぶにふさわしい内容だった。でも、今回はよりジャズ寄りだ。ドラムはほぼブライアン・ブレイドが担当。大御所ウエイン・ショーターも全面的に参加。日々、人生の悲喜こもごもをシンプルに綴ったノラの自作曲を、控えめながら的確に彩る。ノラ自身のピアノもとてもいい。まさに夜明けの様々な表情を想起させる極上のサウンドだ。カヴァーも3曲、ニール・ヤング、ホレス・シルヴァー、そしてエリントン。ヤングの「タイム・フェイズ・アウェイ」からのピックは、ホーンやコーラスを配して聴かせる。共同プロデューサーでバックヴォーカルも務めるサラ・オダという人は名前からして日系人?そのオダが書いた”スリーピング・ワイルド”もいい曲だ。表題曲の歌詞を読むと、ノラ自身にも、ここに辿り着くまでの葛藤が覗い知れて、苦悩から吹っ切れた心境を”夜明け”として表現しているような印象だ。しかし、ここで聴ける音楽そのものには迷いは感じられない。実質、最後を飾る自作曲”キャリー・オン”は彼女の宣言のようだ。デュエット盤、音楽仲間たちとのバンドやユニット活動、グリーンデイのビリー・ジョーとのコラボ等々を経て、一巡してノラは本来の路線に戻ってきた。それは以前よりも更に深みと人生の滋味を増して。来年4月の来日公演にもそそられるけど、やっぱり、こういう音は武道館のようなハコにはそぐわない。難しいだろうけどブルーノートのような規模こそがふさわしい。だから敢えて来日公演はスルー。ひとまず、このアルバムは繰り返し聴いて味あわせてもらうとしよう。
2016年11月24日
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ということでイギー・ポップの続き。ソロアルバムの1枚目「ジ・イディオット」'77。”マヌケ”の次は”ボケ”とは自虐ぶりも立派だが、内容はボケでもマヌケでもない。プロデュースがデヴィッド・ボウイだから、これまでのストゥージズの原初的パワーとは異なるもの。サウンドも歌詞もより緻密というか凝った意匠になり、イギーの歌いっぷりもこれまでとは別人の如し。まさにボウイかルー・リードかと聞き違えるような感じだ。おそらく歌詞がイギーで曲がボウイなのだろう。思わせぶりな歌詞もボウイの存在故かどうか、下品にはならない。5曲目の”チャイナ・ガール”は、おや、ボウイが”レッツ・ダンス”で歌ってたやつ。あれはセルフカヴァーだったんだね。ミキシングもボウイでお馴染みのトニー・ビスコンティが担当。否が応でもボウイ色が強い内容は、元々のイギー・ファンからは賛否両論あったかも。”タイニー・ガールズ”なんかは、ホント、知らずに聴いたらルー・リードと勘違いしそうだな。とはいえ、やっぱりイギーの個性はそう簡単には消しようがないでしょ。最後の”マス・プロダクション”のねちっこさとか。ボウイとのコラボは更に続く。のっけからモータウンのようなリズムで快走する「ラスト・フォー・ライフ」'77。やっぱり思い出すのは「トレインスポッティング」だなあ。イギー単独の作で下世話気味な”シックスティーン”が続く。前作とは異なるパンキッシュな感覚がここでは復活。まさにポップな”サム・ウィアード・シン”の後の、”ザ・パッセンジャー”も、それまでのイギーにはなかったタイプの曲。ボウイ色の濃い”トゥナイト”、”サクセス”、”ターン・ブルー”が続くも、このカッチリとした作りは、一皮むけたイギーという感じで完成度は高い。ボウイは決して好きなタイプの人ではなかったのだけど、こうしてみると、イギーやルー・リード等の活動を活性化させた点でもロック界への貢献は大だ。世間的な評価は充分かも知れないけど、個人的にももっとボウイの活動に改めて注目すべきかも知れないね。ともあれ、ストゥージズでの粗粗しさは唯一無二だが、ソロの代表作でのそこそこ作り込んだ音も、これはこれで魅力的だ。息長い活躍を見せる”淫力魔人”の最盛期は、文句なしの”ハヴ・ファン”だ。
2016年11月22日
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昨日に続いて今日もCDデーといきたいが、何を聴いたものか。箱モノではスティーヴィー・ワンダーとかダニー・ハサウェイとかペンタングル、ファド、サンレモ音楽祭、スティッフ等々様々。でも、何も箱じゃなくても昨日のように1ミュージシャンの個別のCDで聴くのでもいい。クラッシュ、トーキング・ヘッズ、ブリンズリー・シュウォーツ等々・・・結局、選んだのは、収録時間の短さ!でイギー・ポップだ。イギーもちゃんとアルバム単位で聴いてなかったんですね。ライヴでの裸のジジイという印象ばかりで。初期からキッチリ追いましょう。ということで、まず「ザ・ストゥージズ」'69。お、プロデュースはジョン・ケイルなんだ。冒頭の“1969”の歌詞でギョッとしたが、この時点でのイギー、弱冠23歳かい。イギーも何だけどロン・アシュトンのワウワウ・ギターも大いに目立つ。イギーの代表曲2曲でのパフォーマンスは、やはり強烈だが、その間に挟まれた10分に及ぶ”ウィ・ウィル・フェイル”は何なんでしょ?ずっとバックで唱えられているのは何語なの?これはドラッグ・ソングなんかな。正直、これがなければ、このアルバムはもっと良くなってたような気が。以後の曲も含め、アルバム全体としては原初的なパワーに溢れた快(怪)盤だが、この時点では歌の内容がごくシンプルというか、あまりバリエーションは無い気もしないでもない。だからこそいいとも言えるのだけど。イギー一人だけではなく、バンド・サウンドとして個性をアピールしている点は認められる。次は70年の「ファン・ハウス」。前作に続き、ギター、ベース、ドラムもガッチリと活躍して、この年代とは思えぬヘヴィかつパンキッシュな演奏が冴える。そこに、一発勝負みたいなシンプルな歌詞とエネルギッシュなイギーのヴォーカルがのる。咆哮一発で始まる”TVアイ”までの3曲見事に突っ走るが、ここでまた長めの曲が。でも、ブルージーな”ダート”は、いかにも当時っぽいルーズさで悪くない。前作のアンサー・ソングみたいな"1970"では、とりあえずイギー、フィール・オーライト”なようだ。タイトル曲で突如サックスが入ってくる。最後の「LAブルース」でも引き続きサックスが目立つが、ギターとのノイズ応酬にイギーの叫びが挿入される曲で、これはパンクというかフリー・ジャズのようだ。70年代のこの時点でこういうことをやっているというのは、かなり先鋭的だったのではないか。ストゥージズも、決してイギーのバカパワー(失礼)一点張りではなく、時代を先駆ける意気込みが感じられる。イギー&ザ・ストゥージズ名義の「ロウ・パワー」'73。前作から間が空いてメンバー・チェンジもあり、更にデヴィッド・ボウイも制作に絡んだという1枚だが、これだけリマスター盤のせいもあるけど、のっけから音圧が違う。イギーの歌い方にも変化が。前作、前前作よりも、より繊細というか表現力も豊かになっている印象。新ギタリストのジェームズ・ウイリアムソンは、荒削りなアシュトンよりも1枚上手というか、サウンド面の強化に貢献している。曲もこの人とイギーの共作になっているし。歌詞の奥行きも拡がっている感じなのも、この人の影響か。とはいえ、決して大人しくはなっていない。それどころか、前2作以上に、まさに生の迫力に溢れかえっている。ぶっちゃけ、これは聴いててすげーなーと素朴に思う。ストゥージズとしては間違いなくこれが最高傑作だなと思う。捨て曲全然ないし。最後の”シェイク・アピール”、”デス・トリップ”まで疾走感途切れなし。これは感服しました。で、更にイギー・ポップのソロ名義のアルバムに続くわけだけど、本日はこれまで。続きはまた後日なり!
2016年11月21日
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晴れて暖かいはずの日が、ちっともそうではない。でも、日中に色々用事を済ませ、この時間が持ちたかった!夜は家にこもってひたすらCD。お題はリオン・ラッセル追悼だ。数日前にネタ埋め的に(笑)チラッとふれたけど、この人のCDは、ビルボードライブ公演時に見に行こうとしてまとめ買いしたのだけど、ろくに聴いていなかったのだ、実は。なわけで、初期のオリジナル・アルバム4枚を一気聴き!まずはソロとしてのデビュー盤「リオン・ラッセル」'70。オープニングこそ、あの”ソング・フォー・ユー”だが、この曲はこのアルバム全体でいえば、やや異色の位置づけだ。2曲目の冒頭から始まるレイドバックしたサウンド。これぞ”スワンプ・ロック”の呼び名にふさわしい”ディキシー・ララバイ”。CDジャケには録音パーソネル記載なしなのだけど、後のシェルター・ピープルの顔ぶれであったろうか。レイジーなスライドギター、ハーモニカ、バタバタしたドラム、そして、勿論、リオンのピアノと、どれも濃厚な味わいだ。”アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー”って、あの不気味おじさんのあれ?かと思いきや、リオンのオリジナル曲だった。ゴスペル調に疾走する演奏にリオンのだみ声がのって最高。この頃のリオンの声はドクター・ジョンにも近い”泥沼”系だった。ブルージーな”ハミングバード”に、目いっぱいアーシーな”デルタ・レイディ”のあたりの流れがすごくいい。”ギヴ・ピース・ア・チャンス”もレノンのあれではなくリオンとボニー・ブラムレット共作による短いゴスペル・ナンバー。アルバムとしては最後の曲”ロール・アウェイ・ザ・ストーン”まで捨て曲なし。”ソング・フォー・ユー”だけ聴いていては勿体無い、ズブズブのスワンプにハマる文句なしの名盤だ。ボーナス・トラックとして収録されたディランの”戦争の親玉”カヴァーはアメリカ国歌のメロディで歌われるという痛烈な皮肉も一発。続く71年の「リオン・ラッセル・アンド・ザ・シェルター・ピープル」も前作の好調を維持する1枚。こちらは、しっかりバンド・パーソネルのクレジットがあり、シェルター・ピープル・メインの演奏。でも、ディランのカヴァー2曲に関してはタルサ・トップスと称されるジェシ・デイヴィス、ジム・ケルトナーらによる演奏。実はエリック・クラプトン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターらも参加しているとか。そのディランのカヴァーは、見事にリオン・ヴァージョンの濃厚な仕上がりで、そんじょそこらのカヴァーの追随を許さない。すこぶる賑やかな”クリスタル・クローゼット・クイーン”は、コーラスで”トゥッティ・フルッティ”と入り、リトル・リチャードへのオマージュか。一方で”ホーム・スウィート・オクラホマ”、”バラッド・オブ・マッド・ドッグス・アンド・イングリッシュマン”、”スウィート・エミリー”といった哀愁のバラード・ナンバーもいい。”シー・スマイルズ・ライク・ア・リヴァー”は、後のカントリー路線を彷彿させる1曲。ジョージの”ビウェア・オブ・ダークネス”はインド好きのジョージに敬意を評してかタブラが活躍するユニークな仕上がり。更にボーナス・トラックでディラン・カヴァー3連発。見事なリオン・ヴァージョンでディランも感服だろう。72年のヒット作「カーニー」はスワンプ風味を抑えてのシンガー・ソングライター仕様か。ジャケットでの白塗りのリオンはピエロということか、1曲目の”タイトロープ”でもサーカスを思わせるようなサウンドが。”アウト・イン・ザ・ウッズ”は言われなければドクター・ジョンの曲かと勘違いしてしまいそうな位に、音的にも似ている。比較的メロウな3〜5のナンバーは楽曲の良さを引き立てる落ち着いた演奏ぶりが前2作とは異なる。”ローラー・ダービー”では少しスワンプ風味に戻るけど。しかし、もっとも異色のナンバーは”アシッド・アナポリス”。ドクターの初期のヴードゥー・ロックに通じる印象だけど、この曲は本当に怖い。ちょっとこれは飛ばしたいという1曲だ。コオロギの鳴き声が入るバラード”マイ・クリケット”、リオンは孤独なピノキオの気分か?そして、名曲”ディス・マスカレード”。この人も結構、振り幅の広い人だよね。自分探しを託した”マジック・ミラー”で渋く終演。なるほど、リオンのソングライターぶりが際立つ1枚だね。4枚めは73年の「ウィル・オー・ザ・ウィスプ」。シンセ、クラヴィネットが目立つ異色のサウンドで始まる。後に奥さんになるメアリー・マクレリーのコーラスもフィーチャー。更に”キャント・ゲット・オーヴァー・ルージング・ユー”には、琵琶に尺八まで入る。これは来日公演の際に音だけ録音して重ねたみたい。ギターでJ・J・ケールも参加。そんな異色ナンバーが続いた後、5曲目以降がこのアルバムの本番というか、バックがアル・ジャクソン、スティーヴ・クロッパーにドナルド・ダック・ダンという、ブッカーT&MGズの面々による担当となる。シンセ+スタックスといった趣でリオンとしても新境地の気分か。曲は「カーニー」のソングライター路線を引き継いで落ち着いたものが目立つ。それでも楽曲は粒ぞろいだし、この時はまだリオンの声の”アク”もまだ健在で、この人ならではの世界は堪能出来る。正直、最初の2枚の、あのバタバタ感が好きだけど、次第にミュージシャンとしての洗練を加えて更に幅を広げていくことを、リオン自身は目指していたのだろうか。最後に、カントリー好きのリオンがウィリー・ネルソンと組んだ「ワン・フォー・ザ・ロード」'79も。20曲に及ぶこのアルバム、10曲目まではウィリーとリオンの共演として一緒に歌っている。ウィリーのいつものバンドにリオンが加わった形で軽快な演奏と歌は気持ちはいい。しかし、最も印象に残るのは”トラブル・イン・マインド”。どちらかと言うとウィリー寄りのアルバム中にあって、マリア・マルダーのゲスト・ヴォーカルにボニー・レイットのスライドが加わって、リオンならではのスワンプ風味全開の快演だ。ところが11曲目以降は趣を変え、要はリオンがアレンジとピアノを担当してウィリーがスタンダード・ナンバーを歌うという展開。これって元々は別の2枚のアルバムだった?と思える不思議な作りだ。まあ、セールスも評価も好評だったようなので、これはこれで良しなのかも知れないが。晩年はマイペースの活動ぶりだったリオンだけど、全盛期のスワンプずぶずぶの頃のライヴ映像というのは、機会あれば見てみたいな。享年74歳、改めて合掌。
2016年11月20日
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年末になると出てくるボブ・ディランの「ブートレグ・シリーズ」。ノーベル賞授賞で弾みがつく今回はどんなのが?と思いきや、これはシリーズの一遍の位置づけではないようだけど、1966年のコンサート・ツアー22公演をまとめた36枚組!の箱と、同年の(本物の)ロイヤル・アルバート・ホール公演のCDが出るとな。さすがに前者には手がのびないけど、後者は以前ブートレグ・シリーズで「ロイヤル・アルバート・ホール・コンサート」として出たのは何だったんだとの思いはあるけど、やはりいずれは買うかな。しかしだよ、何より、購入済のブートレグ・シリーズをちゃんと聴くのが優先でしょう。まだvol.10で止まってるとこなだから・・・というわけで、vol.10「アナザー・セルフポートレイト」であります、今頃。ディスク1&2は67〜71年の録音の未発表及び別ヴァージョンをランダムに?収録。どうして時系列ではなかったのだろうね。最古のものは67年の「ベースメントテープス」でのセッションのものが含まれてる。シリーズvol.11が「ベースメント」なわけだけど、この曲はそっちに収録されなくてよいのかね?とまれ、「レコードコレクターズ」誌2013年10月号では、この2枚のディスクの収録曲が、ちゃんとセッション日順に追って解説されている。萩原健太氏による労作だ。その、「ベースメント」セッションは”ミンストレル・ボーイ”1曲のみで、時期的に次ぐのは「ナッシュヴィル・スカイライン」用のセッションとなる。で、あれ、これも2曲だけか。とりあえず、この時期周辺の未発表ものを収めてみましたってことか。その次がようやく「セルフ・ポートレイト」セッションからのものとなる。バックはアル・クーパー、デヴィッド・ブロンバーグらで、未収録曲に加えオーバーダブなしの、ビートルズ風にいえば”ネイキッド”なヴァージョンが収録。これがなかなかいいのだ。ここの曲の詳細はコレクターズ誌等を参照してもらうとして(笑)、「ベースメント」から連なるディランのルーツ確認作業としての「セルフ」の性格が少しわかってくる。更に「ニュー・モーニング」のセッションのナンバーにはジョージ・ハリスンが参加している曲も2曲。この辺聴いていると、オリジナルの「セルフ・ポートレイト」及び「ニュー・モーニング」よりも、この2枚のディスクに収録されているナンバーの方がいいなあと思えて仕方がないのだけど。肝心の「ベースメント」のブートレグはまだ聴いていないわけだけど、まさしく、ディランの、次を見据えたセッションの数々が、そこそこの目的意識をもって確かに伝わってくるような演奏に思える。一連のセッションの最後は「グレイテスト・ヒッツ」用のもので、バックは故リオン・ラッセルからジェシ・エド・デイヴィス、ジム・ケルトナー、ハッピー・トラウム、ベン・キース等と多士済済。こう言っちゃ失礼だけど、この2枚組、結構ひろいものというか、退屈せずに、いや、むしろなかなか興味深く聴ける。もう1枚、「セルフ」に中途半端に収録されていたワイト島ライヴがディスク3。バックはザ・バンドだ!”ハイウェイ61”はディスク2とのダブりみたいだね。とまれ、ここでのディランの声はなめらかクルーナー系。それでも、やっぱり、とりわけガース・ハドスンやロビー・ロバートソンら気鋭ザ・バンドの演奏も光る好内容だ。2曲目の”アイ・スルー・イット・オール・アウェイ”は、これがライヴ初披露だそうだけど、後の荒々しいヴァージョンとは対極の滑らかな歌と演奏。4曲目のトラッド”ワイルド・マウンテン・タイム”は意外だが、レココレの解説にもあった通り、イギリス人のファン向けということか。ファン・サービスするディランってのも珍しいね。これ、故グレン・フライもソロのライヴで演ってたけどディランの影響があったかどうか。聞いたのはバーズ版だと言ってたけど。そのトラッドを含むディランのアクースティック弾き語りは4曲。再びバンドが加わると、少し温度が上がってくる。だぶっている”ハイウェイ61”はガースのソロがぶっ飛んでいて結構嫌いじゃない。スタジオ版でディスク1に入っていた”ミンストレル・ボーイ”のライヴ演奏は貴重。イントロのバンドたちとの合唱が泣かせるね。最後の”雨の中の女”となると、ディランもかなりハイテンション。この17曲のライヴ演奏は、ハコと別に単独で聴いても充分に価値のある1枚。というわけで、やっとvol.10を一通り。購入済のvol.11の「ベースメント・テープス」及びvol.12「カッティング・エッジ」まで聴くのは今回は無理。また来年の帰宅時のお楽しみってことで・・・
2016年11月18日
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今日は1並びの日だけあって”〜〜の日”というのがやたらあるらしいけど、やはり近年はこれ、中国を中心の”独身の日”でありましょう。アリババの仕掛けなんだろうけど、この日は独身者が自分へのご褒美?を買う日で、通販が売れまくる日とな。チャイニーズも簡単にのせられるなあ。いや、チャイニーズだけじゃないす。私もネット通販しました。またぞろで何ですが、パフューム「コンプリート・ベスト」。アルバムでこれだけ持ってなかった。今もライヴで披露される初期ナンバーもしっかり抑えておかなくちゃと思って。これで、結局、ナイチ帰宅中に買ったCD4枚。帰るまでには全部ちゃんと聴かないとね。続くパフューム熱は年内は冷めそうにないな・・・
2016年11月11日
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早いものでアラン・トゥーサンが亡くなって今日で1年。先日は追悼ということか、WOWOWで亡くなる三日前のスイスでのライヴが放送されたけど、残念ながら見られなかった。最後のライヴが行われたのは確かスペイン。ヨーロッパ・ツアー中だったということか。亡くなった直後くらいに聴いた「アメリカン・チューンズ」のことを書いてないままだった。「ブライト・ミシシッピ」に続きジョー・ヘンリーがプロデュース。トゥーサンのピアノ・インスト中心の至って地味な内容だが、さすがにヘンリー、お膳立てはさり気なく豪華に整えている。オリジナル曲だろうか”ドロレスズ・ボーイフレンド”で幕を開ける。ヴォーカルはなし、トゥーサンの軽やかなピアノ演奏のみ。ああ、まさにトゥーサン以外の何ものでもないピアノの調べだ。次はファッツ・ウォーラーの”ヴァイパーズ・ドラッグ”をブルージーに。ヘンリーの来日時にも同行したデヴィッド・ピルチがベースを奏でる。スタンダード・ナンバーの”コンフェッシン”はウディ・アレンの映画にもピッタリ来そうな雰囲気。そして、プロフェッサー・ロングヘアのニューオーリンズ・クラシックを思い切りメロウにレイジーに奏でる。昼下がりのミシシッピ川沿いの光景が目に浮かんで来そうだ。ジャズのスタンダードが2曲続く。エリントン絡みの”蓮の花”にビル・エヴァンスの”ワルツ・フォー・デビー”。そういえば、こういうナンバーは、トゥーサン自身ではあまり取り上げることはなかったように思う。ギターはビル・フリゼールだろうか。再びニューオーリンズ・クラシックの”ビッグ・チーフ”はアルバム折り返しのブリッジというところか。トゥーサンはこの曲のバリエーションだけでも、延々と演奏が続けられそうだ。デューク・エリントンの”ロックス・イン・マイ・ベッド”はリアノン・ギドゥンズがヴォーカル。グレッグ・リースのワイゼンボーン・ギターもいい味出している。ニューオリンズ・ピアノの大元祖ゴットシャルクのナンバーではヴァン・ダイク・パークスも客演。再びプロフェッサーの曲でトゥーサンのルーツ詣でと再生の演奏が続く。アール・ハインズの”ロゼッタ”でのピアノはエレガントの極み。ジャズだけを演奏するトゥーサンのライヴというのもありだったかもと今になって思う。再びエリントン・ナンバー”カム・サンデー”でギドゥンズが再登場。そして、トゥーサンといえば、やはりこの曲”サザン・ナイツ”。ヴァン・ダイクとの連弾が嬉しい。最後のアルバム表題曲”アメリカの歌”で初めてアランがヴォーカルを聴かせる。この曲に聴かれるように、トゥーサンはしばしの休息を取っているだけなのかも知れない。少なくとも彼が残した音楽遺産は休む間もなくこれからも伝えられていくことだろう。このアルバムも何ともシンプルながら飽きの来ない内容だ。折に触れ聴いてみたい1枚。さすが、最後までいい仕事したもんだなあ。
2016年11月10日
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ノーベル賞授賞記念もあって、4月に聴いて日記には書いていなかったボブ・ディランの最新版「フォールン・エンジェルズ」について。フランク・シナトラ系カヴァー集第二弾だ。日本盤だけだったのか、このアルバムの収録曲を集めた「メランコリー・ムード」というミニアルバムがリリースされたけど、4月の来日公演時にもこの中から披露された曲が多い。そのライヴでは披露されなかったけど、僕にはジミー・デュランテの歌で馴染みがある”ヤング・アット・ハート”がオープニング。特に丁寧な歌い方が印象に残る”メイビー・ユール・ビー・ゼア”が続く。バックやサウンドは前作から不変だ。ギター・イントロが味わい深い”ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス”はシナトラが所属していたトミー・ドーシー・オーケストラのナンバーだけあって、演奏そのものも興味深い。”オール・ザ・ウェイ”は映画の中でシナトラが歌っていたのを覚えている。雨の中で失意のうちにというシチュエーションではなかったか。一方で”スカイラーク”はシナトラは録音してないそうで、この辺の選曲はあくまでも柔軟なよう。リンダ・ロンシュタットがネルソン・リドル・オーケストラと共演してゴージャスにカヴァーしたヴァージョンもあるが、ディランは小粋に飄々と歌いこなす。ライヴでも披露された”オール・オア・ナッシング・アット・オール”の後は、シナトラのナンバーとしても最初期のもの” オン・ア・リトル・ストリート・イン・シンガポール”なんて曲を取り上げている。”メランコリー・ムード”もそうだけど、ディランは、超大物になる以前のシナトラ・ナンバーも丹念に追っている。”ニューヨーク・ニューヨーク”とか”わが街シカゴ”とかではなく。”イット・ハッド・トゥ・ビー・ユー”はハリー・コニック.Jrが映画「恋人たちの予感」のテーマ曲として歌っていたヴァージョンが思い起こさせる。ディランもしっとりと、あの人なりに情感込めて歌い上げている。スウィングする”ザット・オールド・ブラック・マジック”と最後の”カム・レイン・オア・カム・シャイン”も来日公演でも聴かれたナンバー。選曲の多くが、シナトラがバンドのシンガーとして歌った曲というあたりに、ディランのこだわりが感じられる。勿論、シナトラの名唱とディランのヘタウマを比較してもあまり意味がないことだろう。それでも、ウエスタンスウィングのように軽くスウィングするこの歌と演奏は意外な位に気持よく聴ける。37分というコンパクトさもいい。詩人として最大級の評価を得ながらも、しばらくはそちらを封印?してスタンダートナンバー中心の活動が続きそうなディラン。先日のデザート・トリップでのライヴでも、授賞とは関係なく、来日公演同様のステージを淡々と披露したらしい。ある種、頂点を極めてしまったディラン、今後はどんな方向に動き出すのかな?
2016年10月16日
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