マナー
今日こそ提出しないと給料の振込みが１か月遅れてしまうかも
しれないので、今日は 昼寝 はやめることにして、明るい間に
オフィスに行った。
今日の通勤読書： マルクス「経済学・哲学草稿」
人間の体の仕組みが、自分１人だけでは子孫を殖やすことが
できない仕組みになっているように、人間の本質である良心や愛、
理性、共同性といった概念も、自分１人だけでは成立し得ない
仕組みになっている。
ヘーゲルによれば、人間はその本質である愛や良心のために、
自己の時間やエネルギーを家族や共同体のために犠牲にする
（自己を否定する）ことによって、共同体はそれ以上のものを
個人に還元する。
その結果、１人１人の人間は、より高い人間性へと止揚する
ことができる。
しかし、近代の労使関係は、労働者が自己を犠牲にして労働に
身を捧げれば捧げるほど、社会から 疎外 されて人間の本質を
失わされてしまう仕組みになってしまっている。
つまり、労働者が自分や家族のために時間とエネルギーを犠牲に
すればするほど、社会は労働者ではなく資本家たちを潤す仕組み
になってしまっているのだ。
どんなに概念的な弁証法で粉飾しようとも、社会の下部構造が
「否定の否定」を許さないシステムになっている限り、奴隷的な
搾取に甘んじている労働者の解放はありえない。
・・・と、論が佳境に達したあたりで、ふと見上げると、目の前に
微笑ましい光景があった。
杖をつきながら乗り込んできた老人が目の前に来るなり、夢中で
話し込んでいた若者のうちの１人が、さっと立ち上がって席を
譲っていたのだ。
「あぁ・・だいじょうぶだから」と、ご老人。
「いえ、いいです。どうぞ」と、赤い顔で照れながら、吊革に
つかまって再び友達と話し始めた若者は、出川哲朗のような
髪型。（もちろん、本人は ベッカム のつもり）
次の駅で人が降りると、老人はそちらに席を移動し、若者はまた
友達の横に座って話し始めた。
その様子が、ごく自然だったので、心から感心してしまった。
僕は以前、通勤に東急田園都市線を使っていたが、引っ越してから
東急東横線を利用するようになり、最初の頃、乗客のあまりの
質の違い（マナーの悪さ）に、驚かされたものだった。
田園都市線では一度も見かけなかった携帯電話での通話が東横線では
日常的に行われている。
そんなだからなのかもしれないが、東横線は、常日頃、異常なまでに
車内アナウンスが多い。
「駆け込み乗車は大変危険です・・・」
「電車は揺れますので、吊革や手すりにおつかまりください」
「車内には優先席を設けてありますので、お年寄や体の不自由な
方に席をお譲りください」
「車内で不審者・不審物等を見かけましたら、駅係員または
乗務員までお知らせください」
「携帯電話は他のお客様のご迷惑になります。偶数号車では電源を
お切りください。奇数号車ではマナーモードにお切り替えの上、
通話はご遠慮ください」
・・・等々、毎日毎日、すでに何百回、同じことを聞かされているか
わからない。（しかも、時々、車掌の声が耳障りに大きい）
おそらくは、乗客のマナーが悪いという苦情に対し、会社として
「最大限の配慮をしています」というアピールなのだろうが。。。
しばしば、携帯電話で話す客よりアナウンスの方が、耳障りだ。
しかし、今日のちょっとした出来事には、心が和んだ。
優先席でなくとも、お年寄には席を譲って当然なのだ。
車両番号に関わらず、携帯電話で話すのはマナー違反なのだ。
本来の人間性は、「上」から押し付けられるものではなく、
個々人の心のうちから自然に湧き出るものである、と信じたい。
マルクス主義と東急東横線アナウンスのある意味での共通点は、
自然な人間性よりも、制度や規範によって社会を「上から」
正していこうとしてしまっているところにあると思う。
それでいて、「下」からの必然的な変化を期待しているかの
ように装っているところも、似ている。
“支配することは易しく、統治することは難しい。”
―― ゲーテ
オフィスに着いて、暗証番号式の鍵を開けると、今日は
非常ブザーの代わりに、女性スタッフの「カワイィー！」という
黄色い声で迎えられた。（キミタチは、女子高生か！？）
もちろん、 まんざらでもなかった が、後ろを振り返った途端、
急に声を潜めて、虎模様の嘲笑を始めるのは、やめてほしかった。。。
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