月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

第十七章-新たな友達-


「・・・風、気持ちいい」
「そーだよ!ここは眺めもよくて、風も気持ちいい、とってもいい場所なんだよ♪」
これも言っていなかったことだが、白雲学園は町から少しはずれたところにある高台に建てられているため、街を一望できる絶好のスポットになっている。高台とはいったものの、山の中腹のようなところなので、風も気持ちいい。私立学校のため、災害対策はしっかりしており、決して危険なわけではない。むしろ地上に建っているよりも安全といえる。流石私立。伊達に金を取っているわけではないようだ。
「とりあえず飯にしようか」
「そだね。小日向さんはお弁当?」
「・・・うん」
「へえ・・・自分で作ったのか?」
「・・・・・・お母さんは、いないから」
「あ・・・ごめん」
「・・・別に謝ることじゃない。人はいつか死ぬものだから」
「・・・・・・」
お母さんいないって、小日向さん、本当に昔なにがあったんだろう。いつか話してくれるかな・・・。
「へぇ~、これ、全部自分で作ったんだ・・・すごいなぁ」
春香が沈黙を無理やり破るように話はじめた。グッジョブ春香!
「お!うまそうな玉子焼き!」
「玉子焼き好きだねぇ・・・司は」
クスクスと笑いながら春香は玉子焼きを食べていた。ははは、とテレを隠すように僕も笑った。
「でもすごいな、こんなに料理がうまく作れて。将来絶対いいお嫁さんになるな、小日向さんは」
「・・・そんなことない。大体、私を好きになる人なんていない」
「もうっ!重いよ小日向さんは!小日向さんは綺麗だし、可愛いし!料理うまいし!もう完璧だよ?」
春香が褒め称えるのをみてるとすごくおかしくて、思わず僕は笑ってしまった。
「ちょっとつかさー!なに笑ってんのさ!」
「ごめ、っちょ・・・おかしっ・・・!おかしくて・・・っ」
まともにしゃべれないくらい爆笑していたようだ。
「もーっ!なんか恥ずかしいよ!」
春香は照れ隠しに僕の肩をぽかぽかと殴ってきた。二人のやり取りを見が小日向さんは少し笑ったように見えたが、まぁ気のせいだろう。自分が爆笑していたせいで多少錯覚を見るようだ。
いつか、小日向さんにも素で笑ってもらえるようにならなきゃな。今日からの目標にしよう。


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