そうだ坊主になろう！～ヒロ伊藤流仏弟子修行

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2006年10月21日

『誤解された仏教』を読んで(1)

(4)

テーマ：自分らしい生き方・お仕事(38853)

カテゴリ：ヒロ伊藤流？仏弟子修行

宗教には二つのタイプがあります。

「救い」の宗教。パウロのキリスト教やユダヤ教、イスラム教などの
一神教がこれに当たります。
阿弥陀仏のみを信仰の対象とし、
ひたすら念仏することで極楽浄土に救い迎えるという阿弥陀の本願を信じて
救いを得ようとする浄土教系の仏教も
これに当たり、特に絶対他力を強調する浄土真宗ではこの傾向が強いようです。

もう一つは、日常的自我が本来の自己を自覚することで、
真実の自己を実現しようとする、「覚り」の宗教があります。
お釈迦様の根本仏教、中国の禅仏教がその典型です。
ユダヤ教主流派に対して、イエスは洗礼者ヨハネからヨルダン川に沈んで息を止め
死ぬ寸前まで我慢するという苦行にも似た洗礼を受け、
ユダヤの荒れ野の端にある現在「誘惑の山」の呼ばれる場所で４０日間の断食と瞑想をしたり、
弟子たちと洞窟に籠もり修行をしたという原始キリスト教にもこの傾向が見られます。

拙僧は、この二つのタイプに別れた仏教、
（１）お釈迦様の教えと禅
（２）浄土教系の阿弥陀仏信仰
との間の差異の大きさを考えるとき、これを同じ仏教と考えることに
我が国仏教史の経緯を考慮に入れてもなお、疑問を感じざるを得なかったのです。

「諸行無常」、「諸法無我」が仏教の根本教義、
大乗仏教でも「一切皆空」であるはずなのに、
浄土教では、久遠仏、永遠に変わらない仏を、自己の外に立てて、
その本願によって救われるとするのは、キリストを阿弥陀仏に置き換えただけではないか？
浄土経典がインドで編纂されたのが、１２使徒の一人トマスのキリスト教が伝わり
拡大した時期に一致するという歴史的な状況証拠と、
我が国で特に浄土真宗が拡大したのが戦国時代から
キリシタン禁教となった江戸時代初めにかけてのことであることなどを考えると
キリスト教と浄土真宗の同一性を思わずにはいられなかったのです。

誤解してほしくないのは、浄土教、浄土真宗を批判するという主旨ではありません。
拙僧も仏教に初めて触れたのは、家の宗教である法然さんの浄土宗であり、
今でも法然さんも阿弥陀様も大好きなのです。
一休禅師だって「死ぬときは南無阿弥陀仏だ」と言われていたのですからね。
それが大学に入って道元禅師の禅宗に触れ、お釈迦様の原始（根本）仏教や
原始キリスト教を知り、歳月を経て空海さんの密教に出逢い、
真言宗で出家得度したという宗教遍歴により、多様な宗派の教義に触れたことで
生じずっと持ち続けている、それは素朴な疑問にすぎないのです。

本日ご紹介する本『誤解された仏教』（講談社学術文庫）の著者、
秋月龍みん教授は、子供の頃はキリスト教カトリック、同プロテスタント、
親鸞教（浄土真宗）、その後鈴木大拙の禅という宗教遍歴を生きて、
禅者として生きると同時に、イエスの直弟子と思い、一人の親鸞教徒だと
記されている方です。これは拙僧の長年の疑問に答えてくれる本ではないか、
そう思って読み始めました。

著者は、次のように記しています。
私は、霊魂を認めない。あの世も信じない。輪廻転生も否定する。
三世の因果も信じない。葬式だの法事だのいう死者儀礼は本来の仏教とは関わりがなかった。
仏教は無神・無霊魂論なのだから、霊魂どころか、「神も仏もあるものか」などというような
仏も認めない。
私はひたすら「摩訶般若波羅蜜多（悟りの智慧の完成）は仏道の第一義なり」ということだけを
信じ、それだけを提唱する。

現代日本の仏教理解からすると、ほど遠いと思われる議論をしながら、
「救い」の宗教と「覚り」の宗教の間に、共通の基盤を見出していく著者に
拙僧の長年の疑問を解く答えを見いだすことができそうに思いました。

長くなりそうなので、今日はここまでにします。

合掌　観学院称徳