月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

第三章─青空とうろこ雲


「あ。綾羽君」
ぅ・・・早くも気付かれた・・・。
「やあ」
「買いに来たの?時空の剣」
「まぁね」
「そっか」
「君は?」
「ああ、私はこれ。『青空とうろこ雲』」
・・・青空?うろこ雲?何の事だ?内容がつかめない・・・。
「えっと・・・。ジャンルというか内容は?」
「んーと、恋愛・・・かなぁ?」
「・・・!?」
れ・・・恋愛!?あの春香が!?内気な感じで話し掛けにくかった春香が?
「へぇ・・・」
「?何々??この前まで内気だった子が恋愛なんて・・・!?とでも思ってそうな顔してるよ?」
「・・・ぅ」
「あれ?もしかして図星?」
大体当たってる・・・。彼女は心まで読めるのか?僕は焦った。恋愛小説を読んでるし思っていることを言い当てられるし・・・。これから一体どうなる事か・・・。
「じゃあそろそろ買って帰ることにするよ。早く読みたいしね」
「そっか。じゃあまた明日ね」
「また明日」
僕は取り合えずこの場から逃げ出したかった。だからそんなことを言って逃げた。そして僕はすぐに本を買って家に帰った。
その後も家で本を読みながら考え続けた。
あの子は一体なんなんだろう・・・。初め内気だったのは話し掛ける時に緊張していたんだろうか?・・・でもその後も少しは内気な感じだった。途中からは普通に話していたし・・・。明日は笑顔で話しかけてくるんじゃないだろうか・・・?もしかして彼女は僕に好意を・・・まさか・・・。まだそんなに話していないし・・・。じゃあ僕が彼女と同じく一人だったからだろうか?・・・よくわからない。深く考えるのはやめておこう。そろそろ寝ようかな。疲れているんだろう・・・多分。
そして僕は寝た。ぐっすり眠れた。23時45分だった。

翌朝、僕は彼女の事を考えながら登校していた。いつも通り、誰も「おはよう」とは言ってこな・・・
「おはよう」
「おは・・・え゙?」
僕は驚いた。今まで誰も言ってこなかったのに、一体誰が・・・?その声の主は、春香だった。まぁ、少しは解っていた気もするけど・・・。
「?どうかした?」
「あ・・・い、いや。ちょっと驚いただけ。」
「そっか」
「うん」
「・・・って、私『おはよう』っていっただけなんだけど?」
「だって今まで「おはよう」なんて言われた事無かったし」
あはは、と彼女は笑った。
「悲しいね、それ」
笑いながら、彼女は言った。
「君も一緒だろ?」
「うん」
やけに楽しそうに、彼女は言った。
「そんなに楽しそうに言うなよ」
「だって楽しいもん」
僕も、春香も笑った。


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