G1レースでは、毎週末の重賞レースよりも「イメージ先行」で人気がつくられやすくなる。たとえば「ステップレースを鮮やかに勝った(ように見える)馬」に「武豊騎手」が乗って、さらにそれが「サンデー産駒の良血」だったりすると、ちょっと過剰じゃないかと思えるほどに売れまくる。
こんなときこそ、各馬の実力と適性をしっかり把握して馬券を買いたいもんだなあと思う。思うんだが、しかしどうしても「イメージ」に飲み込まれたり、逆に「イメージ」を過剰に意識しすぎたりして、考えに考えた挙句ヘンな馬を買ったりするのが、穴党の微妙なところ。 今年も、リンカーンの一番人気が、ほぼ確定的だ。豊さんも毎度毎度、大変なのだ(笑)。戦歴的には、ネオユニヴァースやザッツザプレンティよりも格下の「単なる重賞1勝馬」。4強と目される中ではレースキャリアがやや見劣りするリンカーンだが、もしかすると今回は単勝1倍台かもしれない。豊さん、ダンスインザムードのように、今回も鮮やかに勝ちきるレースができるだろうか。
「本番は流れが厳しくなりますから」などとイメージ的な発言をする人が多いが(笑)、実際に調べてみると一目瞭然、本当に「本番は流れが厳しくなる」のだった! 過去10年、2000の通過タイムは、上記の表の通り「馬場に関わらず必ず天皇賞のラップの方が速い」。
天皇賞の方が必ず厳しい流れになる、ということが意味するものは、
(1)少頭数になりがちな阪神大賞典では、道中緩いペースになって、ラスト1000の切れ味比べになりやすい。
(2)前哨戦で「ラスト1000の切れ味比べ」を制して駒を進めた人気馬が、スタミナを要求される流れに対応しきれないとき、天皇賞は荒れるパターンになる。
今年の阪神大賞典は、リンカーンのフィニッシュが際だっていた(ように見えた)レースだったが、実は2000の通過が2分9秒2の超スロー。典型的な「ラスト1000の切れ味比べ」になったレースで、サンデー産駒が最も得意とするレースパターンだった。渋いステイヤーの多いダンスインザダーク産駒は、あの展開だと厳しい。アンカツさんもリンカーンの脚を計れて、納得の一戦だったのではないだろうか。 本番は間違いなく、ダンスインザダーク産駒をはじめとする「スタミナ自慢」たちが早めのスパートで、切れるサンデーにはやや厳しい流れが待ち受けている。菊花賞のようにザッツザプレンティが3角から前々で仕掛けたとき、リンカーンやネオユニヴァースはさっと動いてついていけるかどうかが鍵。騎手の腕比べも、大きな見どころだ。
切れすぎるサンデー産駒たち、今回の天皇賞は「距離はもつだろう」というような曖昧な判断ではなくて、「ステイヤーかどうか」をしっかりと見極めてから馬券の検討をした方がいい。
馬券というのは実はかなりシンプルな遊びで、「強いと思う馬を買う」「あまり強くないかもしれないと思う馬は、あまり買わない」「弱いと思う馬は手を出さない」と、たったこれだけのことで成り立っている。
僕の場合、日曜の夕方に翌週の登録メンバー見た瞬間、たいてい「こりゃ危険な人気馬だなー」と思う馬がいるんだが、その根拠は、必ず「勘」だ(笑)。あとからいろんな理由をもってきて、その「勘」を裏付けていく、という作業になる。いい例が皐月賞のブラックタイドだった。この「勘」がうまくハマれば払い戻しにありつけるし、間違ってたら金をなくすだけ、というのが、なにしろ馬券のいいところ。流行の言葉で言うと自己責任(笑)。
先週、福島牝馬Sのコラムで「このメンバーで福島の1800を走らせたらどれが強いか、という具合に読むしかない」というようなことを書いたが、これこそが、あらゆるレースの予想の極意だ(笑)。みんながそれぞれに、「強いと思う馬」「応援したい馬」を買おう。みんなの考えがそれぞれに、予想の極意だ。結果は、また別の話。
だから、「これこれの人気馬は危険ですから皆さん手を出さないほうがいいですよ~!」などと、レース前に誰かを「説得」しようとするのはまったくナンセンスで、僕がこの「危険な人気馬」を書くときには、読んでくださる方を説得しようなどとはまったく思っていない(ので、あらかじめご了承くださいね)。逆に言うと、このコラムで取り上げる馬を否定するつもりもまったくないので、どうかご了解を。あくまでも「一つの見方」に過ぎませんのです。
リンカーンはいかにもレース振りがサンデーらしく、切れすぎるという点が引っかかる。
過去10年で、阪神大賞典が「2000の通過が緩い流れ→→ラスト1000が60秒未満の上がり比べ」になった年が6回あるが、そのケースで天皇賞も勝ったのはメジロブライトだけ、という結果が出ている。メジロブライトの年は阪神大賞典も天皇賞も超スローで、2000の通過が2分10秒3(阪神)、2分9秒9(天皇賞)と、きわめて似通ったラップ構成になった年だった。 ※阪神大賞典が中京2800だった1994年を除いて、過去10年。
印象的だったのは、1996年のナリタブライアンだ。阪神大賞典で、マヤノトップガンとの伝説に残るロングスパートの叩き合いを制して、上がりが57秒8。本番では断然の一番人気に支持されたが、しかし本格派ステイヤーのサクラローレルに完敗の2着だった。
今年は、阪神大賞典の上がりが、59秒2だった。2000の通過が2分9秒2の超スローで、上がりのキレ比べを制したリンカーン、本番でははたしてどんなレースを見せてくれるだろうか。豊さんの手綱捌き、今回はいつもに増して、注目だ。
| wrote:2004/4/29 |
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<**血統で読む/2004年 天皇賞・春**> |
| さすがにゴールデンウイーク直前は微妙に色々忙しくて、夜中に半分眠りながら過去20年分の血統をチェック(笑)。でもやっぱり過去20年の歴史見てると実に面白いもんだから、ついつい血統表見過ぎて朝寝坊したりしてます(^^; 1.恒例の異系調査、「ファラリス系だけ」は例によって1割 代々配合されてきた種牡馬が4代連続「ファラリス系」の馬は、G1では苦戦の傾向・・・というのが当サイトの仮説で、そういう馬の連対率はだいたい1割程度というのがこれまでの結果。春の天皇賞も過去20年さかのぼって連対馬をすべて調べてみたが、延べ40頭のち、「ファラリス系を4回連続」という血統で連対したのは、5頭だった。
2.京都はやっぱりノーザンダンサー系? 京都の芝といえば、個人的にはすぐに「ノーザンダンサー系」というイメージだが、天皇賞(春)も、過去20年を調べてみるとかなりハッキリした傾向が現れていた。連対馬の多くが、次のいずれかのタイプなのだ。 ※「父」がノーザンダンサー系 ※「母の父」がノーザンダンサー系 ※「父」がナスルーラ系 ※「母の父」がナスルーラ系 もちろんこうじゃない馬もいるが、傾向としては「ノーザンダンサー系かナスルーラ系に要注意」というのが歴然としている。ほぼ毎年、連対馬のどちらか(あるいは両方)が上の条件に当てはまっていて、1着馬・2着馬が両方ともそうでなかったケースは、過去20年で2回しかない。しかもずいぶん古くにさかのぼるもので、1985年、シンボリルドルフが勝った年と、1987年、ミホシンザンが勝った年のことだ。 今年の出走馬で、「父」&「母の父」がいずれも、ノーザンダンサー系でもナスルーラ系でも「ない」馬は、次の4頭。
3.淀の3200、母父ミスプロ系は苦しい? ミスタープロスペクター系と言えば、日本ではやはり「ダートの短距離で強い」というイメージ。天皇賞(春)では過去20年間に、「母の父ミスタープロスペクター系」で連対したのは、2000年のラスカルスズカ(2着)のみというデータがある。 ラスカルスズカの母の父は、Miswaki(ミスワキ)。これはミスタープロスペクター系としては抜群に距離をこなす種牡馬で、凱旋門賞を勝ったアーバンシーを出したほどだ。日本でもサイレンススズカの母の父がMiswakiだし、菊花賞を勝ったザッツザプレンティの母の父もMiswakiだから、これは心配ないと言って良さそうだ。 心配があるとすれば、ゼンノロブロイの方か?母父マイニングは、いかにも「ダートのスプリンター」というイメージで、スタミナを供給してくれる系列の種牡馬でないことだけは確かだ。 まっ、そんな心配は杞憂に終わるかもしれないけれど、これまで春の天皇賞の歴史で、「母の父ミスタープロスペクター系」は一頭しか連対歴がないのは事実。今年で言うと、母の父ミスタープロスペクター系同士の、ザッツザプレンティ×ゼンノロブロイという馬券は、少し手が出しにくいかもしれない。 4.ずいぶん「同じ母系の馬」や「同じ馬」の連対が多い 古くはモンテプリンスとモンテファストの全兄弟が勝ったのをはじめとして、1986年の2着馬メジロトーマスと、91年と92年の2度優勝したメジロマックイーンは、2代母が同じ(メジロアイリス)。ビワハヤヒデ&ナリタブライアンの兄弟も、両方連対している。 最近でも、2回以上連対した馬がイナリワン(89年1着、90年2着)、メジロマックイーン(91年・92年1着、93年2着)、ライスシャワー(93年1着、95年1着)、サクラローレル(96年1着、97年2着)、メジロブライト(98年1着、99年2着)、テイエムオペラオー(00年1着、01年1着)と、こんなにもいる。 これらの馬が強かったのももちろんだが、「京都3200mへの適性」という点も、やはりかなり重要なのではないか、という気がしてきた。 そういう点では、去年2着だったサンライズジェガーなどは、もしかするとこのコースへの適性抜群で、あまり軽く扱うわけにはいかないのかもしれない。ほかでは、ファストタテヤマの3代母はクリアアンバーという馬で、これは1983年に勝ったアンバーシャダイのお母さんだ。 |
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| wrote:2004/4/30 |
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<**展開を読む/2004年 天皇賞(春)**> |
| イングランディーレが怖いと言っても、この場合「イングランディーレがマイペースで逃げたら、残ってしまう場合があるのではないか?」という意味ではない。そうじゃなくて、今年の天皇賞(春)は本当にペースが鍵を握っていて、「スロー」と見るなら切れ味で勝るサンデー産駒から買うレースになるし、「平均ペース以上」と見るならば、ステイヤーを買うべきレースになる、という意味だ。 で、ソレの何が怖いのかというと、ズバリ、イングランディーレに乗る横山典弘騎手。 3角まで楽に行った「スタミナ抜群の逃げ馬」が、早めにスパートしたときにどういう展開になるか、少し考えてみよう。 そのすぐ後ろにいそうなザッツザプレンティも、「これはおあつらえ向き」と、早めのスパートを追いかけて、スタミナ勝負に持ち込む公算が高い。後ろにいるリンカーンもネオユニヴァースもゼンノロブロイも、ここで先に抜け出されて菊花賞の二の舞はまずいから、マークして追いかけていく形が濃厚だ。 つまり、平均ペースで行った上に、なおかつ3角から4角までが、もしかすると異常に速くて苦しい流れになる場合がある(かもしれない)のだ。横山典弘をあまりラクに行かせたくないから、たぶんアンカツ・ザッツは4角で前を飲み込みに行く。すると、この3角から4角~直線にかけてのラップが、もしかすると、11秒台の前半になってしまうかもしれない。 もしそんな展開になったら大変だ。 去年本命にした馬だし、うーん、一応ちょっとだけ押さえておくかな~(笑) |
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| wrote:2004/5/3 |
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<**レース回顧/2004年 天皇賞(春)**>Race・2004/5/2 |
| 1000万条件のダート戦でまったく泣かず飛ばずだったイングランディーレを「芝の長距離」で大変身させたのは、去年までの主戦だった小林淳騎手の手腕によるところが大きい。彼は、レース中に必ず一度は勝負の姿勢を見せてくれる騎手で、なかなかの個性派、隠れた名ジョッキーの一人だとさえ僕は思う。 少し詳しく見ていこう。 まず、ゲートを出て最初の<12.0 - 12.0 - 12.0>の部分。ここはスタートしてすぐハナを主張したあと、向正面から最初の4コーナーに入るあたりのラップになる。ここで<12秒0>が3回連続しているが、これだと後続はたぶん「すこし速い」というイメージになるはずだと思うのだ。事実、4角を回るところで、もうすでに馬群は十分バラけ始めていて、イングランディーレはこの時点で、かなり簡単にレースの主導権を奪っている。ここが横山典騎手、まず第一のファインプレイだった。 そこから最初の直線はいったん<12秒7>とすこし緩めたが、そのあと最初のホームストレッチを<12秒3-12秒1>と、ここもやや速め。依然として「流れはやや速い」というイメージを演出しながらレースを進めて、この時点で隊列は完全に縦長。各馬それこそ「虎視眈々」というポジション取りだ。 京都・長距離G1のいつもの流れなら、このまま淡々と進んで行って、向正面でややラップが落ちる。そして3角でにグッと馬群が詰まって一気にクライマックスへ・・・というのがおなじみのパターンだ。 しかし今回は、3角で馬群が詰まるどころか、逃げるイングランディーレに誰もまったく詰め寄って行かなかったのだ。 いったい、後ろから行く馬に、何が起こったのだろうか。 実際は、「3コーナーで誰も行かなかった」のではなくて、おそらく「誰も行けなかった」のではないだろうか。 その理由が、赤数字にした<12.1 - 13.5 - 12.8 > の部分にある。ここが今回の横山典、サプライズマジックだった。 この赤字の部分は、 レースの流れの中で言うと、最初の直線を走り終えて1コーナーから2コーナーに向っていくあたりのラップとなるのだ。 「(1)やや速めで流れてきて、(2)そいして2コーナーでやや落ち着き、(3)向正面で一息入れる」という流れなら京都の長距離でよくあるラップの構成だが、しかし横山典は向正面を待たずに、なんと1角の大きなカーブを回りながら、急速に減速しいるのだ。これが、<12.1 - 13.5 >の部分。向正面で楽をさせると後続の各馬も詰め寄ってくるが、この時点では各馬まだ力を温存したいから、誰も詰め寄ってきたりはしない。横山典騎手は、ここでまんまと、一気に1秒4もラップを落としてしまった。この早い段階でイングランディーレに一旦楽をさせて、そしてそのあとの1200mぐらいを、また平均ペースの流れに持ち込んで押し切ってしまったのだ。後続が何もできずに金縛りになってしまうのも、無理はなかった。 馬群はこの大きなコーナーを回りながら、いっそう縦長になっていた。コーナーワークで加速するとどうしてもカカり気味になりがちだし、後続各馬がお互いを意識しすぎたためもあってか、ついつい、ここで追い詰めていくタイミングを失ってしまっていたのだ。これが、レースのポイントだった。イングランディーレが向正面に抜けた時には、もう、完全な独走態勢に入っていた。 横山典ジョッキー、まさに会心の騎乗だったろうなあ。 3200mを走って、最速のラップが、なんと最後から3番目の 11秒6だ。これは4コーナーから直線に入る部分のラップで、大逃げしてる馬がここでこのラップだと、後ろはもうまったく手も足も出ない。後続が誰も前を追いかけていかなかったからレースの評価は「低レベルの凡戦」「ほかの騎手はいったいナニを?」というトーンのものが多かったが、それは違う。横山典が巧みなラップの魔術で、後続が仕掛けるタイミングを完全に奪ってしまったのだ。 インタビューでは控えめな発言をしていた横山典ジョッキーだが、3コーナーから4コーナーにかけての1ハロンで<11秒6>の脚を使えた時点で、もう勝利を確信していたのではないか?先週のコラムで<馬なり派の巨頭は逃げ馬に乗せると、本当に楽々馬を持ってきそうで怖い>というようなことを書いたが、実に素晴らしい騎乗だった。 人気になっていたサンデー系各馬のレースぶりもじっくりと見てみたが、どうもサンデーの差し馬は、グレードの高いレースで多頭数になるとまったく燃えない、というレースぶりが多いような気がしてならない。今回のゼンノロブロイみたいに、「目標になる馬を一頭か二頭に絞ってやって、それを交わさせる」というレースぶりなら高いパフォーマンスを見せるが、グレードの高いレースで、後ろから行ってたくさんの馬を差す、という競馬ぶりを、そう言えばあまり見たことがないような気がする。皐月賞も、「前に交わすべき目標が1~2頭しかいなかった」というダイワメジャーが勝ったレースだ。宝塚記念まで、春のG1はそのあたりも一つの見どころかもしれない。 宝塚記念と言えば、もし出てこられるならばナリタセンチュリーが穴かもしれない。天皇賞は横山典が演出した完全な前残りの流れだったが、後ろから突っ込んできた中でもっとも迫力のあったのが、この馬だった。次走、4角まで楽に力を温存させられる騎手が乗るなら、十分馬券圏内と思えた。 |
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