はじめまして、きつねです。
TBありがとうございました。

>「小さなことからこつこつと」(byきよし師匠)
私もそんな感じで捕らえてましたよ。
この小説は主人公の地味さもツボな私です。 (2006年11月09日 21時39分06秒)

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2006年11月09日
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カテゴリ: 読書感想


扱うテーマは暗いものの、悪意を理解することのできない悲哀というより、理解していきたいという前向きな気持ちを感じる分、落ち込んだりすることなく読めました。

名もなき毒


どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。
財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。
そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。





やっぱり宮部さんは人間が好きなんだな、と思う。
人の持つ悪意を理解したいと思う、その姿勢が優しい。正直、宮部さんは人がよすぎると思わないでもないです。悪意っていうのは、理解したくてもそんな思いを簡単に飛び越えて、はるか彼方の地平に、何とも相容れることはなく、相容れることを拒絶して、ぽつんと存在するものだと思っているから。真に理解することはできない、できるのは、ただ想像するだけ、けれど、それすらも拒絶されてしまう……それは日々のニュースを見て、思うこと。

けれど、きっと、宮部さんはそういったことすべて承知の上で、理解したいと思い、理解しようとして、この小説を書いたんだろうとも思う。

この世に存在するどんな「毒」も、いつかは名前が分かる時がくる。名前が分かれば防ぐこともできる。
そんな思いが根底にあるからこそ、結果として、 「模倣犯」 「火車」 より軽めの印象を与えるけれど、前向きな小説に仕上がったんじゃないでしょうか。
ある意味、確信犯的小説。・・・と思うのは、穿ちすぎかな?

何の前知識もなく宮部さんの新刊だ♪というだけで購入したんですが、 「誰か」 の続編でした。
あいかわらず主人公が浮世離れしてるっていうか、達観してるっていうか、じじむさいって言うか、欲がないっていうか、ぬるいっていうか…(あれ?言い方がどんどん悪くなっていってるような)
こうゆう無味無臭の人物を主人公に持ってくることで、より一層「毒」(悪意)が際立ちます。その構図というか人物設定はやっぱり上手い。エキセントリックな性格(というと極端ですが)じゃないからこそ、読者は主人公と思いを共有するのが容易いんでしょう。

つくづく思うに、伏線をあちこちに張り巡らせて丁寧に回収していく様子は、もはや職人技です。
宮部さんの小説を読むと、いつも「小さなことからこつこつと」(byきよし師匠)という言葉を連想してしまうんですが(笑)、緻密な設計図のもと小説を書いてるというイメージがあります。
無駄な描写、無駄な事件、無駄な出来事、無駄な登場人物はひとつもない。
まあ、丁寧すぎて、ぶっ飛んだ印象を持つまでに至らないのが、重箱の隅をつついてほじくり出した欠点と言えば欠点かもしれません。

いろいろ、風のうわさで重い小説と聞いてはいましたが、そうでもなかった。
基本的に、宮部さんの作品にはいい人しか出ません。
悪い人も、読者の理解を完全に拒絶するようなタイプはいない。

根底に在るのは、そう、 人間賛歌

舞城王太郎作品を読んでも強く感じますが、表現方法が天と地ほども違います。原田いずみだけじゃなく、 外立くんという青年 を登場させたことに端的に現れてると思うんですが、宮部さんのはとことん優しい。

ただ、そこがいいとこでもありますが、ちょっと物足りないって面もあったりします。
きれいにまとまりすぎってのもありますが、原田いずみの毒気は、丁寧に生い立ちが描かれたことで、逆にそこまで怖いとは思わなかったし。同じような人格障害を持つ人物を扱った小説、例えば東直己の 畝原シリーズ なんかと比べると、随分大人しい印象した。(まあ、これも作者の底意地の悪さの差かもしれません(笑))

宮部さんの描く、理解を拒絶する程の圧倒的な悪の奔流というのも読んでみたいですが、それを求めるなら他の人の本を読めってことなのかもしれない。


ともかく、面白いことに間違いはないです。
一気に読む気はなかったのに、一気に読んじゃいました。おかげで寝不足です。
でも、寝不足になるほど夢中になれる本を読める幸せも確かにあるってことで♪


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最終更新日  2009年07月14日 21時48分28秒
コメント(12) | コメントを書く


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こんばんは  
きつね さん

こちらもこんばんは  
honey さん
宮部さん、おもしろいですよね。
「伏線をあちこちに張り巡らせて丁寧に回収していく様子は、もはや職人技」
にまったく同感です。
主人公がじじむさいというのも笑いました。 (2006年11月09日 21時39分55秒)

どうもw  
緋燈一稀  さん
僕も読みました。
事件そのものは何だ-って感じでしたけど、内容(特に主人公と探偵のやりとり)が興味深いものがありました。
僕が1番好きなのは模倣犯ですけどww
因みにこのシリーズ、また続編が出るらしいですねぇ。次回作も楽しみに待ってます。 (2006年11月09日 22時20分15秒)

Re:こんばんは(11/09)  
きつねさん、こんにちは!
宮部さんの作品は、どれを読んでも思うんですけど、ほんと上手いです。
新聞連載だったそうですが、贅沢な連載だったんでしょうね。
シリーズ化しそうな終わり方なので、次回作が楽しみです。
(2006年11月10日 06時04分12秒)

Re:こちらもこんばんは(11/09)  
honeyさん、こんにちは♪
>宮部さん、おもしろいですよね。
ほとんど読んでるはずですけど、つくづく外れのない作家さん。安心して読めますよね。

>主人公がじじむさいというのも笑いました。
あんなちっちゃいお子さんがいるんだから、まだ若いはずとは思うんですけど、ちょっと落ち着きすぎてますよねえ(笑)
(2006年11月10日 06時08分26秒)

Re:どうもw(11/09)  
緋燈一稀さん、こんにちは♪

結構、秋山さんのキャラがお気に入りです。
秋山さん主人公のミステリ(サスペンスでもいいな)も読んで見たい♪

>因みにこのシリーズ、また続編が出るらしいですねぇ。次回作も楽しみに待ってます。
あ、そうなんですか!うーむ、ブレイブ・ストーリーの続編とどっちが先に出るんだろう…

ちなみに、私が一番好きなのは、「火車」かなあ…いやいや「ぼんくら」も捨てがたい……
どれも好きなので、一番って決め辛いです♪
(2006年11月10日 06時10分52秒)

Re:「名もなき毒」宮部みゆき(11/09)  
ぷちてん525  さん
TBありがとうございました。

人間が持つ悪の部分、悪意という感情を見せてくれますね。
でも、その見せ方がやはりやさしい。
人間を愛しているんだと思いますよね。

今回の主人公はほんと、まだ若いと思うのにじじむさかったですねえ(笑)

>こうゆう無味無臭の人物を主人公に持ってくることで、より一層「毒」(悪意)が際立ちます。

そうなんですねえ、納得です。

もっとインパクトのあるものを期待したせいで、少々物足りない感もありましたけど、宮部さんらしさは十分に感じる事ができました。
(2006年11月10日 09時12分04秒)

こんばんは!  
エビノート さん
>宮部さんは人間が好きなんだな
という意見になるほど~と頷いてしまいました。
確かにとことん嫌な人間ってあまり出てこないですよね。
じじむさい(笑)杉村が次はどんな事件に巻き込まれてしまうのか、次回作も楽しみですね。
(2006年11月10日 22時26分51秒)

Re[1]:「名もなき毒」宮部みゆき(11/09)  
ぷちてん525さん、こんばんは♪

宮部さんの作品は、どれも前向きですよね。
うん、ベタだけど「愛」を感じますw

>もっとインパクトのあるものを期待したせいで、少々物足りない感もありましたけど、宮部さんらしさは十分に感じる事ができました。
悪が悪に徹しきれないところに、インパクトのなさがあるんじゃないかと思ったりもして、その点では、「模倣犯」とかと比べると、確かに物足りなかったです。それでも面白いんですから、なんだかずるい!(笑)
(2006年11月11日 01時13分27秒)

Re:こんばんは!(11/09)  
エビノートさん、こんばんは♪

>確かにとことん嫌な人間ってあまり出てこないですよね。
それが、宮部さんのいいとこでもあり、翻って、物足りないとこかもしれないです。
ただ、そこが宮部さんのいいとこだとも思いますが……

>じじむさい(笑)杉村が次はどんな事件に巻き込まれてしまうのか、次回作も楽しみですね。
次回作もありありな終わり方でしたもんね♪
さてさて、次はブレイブ・ストーリーの続編かこのシリーズの続編か、どっちがくるんでしょ?
どっちが来てもいいので、あまり待たせないでもらいたいものです。
(2006年11月11日 01時15分31秒)

TBさせていただきました  
タウム さん
久々の宮部ワールド。
ちょっと長かったですけど、堪能致しました。 (2007年03月17日 14時16分54秒)

Re:TBさせていただきました(11/09)  
タウムさん、TBありがとうございました!

宮部さんならでは!という優しさの詰まったミステリでした。
私も堪能させていただきましたが、うん、確かに長かったかも。

(2007年03月17日 18時07分26秒)

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