ゴマ(胡麻)油 肝臓、心臓など重要臓器に



古くから精進料理に使われてきたゴマは、栄養の宝庫のような一面があり、とくに成分の60%を占める。

油脂分が主要な栄養成分となっている。

その特徴は、油脂分の約60%が不飽和脂肪酸であること。

なかでもリノール酸の含有量がとくに多く、油脂分の40%にも達する。

そのほかに有効な不飽和脂肪酸としてオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸などが含まれている。

リノール酸は高血圧や動脈硬化などの原因となるコレステロールを取り除く作用があることはよく知られている。

コレステロールは高等動物の血液や組織中に存在する脂肪の一種で、体にとって一定量は必要な栄養素であるが、過剰に摂ると血管壁に付着して血行を悪くする要因となり、栄養の補給に支障をきたすことにもなり、体全体の老化を早めるなどのマイナス要因になる。

さらに動脈硬化、高血圧を招き、脳溢血や心筋梗塞などの疾患を引き起こすことにもなる。リノール酸はこうしたコレステロールを体内から徐々に減らし、健康な血管の維持・改善に役立つ成分である。

また、ゴマ油に含まれる各種の不飽和脂肪酸が体内に入ると、リンおよび窒素と化合して、レシチンと呼ばれるグリセリン脂質を形成する。

レシチンは脳や心臓・肝臓を構成する重要な物質で、とくに脳の場合は組織の重要部分をなし、脳が活動するためにレシチンは欠かせない成分となっている。

たとえば極度に緊張したり、思考力を必要とする仕事に長時間たずさわったりすると、レシチンの消費量が、急激に増加する。

このとき、レシチンを脳に補給しないと、記憶力が衰えたり、精神状態が不安定になり、うつ病症があらわれたりする。

人間が安定した精神を保つには、血液が弱アルカリ性であることと、ビタミン類が十分に与えられること、そして、レシチンが十分に補給されなければならない。

ゴマ油にはレシチンを形成する各種の不飽和脂肪酸をはじめ、血液を弱アルカリ性に保つのに必要なカルシウム、ビタミン類などがバランスよく含有されており、脳の活動にとっては大変優良な植物性油といえる。

古来、ゴマの効用は長寿、精力増強、美容、脱毛予防など、さまざまに伝えられてきたが、医学・栄養学などの発達により、今では科学的にも納得できるものとなった。

料理にかける一振りのゴマ油、ご飯や赤飯の上にゴマ塩を振るという日本の食習慣には、こうした効用への経験的理解も含まれていたわけである。

ゴマ油にリノール酸、その他の不飽和脂肪酸、ビタミンやミネラルなどが豊富に含まれていることが、日本の風土に合った健康食品の隠れた秘密だったのである。

つづく


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