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このミステリがすごい2011年 国内編 第9位児童養護施設・七海学園に勤めて三年目の保育士・北沢春菜は、多忙な仕事に追われながらも、学園の日常に起きる不可思議な事件の解明に励んでいる。そんな慌ただしい日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。警察の見解通り、これは単なる「不慮の事故」なのか?だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていた。季節を彩る五つの謎。第18回鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』の続編、清新な本格ミステリ。感想最近「タイガーマスクからのランドセル」という、ニュースが賑わせました。そんな児童擁護施設を舞台としたおはなしでした。ラストのどんでん返しが来た時、あれあれあれ?!もう一度最初から読み返してみると、なるほどね~という記述方法でした。二度三度、要所要所を読み返しました。ヒロインは、犯人が誰かを調べていたのでしょうが、読んでいる時と読み終わってからでは、調べの意味合いがまったく違っていました。アルバトロスとは、アホウドリのこと。アホウドリは飛ぶ時は気流に乗って滑降し、羽ばたかずに何万メートルも跳ぶのだそうです。その代わり飛び立つまでは地上をドタドタ走り、崖から飛び降りて飛び立つ。自傷行為を繰り返す少女はアホウドリに自分を重ね合わせたのでしょうか。どんでん返しだけが面白いのではなく、傷ついた子供たちの気持ちと奔走する主人公の姿に、心打たれました。ヒロインと同等に存在感があり、キラキラと感じたのが子供たちでした。施設に来る事になった子供たちにの背景、親子関係にはやっぱり切ない気持ちになりました。親は完璧ではないにしても、子供をどうしようもなく傷つけたり、追い込んだり、命を奪う権利は持ってない筈なのに、家庭に恵まれない子供が様々にいるのですね。舞台となる養護施設には、いろんな意味で傷ついた生い立ちの子供が預けられてますが、子供たちは安全に安心して暮らしているのでよかったです。たくましくて明るく、人生を受け止めて淡々と暮してる姿に応援したくなりました。元気なヒロインの、更なる続編をまた読みたいです。第18回鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』
2011年01月27日
このミステリがすごい2011年 国内編 第3位第五回ミステリーズ!新人賞砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇…ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。同作品は綾辻行人・有栖川有栖・辻真先三選考委員から激賞され、満場一致で受賞が決定した。受賞作を第一話に据え連作化した本書で単行本デビューを果たす。ミステリの技巧とロマンティックな文章力を併せ持つ、注目の大型新人の鮮烈なデビュー作。 【収録作品】「砂漠を走る船の道」「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」「凍れるルーシー」「叫び」「祈り」【このミステリがすごいより】日本人ジャーナリストが世界各地で体験する異様な謎==連作短編集日本人ジャーナリストの斉木は、サハラ砂漠の真ん中にある集落に塩を求めて旅を続けるキャラバン隊に同行し取材を続ける。だがその帰り道、隊長の不慮の死をきっかけに、隊のメンバーたちが次々と殺されていく。なぜ砂漠という極限状況において、しかも容疑者が限られた中で殺人が起きなければならなかったのか。(中略)いずれも世界中を飛びまわる斉木が事件に巻き込まれるのだが、その土地ならではの価値観が謎と密接に関わっている点に意義がある。【感想】『叫びと祈り』。題名を見ただけでは、読んでみようと手に取る事はなかったと思います。「このミス」第三位、選考委員大絶賛、ということでどれどれ、、。読後、そのワールドワイド(世界中に広がるような、世界的な)内容に、絶賛されたことに納得でした。その広さは、ジョージ・R・R・マーティンの『タフの方舟1 -禍つ星』 並に感じました。ま、あちらは宇宙の旅人ですし、宇宙人の価値観は理解しずらい所多しですが。地球上にはいろんな土地に様々な人が多種多様に存在してるんだという事が、短編の形でギュッと濃密につまってました。その土地ならではの価値観が、民族の風習、宗教的視点など、その動機は私たちにはあり得なくても、彼らには必然なのだという説得力で謎が解明されていきます。そしてラスト編がまた。主人公の斉木の旅ばなしの続きがまた読みたいです。長編作なら、どんな本を?と期待が膨らむ作家さんでした。
2011年01月26日
このミステリがすごい2010年 海外編 第3位安ホテルでヤク中が殺された。傍らにチェス盤。後頭部に一発。プロか。時は2007年、アラスカ・シトカ特別区。流浪のユダヤ人が築いたその地は2ヶ月後に米国への返還を控え、警察もやる気がない。だが、酒浸りの日々を送る殺人課刑事ランツマンはチェス盤の謎に興味を引かれ、捜査を開始する―。ピューリッツァー賞受賞作家による刑事たちのハードボイルド・ワンダーランド、開幕。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞三冠制覇。 純文学作家マイケル・シェイボンが書いた歴史改変SFミステリーです。歴史改変SFとは実際の歴史とは異なる歴史の経過を経た世界を描くものです。「クレオパトラの鼻が低かったら歴史が変わっていただろう」というような、 「もし」歴史がこうだったら~・・をベースにおはなしが構築されるものです。特徴は、実際の史実に基づき、その上で現実の歴史とは異なる発展をした社会や政治や産業の状況を描くことです。いわゆるパラレルワールドですが、手法としてタイムトラベルが、からむこともあるようです。歴史改変SF作品 例・フィリップ・K・ディックの『高い城の男』(1962年)ナチス・ドイツと大日本帝国が第二次世界大戦に勝利した世界を描いている。・ウラジミール・ナボコフの『アーダ』(1969年)帝政ロシアが北米の一部を支配する世界を描き・アイザック・アシモフの『永遠の終わり』(1955年)この作品では、「永遠」は世界の現実を人々に気づかれずに改変できる。・フィリップ・ロスの The Plot Against America(2004年)ルーズベルトが大統領選に負けリンドバーグが大統領となり、アメリカでのファシズムと反ユダヤ主義が高まる。・マイケル・ムアコックの『この人を見よ』主人公が紀元28年の聖地にキリストに会いに行き、結局自分がキリストを演じることになる。ハリイ・タートルダヴ、グレゴリー・ベンフォード、マイク・レズニック、、S・M・スターリング、キム・スタンリー・ロビンソン、ハリイ・ハリスン、ハワード・ウォルドロップらが、歴史改変ブーム時代多く作品をのこしています。(1980年代末から1990年代)本書『ユダヤ警官同盟』は、↑そんな歴史改変SFですが、あんまりそうとは感じませんでした。というか全然。「もし」第二次世界大戦後ユダヤ人移民を、アラスカが受け入れていたらという設定ということでしたが、読み始めはてっきり、アラスカにはお話の通りユダヤ人街があるのかと思って読んでました。あとがきを読んでから、はじめてこの本ってSFだったの?そうなんだ~、と知りました。この”亡命人受け入れ問題”をアラスカが引き受けた、という事以外には、特に非現実出来事は何もないです。ユダヤ人が待ち望んでいる救世主と約束の地をめぐってウンタラカンタラ、、。途中で時空が変化するとか、主人公が実は未来から来た人でやがて帰っていくとか、キリストがSF的な奇跡を行うとか、そんな派手なことは何もありませんでした。ハードボイルドな主人公が、貧ぼらしいホテルで「酒」「銃」「不眠」「鬱」を抱え、外では自分の直感で上の指示を無視してイロイロ動き、やがて傷つき弱った主人公が再生していくといういたってシンプルな展開。鬱々しているのにそんなに暗くないのは何故?元の奥さんを恋しがってウジウジしているのがなんだか微笑ましい。他にない要素と言えば「チェス」ですね。それと、ここでも父と息子の問題が。父はもう亡くなっているんですが、主人公には父の死にまつわるトラウマが年がら年中「鬱」になる元。ユダヤ人問題を知らないと理解しずらいのが難点でしたが、なんとか読めました。シオニズム?ヘブライ語?う~ん聞いた事はあるけれど、良く知らない。これはこれで掘り下げると又勉強になりそうですね。今回は、民族の深い苦悩を感じつつ、おはなしの展開に身をゆだねてました。そしてなんといっても、とても豊かな表現。ユダヤ教、親子問題、夫婦問題、殺人事件、、あれやこれやあるのに、とってもシンプルなんですよね。そして豊かな表現にしばしばびっくり。さすがピューリッツァー賞作家さん。こうしたランキングとは無縁の方が、ミステリを書いたら凄いものになった、、と言う感じでした。というか、日本が勝手にブックランキングさせてもらった、ということでしょうか。マイケル・シェイボン著作『ピッツバーグの秘密の夏』 (1988) 『ワンダー・ボーイズ』 (1995) 映画化『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』 (2000)ピューリッツァー賞受賞作『サマーランドの冒険』 (2002) The Final Solution (2004) 『ユダヤ警官同盟』(2007) コーエン兄弟による映画化決定Gentlemen of the Road (2007)
2011年01月22日
このミステリがすごい2011年版海外編 第5位かつて隆盛を極めながらも、第二次世界大戦終了後まもない今日では多くのものを失い、広壮なハンドレッズ領主館に閉じこもって暮らすエアーズ家の人々。かねてから彼らと屋敷に憧憬を抱いていたファラデー医師は、往診をきっかけに知遇を得、次第に親交を深めていく。その一方、続発する小さな“異変”が、館を不穏な空気で満たしていき、人々の心に不安を植えつけていく……。たくらみに満ちた、ウォーターズ文学の最新傑作登場。サラ・ウォーターズって陰気で、レズ調が合わなくて、これまでの作品はいまいちに思ってましたが、これは面白かったです。登場人物のひとりが、『アッシャー家の崩壊』エドガー・アラン・ポーの主人公と同じ名前ロデリック。ゴシック・ホラーの雰囲気をベースにいろんな要素を含んだお話でした。どういうオチが来るんだろう?と、考えている内に読み終わった感じです。 1.心霊現象 2.精神疾患による幻覚幻聴 3.悪意によるイタズラ 4・?だいたい、どこかにオチるんだろう・・とおもったのですが。結局、”異変”の正体がなんだったのかは読み手まかせ。ですが、そこが著者のうまさなんでしょうね。それから、興味深かったのがキャロラインの心理。世間から隔絶され、孤独で困窮し、屋敷と家族に縛られている時、ただひとりの友人と呼べるのが主人公の医師。 ここから、出て行く事さえできたなら、優しくてそこそこ気の合うこの人でもいーかもなー。でも、なにもかもから解放され、自由に生きれる時がきたら。本当の自分の望みはなんだろう。ひとりのくたびれた中年の男に縛られたくはない。キャロラインの叫んだ「あなた!」と、窓ガラスに映った顔云々、、をつないでみると、そういうことなんだろうな~っと思いました。。ここからほんとにネタバレ↓心霊現象抜きで考えればロデリックは精神疾患。犬事件は、偶発事故。奥様は自殺。キャロラインは殺人。いろんな音は屋敷がボロの為。 または、ロドリックの告白を聞いたのはdocterだけ。奥様を心理的に追いつめて、すべてはdocterが?あの一人称の文章にもトリックがあるのか?または、やっぱり古い屋敷のことだから、化け物もいたのかも?ネタバレとしましたが、あくまで私の考えですので、正解とは限りません。様々な説が出せるでしょうね。関連本『アッシャー家の崩壊』 エドガー・アラン・ポー『ねじの回転』 ヘンリー・ジェイムズ 著作紹介『半身』『荊の城』『夜愁』
2011年01月22日
【古典部シリーズ】第5弾春を迎え、奉太郎たち古典部に新入生・大日向友子が仮入部することに。だが彼女は本入部直前、急に辞めると告げてきた。入部締切日のマラソン大会で、奉太郎は長距離を走りながら新入生の心変わりの真相を推理する.マラソン大会での高校生のドラマ・・・というと恩田陸『夜のピクニック』もそうでした。あれは夜中80キロを歩くというイベント。折木のような「省エネ」主義高校生には向かないですね。 【古典部】シリーズも5作目、日常の謎ミステリー分野で楽しみなシリーズとして、自分の中で定着してます。シリーズ中では『遠回りする雛』が、やっぱり一よかったです。一番読んでて気分が乗ったというか、折木もとうとう恋に目ざめることを認めるのか?、と、盛り上がりましたが。『ふたりの距離の概算』は、題名がマラソン走行の距離と、人と人の距離感を現しているみたい。それは、折木と千反田の距離と解釈してよいのかな?『雛』でグッと近づいた感がありましたが、学校がはじまって、日常のなんだかんだとともに、ゆるやかに戻ったようです。恩田陸『夜のピクニック』05年・第26回吉川英治文学新人賞05年・第2回本屋大賞受賞米沢穂信 著作 『さよなら妖精』 『犬はどこだ』『ボトルネック』 『インシテミル』 『儚い羊たちの祝宴』 『追想五断章』 【小市民シリーズ】 『春期限定いちごタルト事件』 『夏期限定トロピカルパフェ事件』 『秋期限定栗きんとん事件』【古典部シリーズ】 『氷菓』 『愚者のエンドロール』 『クドリャフカの順番 』 『遠まわりする雛』 『ふたりの距離の概算』
2011年01月17日
このミステリがすごい2011年版 日本編 第2位わずか十ヶ月間の活躍、突然の消息不明。写楽を知る同時代の絵師、板元の不可解な沈黙。錯綜する諸説、乱立する矛盾。歴史の点と線をつなぎ浮上する謎の言葉「命須照」、見過ごされてきた「日記」、辿りついた古びた墓石。史実と虚構のモザイクが完成する時、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。 ・写楽の謎とは? 日本の江戸文化浮世絵は、欧州でブームとなり逆輸入の形で日本で見直され研究が深まった文化です。江戸という近い時代なために、有名人物らの作品や人物について資料が多く遺されていますが、異彩なのが写楽。写楽だけは作品のみ多数あるだけで、その人物については謎とされています。そこで、「写楽別人説」というのがあって、丸山応挙説、葛飾北斎説、山東京伝説など、さまざまな説が繰り広げられ、その謎は現代まで多くの研究者たちを悩ませてきました。出版元の”蔦屋”(つたや)が当時無名の写楽という作家の作品を、140点も出版したのは何故か、写楽が10ヶ月で活動をやめてしまったのは何故か、後に自身が写楽だったと名乗る者も皆無なのは何故なのか。 浮世絵研究家の佐藤貞三は、ある肉筆画に特長的な文字がしるされていることを発見します。「フォーチュン・イン、デヴィルズ・アウト」”福は内 鬼は外”実際はオランダ語でした。その文字を使ったのは浮世絵史上ふたりの絵師のみで、ひとりは人気絶頂だった喜多川歌麿、もうひとりは短期間に多くの作品を発表し忽然と姿を消した幻の絵師、東洲斎写楽でした。作者が長年興味を抱き着想から20年というテーマの作品です。写楽の意外な正体とは。島田荘司さんの作品はほとんど知りませんが、日本美術史にうとい私でも、歴史ミステリーとして、とても楽しく読めました。 続編も期待できそうですね。高橋克彦『写楽殺人事件』
2011年01月14日
著者インタビュー 「巷説百物語シリーズ」の第四弾 はじまりの百物語、シリーズ最重要作 上方を追われて江戸で双六売りをしている又市は、ある事件から損料屋の仕事を手伝うことになる。損料屋とは今でいうレンタル業。しかしモノを貸した賃料をもらうのではなく、使われたことで「損」をした分をお金でいただくという理屈の商売。又市に声を掛けてきた「ゑんま屋」はモノだけでなく「恨み」の損も請け負うというという。かくして又市は仲間たちとともに奇想による「仕掛け」の数々で「恨み」の損を晴らしていく。江戸時代の妖怪本『桃山人夜話 絵本百物語』(竹原春泉・画)に登場する妖怪たちをモチーフにした『巷説百物語』第4弾は、シリーズの「前史」ともいえる作品。【目次】寝肥 /周防大蟆 /二口女 /かみなり /山地乳 /旧鼠シリーズ1、2作目が江戸時代、三作目は明治時代と時代が下がったが、4作目は時代的に遡る。小股潜りの又市が駆け出しの頃の話です。 上方を追われた又市は、相棒の林蔵とともに江戸で、惚れていた女が人を殺めてしまったことから、銭で埋まらぬ損を引き受ける裏の損料屋「ゑんま屋」の一党と関りを持つことになる。「ゑんま屋」が引き受けた事件の解決のため、又市が毎回仕掛けを考案しますが、後の作品では完璧なイメージの強い又市も、駆け出しの頃は信念と現実のギャップに憤りを感じ、葛藤しています。妖怪の仕業ということで、丸く収める大仕掛けが見どころのシリーズですが、仕掛けがそんなにうまくいくだろうかと、実に苦しい。持ち出された妖怪や怪事もかなり無理やりのこじつけです。ですが、だからこそ駆け出しで青い青いと言われる又市が精根傾けたものとしてのリアリティーがあります。洗練された仕掛けの対極です。 後半では、シリーズに関る人物がぽつぽつと登場します。最後の二編「山地乳」「旧鼠」は稲荷坂の祇右衛門との苦しい戦いです。祇右衛門は江戸の最下層の非人たちを欲しいままに操り、何度殺されても甦って来る怪物です。又市の過去が漸くあきらかになりました。こうして、-五鈷鈴をもってりんと鈴をならし、口上「御行奉偽ーー」が生まれたんですね。 またシリーズを読み返したくなるけれど、そうすると、他のが読めなくなりそうなのが難点。なんといっても抜群に読み応えがあるため、他本を読む余力がなくなるのです。そろそろ、昨年刊行された『西巷説百物語』が、おいでおいで~と手まねきしているような気がしているこの頃。でも図書館に行くと貸し出し中。【京極夏彦 読書感想】 『姑獲鳥の夏』 『 魍魎の匣』 『狂骨の夢』 『鉄鼠の檻』 『絡新婦の理』 『塗仏の宴 宴の支度』 『塗仏の宴 宴の始末』 『陰摩羅鬼の瑕』 『邪魅の雫』 『巷説百物語』 『続巷説百物語』 『後巷説百物語』 『前巷説百物語』
2011年01月13日
【内容】何もかかれていない空白の本?オックスフォードの図書館で少年ブレークは不思議な古書を発見する。やがて浮かび上がる謎掛の詩、迫り来る追跡者。一方、15世紀のドイツでは、印刷機の発明家グーテンベルクの元で修行する少年縁デュミオンが旅に出た。全世界を支配できるその本を守る為。時空を超えたファンタジー。『エンデュミオン・スプリング』改題。【あとがきより】 黄金時代といわれる児童文学界にまたまたすばらしい新星が現われました。この『エンデュミオンと叡智の書』をひっさげて鳴り物入りでデビューした、イギリスの作家マシュー・スケルトンです。 話題の新人マシュー・スケルトンは、まるで現代のおとぎばなしのようなデビューをしました。イギリスのオックスフォードで無一文に近い暮らしをしながら、この作品の原型となるものを書き上げました。 中世の物語の舞台となるのは、十五世紀のドイツのマインツです。マインツはドイツ中西部、ライン川とマイン川の合流点にある河川交通の要所の港市で、グーテンベルクの生誕地として知られ、ヨハン・グーテンベルクは勿論フストもシェーファーも実在の人物で、史実に基づいて描かれてます。 世界の歴史を変えた”ルネサンスの三大発明”は、火薬、羅針盤、活版印刷術(金属活版印刷)と言われますが、グーテンベルクはそのひとつ、活版印刷の発明者です。その生涯は実は詳しく分かっていないのですが、およそ一四OO年頃マインツに生まれ、一四OO年頃に活版印刷を実用化し、一四五O年代に『四十二行聖書』(『グーテンベルク聖書』と知られ、活版印刷術によってつくられた最初の書物で、世界で最も美しい印刷物と言われています)を印刷し、一四六八年に亡くなっています。グーテンベルク以前は、本と言えば写本で、ウンベルト・エーコ著『薔薇の名前』などにも描かれているように写字生がペンで一冊一冊書き写すしかなかったので、十五世紀半ばのヨーロッパには、10万冊たらずの本しかありませんでした。それが活版印刷術の発明により、本が一挙に安価になって普及し、十五世紀末には九百万冊にも達したといわれます、それが知識の一般化を助け、のちの宗教革命などに大きな影響を与えた事はいうまでもありません。 少年が一冊の本との出会いをきっかけに運命を変えるという小説は、ミヒャエル・エンデ著『はてしない物語』(映画『ネバーエンディング・ストーリー』)が有名ですが、『はてしない物語』の場合、主人公の少年は本を通路として別世界へと旅立ちます。そこでの本は<ナルニア国ものがたり>の衣装ダンスと同じく、別世界への入口であり、典型的な通路型ファンタジーです。しかし、『エンデュミオンと叡智の書』はそれとはまた違い、少年は現実世界にとどまりながら、非日常的で不思議な体験を重ねます。たとえば、無欲でピュアなブレークにしか見えない、空白の本に浮かび上がる暗号のような例的な言葉。空白の本を手に入れようと迫りくくる邪悪な影。J・R・R・トールキン著<指輪物語>(映画『ロード・オブ・ザ・リング』)の世界を統べる指輪にも匹敵するような、強大な力を秘めた一冊の空白の本が、過去と言う別世界と、ブレークのいる現実世界を緊密に結びつけていくのです。 作者のマシュー・スケルトンは、一九七一年にイギリスのサウサンプトンで生まれましたが、四歳のときにカナダに引越し、子供時代のほとんどをアルバータ州エドモントンですごしました。アルバータ大学の英文科を卒業後、一九九六年、二十五歳の時にオックスフォードにやってきて、二OOO年に、オックスフォード大学のサマービル学寮で、H・G・ウェルズの出版史の研究中に児童文学を何冊か読んだ時に、自分が本当にやりたいことは小説を書くことだと思い出したためだといいます。とりわけ、同じオックスフォード出身のフィリップ・プルマンの<ライラの冒険>シリーズ第二編『神秘の短剣』に大きな刺激を受けたそうです。そしてある日、この『エデュミオンと叡智の書』のラストシーンを夢に見たのですが、それが、創作のヒントになりました。オックスフォードで埃を払う仕事をしたあと、ドイツのマインツ大学でジョシュとして働きながら、『エデュミオンと叡智の書』を書き始めましたが、途中で行きづまり、一年ほどブランクがありました。オックスフォードにもどると、大学関係の仕事を探しましたが採用されず、主人公のブレークのために作品を書き終えるほかなくなり、自身がないながらもそれを出版エージェントに送ったというのが、冒頭のエピソードです。【感想】不思議な本が、物語の核となる。国内外で、こういうのいろいろありますよね。『風の影』カルロス・ルイス・サフォンとか『英雄の書』宮部みゆきとか『魔法の声』コーネリア・フンケとか。。あとがきを読んで、活版印刷を発明したのが登場人物のグーテンベルクという人物だったことや、この発明で本が世界に広く活用されるようになり、きっと人類の知識が、ぐーんと広まったんだろうというのがわかりました。今こんなに気楽に本を楽しめる時代がきたのも、この発明のおかげと思うと、ありがたやありがたや・・・と思います。それにしても、あとがきに、児童文学の大御所たちの作品名がズラリ。そんなに、この本は凄いのか?物語の冒頭、雪の中を旅するフストとペーター。フストは、一緒に旅に来れば娘との結婚を認めるなど、好条件を提示してペーターを同行させ、重要な荷持を積んだ重いソリを引かせてます。ボロボロの服に凍えるペーター。場面が転じ、グーテンベルクと口のきけない徒弟が、作業場で仕事しているところに、フストとペーターが入ってきます。てっきり、ペーターが主人公かな~と思っていたのですが、その後はエンデュミオンという本書の題名になっている子が中心にはなしは進みます。フストがどうしてエンデュミオンに目をつけたのか、ペーターはどうしてフストよりエンデュミオンを助けてくれるようになるのか、フストの娘もまた、父よりエンデュミオンを助けるのは何故なのか。親方のグーテンベルグは、最初のフストの交渉以外は、ほとんど登場無しです。細かい心理は省かれ、噺がどんどん進むのは読みやすく面倒がないのですが、なんとなくものたりなく思いました。そういうのを膨らませると読み応えが出るだろうな、と思いましたが、児童文学だからいいのかな。
2011年01月11日
AM7:00 コミュニティーセンター集合 8:00 会場 戸塚綾瀬小学校 着 9:30 第一試合 ブレイブ VS ドルフィンズ 第二試合 第三試合 ケージャンズ VS ブレイブ 第四試合 ↓ まもなく卒団です。まだ 川越卒団大会とふじみ野卒団大会があるので、終わりじゃない。悔いのないように、がんばれ。
2011年01月09日
このミステリがすごい2010年版 海外編 第7位ま~、ずいぶん読みやすかったのびっくりです。翻訳本にありがちな、読みにくさというか、まわりくどさをまったく感じなかった。読んだばかりの、キャロル・オコンネルの『愛しい骨』と同じ、父と息子の確執がありました。読みやすさはこちらの方が、断然おすすめですね。でも、『愛しい骨』は2011年度の第1位。『川は静かに流れ』は2010年度の第7位。遜色はないと思いますが、『骨』のほうが、町中の人が関わる分複雑さも深く、癖のある人物ばかりだし、犯人に到るまでが面白いのかな。と、父と息子の関係修復が、つい似てるので比べてしまいますが、同じ作者の本をもっと読んでみたいと思うのは、ジョン・ハートの方です。『川』は第二作なので、アメリカ探偵倶楽部賞をとったデビュー作『キングの死』と、2011年度の5位の『ラスト・チャイルド』も手に取りたく思います。 まだ未翻訳の本もあるし、ほとんど新人とのことで、今後も楽しみです。本の内容の感想で言えば、これでもかという、”選択”が目に付きました。各々にとって、一番大事な者のために、選択しなければならない時事があり、皆が幸せに円く収まるとはいかないからドラマになるのね、、というような。たとえば、主人公の父は、殺人容疑をかけられた息子を信じるか、犯人を見た証言をする妻を信じるか、の選択。又、主人公の元彼女は、警官としての職務と恋人の、どちらをとるかの選択にせまられるし。主人公は、また、誰を信じるか、まちがえてばかり。ラストをむかえてみれば、犯人を見た証言をした継母も、ある選択をしていたことがわかります。随所に出てくる、選択シーン。ラストを迎えて、主人公が取り戻した家族とか平安に囲まれる一方で、失ったものに憎悪や失意をつのらせて放置されたような人たちのことが、心に残りました。【このミステリーがすごい より】 川は様々なものに喩えられるが、本作のタイトルに作者がイメージを重ねたのは、人生そのものだろう。急流もあれば、たおやかな流れもある。そしてもちろん紆余曲折も。生まれ故郷の川辺の町に、主人公の青年が数年ぶりに戻ってくるところから物語は始まる。目的は親友の苦境を救うことだったが、やがて、殺人の濡れ衣を着せられ、家族との軋轢に苦しんだ自身の過去と対峙しなければならなくなる。血縁や恋人との関係から一旦は逃げた主人公が、苦悩と葛藤の末にそれを取り戻していく感動と謎解きのカタルシスがシンクロする天下ウィは見事のひとこ。2008年度MWA(アメリカ探偵作家倶楽部)賞の最優秀長編賞受賞作も納得の一冊だ。 著作『キングの死』 (2006)『川は静かに流れ』 (2007)『ラスト・チャイルド』 (2009)The Iron House (2010)
2011年01月08日
このミステリがすごい2011年版 海外編 第1位 今回の『このミステリがすごい!』によると、2011年度の海外編がだいぶ良いとのこと。言われて見ると、国内編よりも海外編に食指が動く?特に座談会の話が面白く、翻訳ミステリー”暗黒の三年間”っていうのが、へ~っと言う感じ。2003年『飛蝗の農場』 ジェレミー・ドロンフィールド2002年『神は銃弾に』 ボストン・テラン2001年『ポップ1250』 ジム・トンプソンが首位を取った3年間のことだそうです。そうなんだ~。言われれば、『飛蝗の農場』は、読んだけど、感想が書きにくく、これが首位作品なんだ~っと思ったけど、筋はよく覚えてない。ジム・トンプソンは薬浸けのグルングルンした世界の話っぽくて、どうもな~っと思い、手が出ず。ボストン・テランに到っては、知らん誰それ。。という、マニアックな作品ばかりだったようです。で、『愛おしい骨』です。あらすじにめっちゃ魅かれて読みました。20年ぶりに故郷に帰る。殺人の疑いをかけられたまま、去った故郷に。町の人たちの秘密が暴かれていく、というのでは、スティーブン・キングぽいのかな?っと思いました。キングのような、ダークな御伽噺調子ではなかったのは、主人公が淡々としてるせいでしょうか。または、怪物めいて描かれている人物らが、だんだんと悲しげに思えてきたからかも。とても大勢の人物が登場しますが、群像劇ぽくない。 内面をそれほど掘り下げてない。故郷に帰ることが、自分探しというテーマ。若い頃の自分、過去の自分に、あえて向き合わなければならないのは、気持ちのよい作業とは思えないところもあるでしょうが。中年になってくると、こんな本が読みたくなるのですねぇ。今年は大好きだった翻訳ミステリーを、沢山楽しめるかも、と期待してます。【このミステリーがすごい より】二十年前に失踪した弟がばらばらの骨となって戻っていた。調査に乗り出す兄が見出したものは ベストテン圏内の作品は、いずれもが大本命。そんな傑作の数々がデッドヒートを繰り広げた今年、見事ハナの差でゴールのテープを切ったのは、この作品だった。ちょっと風変わりで気難しいヒロインが活躍するキャシー・マロリーもので知られるようになった作家だが、いまやキャロル・オコンネルの名は『クリスマスに少女は還る』の作者として記憶している読者のほうが多いだろう。そんな作者が『クリスマス』に続いて放つノン・シリーズ第二作が、この『愛おしい骨』である。 物語は、主人公の20年ぶりの帰郷で幕を開ける。彼が陸軍の犯罪捜査部を辞め、故郷に舞い戻ったのは、二十年前に行方不明になった弟の骨が、今になって夜毎実家の玄関作に置かれるという不可解な出来事のせいだった。保安官の脅しに屈したと見せかけ、主人公は調査に乗り出していくが。曲者ぞろいの町の人々が次々登場し、何かコンプレックスでもあるのでは作者を疑いたくなるくらい屈折した恋愛感情が主人公の周囲で渦巻く。奇妙な情熱に彩られた魅力的な物語世界に身を任せる快感をたっぷりと味わって欲しい。作品<ノン・シリーズ>『クリスマスに少女は還る』 2000年版第6位<マロリー・シリーズ>『氷の天使』『アマンダの影』『死のオブジェ』『天使の帰郷』『魔術師の夜』『Crime Scool』『Dead Famous』『Winnter House』『Shark Music』昨年は、宮本輝に最後はまってました。感想書いてない本もたまってますし。。ブログもすっかりなおざりですが、また『このミス』の季節になりました。読みたい本も見つかるかも。また細々と続けることと思います。よろしくお願いします。
2011年01月06日
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