わんこでちゅ

16 ヤマダくんピンチ











「ああ~ん、うちのおかん後ろのほうで、ちらっと二回くらいしか、うつらなかったよう。」

それはよかったね。みかちゃん。俺は心の中で嫌味な言葉を呟いた。

「でもヤマダせ~んせい、このくまっていう女、自分がみえてませんねぇ。まぁ、だから相談の電話かけてくるんだろうけど~。」

自分がみえていないか、、、、。そうか?

「せ~んせいも最近おかしいですよう!前から暗いなぁとおもってたけど、最近とくに暗いしぃ~、かと思うと急にはしゃいじゃったり、、、。電話相談しろとまではいいませんけどぉ~、、、。」

その夜家にかえって、テレビをみながら、ほか弁をかきこんだ。お盆が近いこともあって、怪談をやっていた。お盆になったら、彼岸から俺の両親の霊もかえってくるのかな、、。俺はあまり霊とかは信じないほうだが、、。その後なんとはなしに、昼間みかちゃんからいわれたことを考えていた。自分がみえていない、、。ここのところジェットコースターにのったかのように、感情の起伏が激しい。いったい俺はどうしたというのだろう、、、。

妖怪おはぐろ


小泉八雲、【ラフカディオ、ハーン】ばりの怪談をおひとつ。

 それはあるさびれた山奥のキャンプ場でのことでございます。お盆休みというのに、汲み取りトイレに裸電球ひとつの炊事場、そして場内は照明ひとつない真っ暗の設備のわるいキャンプ場のせいでしょうか?利用者はほんの三組というさびしい場所でございました。

 山の中というのに、その日は蒸し蒸しと暑い夜で、夜ともいうのに、首筋には、じんわりと汗がにじみでてまいります。月は高い湿度のせいでしょうか?まがまがしく赤い色をしており、炊事場の照明の裸電球さえぽやけてみえます。遠くはなれたテントには、怪しい人影がゆうらり、ゆらりとランプによってうつしだされており、なにやら呪いの踊りでも踊っているような、そんなようにもみえるのですが。虫の音さえ、澄んでかわいた音ではなく、重々しく耳にのこります。お盆ということもあって、彼岸から大勢の霊たちもやってきて、この赤い月をながめているのでしょうか。風もないのに、ときおりがさがさと草のすれる音もまじっております。

こんな夜は早く寝るに限ると思ったその時です。ざわざわざわーーーっっっという音とともに一陣の風が、私の首をすーーーーっっとなぜてゆきました。とたんにとりはだがたち、悪い予感に  はっ!!  としてテントの中をみまわすと、愛犬カークがおりません。もう寝ようと首輪もはずして、テントの入り口をしめようとしたところでございます。こんな見知らぬ土地で迷子になったり、事故にでもあったら、、、、私はばっときびすをかえし、靴をつっかけて、テントの外に出てカークをさがしました。大きな声で、カーク、カーク、カーク  と何度叫んでもあたりに愛犬の気配すら感じ取れません。まさか遠くまで勝手にゆく犬ではないのに、山の中にでも入っていってしまったのか。

 そうだったら、完全に迷子になってしまう。しかし、呼べど叫べども、愛犬の戻ってくる様子はありません。 カーーーーーークゥーーーーッ、、、 だんだんと悲観的な考えが私の頭を支配してゆき、叫ぶ声さえ情けなくなってゆきます。そして冷たい風とともに、山独特の大粒の、雨とみまちがうほどの霧が山肌をおりてきて、視界が急速にわるくなってまいりました。

 そのときです。炊事場のほうから、かすかに、本当にかすかに、しょりしょり、、、、、しょりしょり、、、と音がするのです。日本には昔、あずき洗いという妖怪がいたそうでございます。その妖怪はしょりしょりと音をたて、いつもあずきを洗うそうでございます。その音でしょうか?いいや、山姥が、砥石で包丁をといでいるのでありましょうか?とにかく不気味なおとがかすかにかすかに、してまいります。

 恐る恐る近くによると、暗い裸電球に照らされ、ぼーーーーっとうかびあがる影がひとつ。  はっ!!  あまりの恐怖に尾てい骨から背筋にびりびりと電気がはしり、それは頭まで抜け、前頭葉がじんじん痺れるほどでした。私の目は瞬きすることも忘れ、その影をしばらくじっとみつめておりました。その影は大きく裂けた口をもち、なにものをも喰い裂かんとする鋭い牙をもっていました。それになぜか、なぜか、その牙と、そのまわりの歯も、だらりと長い舌も、昔の日本女性が既婚の証として施していたおはぐろを塗ったような、真っ黒な色だったのです。その中が真っ黒の口は何かをおいしそうに噛み砕いております、しょりしょり、しょりりりーー。私は、私は、私は、声を限りにさけびました。


    ぎゃーーーーーーーーーーーーーっっっ、
    このくそ犬!!
    肉汁のしみた、バーペキューの消し炭をくうなーーーっっ

    翌日カークのうんはつやつやと黒うございましたとさ。
 おそまつ様でございました。

注 カークのバーベキュー消し炭事件は本当にあったお話です。










ルナすずらん
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