NO-NAMEの隠れ家

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宮本浩次

作品レビュー

1stアルバム
『奇麗になりたい』
(1996.4.21)

知っている人は知っていると思うけど、シンガーソングライターの宮本浩次(みやもとこうじ)。
1996年にデビュー。以後、4枚のオリジナルアルバム、2枚のライブ盤と10枚のシングルをリリースしています。新曲のほうは2001年以来ご無沙汰なんだけど…。
ちなみに、よく言われるのが、エレカシことエレファントカシマシのヴォーカルは宮本浩次で「みやもとひろじ」さん。こちらは「こうじ」さんですからね、ご注意を。
この人に関しては、その名前の話題と、あとは、やたら長いタイトルの曲があるっていうこと(だけ)が結構有名だったりしますね。

衝動買いで手にした1stアルバム、聴いてみました。
そしたら、なるほど、う~む…(笑)。
絶妙な自己陶酔が、独自の世界観を作り上げています。及川ミッチーとか、あのへんまではいかないんだけれども、そのナルシチズムが逆にユーモア溢れるキャラとして愛らしく感じられるような、そうでないような(笑)。

1曲目の『だんだん』。これがいきなり、宮本さんのナルシチズムが溢れ出ている、彼の世界観としか言いようのないナンバーだと思いましたね。サビのフレーズでキュッとファルセットになるあたりとかね、もう、こりゃ、わかってやってるんだろうなぁと(笑)。「この夏一番の海」というフレーズ、なんかイイ!
そして、例の長~いタイトルのデビュー作『タイトでキュートな(以下略)』は、メロディーの縦横無尽ぶりが印象的なロックナンバー。
続く『Pon Pon Pon』は、肩の力が抜けるようなふわふわした歌唱のナンバー。
革命的(?)なシングル『タイト(以下略)』を挟みながらも、その前後の楽曲が織り成す不思議な浮遊感のせいか、前半はどこか落ち着いたムードで進み、地味な作品なのかと思わせるのですが、2ndシングルとなった4曲目の『九月の雨』がキラーチューン!。フラメンコ風のギターをバックに恋人同士の倦怠期を歌う。「次のクリスマスなんてきっと会えないだろう」なんて悲しすぎます。しかも救いも自らの落胆もなしに、ただひたすらすれ違いぶりだけを描くのが、なんとも言えず。どう思えばいいのか。しかしながら、テンポ感は見事。
この曲を境にアルバムのトーンも元気になっていく印象で、ポップな『A~ha under the moon』が続きます。3rdシングルにカットされたこの曲は、都会的なサビまでの流れをもちながら、サビに向かっていくにつれて、歌詞のスケールが縮小していくような、なんとも不思議な感覚になってくる迷曲。
更に、流麗なピアノをバックにした『冷たいアイスティー』に続きますが、この曲はもっと短くまとめてもよかったかも。2コーラス目まであるとダレるかなという気もしました。
さらにダンサブルな『ボルサリーノ』、シャッフルビートの『いつも二人で』と来て、タイトルナンバー『キレイになりたい』。マシンガンのようなヴォーカルが畳み掛けるのには笑いました。
最後はスタンダードな『八日続きのロカビリー』で締めるという一枚。

曲調の多様さはなかなかのものだし、それに加えて、彼らしい絶妙なユーモア感覚と自己陶酔のバランスが面白いです。
人を笑わせるための自己陶酔と、本気の自己陶酔が上手いことシーソーに乗っているような。いや、もしかしたら後者も計算済みで作り上げたかもしれないんですけどね。それだったら、宮本浩次という男、かなりの奴だ(笑)。
もうキャラクターに関しては基盤が出来上がっているような気がしますね。あとは楽曲1つ1つの出来の問題。
歌唱の面ではアップテンポの曲で息切れが目に付くところがあったし、1曲1曲の印象も更に突き詰められたものになっていけば、必然的にアルバム全体の印象も強まるでしょう。

1.だんだん ★★☆
2.タイトでキュートなヒップがシュールなジョークとムードでテレフォンナンバー ★★★
3.Pon Pon Pon ★★☆
4.九月の雨 ★★★☆
5.A~ha under the moon ★★★
6.冷たいアイスティー ★★★☆
7.ボレサリーノ ★★★
8.いつも二人で ★★
9.キレイになりたい ★★★
10.八日続きのロカビリー ★★★

総合 ★★☆

(記:2006.3.12)


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