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天皇賞(秋)

2003年/天皇賞(秋)



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  天皇賞(秋)       ※タイトルをクリックしてください






wrote:2003/10/28

カギを握るのがゴーステディでは、馬券難解すぎ?

<**レース展望/2003年 天皇賞(秋)**>

 2003年・秋の天皇賞がどんなレースになるのか、カギを握っているのが吉田豊・ゴーステディの出方だ。・・・ということはこのレース、かなり予想が難しい。なにしろ吉田豊、どういうレースをするのか、まったく読めないのだ。

 ゴーステディは、平均的に速めのラップを刻んでいって、それを最後まで持続させられるのが一番のセールスポイントだ。コーナー2回の競馬はきわめて上手で(逆に言うとコーナー4回の競馬が全く駄目)、いいリズムで走るとそう簡単には止まらない。
 前走毎日王冠も、大方の予想はゴーステディが「離し気味の単騎逃げ」だったから、レースの焦点は「どれぐらいのラップで行くのか」。それによって後続の仕掛け方も違ってくるから、馬券的にも当然これがポイントだった。
 しかしゲートが開いて、ファインモーションがさっと行く気を見せたその瞬間、意外だったことには吉田豊、アッサリ控えてしまったではないか! 当然、行く気満々でレースに臨んでいるものだと思っていたから、まるで行く気がなさそうだったのには、本当に驚かされた。

 普通、中距離の芝のレースではスタートして2ハロン目で一気に行き脚がつくから、そこが最も速いラップになりがちだが、毎日王冠の2ハロン目は意外に遅くて、12秒0。この「2ハロン目=12秒0」というのは、よほど先行勢がソロッと出たときのラップなのだ。吉田豊は、もしかするとあらかじめ馬を押さえ込むつもりだったのではないか・・・とさえ思えてくる。
 ゴーステディは速め平均のラップを揃えていくのが持ち味だし、それが自分のリズムなのに、まったくこの馬が「気分よく走れるリズム」で行かせていないのだ。無理に押さえ込まれて、ゴーステディは見るからに窮屈そうなストライドで走っていた。レースではもちろん見せ場もなく、着順も解らないような大敗(笑)だった。天皇賞で、吉田豊、いったいどう乗るつもりだろうか?


 ゴーステディが58秒台の半ばで行くとき、府中の2000だと、形としては「大逃げ」となるかもしれない。しかし、お行儀良く59秒台の平均ペースで行った場合、馬群はさほどバラけない。
 あろうことかこれがレースのカギを握っているんだから、全く微妙なことになってきた(笑)。つまり、ゴーステディが大逃げするとき、勝ち馬の候補は、「長く平均的に速い脚を使って追い込んでこられる馬」になる。そのときに要求されるのは、瞬間的な反応よりも、追われれば追われるほど伸びる、という能力になる。そういうタイプが諦めずに前を追いかけて差しきるというレースイメージだ。
 しかしゴーステディがゆったりと溜めて行くとき、勝ち馬は、中団からレースを進めて、坂下で「バーン!」と一気に物凄い脚を爆発させられるタイプになる。これは、例年の天皇賞馬のイメージでもある。


 こうなったら吉田豊にお手紙でも書くかな(笑)。天皇賞では、ぜひローエングリンのハナを叩いて、馬任せのリズムで行っちゃってくださいって(笑)。
 しかし最近のレース振りを見ると、馬自身が実は「ちょっと行けません」という精神状態になってる可能性もあって、もしそうだとすると天皇賞はローエングリンのペースになる場合すらある。すると、勝ち馬候補はまた別のことになってくる。

 OH! これでは、馬券を当てようなどというのはまったく無理なことのように思えてきたよ(笑)

【ワンポイント】 展開無視の横山典・ツルマルボーイの2着付け馬単が、一番当たる確率高いかもね?

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府中の2000は極限の争い、超Aクラスが必ず台頭

<**ちょっと雑談/2003年 天皇賞(秋)**>

 秋の天皇が2000mになってからの歴代勝ち馬の名前をズラッと並べると、実に美しい印象を受ける。
 ミスターシービー。ギャロップダイナ。サクラユタカオー。ニッポーテイオー。タマモクロス。スーパークリーク。ヤエノムテキ。[プレクラスニー]。レッツゴーターキン。ヤマニンゼファー。ネーハイシーザー。サクラチトセオー。バブルガムフェロー。エアグルーヴ。オフサイドトラップ。スペシャルウィーク。テイエムオペラオー。アグネスデジタル。
 [プレクラスニー]の名前のところには本来メジロマックイーンが入るんだが、今でも記憶に鮮烈、2コーナーで大きく内に切れ込んで、若き日の武豊、顔面蒼白の1着失格だった。

 府中で行なわれる秋・天の凄いところは、2着馬を並べても、ここ20年の日本競馬における「最強クラス」や、「個性派」として名を馳せた馬の名前ばかりが出てくることだ。その、2着馬リストはこちら。 テュデナムキング。シンボリルドルフ(!!!)。ウインザーノット。レジェンドテイオー。オグリキャップ(2回)。メジロアルダン。カリブソング。ムービースター。セキテイリュウオー(2回)。ジェニュイン。マヤノトップガン。バブルガムフェロー。ステイゴールド(2回)。メイショウドトウ。テイエムオペラオー。

 1着馬と2着馬をあわせると、これはここ20年、日本競馬の「芝・中距離路線」を彩ってきた一線級のリストそのものになる。すこしネームバリューの落ちるセキテイリュウオーでさえ、重賞を2勝した馬だった。
 シンボリルドルフのような歴史的名馬が思わぬ敗退を喫したのも秋の天皇賞だが、堂々の主役がしっかり実力を誇示してきたのも、秋の天皇賞というレースだ。馬券の予想としては、このリストに入れても恥ずかしくない馬を探そう、ということになる。


 ただ、府中の2000はやはり公平なコース設計ではなくて、外枠不利はあまりに明らか。改修されて少し最初のコーナーが緩くはなったが、それでもスタートしてすぐに2コーナーだ。フルゲートの大外枠だと、もうその時点でかなり厳しい。
 過去、府中の2000で行なわれた秋の天皇賞18回のうち、8枠で連対したのはわずか5頭という記録が残っている。






1984年
1985年
1986年
1989年
2000年
テュデナムキング
シンボリルドルフ
サクラユタカオー
スーパークリーク
メイショウドトウ
2着
2着
1着
1着
2着
(14番枠)
(17番枠)
(16番枠)
(14番枠)
(15番枠)


 見て分かるとおり、シンボリルドルフの17番枠が一番外で、ほかは「8枠」とは言ってもフルゲートなら7枠相当だったりする場合もある。ところが今年は18頭立てのフルゲートになる可能性が大で、各陣営とも、とにかく8枠18番だけは当たらないようにと願うしかない。
 武豊がどこかで発言していたが、とにかく府中の2000は乗りにくいそうだ。騎手から見ると、展開や枠順でかなり紛れのあるコースらしい。しかしそうは言っても、上記の勝ち馬と2着馬のリストを見れば分かるように、超Aクラスは、必ず上位に台頭してくるのも、秋の天皇賞というレース。


 府中は改装されて、直線の坂を上がってからさらに平坦が300mもある。府中以外で坂のあるコースは全て、「坂を登るとあとはゴールまでもうひと踏ん張り」という感じだが、登りきってからまだ直線が300mもあると、「ひと踏ん張り」だけではとても足りなくなる。坂を上ったあとで、ゴール目指して全馬もう一度死力を振り絞る、という格好だ。ごまかしはまったくきかない。

 鍵を握るのはやはり、ゴーステディがどれぐらい大逃げするかだなあ(笑)。
 それによってはもしかすると2着は伏兵も? という気がしないでもないが、しかし出走予定馬を見渡してみると、伏兵の資格を満たしそうな馬は、大逃げしたときのゴーステディだけかもしれないなあ、という気もしてきた(笑)
 吉田豊君、キミから馬単2着付けの馬券を買っても大丈夫かね?(笑)

 今年の出走馬でAクラスは、アグネスデジタル、シンボリクリスエス、エイシンプレストンの3頭。この3頭が揃って連から消えることは、ちょっと考えにくい。そしてこの3頭のうちどれかが勝てば、その馬がおそらく、「超Aクラス」と言われるポジションにまで上り詰めることになる。

【ワンポイント】
ゴーステディが内側の枠なら1000は58秒台前半かもよ?そのとき、 自分のストライドで走れそうなのはどれ?



古馬G1は意外にターントゥ系が不振

<**血統で読む/2003年 天皇賞(秋)**>

 血統には流行があるとよく言われるが、今の日本の競馬は、ブライアンズタイムとサンデーサイレンスを擁するTurn-to系が圧勝という形だ。
 サンデーサイレンスは、「父」をどんどんさかのぼっていくと、

●サンデーサイレンス
← Halo(ヘイロー)
    ←Hail to Reason(ヘイルトゥリーズン) ← Turn-to(ターントゥ)

 そして一方の雄ブライアンズタイムは、

●ブライアンズタイム
← Roberto(ロベルト)
    ←Hail to Reason(ヘイルトゥリーズン) ← Turn-to(ターントゥ)

と、同じターントゥという馬に行き当たる。この、ターントゥの父系にはリアルシャダイもいるし、グラスワンダーの父Silver Hawkもそうだし、シンボリクリスエスもこのラインだ。いまや一流馬はほとんどがこのTurn-to(ターントゥ)から派生してきたラインだ、と言ってもさほど違和感がないかもしれない。

 しかし実際にもう少し詳しく状況を見てみると、
「3歳のG1をほぼターントゥ系が独り占め、古馬のG1は別の父系が頑張る」

ということになっているのがわかる。
 たとえば、ダービーはこの10年間で、ターントゥ系がなんと8勝だ。内訳はサンデーが5勝、ブライアンズタイムが3勝というもので、ここまでくると、もうしばらくはほかの種牡馬だとダービーを勝てないのではないか、という雰囲気にさえなってくる。
 先週の菊花賞も、当コラムでは「Gainsborough(ゲインズボロー)系がここ5年で3勝!」とちょっと騒いでみたが、実を言うと何のことはない、ライスシャワー(父リアルシャダイ)が勝って以来、11年間でターントゥ系が6勝もしているのだ。
 一方で古馬に目を転じると、たとえばダービーと時期も近い安田記念では、この10年でターントゥ系はわずかタイキシャトルの1勝のみという記録がある。秋の天皇賞も傾向は同じで、ターントゥ系は分が悪い。
 過去、府中の芝2000mで行われた秋の天皇賞を調べてみると、完全にNorthern Dancer(ノーザンダンサー)系とNasrullah(ナスルーラ)系の圧勝なのだった。府中の芝2000mで行われた秋の天皇賞は、過去に18回を数えるが、そのうちナスルーラ系が7勝、ノーザンダンサー系が6勝。18回のうち、なんと13回をも、「ナスルーラ系かノーザンダンサー系」が勝利している。


 ごく大雑把な把握の仕方だが、秋の天皇賞に向くのは、ナスルーラ系の重厚な切れ味と、ノーザンダンサー系のタフネスさなのだろうと思う。切れすぎるサンデーや、底力と持久力で勝負したいブライアンズタイムは、府中の2000mという舞台では、スピードと重厚さを兼ね備えたナスルーラ系(トニービンなど)になかなか勝てない、という構図になっている。
 今年の出走馬中、ノーザンダンサー系とナスルーラ系の馬は↓↓↓こちら。
◇---------------------------------------◇
●エイシンプレストン
●カンファーベスト
●トーセンダンディ
●ローエングリン
●ゴーステディ
●ダービーレグノ
●テンザンセイザ
●ヤマノブリザード
(ノーザンダンサー系)
(ノーザンダンサー系)
(ノーザンダンサー系)
(ノーザンダンサー系)
(ナスルーラ系)
(ナスルーラ系)
(ナスルーラ系)
(ナスルーラ系)
◇---------------------------------------◇

 この中にはたして今年の秋の天皇賞馬はいるのだろうか?それとも今年はターントゥ系の出番?
 そのターントゥ系、今年の出走馬はこちら↓↓↓
◇---------------------------------------◇
●サンライズペガサス
●シンボリクリスエス
●ツルマルボーイ
●トレジャー
●トーホウシデン
●ファストタテヤマ
●モノポライザー
●ロサード
父サンデーサイレンス
父Kris.S
父ダンスインザダーク
父ブライアンズタイム
父ブライアンズタイム
父ダンスインザダーク
父サンデーサイレンス
父サンデーサイレンス
◇---------------------------------------◇

 ちょうど、ノーザンダンサー・ナスルーラ連合vsターントゥが、8頭vs8頭となる。ちなみに残った2頭、アグネスデジタルとイーグルカフェは、ミスタープロスペクター系だ。


 もう一つ、府中の芝2000mで行われる天皇賞・秋には血統面で顕著な特徴があって、4代にわたって配合されてきた種牡馬が、


ファラリス系×ファラリス系×ファラリス系×ファラリス系


 という単調な形の馬は、ほぼ全滅だ。特に良馬場では、このタイプの馬は過去に一頭しか連絡みしたことがない。(1987年のレジェンドテイオーがこのタイプで、ニッポーテイオーの2着だった。)過去18回中15回までもが良馬場だから、このデータは、もしかすると信頼度が高いかもしれない。
 今年、この「ファラリス系4段重ね」という配合の馬は、4頭出走してくる。

        ●シンボリクリスエス(しかも大外18番枠をひいてしまった)
        ●ダービーレグノ(父トニービンでレース向きそうでもあるが)
        ●テンザンセイザ(これも父トニービン)
        ●トーホウシデン(しかしこれは母の父がBlushing GroomでOKかも)

 さてさて、大本命馬シンボリクリスエスは、枠順も血統も「過去に好走したことのないタイプ」に分類されてしまうことになった。うーん、これはもしかして、ややピンチかもね?

【ワンポイント】 いずれにしても、天皇賞の出走馬は全馬Phalaris(ファラリス)系


wrote:2003/11/4

究極の脚

<**レース回顧/2003年 天皇賞(秋)**>Race/2003.11.2

 レースではたいていの場合「ちょっとしたこと」が勝ちと負けを分かつもので、ほんのコンマ何秒か流れに乗り損ねただけで、「2着はあった競馬が4着になってしまう」というようなケースが、かなり頻繁に見受けられる。G1もその例外ではくて、力量で他を圧する馬が、展開のアヤで思わぬ取りこぼしをすることだって、ときにはある。
 しかし10年に1度ぐらい、「展開とか流れ」にはほとんど左右されない、化け物みたいな馬が忽然と現れるのだ。 2003年の秋の天皇賞、シンボリクリスエスが直線で見せた圧倒的な爆発力は、まさにその「10年に1度」のスケール、恐るべき大迫力だった。G1であれほどまでに力の差を見せつけたサラブレッドは、長い競馬の歴史の中でも、そう多くはない。


 レースは、枠順のいたずらで、「出の速いローエングリン」が3枠5番、「二の脚で加速していくタイプ」のゴーステディが外側、7枠13番となった。この並びでは、どう考えても、この2頭、2コーナーでカチ合ってしまうことになりそうだった。
 ゲートが開くと、案の定、出の速いローエングリンがパッと先手。すぐに2コーナーへ猛然とダッシュしていく。そして、毎日王冠では抑えてまったく持ち味を出せなかったゴーステディ、こちらも逃げなくてはノーチャンスだから、外から必死にかぶせていった。
 馬体の合ったのが、やはりちょうど最初のコーナーワークの部分。両馬ともアクセルを思い切り踏み込んだ直後だったから、ブレーキをかけてスピードを調整するのは、もう無理な相談だ。
 ・・・それにしても、まさかあれほどまでに火の出るようなデットヒートが繰り広げられるとは! 観ているファンの大きな驚きをよそに、その激しいつばぜり合いは府中の長い向正面をフルに使って、一完歩ごとに熾烈な争いとなっていた。

 一方で、大外18番枠が懸念されたシンボリクリスエスは、スタートからペリエが心憎いほど落ち着いてさばいている。ゲートは少しゆっくりと出て、まったく無理せず、馬を難所の2コーナーへと導いていて、このときの位置取りが実に後方3~4番手。いったん、シンボリクリスエスは完全に気配を消して、最初の300mぐらいをそろっと出て行った。


 向正面の中ほどで、前を行く2頭は手綱こそ押さえられていたが、完全に全力疾走での併せ馬になっていた。過去に遺恨のあるジョッキー二人だが、しかしそういう感情のもつれで、あえてG1のレースをむざむざと捨てるような破壊的なラップを刻んで行ったはずはない。どちらも、当初は勝つための選択だったのだ。しかし、オーバーペースは誰の目にも明らか。
 闘争心むき出しの先行2頭が刻んだラップは、1000の通過がなんと56秒9。1200は1分8秒7、マイルの通過が1分32秒9!
 これはそれぞれの距離で行われるほとんどのレースよりも、よほど速い時計なのだ。想像を絶する超ハイペースに、スタンドが大きく唸り声を上げた。


 そのとき、シンボリクリスエスの黒い大柄な馬体は、2コーナーをクリアした後でいつの間にかスッと中団の外目に収まっていた。ほとんど目立たずにポジションを上げてきたが、しかしここでは前が相当競り合っているから、ラップもかなり速かったのだ。この部分の3ハロンが、なんと
* 10.9-10.5-11.1 *

 この、まるでスプリント戦のような激しいラップの中を中団まで押し上げているのだから、ペリエは、この間クリスエスにかなり脚を使わせていたはずなのだ。しかし絶好調に鍛え上げられたシンボリクリスエスには、それぐらいのラップなどまったく問題とならなかった。むしろ楽々とポジションを押し上げて、なおかつまだ気配を殺しながら、余力たっぷりに馬群の外を追走している。


 先陣争いをしていた2頭が、直線に入ってきた。後続との差はまだかなりあったが、しかしこの2頭は、今にももう、歩き始めてしまいそうだ。この2頭のギブアップを合図に、全馬がいっせいに追い比べを始めることになる。さあ、クライマックスで、馬群を割ってくるのはどれだ? この極端な展開を、まんまと自分のメリットに変えるのは、どの馬だ?
 ・・・と、観ていた誰もが身構えたその瞬間だった。
 一瞬のうちに、筋骨隆々の真っ黒な馬が、馬群を切り裂いてガッと抜け出した!
 それはもう本当に、ほんの刹那、あっという間の出来事だった。息を潜めてじっと追走していたシンボリクリスエスが、この勝負どころで、持てる能力を一気に解き放ったのだった。
 物凄いスピードで抜け出したクリスエスに、ライバルたちは、馬体を併せての競り合いに持ち込むことすら、できなかった。まさに一瞬で、勝敗の行方は決してしまったのだ。あとは大観衆の驚嘆と賞賛を受けながら、そして他のジョッキーの羨望を一身に集めながら、広々とした府中のターフを、悠然とゴールに向かって驀進するだけだった。
 道中同じような位置にいた馬たちではまったく相手にならず、あっという間に置き去りにされていた。ツルマルボーイとテンザンセイザが追い込んできたが、いずれも、シンボリクリスエスとはまったく別のレースをして、それぞれ疲れ果てた他馬を交わして2着と3着になったという形だった。

 まさに、究極の脚。直線でエンジンを全開させれば、前にいる馬で交わせない馬はいないし、後ろから来る馬に交わされることはまずない。シンボリクリスエスは、歴史に残る爆発力で、展開も流れも何もかも、すべてを飲み込んでしまったのだ。



 2頭が大きく逃げた度肝を抜かれるようなレース展開も、今年のシンボリクリスエスには、ほんのちょっとした演出・ただのサイドストーリーでしかなかったのかもしれない。シンボリクリスエスが坂下から見せた2ハロンの剛脚は、「一瞬の切れ味」とか「持続する末脚」とかいうのとは、次元がまったく違っていた。こんな凄まじ い勝ち方を演じるサラブレッドは、見たことがない。
 走破タイムは1分58秒0、文句なく天皇賞のレコードタイムだった。
 ペリエはレース後「空を飛んでいるようだった」と評したが、これはサラブレッドに対する最大級の賛辞だろう。世界の一流馬の乗り味を知っているペリエに言わせたこの一言だけに、その価値は計り知れない。


 この先、ジャパンカップ、有馬記念と駒を進めるのだろうが、なにしろレースは生き物だから、このシンボリクリスエスでさえ「必ず勝つだろう」とは言い切れないところがまた、ある意味、競馬の醍醐味ではある。しかしこの天皇賞で見せた圧倒的なパフォーマンスは、まさに「史上最強クラス」だったと言っていい。

【記録】 1着 シンボリクリスエス
2着 ツルマルボーイ
3着 テンザンセイザ
    【ラップ】12.5-10.9-10.5-11.1-11.9-11.8-12.2-12.0-13.2-11.9

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