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天の道を往き、総てを司る
第三話 襲撃者
ベットの上にはリーアが静かな寝息を立ててぐっすりと眠っている。
部屋の真ん中に置いてある炬燵をどかしてベットから少し離れた場所に布団を敷いて横になる。
「ふぅ・・・・・・なんか疲れた」
気がつくと時計の針はすでに午後10時に差し掛かろうとしていた。
もうこんな時間になっていたのかと少し驚く。戦闘の後なので色々とごたつき忙しかったので時間が経つのも早い。
まだ風呂に入っていないが今から入るのも面倒だし一日入らなくても別に死にはしない。
時計を手に取りいつものように午前4時40分に合わせる。この時間に起き早朝訓練開始の放送を流すのが彼女の日課だ。
ちなみに放送室には午前4時50分に合わせた同じ時計が置いてある。放送で全校に大音量の時計のベルを鳴らさないと他の隊員は起きないからだ。
「さて・・・おやすみぃ・・・」
時計を合わせて、布団に制服のまま潜り込む。
いつものようにお気に入りのペンギンのクッションを抱きしめ瞳を閉じる。熟睡するのに一分とかからなかった。
ピピピピピピピピピッ!
耳障りな電子音が部屋に響く。
「・・・・・・五月蠅い」
その電子音に対する憎悪の色を声に混ぜながらリーアが目を覚まし上半身を起こす。
窓際にある学習机の上に置かれた目覚まし時計。リーアには其れがどういう物かわからないが電子音の発信源だとわかる。
「・・・・・・」
何故だ。
何故にこの変な丸いのは自分の睡眠を妨害するのだ。
この丸いのにそれほどの権利があるというのか?
否
あり得ない
断じてあり得ない
このような丸いのにそんな権利などあるものか
自分には権利がある
自分には使命がある
ぐっすりと満足するまで眠るという権利がある。使命がある
それを邪魔する存在の一切合切を私は許さない
我が命に代えてでも全否定し、滅する
次の瞬間、リーアは時計を掴むと窓をあけてぽいっと外へ放り投げた。
時計は雪の積もった校庭へと落下。すぐに音は聞こえなくなった。
「・・・・・・フッ」
これでまだ眠れる。
リーアは勝ち誇ったような笑みを浮かべベットへと潜り込む。
ちなみに咲良はよっぽど疲れていたのか未だに深い眠りの中である。
ベットに潜るとすぐに眠気が襲ってくる。これに身をゆだねている間のなんと心地よいことか。
やがて彼女の意識は深い闇の中へと堕ちて―――
『ジリリリリリリリリリリリリリリッ!』
―――いくことは叶わなかった。
咲良は万が一、自分が間に合わなかった時も考え放送室のマイクをタイマーセットし時間が来るとスイッチが入るようにしていたのだ。
オマケに放送室に置いてあるのは喧しい音を立てるベル付きの目覚まし時計。電子音の目覚ましなど可愛い物だ。
「っ!? やっば! 寝過ごしたぁっ!」
咲良はベルの音に反応して普段より10分遅い起床を迎える。
布団をはじき飛ばす勢いで起きあがり、タンスの中からすぐに女子用のピンクのジャージを取り出そうとする。
「あ、おは・・・・・・よ・・・・・・う・・・・・・」
その最中、ベットから降りていたリーアと目が合う。
目覚めの挨拶を言おうとしたが、虚ろな青い瞳の中で燃えさかる憎悪の炎が自分を睨んでいる事に気がつき声に怯えが混じる。
怖い。
はっきり言って怖い。
何故にそんなに怒った顔で自分を睨んでいるのですか?
何故に視線が殺気立ってるのですか?
何故に指をポキポキと鳴らしてるのですか?
何故に姿勢を低くして今にも襲いかかろうとしているのですか?
主よ、どうかこの石田咲良に慈悲を―――
咲良が恐怖のあまり半ば壊れた様子で心の絶叫を終える前にリーアの拳が咲良を襲った。
腹部に走る鋭く鈍い激痛により咲良は悲鳴をあげる間もなくベットに沈み悶絶していたが、動かなくなるまで10秒とかからなかった。
この後、同室のスピーカーも破壊しリーアはベットに潜り込んで自らの最良にして至福の時である睡眠へと移行する。
数十分後、いつもなら真っ先に校庭にいるはずの咲良がいないことに疑問に思った彩華と亜美が部屋を訪れ布団の上で白目むいて気絶している咲良と壁から力任せに引きずり出されたスピーカーだった物。
そして、何事もないようにベットの中で寝息を立てている犯人の姿を発見した。
―――ちなみにリーアが咲良を殴り倒したのはたんなる八つ当たりである。
「大丈夫ですか? 中隊長殿」
「まだお腹が痛い・・・・・・」
腹部を両手で押さえ食堂の机に突っ伏した状態で咲良がぼやく。
早朝訓練は咲良がこんな調子だし時間も遅いと言うことで中止となった。
ちなみにリーアは今だにぐっすり夢の中。彩華は話を聞こうと無理矢理起こそうとしたが亜美が必死で押さえ込み断念させた。
部隊の副官であり、実戦経験も豊富な彩華まで倒れたらこの部隊はお終いである。それを自分自身で確認している亜美の必死さは異常であり、彩華もそれに気圧される形で断念した。
「あの子・・・・・・よっぽど起こされたくないのね」
目覚まし時計を鳴らしただけで自分がこんな理不尽な暴力を喰らったのだ。
無理に起こそうとすればどんな目にあうか、二人には容易に想像出来た。
「これは暫く早朝訓練中止ですね」
「そうね・・・・・・私もまだ死にたくないし」
アハハと乾いた笑いを浮かべる二人の顔は引きつっており体も小刻みに震えている。
生物としての本能が警告しているのだ。彼女を無理に起こせばいつか必ず命を落とすと。
同じ頃、日本から遠く離れた大西洋の海中を潜航している一隻の潜水艦の姿があった。
一般的な潜水艦の丸みを帯びた棒状のシンプルな外見とは異なり、SF映画に出てくる宇宙船のような外見の潜水艦だ。
トゥアハー・デ・ダナンと名付けられた潜水艦の発令所のメインモニターに漆黒の戦士のような装甲を持つ機体、マルスが幻獣と戦っている映像が映しだされている。
「確かに・・・・・・半年前、相良軍曹が目撃したと報告のあったB1とよく似ていますね」
発令所の中央に備え付けられている艦長席に座る襟元に大佐の階級章をつけた軍服姿でやや白色が濃い灰色の髪を三つ編みに纏めている少女、テレサ・テスタロッサが言う。
親しい者達からはテッサという愛称で親しまれている彼女がこの潜水艦の艦長である。「何もかも懐かしい」とか「左舷、弾幕薄いぞ! 何やってんの!」とか言う人では無く17歳のこの少女が艦長だ。
テッサは手元のコンソールを操作しモニターの画面を縦に二分割する。左側には幻獣と戦うマルスが、右側には半年前、この艦のクルーである相良宗介軍曹が記録した映像に残っていた爆炎と煙の中に佇む漆黒の機体の映像が映しだされる。
二つの画面を重ね合わせ、機体のシルエットを重ねる。見事に特徴は一致しているのが一目で分かる。
B1とは半年前の一件のあと、ミスリルが付けたマルスのコードネームだ。
「やはり、同一の機体と考えて宜しいでしょう」
テッサの右横に控えている眼鏡を掛け軍服に身を包んだ神経質そうな――明らかにテッサより艦長らしく見える――中年男性、リチャード・マデューカスが言う。
彼はこの部隊の副指揮官でありテッサの良き副官でもある。襟元には中佐の階級章が確認できる。
「マデューカス中佐、この映像は何処で?」
「先日、日本の青森にて撮影されたものであります大佐殿」
「青森・・・・・・確か、本州最北端の地域でしたね」
「ええ、B1は幻獣を現地の部隊と共に撃退した後、その部隊にパイロットと共に保護されているとの事です」
つまり国連軍の管理下にあると言うことか。テッサは束ねた後ろ髪で自分の鼻先をくすぐり始める。
強いストレスを感じている時の彼女の悪癖だ。ようやく発見した十二神の使者の手掛かりが国連軍の管理下にある。これではおいそれと手が出せない。
ミスリルと国連軍の関係は微妙だ。時には協力し作戦行動を取ることもあるが敵対することも少なくはない。
今は、まだそれほど悪い関係に傾いてはいないが良いとも決して言えないのだ。特に軍上層部には機会があればミスリルを潰すチャンスを狙っている者も多い。
何処の軍にも属さず、独自の指揮系統で活動する部隊というのが気に入らないのだろう。
ミスリルは戦争の火種を潰すという正義に基づき行動しているが客観的に見れば正義の味方を気取った集団でしか無いことはテッサもよく知っている。
だからこそ軍の管理下にあっては手が出せないのだ。誘拐及び強奪などもってのほか。国連軍にミスリル潰しの大義名分を与えるだけだ。
「見つかったのはいいですが・・・・・・手が出せないと言う事ですね」
「その通りであります。大佐殿」
痒いところに手が届かないとはこういう事を言うのだろう。
こういう時にミスリルの弱さを嫌と言うほど彼女は感じてしまう。
「現在、情報部の者が監視についているとは聞いていますが・・・・・・」
「・・・・・・我々が出来る事は現状ではありません。此処は情報部に任せるほかないでしょう」
今は手出ししない方が良い。
テッサはそう判断し、マデューカスも同意するかのように頷く。
(せっかく見つけた手掛かりなのに・・・・・・)
テッサはマルスの映像を悔しげに見つめ、モニターを通常の青いスクリーンへと戻した。
学校の裏山。丁度、学校の敷地を見渡せる位置にある崖の上でユイランが双眼鏡片手に校舎の中を盗み見ていた。
中にいるのは学兵らしき10代半ばの子供が12~3人確認できる。目標は4階の一室で横になり眠っているのも確認済みだ。
別にこのまま突入、学兵達を皆殺しにしてから目標を誘拐しても良いが姉であるユイファンから「こちらが行動を起こすまで何もするな」と念を押されている。
『ユイラン。聞こえる?』
耳に入れてある通信機から姉の声が聞こえてくる。
双眼鏡をおろし、耳に手を当て聞こえやすいように押さえる。
「聞こえるよ。お姉ちゃん」
『目標に動きは?』
「無いよ。ただ・・・・・・」
『どうしたの?』
「私の他にも学校を見ているてる男がいるの。こっちには気づいてないみたいだけど」
そう言いながら視線を山の麓に建てられているアパートの屋上にいる男へと視線を移す。
双眼鏡でじっと学校の方を見ている。わざわざ日曜の学校をのぞき見る物好きなどそうはいない。
学兵の中に好きな奴がいてストーキングをしているか、監視しているかのどちらかだ。
『学兵目当ての変態かミスリルの人間か・・・・・・どっちにしてもほっとくと厄介だ、始末しとけ』
姉のユイファンでは無くガウルンが答える。
確かにこれから人一人誘拐しようと言うときに目撃者がいるのは不味い。
『こっちもそろそろ行動を起こす。それまでに始末しとけよ、目標に気づかれないようにな』
「わかりました、先生」
通信を終え、ユイランは懐から一丁の拳銃を取り出す。
銃口にサイレンサーを取り付け山を降りる。彼女が山を降りアパートの屋上にいた男を始末するまで数分とかからなかった。
日曜日は授業もなく生徒も教職員もいないため平日よりも自由な時間が多い。
学兵もそれは――学校で寝泊まりしている以外は――同じであり、授業が無い時間をそれぞれ自由に過ごしている。
咲良としては昼間にでも早朝訓練の代わりを行いたい所だったが腹部の苦痛が未だに治まらず走るなど無理なので仕方なく中止した。
とりあえずベットで寝ているはずのリーアの様子でも見てみようと部屋に戻っている。
「よく寝るわね・・・・・・この子」
ベットの中、蹲るような形で眠り続けているリーアを見ながら呆れた様子で呟く。
現在、午前11時半。昨日の午前2時~4時辺りに此処に寝かせていたはず。睡眠時間は軽く20時間近くになるというわけだ。
どう考えても寝過ぎである。
「・・・・・・ん」
やがて、リーアの瞼がゆっくりと開かれ上半身だけ起こす。
まだ眠たそうな目で視線を泳がせているが少しずつ頭が覚醒を始める。
「あ・・・・・・起きた?」
目が覚めたのだろうと思い咲良が声をかける。
リーアは咲良の方を向き、じぃっと顔を見つめ呟く。
「・・・・・・誰?」
「わ・・・忘れられてるっ!?」
ちょっとショックだった。
確かに昨日あったばっかりだしろくに話もしていないので忘れられても仕方ないのだが、いくら何でも忘れるのが早すぎる。
「昨日幻獣が出た町であったはずなんだけどなぁ・・・・・・覚えてない?」
そう言われリーアは思考する。
そう言えば、こんな人がいたようないなかったような。
「・・・・・・ああ」
やがて両手をポンッと叩きながら呟く。
「思い出した?」
「ううん」
ズドンッと大きな音を立て咲良は思いっきりずっこけた。
思い出したふりだけかいと心の中で100回ほど突っ込む。
そんな咲良の行動にリーアは首を傾げつつベットを降りてさっさと部屋を退室する。
「ちょ・・・・・・ちょっと!?」
咲良は起きあがり、リーアの後を追う。
彼女からは色々話を聞かねばならないのだ。勝手にふらふらと出歩かれては困る。
「何処行くつもり?」
「・・・・・・お腹空いた」
「ふぅん、お腹空いた・・・・・・って、はぁ?」
20時間も寝て起きて腹減った。何処までもひたすらにマイペースなリーアに咲良は呆れと心労を覚えつつ彼女を食堂まで案内するのだった。
もっとも、食堂で棚の中においてあったインスタント食品“ハードボイルドラーメン”をお湯でゆでずにそのままバリボリと食べ始めたリーアに更に心労を覚える羽目になるのだが。
ちなみにリーア曰く“歯ごたえがあって美味しかった”との事だがそれはまた、別の話である。
人里離れた平地。
四方をと山森に囲まれた天然自然のコロシアムのような場所。その森の中で三機のサベージが身を潜めていた。
そのサベージのうち一機、右腕に6連装のAS用ガトリングキャノンを装備し左腕と背中に予備弾倉を装着した機体の足下で一人の青年が通信端末を操作していた。
ヘッドホンを左耳にあて右腕で周波数を合わせている。
「ザイード。繋がったか?」
その青年、ザイードのすぐ横で腕を組みサベージの足に背を預けていたガウルンが言う。
ザイードは「あと少し」とだけ答え周波数を合わせ続ける。少ししてからヘッドホンを耳から離しガウルンの方を向いて答える。
「繋がりました」
そう言ってザイードはガウルンにヘッドホンを手渡す。
ガウルンは其れを受け取り、ゴホンと白々しい咳をしてから耳に当てマイクを口元まで降ろす。
「こちら、北海道方面軍本部。青森第4中隊、応答せよ」
「幻獣が出現した!?」
食堂でリーアにラーメンを作って食べさせていた咲良に幻獣が出現したという連絡があった事を彩華が伝えていた。
リーアは何の話かわからないし興味も無いのでひたすらにラーメンを啜っている。
「はい、先程、本部から通信がありました。P-D0405に幻獣が出現したとの事です。我々に出動要請が来ています」
「D0405・・・・・・結構、山奥ね。人里に降りる前に叩けって事かしら」
「恐らくそうでしょう。輸送機もこちらに向かっているとの事です」
「わかったわ。出撃準備急いで」
彩華が敬礼して食堂を後にする。
ズルズルと音を立てながら黙々とラーメンを啜っているリーアの方を向いて咲良が口を開く。
「私たち、出撃しなくちゃいけないから此処で待っててね」
咲良の言葉にラーメンを噛み千切りながら首を縦に振る。
それを確認してから咲良は駆け足で食堂を跡にする。それから数分後、校庭に降り立った輸送機に全機体を搭載し第4中隊は出撃した。
リーアはラーメンの汁(とんこつ味)を一気に飲み干し丼をテーブルの上に置いた。
「・・・・・・やっぱり、あっちの方が美味しい」
食べ終え呟く。
どうやらリーアにとってインスタントラーメンは調理せずにそのまま食べた方が美味しく食べれるようだ。
もう一個食べたいがすでに満腹だ。かといって十分に睡眠も取ったので眠たくもないし眠る気にもなれない。
どうしたものかとぼんやり天井を眺める。此処で待ってろと言われたし勝手に動き回るのは駄目なのだろうなと思う。
数分の思考の後、彼女は。
「もう一個食べよ」
食堂の棚の中に置いてあるハードボイルドラーメンを取り出し袋を開けそのまま食べ始めた。
保存用に固められた麺のまま、バリボリと盛大に音を立てながらまるで駄菓子でも食べるように口に運ぶ。
それでいて食べかすを一つも零さずちゃんと椅子に座って食べるという行儀の良さだった。
「・・・・・・見つけた」
その食堂の出入り口の影に身を潜めながらユイランが呟く。
アパートの屋上にいた男を始末していたほんの数分でリーアが4階から2階の食堂に移動していたが別にどうという事は無かった。
室内では見通しの良い部類に入る食堂の廊下側で――ユイランから見て――一奥の席でこちらに向けて座っている。周囲に人影もない。これ以上無く誘拐には最適な環境が整っていた。
ユイランはサイレンサーを取り付けた銃のマガジンを取り出し、懐から出した別の青いテープが巻かれたマガジンに交換する。
実弾では無く麻酔弾入りのマガジンだ。全部で10発ある。これを目標であるリーアの首に撃ち込み眠らせてから誘拐する。
その後は背負って運び出し、近くの駐車場に止めてあるトラックで姉たちとの合流ポイントへ向かう。シンプルというかお粗末というかな方法だが他に方法も無いのだから仕方ない。
弾を装填しそっとリーアへ銃口を向ける。照準を彼女の首筋へとつけ、引き金を引いた。
一方、第4中隊は幻獣が出現したというポイントに到着し部隊を展開していた。
しかし、その表情は何とも言えない色を浮かべている。無理もない幻獣の影も形も無いのだ。
「えっと・・・・・・幻獣は何処?」
「あるのは山と森だけ・・・・・・幻獣のげの字も無いじゃない」
乃恵留が吐き捨てるようにぼやく。
ゆっくりのんびりと部屋で休んでいたときに出撃要請で来てみれば幻獣など何処にも見あたらないのだ。
事実、彼女の機嫌はすこぶる悪くなっている。
「ちょっと石田。一体これはどういう事なわけ?」
仮にも上官である咲良を呼び捨てにするのはどうかと思うがいつものことなので誰も注意しない。
本人もすでに慣れているので別段気にしていない様子で答えを返す。
「私だってわからないわよ。ひょっとしたら移動した後なのかもしれないし・・・・・・」
咲良が言い終わるのとその轟音が聞こえてくるのはほぼ同時だった。
轟音と共に彼女たちの周囲に何かが降り注ぎ爆発する。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
爆発で舞い上がった雪が彼女たちの視界を塞ぐ。
轟音が響き、立て続けに起こる小爆発。幻獣の生体レーザーや生体ミサイルで起こる爆発とは明らかに違う。
一発一発の爆発力が幻獣の物に比べ小さすぎる事はすぐにわかった。
「な・・・・・・何なのっ!?」
「攻撃を受けています!」
「言われなくてもわかってるっ! みんな、一度さがって!」
咲良の指示で全機が後方へと下がる。
其処へ上空から数発の弾丸が降り注ぐ。
「何・・・・・・クソッ!」
航が栄光号の腕を振り上げジャイアントアサルトを上空へと連射する。
上空から弾丸を降り注がせた主はジャイアントアサルトの弾丸をはじき飛ばしながら地面へと着地する。
「あれって・・・・・・」
着地したそれがゆっくりと顔をあげる。
蛙のような特徴的な頭部を持ち、両手に二丁の銃口の下にブレードが取り付けられたライフル、銃剣を構えた機体。
軍関係者どころか一般にも広く知られている機体、サベージだ。
「サベージ・・・・・・だと?」
「何で幻獣じゃなくてサベージが出てくるわけぇ!?」
「っていうか、何で襲ってくるのよ!?」
有人機であるサベージが何故、自分たちを襲ってくるのか理解できない。
この辺に展開しているASや機動戦車は全て軍所有の物、つまり味方のはずだ。
幻獣の中にはASや戦車、ヘリなどに寄生し操るタイプもいるが目の前の機体からは幻獣の反応は無い。
つまりは人間が乗っていると言うこと。それが何故、自分たちを襲うのだ。
「そこのサベージ。私たちは敵じゃないわ武器を降ろして」
咲良が外部マイクで呼びかけるがサベージのパイロットは無視して両腕の銃剣を構え引き金を引く。
吐き出される弾丸は直撃こそしないが周囲に着弾し機体を揺らす。
「っ! 聞く耳持たずって事・・・・・・!」
「中隊長殿! アレを!」
亜美の栄光号が指さす先――第4中隊から見て正面――に更に二機のサベージの姿がある。
一機は巨大なガトリング砲を携え、もう一機はマシンガンとナイフをそれぞれ構えている。
「やる気満々みたいね・・・・・・」
3機のサベージは武器を構え戦闘態勢を整えている。
話し合いの余地は無いだろう。簡単に逃がしてくれそうにも無い。
理由は知らないが自分たちはまんまとおびき出されたと言うわけかと咲良は心の中で舌打ちする。
3機のサベージと4機の人型機動戦車のにらみ合いが続く。
やがて、ガトリング砲を構えるサベージが銃口を向けトリガーを引く。それが開戦の合図となった。
ユイランの構えた拳銃から麻酔弾が撃ち出され、リーアの首筋へと吐き出される。
そのまま麻酔弾はリーアに突き刺さり彼女を深い眠りに誘うはずだった。
「っ!?」
しかし、物事は簡単に運ばない。
リーアはまるで後ろに目でも着いているかのように麻酔弾を避けテーブルの上に置いてあった丼を手に取りユイランへと投げつける。
ユイランは咄嗟の事に反応できず丼に銃を弾かれ体制を崩す。
「くっ!」
ユイランが体制を整えリーアの方を向く。
彼女の目の前にまでリーアの顔が迫っていた。
「・・・・・・何か用?」
「・・・・・・」
リーアの問いに対しユイランは無言のまま左足を振り上げハイキックを顔面へと入れる。
ハイキックがリーアの顔面を捕らえる直前、リーアの左腕がユイランの蹴りを受け止める。
左足を戻しリーアから数歩分離れユイランは姿勢を低くし、身構える。
「大人しくしてくれないと痛い思いするよ・・・・・・」
言い終わると同時に床を蹴りリーアとの間合いをつめる。
床を強く蹴って跳び、空中から回転をつけて回し蹴りを繰り出す。
リーアはそれを瞳に捕らえるとスッと体を引き回避する。ユイランは着地すると同時にリーアへ連続で拳と蹴りを繰り出す。
放たれる一撃一撃全てが常人では反応出来ないであろう速度で繰り出されているがリーアは無駄な動きを一切せず全て見切っているかのように避け続ける。
ユイランは勢いをつけ左の拳をリーアの顔面へと放つ。しかし、それはリーアの顔面を捕らえる事は出来なかった。
逆にリーアはそれを弾き体を捻り、回転の勢いをつけ右のひじ鉄をユイランの腹部へと決めた。
「ッ!?」
カウンターを喰らい勢いあまってユイランは床へと背中から倒れこむ。
リーアは倒れているユイランへと虚ろな瞳を向ける。
「ねぇ・・・・・・何がしたいの?」
リーアは疑問を口に出す。
彼女は自分が襲われていると言うことを理解していなかった。
いきなり攻撃してきた時も反射的に体が動いただけで避けるだの反撃だのという自覚は無い。
むしろ、目の前の少女が何をしたいのか理解できていない。
それに答える事は無く、ユイランは体を起こしリーアを真っ直ぐ睨みつける。
(簡単には・・・・・・行きそうに無い)
そう判断しユイランは懐と背中から愛用の武器を取り出す。
黒っぽい灰色の刀身をした鉈のような武器。収納のために縮めていた刃を引き延ばし構える。
今回の目的はリーアを生きたまま連れ去ること。つまり、生きていればどのような状態でも問わないと言う事。
抵抗できないように腕や足の一二本を使えなくしてから麻酔で眠らせる。ユイランはそう考え鉈を構える。
それを見たリーアは相変わらず状況が飲み込めていなかったがとりあえず相手は自分をどうにかするつもりなのは理解できた。
なんとなくだが、嫌な感じがする。
「・・・・・・」
リーアの目つきが自然と鋭くなり足を踏みしめ拳を握る。
良くは解らないが嫌な感じがする。リーアの体が無意識のうちに臨戦態勢を整え身構える。
暫しの静寂、食堂に掛けられた時計の秒針が頂点を指すと同時に二人は床を蹴る。
二人の少女の戦いの幕開けだった。
続く
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