雫の水音

空の軌跡～序章～その２

２人は一回のリビングに
食卓を囲んで
朝食を食べた。

「はぁ～あ。
お腹いっぱいになっちゃった。」
満足そうにエステルはお腹を叩いた

「朝からよく食べるな」
ヨシュアは呆れた顔をした

「いいじゃん。食う子と寝る子はよく育つよ♪」
自慢するように言った

「そういえば。
今日はギルドで研修があるんだろ？」
唐突にカシウスが話しかけた

「うん
今までの、おさらいだけどね。」
ヨシュアは口を拭いていた

【遊撃士】ブレイザーと呼ばれる者の集まるギルド
遊撃士協会に入会するための試験が
今日、行われるのだ。
といっても、エステルとヨシュアは受かっても
準遊撃士と呼ばれる、見習いになるのだが

「それが終わったら、私たちも
父さんと同じ『遊撃士』よ！
もう子ども扱いさせないんだから。」

「フフン　まだまだ青いな。
研修に受かっても『準遊撃士』で見習いだ。
一人前になりたければ
早く《正遊撃士》になることだ。」
落ち着いた口調で２人に言った

「むむっ　上等じゃない。
スグに父さんなんか追い越してやるんだから！」
エステルはムキになっていた

「はっはっはっ
やれるもんならやってみろ。」
エステルをからかう様な笑いを立てた

「なに張り合ってるんだか……
エステル油断は禁物だよ
今日は最後に試験があるんだからね。」
二人の言い合いを傍観していた
ヨシュアが呆れた顔で会話に入ってきた。

「え゛っ？
試験って、ナニ？」
素の表情でエステルは覚えていない顔をしていた

「ま、まさか……
覚えてないとか言わないよね？
今までの事が　身についているか
確認するためのテストだよ。
合格できなかったら　補習って
シェラさんいってたじゃないか。」
荒み切った目でエステルを見ていた

「やっば…
完璧に忘れた……
そんなこと
シェラ姉がそんなこと言ってたような気も…
まーでも何とかなるか。」
エステルはそれほど気にしていない様子だ

「はぁ…君って子は
ノンキというか、そそっかしいというか。」

「まったくもって、嘆かわしい…
この楽天的な性格は誰に似たもんだろうか。」

２人ともエステルの楽天ぶりに呆れ果てている様子だ

「し、失礼ね～
父さんほどじゃないってば！」
すかさずエステルは反論した

「まったく似た者、父娘だよ。
まぁいいや、そろそろ町に行こうか。」
そういうと、２人は席を立ち上がり玄関まで歩いていった。
そして、エステルが夕食の用意のために
注文を聞いて、町に出発した

～ロレント～
町は、朝の涼しさに包まれ
子供たちが追いかけっこをして遊んでいた

ロレント支部のギルドは町を入ってすぐの所にあり
２人は、中に入った

「あら、おはよう
エステル、ヨシュア。」
ギルドの中は、入り口に掲示板があり
その奥のカウンターで仕事をしていた女性が
声をかけた。
女性は、金髪で質素な雰囲気を醸し出している

「アイナさん、おはよう。」
エステルは元気よく返事をした

「おはようございます。」
ヨシュアも挨拶をし
カウンターに近づいた

「シェラ姉はもう来てる？」
エステルはアイナに聞いた

「えぇ、２階にいるわよ。
頑張ってきてね。」
アイナは２人に応援の言葉をかけた

「ありがとう。」
２人はそういい、シェラザードのいる２階へとあがった

銀髪で長髪の女性で肌の露出が多めな服装をキレイに着飾った女性が
テーブルの上にタロットを広げて座っていた

「『星』と『吊り人』…
『隠者』と『魔術師』……
そして逆位置の『運命の輪』…
これは難しいわね
どう読み解いたらいいのか…」
シェラザードは得意なはずのタロットに悩んでいた

その時、階段の下から元気な声が聞こえた
「シェラ姉、おっはよー！」

シェラザードは手を止めた

「あら、エステル、ヨシュア
今日はめずらしく来るのが早いわね。」

「もちのロンよ！
今日は最後の研修なんだから。」
エステルは手を胸にドンっとあてた

「はぁ…
いつも、意気込みだけはいいんだけど。」
シェラザードは手を顔に当ててため息をついた

「ま、その心意気に応えて
今日のまとめは厳しく行くからね。
覚悟しておきなさい。」
うっすらと微笑んでいた

「え～、そんなぁ」
エステルは愕然とした

「お・だ・ま・り
ちゃんと勉強してたなら簡単なはずよ。」

「えーん、ヨシュア
シェラ姉がいじめるよぉ～。」

「大丈夫ですよ。シェラさん。
エステルは勉強が嫌いで
予復習も滅多にやらなくて
ついでに無闇でお人好しで
余計なお節介が大好きだけど…
カンの良さはピカイチだから
オーブメントも実戦で覚えます。」
ヨシュアは真面目な顔で言った

「ちょっとヨシュア
フォローになってないんだけど…」
エステルはブスッっとした顔になった

「心外だなぁ…
エステルの美点を素直に言っただけなんだけど。」
ヨシュアは黒い笑みを湛えていた

「まったくもう…
そういえば、シェラ姉はタロットで何を
占ってたの？」
エステルはシェラザードの目の前にあるタロットに
視線を移した

「あぁ、これね。
近い将来に起こる事を
漠然と占ってみたんだけど…
読み取れなかったわ。」

「へぇ、読み取れないこともあるんですか？」

「あまりに意味深な形だと
解釈が難しくなるの…
そんな事より
最後の研修をはじめるわよ。」

そういって、シェラザードは
七曜石　セプチウムを加工した結晶回路　クォーツをセットすることで
さまざまな現象を引き起こす《導力器》オーブメントの説明や
簡単な質問を
２人に答えてもらったり…
といっても答える方はヨシュアだったのだが

そして、オーブメントの工房に場所を移した
オーブメントの工房とは
主に《戦術オーブメント》と呼ばれる
魔獣が落とすセピスと呼ばれる
七曜石の欠片を加工しクォーツにする場所だ
クォーツは、オーブメントにセットする事で
《導力》により
魔法（アーツ）や身体能力を高めることができる
オーブメントは個人に適するように作られている

その説明を一通り終えたころ

「さて、そろそろ研修も終わりね
さぁて、お待ちかねの認定試験ね。」

「し、試験って？」
エステルは驚いた顔をしていた

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