Salon de Ciel

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高校留学


私は某斡旋会社を通して一年、アメリカの高校に留学した。行きたい場所の第一希望から第三希望までを書類に書いたけれど、基本的には州の選択はできない。

 私の場合も、希望の州とは全く違う所に留学する事が決定した。

 でも、私はどこの州なんて本当は全然気にしていなかった。どこに行っても、努力すれば必ず楽しい生活が待ってる、と思っていたから。

 もちろん、言葉の違いにも文化の違いにも苦労するだろうな、という事は覚悟してたよ。もしかしたら、「もう帰りたい!」と泣くかもしれない。それでも、留学を反対する事も無く快く応援してくれた両親のためにも、頑張って乗り越えよう、そう思っていた。

 私は、一年が終わる事には英語がペラペラになっていて、アメリカ人の友達が大勢いて、もしかしたらかっこいい彼氏までいて、きっと毎日楽しく過ごしているに違いない、と夢をふくらませていたんだ。

 実際に私が飛ばされたのは、驚くほど田舎だった。

Freshman, sophomore, junior, seniorの生徒を全部合わせて40人足らず、しかもそのうち約10人は私を含めた留学生だった。

毎年同じくらいの人数の留学生を受け入れているこの学校だけど、あたしは留学生にとってその学校は決していい環境ではなかったって思ってる。

 あからさまな男の子は留学生を「Stupid foreigner」と呼んでたし、ランチを食べるテーブルも、はじめっから”アメリカ人用”と”留学生用”に分かれてた。

 あ、でも誤解の無いように言っておくけど、意地悪を毎日されていたって訳ではないよ。話しかければナイスに対応してくれるし、Hiと言えばHiと返ってくるし、生活に支障が出るほど差別されていたわけではない。

 なんだけれど、彼らの中に留学生を受け入れない壁のようなものが存在していたのは確かだと思う。

 例えば、わたしも他の留学生も部活に参加していたんだけれど、そのメンバーで今日みんなで集まって遊ぼうか!という話がでたとする。メンバー全員で、楽しもう!ってね。だけど、留学生は絶対に誘われない。そんな集まりの話すら知らない、という感じ。

 「アメリカ人からしたら、英語のあまり出来ない留学生と遊ぶのはやっぱり楽しくないんじゃない?」という声も聞こえてきそうだけれど、留学生の中には英語ネイティブのオーストラリア人もイギリス人もいたよ。

 対等に英語が話せても、やっぱりforeignerである彼らはアメリカ人の生徒に受け入れられていなかった。

私は、違う学校に変わりたくて、斡旋会社に何度か電話をして状況を説明した。

 だけど、その会社は、「学校を変えたい、って言ってくる前に、自分で本当に努力をしたか考えてみたら?」の一点張りだった。

 「みんなで遊ぼう、っていう話をしてるなら、「あたしも行ってもいい?」って、自分から中に入っていけばいいじゃない!」なんて言われた時にはあまりにも腹が立って言葉がでなくなってしまった。

そんな事出来るか!あんただったら言えるの?自分の事を友達だと思っていない人達の中に、「ねえねえ、あたしも入れてよ!一緒に遊んでよ!」って入っていけるの?なんでそんな媚びるような事しなきゃならないの!?

(でも、会社の言っていた事は正しかったのかなあ?あたしに積極性がなかっただけ?)

そんなこんなで、その1年間で私に出来た友達は全員留学生だった。アメリカ人の文句をいいながら1年を一緒に過ごした私達は、姉妹、兄弟のように仲良くなって、今でも連絡を取り合ってる。

 彼らに会えた事はとても良かったと思ってる。

 だから、「あたしの留学生活はアメリカ人の友達が全然出来ない上に、学校ではforeignerって呼ばれるし、最悪!」なんていう気は全く無いよ。

 田舎過ぎてどこにも行く所がなかったから、毎日宿題をして、おしゃべりをして、週末にはビデオを見て、の繰り返しで淡々と過ぎていった一年だったけど、(結局、覚悟していた言葉の違いやホームシックで苦しんで泣く、何てことは一度もなかった。)それなりにいい経験をしたと思ってる。

でも・・・・・

違う州の大きな学校に留学した友達は、「始めの頃は英語が出来なくて、友達も作れずにに泣いたけれど、その内段々友達ができ始め、彼氏まで出来て、帰国する日には大勢友達が見送りに来てくれる」というあたしが理想に描いたとおりの留学生活を送ってた。
 彼女は、「留学生だから」という理由でいやな目にあった事は一度もないって言ってた。

 あたしの学校の話をすると、

「ひどすぎる!そんな差別のあるところにcielがいるなんて・・」

と、驚いていた。

もちろん、人それぞれの留学生活、彼女もたくさん努力していたし、彼女自身の魅力が友達を引きつけたって事もあるのは私も分かってるよ。

自分を嘆いて人を羨むなんてくだらないな、って思うけど・・

それでも、やっぱりあたしもそんな留学生活が送りたかったな・・って、今でもやっぱり思ってしまいます。



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