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このミステリーがすごい 海外編 2010年版 第1位
物語は、合衆国政府と中南米麻薬カルテルの間で繰り広げられる暗闘を描いていくが、DEA(麻薬取締局)の捜査官、カルテルの首領と愛人の娼婦、アイルランド系の殺し屋という登場人物たちの辿る波乱の人生を通して、三十年にわたる血と暴力にまみれた歴史が語られていく。
麻薬戦争の不毛から浮かび上がる「悪は滅びず」という主題は苦いが、血の絆をめぐる葛藤の物語や友情と裏切り、そしてロマンスまでも織り込んで繰り広げられる一大絵巻は実に濃密。骨太はストーリーテリングに捻じ伏せられる会館を味わわられたい。 (このミステリーがすごいより)
2010年度のランキングは以下のとおり↓
このミステリーがすごい! 2010年版 海外編
1位 『犬の力』 ドン・ウィンズロウ
2位 『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』
スティーグ・ラーソン
3位 『ユダヤ警官同盟』
マイケル・シェイボン
4位 『バッド・モンキーズ』 マット・ラフ
5位 『ソウル・コレクター』
ジェフリー・ディーヴァー
6位 『グラーグ57』 トム・ロブ・スミス
7位 『川は静かに流れ』
ジョン・ハート
8位 『泥棒が1ダース』ドナルド・E・ウェストレイク
9位 『ミレニアム2 火と戯れる女』
スティーグ・ラーソン
10位 『リンカーン弁護士』
マイクル・コナリー
10位 『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』
スティーグ・ラーソン
ずっと本棚でご休憩中だった『犬の力』。
ようやく読めました。
読み出したら、結局一気読み。
なんであんなにとっつきにくかったのだ?
『ミレニアム』は、強烈なインパクトのある作品でした。
三部作がまとめてかかっても、『犬の力』が投票者数、ポイント数とも上回るというぶっちぎりで上だったんですね。
他にも、ジェフリー・ディーヴァーやマイクル・コナリーもいたのにね。
だから、1位の『犬の力』はすごく興味があり、絶対読もうと思っていたのですが、、。
正直、最初は『犬の力』は、とっつきにくかったです。
読み初めの、冒頭部分が重たいせいでした。
苦手な軍事作戦シーン。
二度、三度、読みかけては挫折。
麻薬捜査官アートが、宿敵を追いつめているようなんですけど、
焼き討ちにあう村、惨殺された麻薬組織の家族の遺体。悔恨の念に駆られるアート。
「俺のせいで、こんな目に」母に抱かれた赤子の遺体が、生涯目に焼きつく。
いきなり、アートという男の苦悩に直面させられ、ちょっと読者は置き去り状態なスタートです。
これは30年に及ぶ麻薬闘争物語の終盤で、まずこれを冒頭にドドーンともってきてるんですね。これで、読者をこの世界に引き込むために。
冒頭を乗り越えると、5人の主要人物たちのそれぞれの群像劇で、各人物が、この一大麻薬戦争にどう関わるようになっていくか、順当に話がすすんいくので、やっと話に入りやすくなります。
大小、理非、清濁、賢愚、泣き、笑い、出会い、別れ、だまし、だまされ、手を結び、敵対する。密輸、組織化、権力との癒着、暴力抗争、陰謀、政治的暗躍、幾多の革命、反革命、暗殺、暴動、偽獄、、、
これだけの内容なのに、殺伐とばかりしていない。
雰囲気がある。
平坦なノンフィクション風でもない。
『シャッター・アイランド』のデニス・ルヘインのように趣きがあり、読みやすかったです。
それにしても、
独裁国家ってこういう感じなの?
すべてが裏取引でつながっている。
ここで描かれるメキシコという一国は、独裁国家とも違うんでしょうケド。
強大な国主がいるわけではない。ただ「麻薬」。強大な「麻薬」の生み出す資金。
大統領も、警察も、裁判官も、司祭も、、「麻薬」の生み出す莫大なお金で動いている。
学校も病院も教会も企業も軍事も暮らしも、「麻薬」の金で支えられている。
それがなくては、ただの貧しい国に成り下がる。
しかもアメリカが、複雑に利害に絡んでます。
アメリカ自身は、国内に蔓延している麻薬に手を焼き、億単位のドルを投入して、取り締まろうとしながら、一方で、軍事機関がグアテマラやら左翼やらを一掃する目的に、なんやかんやとメキシコの麻薬を支援する。
メキシコでは、麻薬業界は、上層部の人々にとってのアキレス腱であり、失いたくない資金源。麻薬のドンたちは守られ、彼らを捕まえる事は不可能のようです。
こんな状態を粛清するなんて、とても無理に思われます。
一般庶民には想像もつきません。国がうまく機能するってどういうことなんですかね。
正しくなくても、うまく機能してればいいんですかね。
ウィンズロウさんは、凄い怒りをこめて書いているようですね。
いや~よかった。
2011年の『フランキー・マシーンの冬』も読まなくちゃ~。
夏は、ほとんどミステリーを読めなかったので、今年は読冊量があまりいかないかな。
ドン・ウィンズロウ(Don Winslow, 1953年10月31日-)
アメリカ・ニューヨーク出身の小説家
ジャンルはソフトボイルド・タッチの探偵・犯罪ミステリー
幼少期には、海軍下士官であった父親に伴い一家で各地の駐屯地を転々とする。自らシナリオを書いたり演じたりする演劇少年であったという。ネブラスカ大学では、より広い世界を見たいとジャーナリズムを専攻する。
37歳で本格的作家としてデビューする以前はさまざまな職業を渡り歩いた。アフリカ史の学士号と軍事史の修士号を持ち、これらの研究に関わる政府関係の調査員にも従事していた。(なお、「一時はポルノ作家として文を書いていたらしい」と紹介されることがあるが、同姓同名の別人との混同による誤解であり、本人はきっぱりと否定したうえで、この点をたびたび質問されるので非常に迷惑との旨を述べている[1]。)
調査員として活動中に大怪我をし、入院中の時間潰しと現実逃避のため自己の体験から構想した探偵ニール・ケアリーの物語が、1991年度アメリカ探偵作家クラブ(MWA)処女長編賞候補作に挙げられ、突如ミステリ界に現れた鬼才としての評価を呼び、以降シリーズ化され作家としてのキャリアを歩む。
1999年以降しばらく筆が途絶えていたが、2005年に久々の大作 "The Power of the Dog"が出版され(日本語訳『犬の力』は2009年発刊)、これまで日本でも全ての作品が翻訳出版されてきたが、これを機に新たなファン層を増やすこととなった。