出産記録(うんじ)


横になっていると 日本の食べ物ばかり思い浮かんで来る。うどんにお茶漬けにお好み焼き、、、涙が出てくる。アッパは何か食べたいものないか?と聞いてくれるが、言っても食べられるわけでもない。仕方なく韓国のうどんを買って食べたが、やっぱり讃岐うどんが恋しい。

ある時、なぜかドリアが食べたくなって、アッパに言ってみた。
"ドリアが食べたいンだけど、、、”“ドリアって何だ?”
“ドリアって言うのはピラフにホワイトソースをかけて、、”“ピラフって何?”
、、、、アッパにドリアの話をした私が 間違っていた。アッパはキムチとテンジャンク(味噌汁)しか知らない純粋な田舎の人間なのである。
それでも テジョンまで行けばドリアらしきものに出会えるかも知れないと思い、二人で雨の降る中 探しに出かけた。ピザハットにあるかも と思い行ってみたが ない。あちこち歩き回って、やっとあるレストランに入ってドリアを注文した。しかしホワイトソースではなく、トマトソースがかかって出てきた。でも溶けるチーズものってるし、ありがたくいただきましょう。

つわりが終わっても、お腹がだんだん大きくなるにつれてしんどさが増して、早く月が満ちて産まれてくれないかと願っていた。運動をしないと難産になる!と聞いたので あちこち歩き回った。

そのせいか、予定日(5月8日)より12日も早く陣痛がきた。前の夜からシクシクとお腹が痛かったが、朝おしるしがあった。ちょうどその日は日曜日で 1番上のお兄さん夫婦も来ていた。お義姉さんが私のお腹に手をあてて“まだ子供が降りてきてないから 生まれるのはまだまだ先だ、運動して子供が降りてくるようにしなさい。”というので 部屋の中を何度も行ったり来たりした。

だんだん陣痛の間隔が短くなって、痛みも増してきた。でもお義姉さんは手を当てるたびにまだまだだという。10時を過ぎて、産婦人科のあるテジョンに行くことにした。病院の近くに2番目のお兄さんの家があるので、そこでしばらく待機。病院に連絡すると、“陣痛が5分間隔になったら 来なさい” とのこと。

ギリギリまで我慢して病院に、、12時頃だっただろうか?その時はもうあまりにも陣痛の痛みが激しくて、私はウーウーうなっていた。
それを見た先生が慌てて診察をすると すぐ上の待機室に上がるように言われ、看護婦さんに支えられながら階段を歩いて上った。上る途中も 強烈な陣痛がたびたびやってきては 立ち止まりながら、、、。
待機室で服を着替えて横になると、看護婦さんが手を入れて子供の頭を確認。そして“すぐに分娩台へ登るように”という指示。分娩台の上は、地獄を見るようだった。産みの苦しみは 産んでみないとわからない。

15時5分、うんじが産まれた。産まれるのは早かったが、何かの器具を使って引っ張り出したらしく、傷が深くて縫いあわせるのに時間がかかった。多分30分ぐらいかかっただろう。麻酔もなく縫うので普通だったら我慢できないだろうが、出産の痛みを通過した直後の為か 何とか我慢できる。うんじはその間に産湯につかって体重を測り(2800g)、アッパたちの待つ待機室へ連れられて行った。

やっと分娩台から降りた私は、フルマラソンを完走した直後のように 体の力を全部抜かれたような気がした。歩いて待機室に戻ると アッパやお義姉さん達が迎えてくれた。女の子だったので、アッパはとってもガッカリしたようだ。韓国では産まれるまで性別を教えてくれない。家系を継ぐ長子を尊ぶ為、女の子だと分ると堕ろしてしまう人が多いので、法律で禁じている。

はじめて見るうんじの顔は 我が子ながらぶさいくで、思わず笑ってしまった。まだ親になったという実感がない。
韓国では普通に出産すると、2泊3日で退院。早い人は1泊2日。私も次の日帰りたかったが、傷が深いので もう1泊のばすことにした。母子同室なので 子供の世話は自分でしなければならない(沐浴は看護婦さんがしてくれるが)。

夜中、うんじが泣くので起きようとしても、傷口が痛くてどうにも起きられない。うんじの声を聞きつけて 看護婦さんがやってきて ミルクを与えてくれた。
2泊する間にうんじは血液検査、かかとから血を採る検査、B型肝炎の予防注射をした。日本では 産まれてすぐの赤ちゃんに予防注射などしないだろうが、韓国ではあたりまえらしい。親の同意も得ずに すでにされていた。

退院。しばらくは病院の近くのお兄さんの家で養生することにした。お義姉さんがいろいろと面倒をみてくれた。私はとにかく傷が痛くて痛くて動くこともできず、
ふせっていた。母乳を出す為 ご飯とミヨックッ(ワカメの汁)、プルコギ(焼き肉)などを山盛りよそってくれる。産婦は1日4回ご飯を食べろと言う。有り難いがずっと横になっているのでお腹が空かない。おまけにひどい便秘になって苦しい。トイレで頑張っても傷が痛くて力が入らない。出産の痛みより便秘の苦しみの方が耐え難い。二度と子供は産むまい、と決心した。1時間ほどすったもんだして、2度目の出産を終えた。ハアー。




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