『成長』 3


「さて、始めましょうか。」
そこにはミコトとakariの姿があった。
「とりあえず任務ではPTとしての剣士の動き、それ以外では単対単、単対多の動きを特訓していきましょう。」
「はい!よろしくお願いします!」
「特訓って言ってもやっぱり剣を振らないことには上達しないから早速始めましょうか。」
そう言うとakariは左手にかけてい盾を自分を中心とした円状に浮遊回転させ静かに剣を
構えた。


「ふぅ・・。」
深呼吸を一つ挟みミコトも同じ様にシマーを唱え剣を構えた。


akariとミコトの視線が空中でぶつかり合う。
少しの間沈黙が続いたがそれはakariによってすぐに破られた。


タッ


akariがミコト向けて一直線に走り出した。
まだ2人の距離は空いているにも関わらずakariが突きの体制に入る。
「覚悟!」
次の瞬間突きを放つと同時にakariが一気にミコトとの間を縮めた。
剣士のスキルの一つファイナルチャージングであった。


―!!
ミコトの頭の中にある昔の記憶と眼前の光景がリンクする。


「クッ」
ミコトが間一髪のタイミングでかわす。


「へぇ、今のかわすなんてやるわね。」
「ふぅふぅ、昔バアルと特訓してた時に同じ様な攻め方された事あったんでなんとか・・・でもスピードも威圧感も桁違いですよ。」
「あら、それは頼もしいわね。じゃあ続きいきましょうか。」
akariが再度剣を構えた。










『真説RS: 赤石 物語』 第3章 『成長』-3







「akariさんバアルから手紙来たんですよ!」
「おぉ、見せて見せて。」
ミコトから手渡された手紙の文字を目で追いながら読みこむ。
「Saint Crusadersかぁ。確かガラの知り合いがここにいた様な・・・」
「そうなんですか?」
「まぁ腐れ縁みたいなもんやな。」
そう言って2人の会話に入ってきたのはガラテア本人だった。
「バアルって子はあかりんが言ってたもう1人の子の事?」
「うん、そうよ。」
「ほ~なかなかキツいとこに入ったなぁ。」
「ガラテアさんそのギルドについて教えてもらえませんか?」
「かまわんよ。まずは直轄ギルドはわかる?」
ミコトが顔を横に振った。
「ならそこから説明するな。」
そう言うとガラテアは手振りを交えながら説明を始めた。


「連合直轄ギルドってのは国同士の戦争や内戦が起きた時や国家レベルの事件などが起きた時、さらにはREDSTONE探索や情報収集などの際に中心的に動くギルドでね、言ったらギルド連合専用のギルドやね。」
「おっさんずを含めたほとんどのギルドは非直轄の公認ギルドでギルド連合から直轄ギルドの補佐、支援活動やその他の任務を受け行動、そして地域住民からの依頼も受けてそれを仕事として動いているんよ。」
「その直轄ギルドの中でもSaint Crusadersはバリバリの武闘派やからそのバアルって子しごかれると思うで。」


「あらら・・大変ねミコト」
akariの表情がほんの少し曇った。
「どうしたん?大変って?」
「これ見てください。」
そう言うと手紙をガラテアに手渡し、ガラテアは手紙に目をやった。
「・・・・ふむ、これはおっさんず代表として負けさせられなんな。」
「よし、おっさんず総出で鍛えるか!」
「いいんですか?心強いです。」
ガラテアの話を聞き難しい顔をしていたミコトの顔が和らいだ。
「早速やろう!って言いたいんやけど・・・これから任務が・・・」
「ちょっとぉ、だめじゃん!・・・なら今日は私としましょう。」
やれやれといった表情を浮かべていたakariだがその表情の中には育てる楽しみか笑みが見受けられた。
「おぉ!あかりん頼むわ」
「了解。じゃあ準備が出来たら宿舎前に集合ね。」
「はい、お願いします!」





「ん~気持ちいい。」
全身の筋肉に張りめぐされた緊張の糸をほぐす様に伸びていたakariの体を爽やかな風が吹き抜けていった。
「ミコトもストレッチして体ほぐした方がいいわよ。」
「はっはっ・・もう少し後でします・・はぁ・・はぁ・」
その横ではミコトが息を切らしながら座り込んでいた。
「ふふ、最初からとばしたもんね。でも始めてPT組んだ時に比べて体力ついたね。」
「はぁ・・はぁ・・ふぅ~、そうですか?でも今の状況みたらまだまだですよ。」
過度の特訓後にも関わらず2人は清々しいほどの笑みを浮かべていた。


「今日のおさらいだけど、ミコトは“剣士”にこだわりすぎと言うかとらわれすぎかな。」
「と言いますと?」
同職のakariの口から出た言葉はミコトにとって意外なものだった。
「簡単に言うと近距離で殴りあうだけが剣士じゃない。って事よ。」
「ロングレンジのスキルを挟んだり、移動・攻撃にスピードや距離などの緩急をつけて戦い方に変化をつけるの。そうする事で不思議な事に本来の近距離での戦闘もグッと戦いやすくなるよ。戦い方は一つじゃないって事よ。」
「なるほど・・・戦いに変化を・・・か。」


「うし!akariさんもう一度手合わせお願いします!」
息を整えストレッチで体をほぐし再度剣を構えた。
「構えられたらNOとは言えないわね。」
akariも剣を構えた。
今までの談笑ムードの2人の顔が一気に真剣味を帯びていく。


「はっ!」
キィーン
「まだまだ!」


徐々に落ち行く太陽が2人を包む。
伸び行く影がミコトの成長を現すが如く。



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