藤の屋文具店

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マンガ雑誌



              セピア

             マンガ雑誌


 小学生のころ、楽しみのひとつにマンガ雑誌があった。「ぼくら」
「少年」「少年クラブ」「少年画報」などの月刊誌と、「少年サン
デー」「少年マガジン」「少年キング」といった週刊誌である。当
時のマンガを思いつくままに並べると、月光仮面に鉄人28号、鉄
腕アトム、少年ジェット、赤銅鈴之助、伊賀の影丸、ナショナルキ
ッド、おそ松くん、マグマ大使などのメジャーなやつや、怪球エッ
クス現る、ガロロQ、コンドルキング、鋼鉄人間シグマ、レッドマ
スク、海の王子、ミュータントサブ、空飛ぶ幽霊船、少年タイフー
ン、エムエム三太、スーパー99、電光オズマ、電人アロー、ゼロ
戦レッド、サブマリン707、ブラック団、ふしぎな少年などのマ
イナーものがある。

 週刊誌のほうは、ひたすらマンガと特集記事で、表紙にはスポー
ツ選手、当時は長島や王や金田投手、大鵬と柏戸なんかが載ってい
た。芸能人は、アイドルというのがまだ出ていなくて、せいぜい大
田博之やフォーリーブスの八木俊夫が、ふしぎな少年やマグマ大使
の掲載誌に出ていたくらいしか記憶にない。表紙をめくったところ
にあるカラーページには、野球の解説や宇宙飛行士の記事、未来の
海中都市や日本海軍の秘密兵器構想、まぼろしの巨大爆撃機だのタ
イムマシーンの想像図、エンゼルヘアーと呼ばれる不思議な物質と
UFOの関係とか、モアイの謎、そんな記事がイラストとともに熱
く語られていた。
 裏表紙には、あやしげな通信販売や記念切手の広告や、ピストル
のおもちゃの広告、金持ちのぼっちゃんが高価なおもちゃのピスト
ルで遊んで、高い弾丸をきょろきょろと探しているのを尻目に、こ
きたないガキが銀玉鉄砲でのびのび遊んで、タマは100発で5円
だから、探さなくってもいーんだいっ! と得意になるやつなんか、
今でも覚えている。でも、銀玉鉄砲は、銃口からはタマが出ないイ
ンチキなので、僕はちゃんとしたモデルガンがうらやましかったり
した。

 マンガ月刊誌は、ふろくが大量についてはらんでいた。本誌のマ
ンガの続きが、「別冊付録」として、今のコミックスを薄くしたみ
たいのになっているのが数冊と、今で言うペーパークラフトみたい
なおもちゃが折り込まれて、輪ゴムで十文字にとめられているので
ある。
 おもちゃの代表的なものは、まず日光写真機。マンガのキャラク
ターを白黒反転して硫酸紙に印刷したネガと感度の低い印画紙を重
ねて、太陽に当てて写真というかコピーをこさえるものである。次
は蓄音機。紙箱のアームに薄い紙を貼った窓とブリキの針をつけ、
ペラペラのソノシートと呼ばれるレコード盤を、中心近くに刺した
マッチ棒で回すと、アニメの主題歌が聞こえるもの。あとは、戦艦
や飛行機のペーパークラフト、スマートボールみたいなゲーム機や、
カルタや双六やトランプを、掲載するマンガのキャラクターで構成
したものが多かった。鏡を使った万華鏡や潜望鏡、ビニールででき
た、水かきのついたスイムグローブなんかもあったな。
 異色な付録では、学研雑誌の付録の科学実験セットのようなもの
がある。リトマス試験紙の応用のような科学反応の実験キットや、
自分でスパイダーコイルを巻いて作る鉱石ラジオ、二極の簡単なモ
ーターやコイルを巻いてつくるベル、解剖セットや昆虫採集の標本
作りのセット、アリの巣作りの観察セットなど、説明を読むだけで
わくわくするようなやつが多かった。
 毎月、マンガを何度も読み返しては、次号の宣伝記事にある「豪
華11大付録」なんてのを眺めてわくわくして、いざそれを手にす
ると、小松崎茂のリアルなイラストとはかなり違ったしょぼい戦艦
大和が出来あがったりして、いんちきだぁーと呟いてはみるものの、
それでも、嬉しくって机の上に置いては、しゃがんで眺めたりした
ものだ。

 僕がいまでも覚えているのは、小さな紙ダマをゴムで駆動するア
ームで打ち出すピッチングマシーンで、たいしたことのないものだ
ったのだけど、自分で作るのが難しくて父親に手伝ってもらったの
を、ときどき思い出す。



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