過去の彼




              素直な気持ちを伝えて

              想いが通じた彼


              優しくて あったかくて

              大事にしてくれた


              でも、

              裏切ったのは私の方。

              「ごめんね」って伝えたくても

              もう伝えられないよ


              でも、

              いつも思ってるから

              「ごめんなさい」




              私が想いを伝えて、真剣に答えてくれて、
              本当に大事にしてくれた人。
              それは16歳のときにバイト先で出会った
              二歳年上のTだった。

              特にかっこよくもなくて、
              背も低くて(私よりは大きかったけど)
              女の子が理想とする「いい男」には
              遠かったけれど、
              優しくて、いつも私を励ましてくれる。

              そしていつもどんな時も、
              私が欲しい言葉をくれる人だった。

              そんな彼に私は惹かれ、
              想いを告げたのだった。

              彼は嬉しそうに「よろしくね」と
              言ってくれて、
              私は踊り出したくなるほど嬉しかったのを覚えている。


              その頃から私は寮生活をやめ、
              実家から通うことになったのだが、
              彼の家は新宿近辺。
              しかも私が学校のときは彼はバイトをしていて、
              私がバイトに出ると、彼はバイトが終わってしまい
              会う時間が全く噛み合わない状況になってしまっていた。

              時々彼のバイトの休憩時間にちょうど私が行って
              二人で会えたりしたのだが、
              それもごくわずかな時間だけ。

              すごく寂しくて切ないけれど、
              彼のことが好きだったし、
              彼も会えない事で多少悩んではいたから、
              私から何か言ってプレッシャーになるようなことは避けていた。

              不満を出さないまま三ヶ月。

              三ヶ月の間には二人の合う時間を見つけて
              遊びに行ったり、二人共通の友達と飲みに行ったりしたけれど
              なんだかやっぱり心のどこかが埋まらなかった。

              「これが終わったら、またいつまで会えないんだろう」
              そんなことを思うとため息ばかりが出て、
              楽しいことに集中できなかったのだ。



              きっかけは親だった。
              私は当時、交友関係のことなどは
              親にも隠さず話そうとしていた。
              親に言っても、
              私の築いた関係を乱すようなことはしないと思ったからだ。

              でも、違った。
              母に言うとまず始めに質問攻めにあった。
              「どこの人なの?どういう風に出会ったの?
              学校はどこの人?ご家族はどんな方?」
              …正直うんざりだった。
              出会いやどこに住んでるかぐらいはいいが、
              学校や家族を聞くのに何の意味があるんだ?
              と、私も不満爆発だ。

              まぁ母は母なりに私を心配して聞いたのだろうが、
              それにしてもひどすぎた。

              それ以来、少しでも遅く帰ると、
              「またその人と遊んできたんでしょ!?
              いい加減にしなさいよ!?」
              と罵声を浴びせる始末。

              母の遅い時間は八時過ぎ。
              私は茨城から東京まで通っているのにもかかわらず
              当時の門限は七時だった。(ありえない!!!!)

              何もしていないのに有無を言わさずそれだった。
              しかもほぼ毎日。

              私は親に言った事を後悔した。
              ここまで精神的に追い詰められるなんて…
              そんなの考えもしなかったから。

              その頃から、私はTに連絡をすることをやめた。
              携帯で電話していても、常に煩い母がいたからだった。

              連絡して、もし話を聞かれでもしたら
              何を言われるか分からない。
              何よりも、もう彼の悪口を親の口から聞きたくなかった。


              連絡を途絶えてから一ヶ月。
              Tから連絡が何度か来たが、取る気にはなれなかった。 
              でも、いつか連絡しなきゃ…明日しよう、明日しよう
              と先延ばししているうちに、時間はどんどん経っていった。

              同じバイト先の友達には「もう連絡とってないし別れたよ」
              と言っていた。

              連絡しなきゃ。でも今更勇気が出ない。。。

              時間はどんどん経っていく。
              想いもどんどん焦っていった。



              でも、ある日それは終わった。

              バイト先の友達が「マヤはもうTと別れた気でいるよ」と
              言ってくれたのだ。
              やはり私は別れた気でいるのにTに言わないなんて
              可哀想だと思ったらしい。
              それは当たり前だ。私がいけないことをしたんだから。

              でも、、、なんだか拍子抜けした。
              もう連絡できないんだ。。。
              もう悩まなくていいんだ。

              でも、まだ会いたいと思っているのは何でだろう?

              なんだか胸にぽっかり大きな穴が開いた感じ。
              これは何て感情だろう?

              真っ白になりながらも私は笑顔だった。




              それからTとは一度も連絡を取っていない。
              それは当たり前。
              私がそうなって当たり前のことをしたんだから。

              でも、やっぱり今でも時々思い出しては
              胸が苦しくなる。
              ごめんなさいと、どれほど謝りたいだろう。

              でも今更、どんな顔して会えばいいのかわからないし、
              会ってもきっと、、、うまくはいかないだろう。

              あまりにも短い時間。
              それでも私はTを好きだった。
              それが事実だからこそ、
              私はこれからも何度も謝ろうと思う。

              どうかあなたも幸せになっていて…
              そう願う。

              自分勝手で最低な女だけれど、
              私は自分のした事の重さを感じて
              これからも歩くから。

              今でも時々会いたくなる彼。
              いつか会ったら、
              本当の「ごめんなさい」が言えるように、
              私は大人になるように努力する。


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