FILM

　　　　　　　　　　猫の森の奥深くには　百年眠る魔法使いが住んでいるらしい

サイレンの音は赤いバスの声。
不定期にやってきて、身よりのない子供たちを乗せて行く。
悪いバスなのか良いバスなのか、どこから来るのかどこへ行くのか、
噂はいろいろあるけれど本当の所は誰も知らない。
バスに乗ったらそれっきり。戻って来た子供は一人もいない。
今日もまた赤いバスを見送った。

　　　奇跡の瞬間　

なにもかも終わってからようやく気がついた
奇跡の瞬間をそれと気付かずに見送ってしまったこと

　　　千の天使

かつてバスケットボールをしていた千の天使たち
今では海岸に佇み永遠を見つめているばかり

　　　雑音

守ってあげたいと壊してやりたいは同じ感情の裏表
優しい言葉にその気になって身をゆだね
警戒心をといたその後で私は壊れる　壊される

粉々になった私は
孤独の底に突き落とされて
なすすべもなく泣き続けるけれど
その声はあなたにとって　耳ざわりな雑音でしかない　

　　　　Ｗ

川の魚は海には棲めないし海の魚は川に棲めません。

どんなに川の魚が海での暮らしを望んでも、
どんなに海の魚が川での暮らしを望んでも。

望む場所と自分に合う場所とは違うのです。

　　　　　言葉

言葉が存在するわけは　心と心を近づけるため
そうして　心と心が抱きしめあえた時
言葉は　そっと姿を消すんだよ

　　　ブランク

きみのおしゃべり小鳥の歌のように
きみのてのひら子猫のしっぽのように
最悪の気分さえ甘く溶かしてくれるけど
何かが足りないきみだけじゃ足りない
確かにあるのさこの胸に愛だけじゃ埋められない隙間

　　　キャッチボール

追いかけて来る現実から目をそらして僕ら
ふざけた話のキャッチボール延々と続けてる

空が鉛の色に包まれて町中にオレンジが灯って
やがて今日の日が静かに閉じて行くけど
それでも僕ら遊びに夢中な子供のふりさ

　　　ｆａｌｌ

本物か偽物か疑い始めた瞬間にすべてのものは偽物に落ちるんだ

　　　ササノフネ

この川はどこへと続く川
私は小舟　笹の葉の舟

寒い国から優しい国へ
優しい国から乾いた国へ
乾いた国を抜けたら何処の国

この川はどこまで続く川
私は小舟　海を夢見る笹の葉の舟

　　いいわけ

言えなかった言葉のせいさこんなに体が重いのは
傷つけることから逃げてしまうのは傷つくことから逃げたいからだよね
相手のためだなんていいわけしてるけど本当は自分のためなんだ

　　　夏にさようなら

さよなら　タオルケットで眠る夜
さよなら　年代物の扇風機
さよなら　青い風鈴
さよなら　半袖のシャツ

風は九月だ切ったばかりの髪を揺らしてる
さよなら　さよなら　今年の夏にさようなら

　　最後の嘘

きみじゃなくても良かった淋しさを消してくれるなら
誰だって構わなかったきみだってそうだったんだろう？

　　ヒトリ

世の中を嫌うほどに僕は世の中から嫌われて行く

　　smoke

五月蝿い人々が右から左から喚いてる
余計な言葉はもういらない
とりあえずウォークマン
それから煙草
憂鬱も溜息も煙がどこかへ運んでくれるのさ

　　スケッチ

間違わないで憎しみの絵の具じゃ素敵な未来は描けない

　　　天気雨

いつまで寝ても寝たりない休日疲れがたまっているんだな
やりたくないこと頑張ってやりたいことする元気が磨り減って

馬鹿みたいだな時間が無情に過ぎて行く

残り時間の計算をしてみては胸の中に雨雲がさす
無理やり光を呼び込んで平静を取り戻すんだ
暗い顔していても仕方ないなんて
明るい顔をしていたって作り物じゃ同じことなのに

馬鹿みたいだな天気雨繰り返して時間が無情に過ぎて行く

　　　　any

誰かのせいにしたいならしてしまえばいいさ
なんなら僕のせいにしてもいい

だけどそのかわりきみは大事な物をひとつなくすのさ

たとえばそれはきみの中のきれいな色した何か

　　　普通

あの頃小さな体をしていた頃、僕は、
シアワセもフシアワセも物語の中にしかないと思ってた。

　　　レコード

きみは
世界中の誰よりも
僕を喜ばせることができる人
そして
世界中の誰よりも
僕を悲しませることができる人

　きみを見てると目が回っちゃう

振り回されてる　いつも
追いかけてる　いつも

　　　夏の匂い

夏の匂い
きみといつも座ってた石段の匂い
夜露と砂埃の混じり合う曇った匂い

わたしはひとり
てくてくと夏の夜道を歩きながら
ふと夏の匂いを見つけては
ちょっと切ない気持ちになるのです

いつかきみが言ってた言葉のカケラが
記憶の箱から勝手に溢れ出し
ちょっと切ない気持ちになるのです

　　　　キニイラナイ

はっきり言えばきついだの冷たいだの言うし
言わなければ言わないで文句

つまりきみは
僕がきみに不満を持つということ自体が気に入らないんだろう

　　　多いね？

怒ってないそうじゃなくて悲しいんだ
間違う人、多いね？

ｅｌｅｃｔｒｉｃ

重低音の茨の奥がきみの部屋固い鍵かけて電波の会話に浸ってる
今週の時間泥棒被害総額どのくらい
恋も友情も四角い箱の中

あたりさわりのない言葉の応酬わずかな砂金探してきみは今夜も電波の旅に出る

　　　ぐるぐる

ぐるぐる回る世界は回る僕がいなくても

　　　KNOCK

今日も僕は話しかけている思いつくままに
明日も話しかけるだろう何処かのきみに

　　落とし物

何処かに落としてしまった大切な言葉たち
今はもうどんなだったかさえ思い出せなくて

空っぽの笑顔浮かべてさどうでもいい言葉吐き出してる日々

なんとなく

テーブルの上紙の虫小さな水たまり
ガラス越し銀杏の木急ぎ足の人々
煙草の煙吐き出しながらぼんやり眺めてる

いつかきみと来た喫茶店逢えるわけもないのに
なんとなく引き寄せられて

逢えたからって気の利いた台詞言えやしないのに
なんとなく　なんとなく

　　優しい夢

壊せなかった憂鬱が一晩中騒いでたんだ
朝の光　眩し過ぎるよ重たい瞼　擦る元気もない

きみの声が聴きたいななんでもいいから聴きたいな

見られなかった夢のかわりに目を開けて見る夢を　優しい夢を

　　ジブン

人の言葉に惑わされてしまうのは振り回されてしまうのは
自分を信じてないからさ

わかってる　わかってる
だけどわかってるだけじゃ駄目なんだ
信じることのできる自分にならなけりゃ

　　原石

どんなことにも意味がある
そんな考え方はもう古い　もう飽きた

どうせこじつけ理屈のプラモデル

それよかもっと圧倒的な
暴力的なまでに圧倒的な
そう　まるで原石みたいな意味が欲しいんだ

　　 HAPPY

磁石のように引き寄せ合って
あっというまに重なり合った僕たちの生活

まるで神様が応援してくれてるみたい

そんな思い込みも楽しいね

運命の糸と糸とで繋がる魂の双子
いろんな思い込みが広がるよ

ねえどこまでも広げて行こうか
誰かが笑ったとしても気にせずに
どこまでも　どこまでも

cheap

当り障りのない言動
底の浅い平和を繋ぎ合わせて日々をやり過ごしてる

偉そうに知恵や常識を振りかざすけど
本当の所楽をしたいだけなんだろう

18

ぼやけた街のぼやけた公園で幻みたいな恋をした

光

期待してないなんて嘘八百
ほんとはいつでも期待で胸がはちきれそうだ

ネガイ

きみになりたい
きみの目で見て
きみの耳で聴いて
きみの手でふれて
きみの心で感じたい

　　　　きみになりたい
　　　　　きみをわかりたい

ｒｅｃｉｐｅ

シュガーのかわりに嘘一個
ミルクのかわりに涙を一滴
銀のスプーンで渦巻き作れば
ほらね　特製サヨナラコーヒーのできあがり

ｒａｄｉｏ

あの頃僕は壊れたラジオ
日がな雑音ふりまくくせに肝心な時だけ声を失くしてた

あの頃に戻ることができるなら
僕は僕に教えてやるよ修理工には気をつけろ

ａｌｗａｙｓ

きみに関する悪口はいつでも僕を悲しくさせるんだ
言っているのがきみ自身だとしても

　　　ほんとのきもち

本当の気持ちは夜のシャボン玉みたいさ
息を吹き込んだと思ったらもう見えない

はじけて消えたことすらもわからないままなんだ

　　 fake

そこから見える景色はどうですか
片目を閉じての世界はどうですか

　　ｓｉｇｈ

からまった糸を丁寧にほどいてたんだ
ハサミを使えば簡単だけど大切な糸だったんだ

待ちくたびれみたいだね？
いつのまにか僕は一人

せっかくほどいた糸を指に巻きつけて
なんだかもうどうでもいい気分だよ

夜の高速道路

夜の高速道路を　きみの運転で走る
さっきから無口だね　ラジオだけがお喋りだ

暗すぎて　きみの横顔が読めないよ
わたしたち　どこへ行こうとしているの

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