とし坊の青春

とし坊の青春

2005年01月07日
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カテゴリ: 旅行
 冷静に考えてみれば、彼ら小父さん先生達はひょっとすると非常に奇特な方々で、自称、日中友好に努めている先生ってことだから、無碍に断り続けるのは得策ではないんじゃないかって思われて来た。 それ程、熱心にあなたとの出会いを記念してプレゼントするっておっしゃっているのだから、ここで断わり続けるのは愚の骨頂とも言える。 
 それで、まぁ、良いか、中国人13億人の中にはこういう奇特な方もおられるんだ、荷物になるなんて馬鹿なこと言っていないで、有難く頂戴しておくかっていう気になったのである。 それじゃぁ、お言葉に甘えて頂きますって貰ったんだ。 しかし、貰ったのは良いんだが、当然、入れる物が無い、仕舞うところが無い。 どうするかなぁって思ったのも束の間だった。 隣りの小父さん先生、まさに間髪を容れずって言うのだろう、紙袋からスーパーなんかでもらう半透明のビニール袋を取り出し、これに入れれば良いって入れ口を広げて差し出してくれたのである。 あたいは、助かるなぁって思うと同時に、隣りの小父さん先生、すごく気が利くんだ、とも思ったりもした。 それで、すみませんねぇなんて礼を言いながら、切り絵をその袋の中に入れ、そして、その袋ごと貰ったのである。
 しかし、少し時間が経つと、心の中では、切り絵を入れるビニール袋まで、どうして持っていたのっていう驚きが頭をもたげて来た。 兎に角、すっきりしないのである。 余りにタイミングが良すぎて異様なのである。 普通だったら、何か袋なんか持っていなかったかなぁって呟いたりして、やおら紙袋の中をごそごそっと探し始め、あぁ、あった、あったって感じで、ビニール袋を取り出して、これで良かったら使ってって渡すでしょう。 そういう流れであったら、ごく自然で違和感なんか覚えなかったと思う。
 だけど、あれじゃ、初めっからビニール袋を持って来ていて、筋書き通り、取り出して渡したって感じがしてならないのだ。 小父さん先生達は、兎に角、百戦練磨だから、学習効果は抜群で、切り絵は荷物になるから要らないって言われた時、素早く袋を取り出して、その中に入れさせて、荷物になるとは言わせないようにしているって穿ったこと考えるのは、それこそ、愚の骨頂だろうか。 
 しかし、徹底した用意周到さには、空恐ろしくさえ思ってしまった。 何か仕組まれた筋書き通りに、物事が進んで行ってるんじゃないだろうかってね。 
 彼らは日本語も学びたいって、「外灘」に来たと言っていた。 9月には日本に行くと言う。 日本には親しい大学の先生がいると言う。 一人の小父さん先生は、紙と鋏まで用意していて、あなたの切り絵を作って上げましょうって作って、出会えた記念にプレゼントすると言う。 そして、更に、鞄や紙袋から持っていた切り絵をも取り出して、出会えた記念にプレゼントすると言う。 彼らはまるで示し合わせたかのように切り絵を持って来ていたのだ。 荷物になるのでって、やんわりお断りすると、是非とも貰って欲しいと言って、用意して来ていたビニール袋を空かさず出して来て、これを使ってと言う。 





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最終更新日  2005年01月08日 16時26分12秒
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