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パパの子育て(長男+三男)
退院前夜に急変の連絡
帰宅後、寝巻きに着替え、兄くんにおっぱいをあげている奥さんの側に。
すると、電話。
「(旦那の)母親かな?」
タクさんを引き取りに行く都合、旦那の母親に家に来てもらう予定だったので、その打ち合わせとばかり思って受話器を取る旦那。
「○○○病院 新生児科の△△(先生)です。 匠くんのお父様ですか?」
という電話だった。
旦那は、何か退院について奥さまに伝え忘れていた事でもあるのかなぁと思った。
しかし、次の先生の言葉に凍りついた。
「匠くんの容態が8時30分ごろ急変しました。現在、心臓マッサージを続けているところです。今からこちらに来られますか?」
もちろん即答。
「大丈夫です。これからすぐ行きます。」
さて、旦那はやや困った。
奥さまに何て言おう。
この時、先生方を信頼していたので、特に重くは考えていなかったが、心臓マッサージまで伝えるかどうか迷った。
結局は伝えずに、病院から急変なので来るように言われた旨伝えた。
兄くんを置いていく訳には行かず、一緒に連れて行った。
病院に着いて、新生児室を訪ねると、主治医より説明があった。
8時のミルクをしっかりと飲み終え、眠りに着いたタクさん。
8時半に無呼吸状態となっているのを看護婦が発見。
心肺蘇生を始めたとの事。
既に1時間近くやっているが、心臓が細動したまま戻らないと原状を伝えられた。
退院前の心臓エコー、その他の検査結果は全て問題なし。
明日退院の際に持ち帰る薬の手配も終了し、退院を待つばかりの状態だった。
原因は一切不明。
呼吸が停止し、心臓が細動して通常の鼓動を刻んで居ない。
ボスミン(心臓の鼓動を強く打たせる薬)も小児に使う量をはるかに超えた大人の通常量を売っても戻らない。
何が原因かは不明だが、心筋梗塞でも起こしたのかもしれない・・・
そして、可能性について一言。
「これだけの時間、心臓マッサージを行っても変化が無いという事は、これ以上のマッサージで戻る事はまず難しいと思われます。」
状況を分かっている筈なのに、分からない。
何を言われたか分かっている筈なのに、理解できない。
何故??? 何が起きた??? なんで、匠なんだ?????
涙ぐむ奥さん。
「何か質問ありますか? 質問でなくても意見でも構いませんが。」
という先生の問いにしばし沈黙。
もしかしたらの思いを込めて、旦那は1つ質問をした。
「心臓の鼓動が戻る可能性はかなり低い という事でしょうか?」
先生は、医学的に常識的な回答をくれた。
「まず、難しいです。」
そして、先生はNICUに入って、最後の時を両親と共に。パパママにダッコされて最後の時を迎えさせてあげるよう促した。
旦那と奥さまは、慣れた手つきでNICUへの入室準備を整えた。
NICUの奥では、オペを担当した心臓外科の先生が一生懸命心臓マッサージをしていた。
電気ショックも行った。
もうだめだと言われてから30分経過。
全く状況は変わらない。
この時、旦那と奥さまは既に泣いていた。
そして、諦めていた。
タクさんは、奥さまの腕の中に抱かれた。
「タックン、タックン、 、 、 」
ただそれだけを行って泣き崩れる奥さま。
旦那の胸の中には、「ゴメンね」の言葉が。
なぜ「ゴメンね」なのだろう。
もっと早くチアノーゼを発見していれば
ミルクを沢山飲むことを喜ばず、体重が増え続けることを喜ばなければ
(急激な体重の増加が、心臓に負担をかけたのではないか)
タクさんの病気の事が良く分からずに、何をしたら良いのか分からない事に
せっかくオペにも耐えて、回復してきたのに何もしてあげられない自分に
元気になって、兄くんとお揃いの服を着せられなくなってしまった事に
そして、呼吸も止まり、心臓も苦しそうに動かしている、きっと辛いだろうタクさんに
何よりも、今のタクさんに何もしてやれない事に対して。
タクさんは、徐々にその心臓の鼓動を弱め、心停止。
主治医による瞳孔の確認を行い、22時39分 旅立ちました。
体中に再び入れられたチューブ類をキレイに取り去るため、一時タクさんを預けて面談室に移動。
呆然とする両親。
傍らでは、兄くんのカワイイ寝顔。
ここでも旦那は「ゴメンね」と。
兄くん、旦那はタクさんを助けられなかったよ。
3人で一緒に遊びたかったのに。。。。 「本当にゴメンね」
10分以上待っていた。
廊下では、休憩を終えた看護婦、休憩に入る看護婦の笑い声。
でも、そんなものはどうでも良かった。
早くおいで、タクさん。
タクさんの入室。
泣く両親。
主治医、オペをしてくれた先生、看護婦も入って再度今日あった事を報告。
旦那は、タクさんを傍らに眺めたまま聞く気になれず、ダッコしながら聞いた。
頭を撫でてあげると、既に冷たくなっていた。
苦しそうでないその顔にほんのチョットだけ救われた。
先生方の話では、本当に原因不明との事。
そりゃそうだ。
奥さまは、この日も午後に授乳しているのだから。
毎度の様に、5分くらいで飲み終えると同時に自ら大きなゲップ。
周りの授乳婦さん方に笑いとリラックスをばら撒いて居たと言う。
午後8時に飲ませたミルクもペロリと平らげ、御機嫌だったそうな。
その後、原因不明だからという訳ではないが、検死解剖の話になった。
小児特定慢性疾患(?)の助成を受けているし、育成医療の公費負担も受けている。
ましてや、(自称)医療関係者の端くれ夫婦にとって、協力する気はあった。
でも、死因の可能性(小児の心臓疾患オペ後)があるのは
心臓の冠動脈が詰まった⇒心筋梗塞
脳血管が切れた⇒脳出血
他
との事。
奥さまに聞いてみると、旦那に任すと。
旦那は、先生に確認した。
「どこをどのくらい切る必要があるのでしょうか?」
それの回答は、
「胸からお腹まで切り、内臓を一通り確認。心臓や関連部位については切片スライドを取り、顕微鏡にて病理確認。 頭は脳を完全に取り出せるくらいまで切る。」
変な話、胸は既にオペで傷がついている。胸やお腹は構わない。
多分、一番先生方は確認したい脳については・・・
旦那としては、頭に傷をつけてあげたくない。宗教的なものを持っているわけでもないが、2,3日は傷ついた頭を見るのは辛い。
そこで、体部の病理解剖は受け、頭の病理解剖は拒否させてもらった。
同意書にサインし、翌日の病理解剖のため、夫婦と兄くんは取り敢えず家に帰る事となった。
時間は既に午前様。
奥さまからは、「安全運転でね」と言われてはいるが、そうも行かない。
涙をぬぐいながら、怖い運転でトロトロと家路に着いた。
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