とりとめのない独り言

公平

『公平』って、何だろう。

「人は生まれながらにして平等だ」というけれど、それは、「社会は
すべての人間を平等に扱うべきだ」ということを意味するだけであって、
１人１人の人間がすべての面で平等かつ公平に創られていることを意味
するわけではない。

“社会はいかなる時代においても、人の実力の発揮を妨げない。”

　　　　　　　　　　　　　　　　　　----- カーライル

しかし、実力の発揮に相当な困難と努力を伴う運命のもとにある人間と、
簡単に実力を発揮できる資質と環境を与えられている人間との間では、
『公平』のもつ意味が明らかに違う、と思う。

一昨日、アメリカの最高裁判所で、大学の入学審査の際に「人種」を
考慮に入れることを合憲だと認める判決があった。

判決は５対４の僅差だった。世論も賛成派と反対派で二分している。

これまで、ミシガン大学のロー・スクールでは、入学審査の際、一定の
有色人種の試験の点数に下駄を履かせて合格させる優遇政策を採用してきた。

例えば、100点を取った白人よりも、80点を取った有色人種を優先的に合格
させてしまうわけだ。

「それは不公平」と怒った白人不合格者が、訴訟を起こした。

判決は、「点数に下駄を履かせたり優先枠を作ったりすることは違憲。
しかし、明白でない形で『人種』を考慮に入れるのは、合憲」だとした。

つまり、ミシガン大学の今の審査方法のままだとダメだが、もう少し
控えめな形で人種を考慮に入れることは、OK ということだ。

至極、妥当な判決だと思う。

日系人も含めて、アメリカ社会で歴史的に有色人種が差別を受けてきた
ことは、明白な事実だ。

現在でも、その歴史の傷跡が生々しい形で存在することは、事実だ。

だから、差別を積極的に是正していくためには、何らかの『配慮』が必要だ。

しかし、だからと言ってやはり、行き過ぎたエコヒイキは、新たな差別と
不公平感を生むことになってしまうだけだと思う。

『有色人種優遇政策』賛成派の一人は、言う。

「ブッシュ２世だって、 親の七光り のために大学やビジネス界、
　政治界でたっぷり『優遇政策』の恩恵に預かってきたではないか。
　その審査のプロセスが、見えるか見えないかだけの違いだ。見えない
　優遇政策が OK なら、ミシガン大学のような 見える優遇政策 だって、
　OK のはずだ。陰でこそこそやるよりも、“正直が最善の策”という
　ではないか」

しかし、見えない優遇政策なら法律で禁止のしようがないが、見える
優遇政策は法律で禁止できる。訴訟で争うこともできる。

そこに、決定的な違いがある。

「幸福指数」 というものでも発明されない限り、ある人が社会において
それまでどんな不幸な境遇に育ったか、不当な差別を受けてきたか、
あるいは逆に、どんな不当な優遇などを受けてきたかなど、正確に
測ることはできない。

単に有色人種だからと言って、皆がみんな、白人よりも不幸な人生を
歩んできたとは限らない。

不公平な境遇でたくましく生きる白人も、数え切れないほどいる。

いくら大学に人種の多様性が必要だからといって、 人種のみ を基準にして
強引に優遇しても、不公正を増すだけだ。

出願書類や成績などを総合的に検討して、柔軟に審査していくのが今の
ところ可能なベストの手段なのだろう。

今回の判決に加わった裁判官のうち、唯一の黒人であるトーマス判事は言う。

「有色人種の優遇なんて、侮辱的だ。実力で結果を出した人の実績まで
　曇らせてしまうではないか。黒人に対して必要なのは、慈悲や哀れみ、
　同情ではない。必要なのは、正義と公正さだけだ。」

そのとおりだ、と思う。

“幸福とは、幸福を問題にしないときを言う。”

　　　　　　　　　　　----- 芥川龍之介

自由だ、平等だ、幸福だ、と議論している間は、この社会はまだまだ
真に自由でも平等でも幸福でもない、ということなのかもしれない。

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