March 25, 2015
XML
カテゴリ: 未来社会の構造
7.不良長寿の社会の姿


寿命があることが前提の社会・経済システム、家族形態、人生は、不老長寿の社会ではその前提が異なってくるので、根本的に異なったものとならざるを得ない。
(1)地球の管理
人類が社会生活を持続させるには、有限な地球の資源や環境を保全することが必須であることはいうまでもないが、この資源や環境を与件とした人口規模の管理も不可欠になる。このため、前述のように、宇宙船地球号の乗組員の数に定員を設け、厳密に定員管理を行うことになる。
当然、子供の誕生は人が死んだ場合とセットになる。誰の遺伝子をもつ子供を誕生させるかが問題になるが、このような重要な問題の決定権を特定の組織や人間に与えるのは難しいであろうから、特別な問題(遺伝子不良など)がない限り、やはり前述のように死んだ人の意志(遺言)に基づいて、新しい命の作成方法(卵子と精子の特定、IPS細胞の利用など)を決定することになるだろう。
(2)家族の形態
人口に占める子供の割合は圧倒的に小さくなるので、夫婦には子供がいないのが通常の姿になる。それ以前に家族というものが成立しなくなる。夫婦と子供という家族形態は無くなる。更に、夫婦という形態さえなくなるだろう。かすがいとなる子供はいない。S・E・Xは男女の愛の確認行為と快楽のためだけに行われる。そうなったとき、そもそも結婚という形式は必要なくなる。
好きな男女がカップルをつくり、2人の合意に基づいて同棲したければすれば良いし、飽きがきたら別れれば良い。カップルでもトリプルでも問題が起きなければかまわない。現在でも子育てを終えた中年ともなると、倦怠期が訪れるのが一般的であるので、人生が何百年になるか分からないのに、また若い肉体をいつまでも保持できるのであればなおさら生涯伴侶を変えずにいるなんてことは不自然に思える。結婚制度がなくなり、相手を時々変えるような同棲生活やセ・フ・レとの付き合いが一般的になるのではなかろうか。
(3)子供の養育
生まれた子供に両親はいない。いても片親だけになる。従って、誕生した子供が夫婦の下で成長するというパターンはありえない。子供の養育はその子供の誕生のきっかけになった人の遺言によって指定された人が行うか、養育施設でその筋のプロが行うことになるのではなかろうか。人にとって子育ては、めったにない不慣れなことになるだろうから、おそらく後者になると思う。
子供にとって希に親はいても片親だけになり、しかも育ての親ではない。ということは子供にとって親という概念が消失することになる。子供の養育も教育も、今でいう宿舎(子供養育所)暮らしで行われるようなことになる。子供にとっての家は宿舎以外にない。このため血縁関係にあるものがいれば、時々訪問して様子を見に来るということになるだろうか。
いずれにしても世の中は何百歳もの若者ばかりになり、子供は圧倒的少数になるので、極めて貴重な存在になる。
(4)愛玩動物

(5)教育機関
現在のような幼稚園・小学校・中学校・高等学校・大学といった教育システムも様変わりする。子供の数が少ないわけだから、幼稚園から中学校レベルまでの教育施設は圧倒的に少なくなり、特定の施設で行われることになる。高校以降の高等教育については様々な教育機関が整った姿になるであろう。教育機関の殆どは成人のためのものになる。
(6)男女平等
男女平等などはあたりまえのことだといわれそうであるが、現在でも実質的な女性差別は様々存在する。企業の多くが、実体は女性差別を行っていて、言い逃れできる理由を用意しているにすぎない。女性が企業などで差別される原因は出産と子育てのハンディにある。不老長寿の社会では、女性がこれらから解放されるので、実質的な男女平等が実現することになる。
(7)職業
人生は延々と続くことになるわけだから、人生を何度でもやり直せることになる。寿命が延びたり老化したりしないのであれば、人生観や世界観も変わる筈である。「過去を悔いても仕方がない、時は戻らないのだから」なんてことは無くなる。
やり直したい過去があれば、何度でもやり直すことができるようになる。科学者としての人生に飽きたら、好きな音楽で身を立てるためゼロから音楽家を目指して修行することだってできる。時間はたっぷりあるのだから、人生設計をせせこましく立てずに、ゆったりとしたものになるのではないか。
終身雇用などというものがなくなり、企業も個人も期間での雇用契約を結ぶようになる。
(8)社会保障制度
不良長寿の社会は、ごく少数の幼児・年少者と身体障害者を除けば、見た目に健康な若者が圧倒的多数を占める社会になっていて、年齢構成のピラミッドなどなくっている。
肉体的に若いままでいるということは活動し続ける(働き続ける)ことができるということなので、年金問題など起こらない。幼児・年少者と身体障害者のための社会保障制度は必要である。医療保険や雇用保険のような制度に関しては、不老長寿の社会では医療費が無料化されていたり、ベーシックインカムのような配当支給システムが導入されていたりするかもしれない。

8.国家と経済システム

温室効果ガスの削減、原子力発電所の廃棄などが進むどころか、促進されているような状況で、地球規模の資源・環境管理や人口増加の抑制策に関する世界的合意などできるものであろうか?
端的な例として、ナチスに戦車、オーム真理教にサリン、アルカイーダに自動小銃を与えたらどうなるか明らかなように、未熟な社会体制や拙い社会制度に中に、極めて強力な近代兵器や化学薬品がもちこまれた場合に一体どうなるかと同じことである。近代科学技術はその使用を誤らない経済システムや政治制度(人間的な社会システム)に先行するようなことがあれば災いをもたらすことになるであろう。災いをもたらすのではなく、災いの元凶になるといった方がよいかもしれない。子供に危険な玩具を与えてはいけない。現在の西欧諸国はナチス、オーム、アルカイーダほど未熟ではないと考える人もいるかと思うが、数多の動物種を絶滅の危機に陥れ、地球の資源を荒廃させ、環境を修復できないまでに改変してきたのは日本を含む経済先進国である。
これまでのトレンドに従うならば、発展途上国で人口増加が続くだけでなく、西欧諸国でも不良長寿の薬などによって人口が減少から増加に転じるような事態になる。
地球の居住可能人口を増やすための様々な開発が行われる一方で、温室効果ガスの国別削減目標、排出量の上限設定と同じように、人口についても削減目標や上限設定を巡って、各国の利害打算が飛び交うことになりかねない。前述のように、資源を巡る分捕りあいの国境紛争・戦争さえ勃発するかもしれない。


参考資料
NHKスペシャル:『NEXT WORLD 私たちの未来』
『長生きが地球を滅ぼす』
『人類はこの危機をいかに克服するか』
『未来からのメッセージ』





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  March 26, 2015 12:03:32 AM
コメントを書く
[未来社会の構造] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

コメント新着

廣田和夫@ Re:未来社会(08/20) 「不老長寿の社会」については、以前下記…

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: