第1章 『REDSTONE』





古都ブルネンシュティングギルド連合直轄ギルド『Saint Crusaders』内でのにゃるらを筆頭とした裏切りによる『Saint Crusaders』の壊滅。
通称『十字軍の悲劇』
それを口火に他のギルドでも次々と不穏な動きをする者が現れた。
ギルドを危機的状況に陥れた者、はては壊滅まで到ったギルドもある。他にはギルド運営資金を持ち出した者、静かに姿を消した者、中には戦いの末命を落とす者もいたと言う。
その様な事もありブルネンシュティングギルド連合は直轄ギルドを中心とした組織運営を断念せざるを得なくなった。
そこで一旦直轄ギルドを全て解散させ直轄ギルドを主体とした組織から非直轄ギルドを主体とした組織へと形をシフトさせた。


新しいギルド体制に各々のギルドが慣れはじめギルド連合としての活動が落ち着きを取り戻せた頃、ギルド連合の上層部で一つの議題が沸き出していた。
それは一時期落ち着いていたはずのMOBの動きが活性化してきた事、そしてその背後に何かが暗躍していてMOB達を操っているのではないか。という事だった。


事を重く見たギルド連合は特別編成チームを作りその実態の調査に向かわせた。
数週間後、特別チームはいくつかの情報、手がかりを得る事に成功した。しかしその代償は特別チームのメンバ全員が命を失うというあまりにも大きな物になった。
得られた情報は
・“レッドアイ”と呼ばれる組織の確認。
・“レッドアイ”の目的は掴めていないが少しずつ勢力を増し動きを活発化させている事。
・“レッドアイ”の動きが最近のMOBの動きと少なからず関係している事。
・“レッドアイ”の中にはかつて直轄ギルドでその名をはせた者の姿を多数確認した事。
といった物だった。


この情報を元にギルド連合は“レッドアイ”を『十字軍の悲劇』事件の際に離反した者達により構成された反ギルド連合組織と認識し公に“レッドアイ”の存在を発表すると同時に“レッドアイ”に関する情報を広くうったえかけた。


『十字軍の悲劇』事件より約半年、“レッドアイ”の存在を発表してから約一ヶ月が過ぎるもギルド連合はいまだ有力な情報を得る事が出来ずにいた。
しかし“ブルネンシュティングギルド連合の新体制”と“レッドアイの誕生”により運命はその終末にむけ速度を加速させていく事となる。










『真説RS: 赤石 物語』 第1章 『REDSTONE』-1







「グオオオォォォ・・・・・・」
魔物の断末魔の叫びがあたりに響く。


「ふぅ、こいつで最後かな。」
断末魔を放った主の横でミコトが汗を拭う。
「みたいだな。しかし・・・」
kioraがミコトの足元に転んでいる体長3mは超えているであろう大型のMOBとミコトとを見比べた。
「どうしたんですか?」
「いや、強くなったなぁ。と思ってな。」
「お世辞ですか?まだまでですよ。」
ミコトの顔に照れた様子はなく本当にそう思っている事が容易に窺えた。
「うぅむ・・・まぁいいか。」
二人が一通りMOBを片付け話しているところに
「お、帰ってきたな。」
「やっぱり何もありませんね。」
周辺の探索に出ていたkikouteiが帰ってきた。
「たまたま山奥にいた凶暴なMOBが人里に下りてきたんでしょう。」
「ふむ、と言う事は“レッドアイ”とやらの組織と関係はないっぽいな。」
kioraの口から出てきた“レッドアイ”の言葉にミコトがわずかに反応する。
しかしkioraは構わずに続けた。
「うっし、じゃあ古都のギルド協会に報告するか。」
「俺は大事な用事があるから今日はミコトとキコに頼もうかな。」
「「はい。」」
そう伝えるとkioraは帰還用のポータルを利用し町へと戻った。
「じゃあ行こうか。」
「はい、キコさん。」


「十字軍の悲劇」以降、町の保安を担当していたギルド連合が混乱した為古都を始めとした様々な街で街としての機能も混乱していた。
しかし、非直轄ギルドの献身的な活動により除々に落ち着きを取り戻しギルド新体制が整い機能し始めた頃には元の活気を取り戻す事が出来ていた。


「早く報告済ませて、帰ってから一杯飲もうか?」
「自分まだ未成年ですよキコさん・・・・」
「あはは、まぁお酒くらいで誰も文句なんか言わないよ。」
「そう・・ですかねぇ。」
二人はたわいもない話を交わしながらブルネンシュティングギルド連合の本拠地、ギルド協会を訪ねた。


ドン


kikouteiに続き協会の中へと入ろうとすると中から女性が出てきてぶつかり合ってしまった。
「す、すいません。大丈夫ですか?」
「・・・・・。」
ミコトがすぐに起き上がり女性に手を差し伸べる。
しかし女性は何も言わず起き上がり服についたほこりを手で払い落とし小さく頭を垂れすぐに去って行った。
「どうした?」
不思議そうな顔を浮かべるミコトを見てキコが尋ねた。
「キコさん、今の女性知ってますか?」
「ん?ちょっと見てなかったな。どうかしたの?」
「うーん、見た目は綺麗な女性だったんですがぶつかった一瞬だけものすごい殺気というか闘気みたいな物感じたんですがそれがとっても強い印象あって名の知れた人だったのかなぁ?と・・・。」
「ふむ、そんな気は感じなかったんだけどねぇ。まぁ場所が場所だけに強い人はいっぱいいるよ。さぁ行こう。」
「・・・はい。」
すでに通りから女性の姿は消えていたがその通りをミコトはぼぉっと眺めていた。


「帰ったか、どうだった?」
「・・・・さすがに警備が厳しいな。とりあえずこれだけだ。」
古都から北東へ少し進んだところにある中央プラトン街道グレートフォレスト入り口の少し奥まった地に人目を避けるように二人はいた。
「ふむ・・・・。」
男が受け取った書類に一通り目を通す。
「まぁ、これだけわかったらひとまずは大丈夫だろう。」
「しかしそんな物手に入れてどうするつもりだ?」
「くく・・・まだレッドアイの活動を表沙汰にするわけにはいかないんでな、それの確認だ。」
「ま、活動自体に興味がないお前には関係のない事だがな。」
「ふん。」
書類を持ち寄った女性は本当に興味がないらしくそれ以上その話に関心を示す事はなかった。
「と言っても元々ギルドに所属せずに顔がわれてないのはお前だけだ。なお且つ女性って事で少なからず相手も油断するからな。これからも頼むぞ。」
「目的は違えど恩もあれば自分のためでもある。」
「ふん、殊勝な事だな」
二人は一通りのやり取りを終えると静かに姿を消した。


「ただいま戻りました。」
「おぉ、先にやってるぞ~。」
ギルド本拠地に帰ってきたミコトとkikouteiを迎え入れたのはジョッキ片手にほろ酔い気分のkioraだった。
「キオさん・・・大事な用って・・・」
しかも酒くさい。
「セイセイセイ、何も言うな!これは大事な用事なんだ。体を酷使してその後に必要なのは・・・・ビールしかねぇ!」
「「・・・・・・。」」
ミコトとkikouteiが目を点にして顔を見合わせた。
「まぁ・・・キオさんらしいといえばらしいですよ・・・ね。」
「だね。」
顔を真っ赤にしながら酔っているkioraを横目でチラッと覗いて二人が笑い出した。
「ぬ?なんだ??」
いきなり笑い出した二人に今度はkioraが目を点にしていた。




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