ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti @ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2007.09.07
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カテゴリ: シェイクスピア
天王洲アイルの「銀河劇場」(旧アートスフィア)で、
ヴェニスの商人 」の公演が続いている。

翻訳劇だということを忘れてしまうほどセリフを自分のものにして、
緩急自在に芝居を引っ張る市村正親の見事なシャイロックに、ただただ脱帽。

ウィットに富んだ女性ポーシャのクルクルとまわる頭の中を軽やかに言葉にして、
観客を戸惑わせることなく、話の水先案内人を見事に務める寺島しのぶ。

天真爛漫なバサーニオ役を素直に演じつつ、
個性豊かなポーシャの求婚者たちを何役も早変わりでこなし、芸域の幅を見せつけた藤原竜也。


さすがの舞台となっている。

そして、演出が新鮮。
ロビーに入ったそのときから、そこはヴェニス!
仮面をかぶって衣装をつけて、カーニバルを楽しむ人々があそこにも、ここにも。
太鼓や笛をかき鳴らす音楽隊も出没、
否が応でも気持ちがたかぶる。
そんな「扮装」のまま、彼らは客席から、そして袖から舞台に上がり、お話が始まる。
キリスト教徒の、町をあげての仮面舞踏会の夜が。
貴婦人が仮面をはずすと、全員女装の男だった!

一見奇想天外に見えるこの演出を考え出したのは、
自らも役者の経験があるRSC(ロイヤルシェイクスピアカンパニー)のグレゴリー・ドーラン。

この「ヴェニスの商人」を演出するにあたって、
彼はアントーニオとバサーニオの友情に、男同士の愛の交流をにじませている。
放蕩の限りを尽くし、貸した金を使い果たしてなお、もっと貸してくれという若い男に対し、
「その望みをきいてくれるかどうかと疑われることは、借金を申し込まれることより私を苦しめる」
といって、全財産も自分の血肉も奪われてさえいとわない男アントーニオ。

ただのお人好しにも見えるアントーニオの無償の愛。
けれど、恋愛感情として見れば、なんてことはない。

「何ではっきり『貸して』って言ってくれないの? 私が貸さないとでも思ったの?情けない。
私の愛はその程度だと思われたわけね。あなたが困ってるのに、私が渋るはずないじゃない。
・・・いくら、いるの?」みたいな、ハナシである。
めっぽう、わかりやすくなった。

「この社会で、自分とは結ばれないのだから、いいご婦人と結婚させてやりたい」
その一心で、若いバサーニオに目をかけ、ポーシャとの縁組を全力で支援するアントーニオ。
そう考えていくと、
「君の借金のために死ぬのは後悔しないが、せめて最後に君に会いたい」という言葉も
「結局は、カネのうらみつらみをネチネチ言ってるだけじゃないか」と一蹴できなくなってくる。
「あなたのためなら死んでもいい」そのまま。
「あなたが幸せになればいいの。ただ、私があなたのためにしたことを、忘れないで!」
なのである。

ここまで愛されれば、
「絶対にはずさないで」という新妻の言葉より、
長年愛を交し合っていたアントーニオの言葉に従って指輪をはずしてしまうバサーニオの心理も、
わかるような気がする。

単なる「軽薄オトコの言い訳」が、
必死に二人の関係を悟られまいとして弁明を重ねる努力に見えてくるから不思議だ。

ドーランは、一方で
「見ただけではわからないのに、公然と差別される存在」としてのゲイの立場を、
彼等が受ける、憎憎しいまでの蔑みを、
存在そのものがキリスト教によって否定されているという絶対的な差別の理由を、
シャイロックに対する「キリスト教徒の態度」によって表している。

「ユダヤ」という言葉を口にするたびに、
言葉が途切れ途切れになっても必ずツバを吐くキリスト教徒。
「口にするのもおぞましい」とは、まさにこのこと。
口の中に入ってしまった「悪魔」を吐き出しているのだ。
その「ユダヤ人」に対する「汚いもの」扱い「悪魔」扱いは、
私たちが考える「差別」(のけもの、笑いもの)のレベルをはるかに超えたものだとわかる。

そんなふうにさげすまれ、ツバを吐かれ、ひきずりまわされ、
それでも我慢するしかない人生を送ってきたユダヤ教徒のシャイロックは、
キリスト教徒の乱痴気騒ぎを、苦虫を潰すような面持ちで眺めている。
それぞれ誇り高い二つの文化の、大きな溝がかいまみえる。

映画「GO!」の1シーンで
「どうしてあなたはロミオなの?」の一節に、
実名を使う使わないの在日の気持ちを重ねた金城氏もそうだが、
シェイクスピアの戯曲は、差別される人々の心を捉えずにはいられない。
すさまじい差別の現場をそのまま中継し、
見るものにグサリとナイフを突きつけるその激しさは、
当事者が見れば、セカンドレイプのような苦しみさえ与えんばかり。
それでも、ここには差別される側の心が溢れている。

「この話は『差別』を描いたのではなく、『差別とは何なのか』を描いた作品だ」という言葉が
差別される側のドーランから聞こえてきたのは、傾聴に値する。





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Last updated  2007.09.18 14:12:04
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