れいんぼータウン

れいんぼータウン

願い




「景吾。今日、七夕でしょ?何かお願いするの?」

「あぁ?七夕?」

「そうそう。七夕。しないの?」

「お前はするのかよ?」

「するよ!」

「なんてお願いするんだよ。」

「えぇっとね、景吾とずーっと一緒に居られますように!って。ダメ?」

「いや。」

「景吾はしないの?」

「してほしいか?」

「うん!」

「そうか。」

「してくれる?」

「分かった。」

「やった!なんてするの?」

「湊がうちの嫁に来るように。」

「えっ・・・・。」
「いやか?」

「ううん!ましてや、嬉しい・・・。」

「楽しみにしてろよ?」

「うん!」

学校に居る間はすごい幸せな時間が続いた・・・。
だけど・・・。
幸せな時間は、帰り道を歩いているときに終わった・・・。

「景吾。あそこに、笹が飾ってあるよ!短冊飾ってこようよ!」

「わかったから、そんなに走るな。こけるぞ。」

「分かってるっ「どーん」」

なにか、ぶつかるような鈍い音がした・・・。
あたりには、人だかりができていて、湊の姿が見えない・・・。

「湊!!!」
俺は、全力で走った。
人を掻き分けて、湊のところに、駆け寄った。

「あっ、景吾・・・。」

「湊。だから、走るなっていったのに・・・。」

「御免なさい・・。」

そして、御免なさいの一言で、湊は意識を失った・・・。
でも、まだ、息はしている・・・。
まだ、助かるかもしれない・・・。
「救急隊のものですが。」

「お願いします!湊を助けてください。」

「分かりました!最善のことを尽くして頑張りますので、ついてきてください。」

「はい。」

病院についてから、オペ室の電気がついて、もうかれこれ、
3時間ほど経っただろうか・・・。
もう、時間の感覚が無い・・・。
頬には、涙の跡があり、目は充血して赤い状態・・・。

「患者さんの御知り合いですか?」

「はい。彼氏です・・・。」

「残念ながら・・・。」

俺は、床に座り込んだ・・。
最後まで聞かずに・・・。

「最後まで聞いてください・・・。
彼女は、生きています、けれど、植物状態に陥っていて、
意識は一生戻りません・・・。」

「そんな・・・。」

「人工呼吸器を外しますか?」

「待ってください・・。彼女が、湊が生きているうちに、言いたいことがあるんです。」

「分かりました。」

集中治療室に案内された・・・。
そこには、愛する、湊の姿・・・。
いつも、笑ってるのに、今は、無表情・・・。
いつも、頬を染めてるのに、今は、青白い・・・。
いつも、手は暖かいのに今は、冷たい・・・。

「湊・・・。七夕に、俺とずっと一緒に居たいってお願いするんだろ?」

話しかけても、返事は返ってこない・・・。

「植物状態に陥ったら、嫁にもらえないだろ?」

いつも、話しかけたら、笑って返事をするのに、今は人工呼吸器の、機械音しか聞こえない・・・。
俺は、こんな音が聞きたいんじゃない・・・。
湊の笑い声と、湊の声が聞きたいんだ。

「湊・・・。すいません。お願いがあるんです。」

「なんですか?」

「おれが、呼吸器止めたいんです。」

「いいですよ。」

その医者は、ここを押してくださいと、指導した。

「湊・・・。じゃぁな・・・。」

俺は、最後に、呼吸器を外して、湊の唇の最後のキスをして、
スイッチを切った・・・。
すると、機械音は止み、湊の命は無くなった・・・。

俺は、最後に湊の体を優しく抱きしめた・・・。
ごめんな、湊・・・。


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