山口小夜の不思議遊戯

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2006年06月13日
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 空の静寂を切り裂き、ヘリが舞い降りてきたのは、それから十分もしないうちだった。
 「な、なに!?」
 「そうか・・・・医師団のやつら、ヘリも持ってたんだ。やるじゃねーか、ヤツらも」

 しかし。

 ドイツ調査隊が作りかけていたという、でこぼこの荒れ地を均したヘリポートもどきのポイントに強行着陸をすると、肩留めのバチスタ的白衣に身を固め、現れた青年は──。

 「・・・・うっ・・・・」
 豊の天敵であった。嫌味に端正な横顔、チタンフレームの眼鏡の奥の天性のサド眼。


 「おい・・・・なんで二次隊の医療チームにおまえが入ってんだ!?」(←国連の人選ミスとしか・・・・)
 「黙らっしゃい。ぼくの大事な大事な弟をこんな姿にしておいて」
 静は顔をしかめると、シリコン製手袋の手でビシバシ遼にチョップした。

 「ちょっとしたカンだったわけ。二、三日僻地でタダ働きすればサバンナ観光し放題って矢先に、サハラを渡る風の中にゆたの声を聞いたんだ──“たすけてしずさん”って。そんなこと“お願い”されれば、どこであろうがぼくは助けに行くさ。ルルドでも恐山でもマチュピチュでもネス湖でもナスカでも、崑崙山でも邪馬台国でも」(←この世以外も入ってる)
 新手の医者の到来に、涙も引っ込んでムッとするマキ。それにかまわず、静はアンプルを取り出して慣れた手つきで注射器に装着し、豊の腕をとって針を射す位置を確かめる。
 「うーん。相変わらずせくしいな静脈だよ・・・・ゆんゆん

 「なんとなくヤな予感がするんだが・・・・・・死ぬなよゆた」
 「外野はウルサイ」
 頭を抱えてしゃがみ込む遼を、静は氷点下の流し目で見下ろし、ついで視線を弟に戻してくると、弟にこの上もなく優しい声を出す。
 「豊、おまえはもうぼくの流儀に慣れたよね?」


 それから、助手たちにざっと事情を聞くと、静は有無を言わさず弟の身体を抱き上げてヘリに乗せる。
 「あ。止利(トリ:はるさんの相生名)はヘリの定員オーバーかもね。残ってもいいよ」
 「おまえのヒューマニズムって、やっぱ死んでるな・・・・」
 「じゃあね~」


 マキは肩をすくめてプレハブの中継施設に戻り、勝手知ったる様子で通信機を立ち上げた。






                     次回は本文の最終回前編●大団円●です。
                     けど、“カオス”と読んでください(笑)。


 本日の日記---------------------------------------------------

 ワールドカップについては百ほど言いたいこともありますが、皆さま今朝はいかがお過ごしでしょうか。
 実は私、トトカルチョに参加しています。なんっかはじめからビミョ~な予感がしてたんだけど・・・なんだろう、誰も血に飢えた男の顔をしていないというか(笑)。

 それはともかく、本日、「本当にあった怖いお話」の再開を予定しておりましたが、急きょ題目を 「本当にあった嬉しいお話」 に変更させていただきます。これもある意味ですごくすごく不思議な、そして私にとってはとても嬉しい偶然のお話です。実は先週の火曜日に起きた、出来たてのほやほやの出来事です。

 毎週火曜日にはよーちえんの帰りに娘の英語のお教室があり、英国人の老夫婦のご家庭に送り迎えをしているのですが、ちょうど先週は私の方に用事があり、私の母にその役割を託したのです。一度行ったことのある場所ですし、自宅マンションからほど近いところにあるお屋敷なので、母も充分承知しています。念のために地図と電話番号、携帯も持ってもらってふたりを送り出しました。

 ところが、祖母と孫娘で空き地に入ってお花を摘んだりしているうちに、20分も前に出たのに、気づいた時には開始の時間に20分も遅れてしまったそうなのです。焦った母は孫娘の手を引き、違う角を曲がってしまいました。すると、そこへちょうど通りかかった中年の男性が──母はその人物にどうしても見覚えのある感じがしたと言うのです。けれどもそれは、こんな場所ではほとんど万に一つも出会う可能性のない人物の顔でした。
 すなわち、もう何十年も会っていない、母にとっての従兄弟──つまり、自分の亡き母の妹の息子だったのです。けれども、ゼッタイに「彼だ!」と確信した母は、「○○さん」「△△さん」と姓と名といろいろ呼んでみたそうです。男性は振り向きません。母もそういうわけで急いでいたこともあり、それ以上は追いかけなかったそうです。

 「げーっ! そんなに遅れたの~!」と報告を受けた私がアタマ抱えたその夜、横浜の実家にひとり戻った母に、どこからか電話がかかってきました。
 「もしもし、○○ですが、山口さんのお宅でしょうか・・・・」
 先ほど母が見かけたという、かの男性です。この従兄弟いわく、「お姉さんかとは思っていたのですが、まさかまさかこんな場所で会うはずもないし、小さなお子さんを連れていたのでお孫さんがいるともまったく思い当たらず、先を急いでいたこともあってご挨拶もしませんで・・・」ということだったのです。

 お互いに「お元気ですか」という話になり、母は娘である私の近況を含めておしゃべりに花を咲かせたそうです。そして、その日にそこらへんをウロウロしていたのは、本当にお互いに偶然で、従兄弟の方は仕事で必要な書類を関係者のお宅に取りに上がっていたということで・・・・。
 そして、母の従兄弟は「お姉さん、ぼく、編集の仕事を30年やってるんです。まだ初校の段階ならば、きちんと校正しておいた方があとあと非常に楽です。なので、ぼくにぜひ校正を見させてください」と突然に言い出したのです。

 驚いたのは母でした。この従兄弟は完全無欠の理系大学を出ていたので、母はてっきりそういった仕事に就いているのだと思い込んでいたのです。それが、よりによって編集者とは・・・・。
 この従兄弟の人柄を知っている母は、それならと見込んで自分が目を通し終わった初校をすぐに送付し、実にちょうど昨日、12日の月曜日に校正していただいたものを私が受け取った次第です。

 これまでに、アルファポリスの編集者はもちろん(この方も何度も何度も見直してくださっています)、誤字脱字発見器である母、著者である私の三方確認をしてきましたが、さらに新たなる目でプロの編集者に見てもらって、ここでもまたとんでもない間違いを複数発見していただきました。

 皆さまご経験のある方もいらっしゃると思われますが、一度読んでしまった文章は、次に見直す時にはもう目が慣れて文字を追ってしまうので、なかなか間違いに気づけないということがままあります。
 なので、このような場合にはまったく新しい目、曇りのない眼で確認していただくのが一番なのですが、なかなか400頁にわたる長文を身内以外の方に読みこなしていただくことはお願いしにくいものであることは否めません。実際、なにかとのんびり屋のオットにはこんなコト、おそろしくて頼めません(きっと全然違う文章になって戻ってくるだろう・・・)。なので、この母の従兄弟にお願いできて、これまでに最強の校正をしてもらったと自負しております。それ以外の語句の間違いは、すべて私の責任です。

 今週、再校が返る予定です。最強の初校をもとに、ベストを尽くして赤を入れる所存です。
 それにしても満を持していたかのようなこの偶然。私はいかなる存在に感謝すればよいのでしょう──。
 私にとっての不思議な偶然が続きます。
 どうか皆さま、よりよい流れを信じて、私と一緒にいてください。


 次回更新は予定から1日ずらして6月16日(金)とさせて下さい。
 再校が届いていた場合、この話題になるかもしれません。
 「本当にあった怖いお話」も必ず再開しますので、お楽しみに☆


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最終更新日  2006年06月13日 12時16分21秒
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