ラッ君の見上げる空





ラッ君の見上げる空
ラッ君の見上げる空

○月×日
小さな白いお花がよんでいるような気がしたから、野原へ出かけました。
小さなお花は風に吹かれて、おいでおいでしていたけれど
ぼくをよんだんじゃなかったよ
本当は僕だけをよんだんじゃなかったんだ

だれでもいいよ、ちょっとおいで

でも、お花の声がきこえたのは僕だけで
野原に出かけたのも僕だけで
ちょっとうれしくなったから、広い広い空を見た
みあげていたら、空はいろんなものとつながっていることに気がついた

ママが雑誌で見ていたはなやかなモデルさん
テレビで見たくじら
近所のお姉さんが歌ってた、僕の知らない言葉を使う国
散歩の途中で見たポスターにうつってた、きれいなホテル
こないだ遊びに来たノエルちゃん
ラジオからきこえてきた、悲しい戦争

みんなこの空の下のどこかにある
それってすごいことだ
僕は今日、野原に来ました
そして空を見て、だいはっけんをしました
どうしてそうなったのかというと
小さな白いお花がよんでいるような気がしたから
でも、お花の声がきこえたのは僕だけで
野原に出かけたのも僕だけで
これは僕だけのだいはっけんです
だから、お花はだれでもいいよっていったけど
僕だけとくべつなんだ
うれしくなってそのまま空をみあげていたら
ママの声が僕だけをちゃんとよんだから
お花に「ありがとう」っていって、おうちにかえった

ラッキー





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