可愛さMAX
可愛さＭＡＸ
「ねえ、景吾ー」
「何だよ」
景吾は、本から目も上げずに答える。
せっかく景吾の部屋で２人っきりなのに！
私より本が大事！？
どうなのよソレ！
「ちょっと景吾」
「だから何だよ！」
お、こっち向いた。
睨んでるけど。
「私と本とどっちが可愛い？」
可愛い？
本ＶＳ湊で？
大事とかじゃなくて？
跡部は、心の中で吹き出した。
表面上は冷ややかに答える。
「本」
なんと！
湊クリティカルダメージ！！！
そんなこっぱ難しそうな本の方が、
このプリティセクスィ湊ちゃんより可愛いと！？
「表紙が？中身が？」
信じてるぜこいつ！！！
表紙と中身と湊と、
どれが一番可愛いって？
跡部は心の中で声に出して笑いながら、
表面上は神妙に答える。
「あとがき」
なんと！
湊ちゃんダメージマックス、瀕死状態。
あとがきってそんなに可愛いもんなの！？
このプリティセクスィ湊ちゃんより可愛いと！？
私は、近くにあった本を頭にのせて聞いてみた。
「こんな感じの私と、そっちの本のあとがきとどっちが可愛い？」
ちらりと視線をそっちに移すと、
湊が真剣な表情で、頭に推理小説を乗せていた。
「ぶっ・・・・」
吹き出しかけた笑いを、かなりの気合でとめる。
俺様は何様だ？
クールビューティな跡部様じゃねえか！
湊の前で大爆笑するわけにはいかねえ！！！
心の中では、地面を叩いて笑い転げながらギブギブ言っていたが。
跡部は無理やり無表情を保って答える。
「こっちの本」
なんと！！！！（泣）
ウィズ本も負けちゃうの？
落胆した湊の頭を、
非常事態宣言が駆け巡っていた。
私は何様よ？
そうよ、跡部の彼女様！！！
負けるわけにはいかないわ！！
制服のボタンを上から３個開けて、と。
ウルウル目の上目遣いも忘れずに。
乳寄せて。
「これでも・・・ダメ？」
「ぶっ！！！！！！！」
湊を見た跡部は、
笑いを吹き出したのではない。
吹いたものは、
鼻血。
予想してなかった展開に、
何気に純情な跡部の血液が先に反応してしまった。
慌てて本を投げ出し、近くのティッシュを数枚取って鼻を押さえる。
「てめっ、なんて格好してるんだよ！！」
おお！
本を捨てた！
「あとがきより可愛い？」
駄目押しで聞く湊。
「あとがきより可愛い？」
もう、半分自棄で跡部は叫んだ。
「可愛いに決まってんじゃねえか！！！」
いい格好しようと思ったのに！
さっき素直に可愛いって言っておけば良かった！！
「嬉しい！！景吾大好き！！！」
湊が抱きついてくる。
柔らかい湊を、片手で抱きとめて。（片手は鼻を押さえたままだった。）
「お前、もうちょっと自信持てよ。お前が一番可愛いに決まってんだろ！？」
クールビューティな俺様、グッバイ。
こうなったら、こいつには素直に接するしかねえな。
鼻血を見ても、別に引いてねえし。
もう少し、格好よくありたかったけど。
しょうがねえか。
可愛いお前には敵はいねえよ。
心の中で呟きながら、跡部は湊を抱き寄せる腕にそっと力を込めた。
この人の彼女であることは、多大な自信を要求する。
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