ヨレヨレお散歩日記

凡庸な人


優等生的な、決まり切った受け答えしかできない人がいる。
たとえば「私、ものすごい頑固な冷え性で…」とあれこれ話しても
「大変だね、気をつけてね」で終わり。

最近の殺人事件やら、幼女連れ去り事件やら、
拉致問題やらを話しても、「テレビでやってたね」というくらいで、
自分とは関係ない世界の話…という顔をしている。
「気の毒だよね」と言葉では言うものの、
「あれはヒドイよね」と当事者に感情移入するようなことはない。

映画の感想を聞いても、極めて凡庸でおおざっぱ、
誰でも言えるような意見しか出てこない。

毎日の仕事や、決まり切った家事以外に、
何か趣味でやってることとか、興味のあるジャンルとか、
やってみたいこととか、行ってみたい所とか、いくら話しても出てこない。
その日のトップニュースについて話しても、「こわいね」とか
「よくわからないよね、なんだろうね」で終わる。

こういう人って、きっと誰も傷つけない、良い人なんだと思う。
気にしても仕方ないことを気にしないから、ストレスも少ない。
世間で話題になってることにも、大して興味がないし、
自分の人生についても、深く考えたりしない。
そのせいか、いつも元気である。

しかし、話をしていて面白くもなんともない。

私の親友の一人は、私が映画の話をすると、
「だいたい映画って何が面白いのか、全然わかんないんだよね。
所詮、作り事でしょ?そんなストーリーに一喜一憂するのって、
時間の無駄だと思わない?」などと言ってのける。
この人とは、映画を一緒に観た記憶がない(笑)
けど、面白いんだ、話してて。

私は「考えても仕方ないこと」を、あれこれ考えるのが好きだ。
芸能人のゴシップだって、「どうしてだろう」とか、
「もしかして、こんなことがあったのか?」とか、
しても仕方ない推測をするのが好きだ。

幼児虐待や、動物虐待、子供の行方不明事件などがあると、
あれこれ深く考えないではいられない。
考えたところで、何が変わるわけではないんだけれど。

学校に行って、就職して、結婚して、子供産んで育てて、
家を建てて、定年になったらそれなりに暮らして。
それが「人生」であって、それ以外の可能性を考えたことがない人。
「なぜ、結婚しなくちゃいけないのか」とか、
「子供がいなくたって、いいじゃないか」とか、
そんなことは決して考えず、教科書通りの価値観から決して外れない人。
そういう価値観から外れることに、まったく興味のない人。
外れた人の話にも興味がない人。
つまるところ、凡庸な人。
何事も深く考えない人。
だから人とも衝突しないし、攻撃もしない、されない。
そして、たいていのことは「仕方ないから」と我慢してしまう。

こういう人が長生きをするんだろう。

実は、ネコを見ていても、そう思う(笑)
個性的で好き嫌いが激しく、少しでも気にくわないと猛然と怒り、
ワガママで気まま、ただのネコとは思えないような魅力のあるネコほど、
病気になったり、怪我したり、早く死んでしまう。
長生きするネコは、常に超然と構え、攻撃されても仕返しせず、
決まり切った毎日を凡庸に過ごしている。

私は個性的なネコが好きだし、
個性的な人間が好きだ。
きっと長生きはできないんだろうな。


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